(9−3−I)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 高齢者ができる限り自立し、生きがいを持ち、安心して暮らせる社会づくりを推進すること
施策目標 高齢者の健康づくり・生きがいづくりを推進するとともに、生活支援を推進すること
I 高齢者の介護予防、健康づくり・生きがいづくり及び社会参加の支援を推進すること
担当部局・課 主管部局・課 老健局老人保健課
関係部局・課 老健局計画課、振興課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 介護予防事業を推進し、実施市町村率が前年度を上回ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 家に閉じこもりがちな高齢者、要介護状態になるおそれのある高齢者等に対し、外出するきっかけとなり、介護予防に係る知識の習得・意識の向上を図ることができる場を提供すること等を通じて、それらの者の自立した生活の促進及び要介護状態になることの予防を図ることを目的として、市町村が地域の実情に応じて実施する下記のような事業について国庫補助を行うことにより、事業の推進を図る。
関連する経費
介護予防・地域支え合い事業(平成16年度予算額) 40,000百万円(うちの一部)
(評価指標) 介護予防事業の実施市町村率(各メニューごと)
H12 H13 H14 H15 H16
  転倒骨折予防教室 16.4% 39.6% 51.4% 60.8% 62.4%
(534) (1,285) (1,666) (1,954) (1,949)
アクティビティ・痴呆介護教室(*) 14.9% 21.2% 25.1% 30.2% 31.2%
(484) (690) (814) (970) (975)
IADL訓練事業 5.6% 15.4% 16.5% 16.6% 17.3%
(182) (499) (535) (532) (540)
地域住民グループ支援事業 8.6% 12.7% 14.2% 16.0% 16.1%
(280) (412) (460) (513) (503)
(参考)市町村数 3,252 3,249 3,241 3,213 3,123
(備考)
実施市町村数(かっこ内の数値)は、各年度ごとの国庫補助の交付決定ベースの数値であり、老健局計画課調べ。
本事業は平成12年度に創設。
IADLとは、手段的日常生活動作をいう。
(*) この事業の名称は、13年5月の要綱改正以降のものであり、それ以前は「痴呆予防・介護事業」とされていた。
実績目標2 老人保健事業を推進し、基本健康診査の受診率が前年度を上回ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 疾病の特性や個人の生活習慣等を具体的に把握しながら、継続的な教育を行い、生活習慣行動の改善を支援し、生活習慣病の予防に資することを目的とし、老人保健事業の一環として、個別健康教育を実施する。
 近年の循環器疾患等の動向を踏まえ、これらの疾患又はその危険因子を早期に発見し、栄養や運動等の生活指導や適切な治療と結びつけることによって、これらの疾患等を予防することを目的とし、老人保健事業の一環として、基本健康診査を実施する。
 個別健康教育、基本健康診査等の老人保健事業の推進のため、その事業に要する費用の3分の1を国が負担する。
関連する経費
個別健康教育事業(平成16年度予算額) 1,929百万円
基本健康診査(平成16年度予算額) 15,722百万円
(評価指標) 個別健康教育(4種類)の実施延べ人員数
H12 H13 H14 H15 H16
   総数 14,498 25,515 27,639 29,692
再掲  高血圧 2,586 3,771 3,561 3,674
 高脂血症 6,182 11,611 12,067 12,908
 糖尿病 4,447 6,921 7,769 7,870
 喫煙 2,002 3,212 4,242 5,240
(備考)
評価指標は、地域保健・老人保健事業報告(統計情報部)による。
個別健康教育は、平成12年度からの事業である。
平成16年度の数値は集計中。
(評価指標) 個別健康教育(4種類)の実施市町村数
H12 H13 H14 H15 H16
   総数 832 1,611 1,719 1,738
再掲  高血圧 243 463 502 505
 高脂血症 422 900 1,017 1,047
 糖尿病 363 716 889 971
 喫煙 126 305 379 489
(備考)
評価指標は、地域保健・老人保健事業報告(統計情報部)による。
個別健康教育は、平成12年度からの事業である。
平成16年度の数値は集計中。
(評価指標)
基本健康診査の受診率(%)
H12 H13 H14 H15 H16
41.2 41.8 42.6 44.8
(備考)
評価指標は、地域保健・老人保健事業報告(統計情報部)による。
平成16年度の数値は集計中。
実績目標3 高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援を推進し、当該推進事業の実施市町村率が前年度を上回ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
(1)  高齢者の生きがいと健康づくり推進事業
 高齢者が家庭・地域・企業等社会の各分野で、豊かな経験と知識・技能を生かし、地域の各団体の参加と協力のもとに、高齢者の生きがいと社会参加を促進するとともに、家に閉じこもりがちなひとり暮らし高齢者等に対し、様々な施設を活用し、通所により各種サービスを提供することにより、社会的孤立感の解消及び自立生活の助長を図る。
(2)  老人クラブ活動等事業
 老人クラブ活動等のより一層の活性化を図り、高齢者の生きがいと健康づくりを推進することにより、明るい長寿社会の実現と保健福祉の向上に資することを目的とする。
関連する経費
介護予防・地域支え合い事業(平成16年度予算額) 40,000百万円(うちの一部)
(評価指標)
高齢者の生きがいと健康づくり推進事業の実施市町村率(%)
H12 H13 H14 H15 H16
19.3 24.6 27.6 29.8 28.9
(628) (798) (895) (956) (902)
(参考)市町村数(市町村) 3,252 3,249 3,241 3,213 3,123
(備考)
実施市町村数(かっこ内の数値)は、在宅福祉事業費補助金等実施協議書より集計。
高齢者の生きがいと健康づくり推進事業は、平成12年度からの事業である。
(評価指標)
老人クラブ活動等事業の老人クラブ数(千クラブ)
H12 H13 H14 H15 H16
123 129 123 127 126
(備考)
評価指標は、介護予防・地域支え合い事業補助金(老人クラブ活動等事業)実施協議書より集計。
介護予防・地域支え合い事業は、平成12年度からの事業である。
(評価指標)
老人クラブ活動等事業の老人クラブ加入者数(千人)
H12 H13 H14 H15 H16
8,093 8,462 8,044 8,286 8,190
(備考)
加入者数算出方法:各年度の「福祉行政報告例(社会福祉行政業務報告)」の全国老人クラブ数及び会員数により、1クラブ当たりの会員数を求め、当該事業実施クラブ数に乗じた数を加入者とした。
介護予防・地域支え合い事業は、平成12年度からの事業である。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
(介護予防事業)
・実施市町村率は着実に増加している。
 急速な高齢化に対応し、将来にわたって、持続可能な介護保険制度を構築するため、予防重視型システムを構築することとしており、介護予防事業の推進を今後一層図っていく必要がある。

(老人保健事業)
・老人保健事業においては、壮年期死亡の減少及び認知症又は寝たきりにならない状態で生活できる期間である「健康寿命」の延伸を目標にして、生活習慣病等の疾病や介護を要する状態に陥ることをできる限り予防していくことが求められている。
 生活習慣病等の予防対策を効果的に行うには、疾病の特性や対象者一人ひとりの置かれた生活環境等を踏まえた支援を継続的に行うことが重要であることから、平成12年度より集団健康教育に加えて、個別健康教育を実施している。
 基本健康診査は、疾病の早期発見のみならず、健康教育その他の事後指導を行う際に有用な所見を得る観点から実施している。

(高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援)
・今後、高齢化の進展が予測される中で、活力ある高齢社会の実現や介護予防の重要性が再確認されている。したがって、地域における老人クラブ等による高齢者の健康・生きがいづくり及び社会参加等の活動を支援する事業の推進を今後一層図っていく必要がある。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
(介護予防事業)
・要介護状態になることの予防を図ることを目的として実施している介護予防事業については、各メニューごとの実施市町村率がいずれも前年度を上回るなど着実に増加しており、利用者本人が要介護状態になることを予防するだけでなく、家族等の介護の負担軽減も図られている。
 その具体的な成果として東久留米市を例に挙げると、介護予防サービス利用者の16%の介護度が改善され、その中には「利用者本人の精神的な安定感が増した(61.9%)」など効果がみられた。また、改善がみられなかったケースにおいても、「介護してきた家族などの身体的な負担が軽くなった(67.9%)」との結果が得られているところである。(出典:「介護予防実践事例集」(株)社会保険研究所)

(老人保健事業)
・個別健康教育の実施延べ人員数及び実施市町村数は、平成13年度は25,515人・1,611市町村、平成14年度は27,639人・1,719市町村、平成15年度は29,692人・1,738市町村と推移しており、実施延べ人員数及び実施市町村数ともに増加している。
 基本健康診査の受診率は、平成13年度は41.8%、平成14年度は42.6%、平成15年度は44.8%と推移しており、受診率は伸びている(平成15年度は前年度より2.2%増)。
 国が事業に要する費用の3分の1を負担していることから、個別健康教育、基本健康診査等の老人保健事業が効果的に推進されているものである。

(高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援)
・平成12年度の介護保険制度施行と同時に介護予防・地域支え合い事業のメニュー事業として、事業を推進したところ、次のとおりの結果となった。
(1) 高齢者の生きがいと健康づくり推進事業の実施市町村率の伸び率(かっこ内)
  12年度     16年度
19.3% 28.9%(150%)
(2) 老人クラブ活動等事業の老人クラブ数及び加入者数の伸び率(かっこ内)
  12年度     16年度
123千クラブ 126千クラブ(102%)
8,093千人 8,190千人(101%)
 以上のように、当該目標の達成を図るための目安となる評価指標は、12〜16年度において、(1)については大きな伸びを示しており、また(2)についても伸びていることからも分かるように、これらの事業は高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援に貢献している。
 高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援を推進する事業の性格が地域社会の活性化に資するとともに、ひいては、次世代の負担を軽減することにも大きく貢献するものであることに鑑みても、事業の実施は社会保障制度の維持のみならず、広く社会の活力を維持する上で極めて有効であると考えられる。
政策手段の効率性の評価
(介護予防事業)
・介護予防・地域支え合い事業については、各市町村が、一定の限度額の範囲内で自由に各事業を組み立てて実施することが可能であることから、地域の実情に応じて必要な事業を効率的に実施することができる。

(老人保健事業)
・個別健康教育・基本健康診査を含む老人保健事業は、市町村を実施主体として「保健事業実施要領」に沿って実施されているが、より効果的かつ効率的な保健事業の推進のため、市町村自らが事業評価を行い、自己点検と問題点の発見ができるよう、国において「老人保健事業評価マニュアル」を作成している。その中で事業の進め方(プロセス)については、(1)情報の集約方法、(2)対象者の選定方法、(3)保健師などスタッフの活動内容、(4)関係者間の連携、などの項目に関するチェックリストを作成し、評価の目安として数値指標を設定している。

(高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援)
・施策目標を達成するために、地域の実情や自主性に応じて実施する事業に対して補助を行い、効率的に推進した結果、実施市町村率は、平成16年度において前年度をやや下回るものの、平成12年度より大きく伸びている。また、老人クラブの活動に対する補助については、(1)その一部を、平成12年度から、市町村老人クラブ連合会が行う健康づくり事業に特化し、(2)さらに、その一部について、平成15年度に、都道府県・指定都市老人クラブ連合会が行う健康づくり支援事業に特化したことで、効率的に推進した結果、老人クラブ数及び加入者数も、平成16年度において前年度をやや下回るものの、平成12年度より増加している。
総合的な評価
(介護予防事業)
・介護予防事業については、平成12年度以降、各メニューごとの実施市町村率は、いずれも前年度を上回っており、施策目標は着実に達成されている。
 改正介護保険法においては、従来の介護予防に係る取組をさらに進め、予防重視型のシステムを確立する観点から、新予防給付及び地域支援事業を創設し、要介護・要支援になることの予防から要介護状態の予防に至るまで、地域包括支援センターにおけるマネジメントのもとで、継続・一貫性をもった取組を推進することとしている。

(老人保健事業)
・個別健康教育については、16年度までに全市町村実施に向けて現在推進しているところであるが、平成15年度は全国3,235市町村のうち1,738市町村(53.7%)で実施しており、達成に向けて進展があった。
 基本健康診査の受診率については、平成12年度実績では41.2%であるが、保健事業第4次計画の終了年次である平成16年度までに50%を目標としており、平成15年度は44.8%と前年度を上回るなど、達成に向けて進展があった。
 上記のように、目標は完全に達成されていないが、現在、行われている施策により、老人保健事業が着実に推進されているところである。
 このような個別健康教育・基本健康診査等の老人保健事業の推進により、日々の運動や栄養の摂取と深く関係している心臓病、脳卒中などの疾病の予防と早期発見、早期治療と日常生活の見直し・改善につながっており、住民がQOL(生活の質)を高め生涯充実した安心できる生活を送ることを可能としている。

(高齢者の社会参加・生きがいづくりの支援)
・市町村の高齢者の生きがいと健康づくり推進事業、老人クラブの活動は、いずれも平成16年度において前年度を下回るものの、平成12年度より増加しており、施策目標の達成に貢献している。
 今後、更に高齢者の健康づくり、生きがいづくりを推進していくために、引き続きこれらの事業に対する支援を推進していく必要がある。
評価結果分類 分析分類
(2) (1)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 介護予防事業においては、健康診断や生活指導、機能訓練等に関して専門的知識を有する保健師、理学療法士、栄養士等の活用を図っている。
 老人保健事業においては、「がん検診に関する検討会」検討結果の「がん予防重点健康教育及びがん検診実施のための指針(平成16年4月27日)」への反映や「老人保健事業推進・評価委員会」検討結果の「老人保健事業評価マニュアル(第4次計画版)」への反映など学識経験者の知見の活用を図っている。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」(平成16年6月4日閣議決定)において、「健康・介護予防の推進」が位置づけられている。

経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(抄)
第1部  「重点強化期間」の主な改革
5. 「持続的な安全・安心」の確立
(1) 社会保障制度の総合的改革
(介護保険制度改革)
 給付費の急増を回避し、将来にわたり持続可能な制度となるよう、社会保障制度の総合的改革の観点に立って、平成17年度に改革を行う。給付の実態を精査し、給付の重点化と効率化を図りつつ、制度創設以来の議論を踏まえ、以下の内容を中心とする改革を行う。これによって、保険料負担の上昇を極力抑制する。
 (1) 軽度要介護者に対するサービスを効果ある介護予防に重点化
 (2) 〜(4) (略)
(2)  (略)
(3) 健康・介護予防の推進
 国民一人一人が生涯にわたり元気で活動的に生活できる「明るく活力のある社会」を構築する。このため、健康で自立して暮らすことのできる「健康寿命」の延伸を目指し、「働き盛り層」「女性層」「高齢者層」など国民各層を対象とした生活習慣病対策及び介護予防について、平成17年度からの10か年戦略(「健康フロンティア戦略」)として、施策の推進による成果について数値目標を設定し、その達成を図るため、地域における介護予防の拠点整備など、関係府省が連携して重点的に施策を展開する。
(4) 〜(6) (略)

   高齢者保健福祉施策の一層の充実を図るため策定された「ゴールドプラン21」(平成11年12月19日大蔵・厚生・自治3大臣合意)において、「元気高齢者づくり対策の推進」が位置づけられている。

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
特になし。

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
特になし。

(5) 会計検査院による指摘
特になし。

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