(6−6−I)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 男女がともに能力を発揮し、安心して子どもを生み育てることなどを可能にする社会づくりを推進すること
施策目標 児童虐待や配偶者による暴力を防止すること
I 児童虐待の発生件数を減少させること
担当部局・課 主管部局・課 雇用均等・児童家庭局 総務課
関係部局・課 雇用均等・児童家庭局 家庭福祉課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 虐待等の早期発見・早期対応のための体制を整備すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
虐待等の早期発見、早期対応を図るために次のような施策を講じる。
児童相談所における虐待に関する相談
児童虐待が疑われる場合の児童相談所による立入調査
児童相談所における虐待を受けた児童の一時保護
児童家庭支援センターにおける虐待に関する相談
児童虐待の防止に向けた市町村間の情報・交流・連携のためのネットワーク整備
関連する経費
児童家庭支援センター運営事業(平成16年度予算額) 283百万円
子育て支援総合推進モデル事業(医療的機能強化事業等)(平成16年度予算額) 195百万円
(評価指標)
児童相談所の虐待に関する相談処理件数
H12 H13 H14 H15 H16
17,725 23,274 23,738 26,569 集計中
(備考)
 児童相談所における虐待の相談処理件数は、社会福祉行政業務報告に基づいており、平成16年度の調査結果については、本年9月頃公表予定。
(評価指標)
児童相談所による立入調査実施件数
H12 H13 H14 H15 H16
96 194 184 226 集計中
(備考)
 児童相談所における立入調査実施は、児童相談所における児童虐待相談に関する調査に基づいており、平成16年度分については本年8月に実施し、11月に公表予定。
(評価指標)
児童相談所による一時保護件数
H12 H13 H14 H15 H16
6,168 7,652 8,369 7,857 集計中
(備考)
 児童相談所における一時保護件数は、児童相談所における児童虐待相談に関する調査に基づいており、平成16年度分については本年8月に実施し、11月に公表予定。
(評価指標)
児童家庭支援センターの設置数
H12 H13 H14 H15 H16
20 30 40 46 52
(備考)
 児童家庭支援センター設置数は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課調べ。
(評価指標)
児童虐待防止市町村ネットワーク設置数
H12 H13 H14 H15 H16
506 702 967 集計中
(備考)
 児童虐待防止市町村ネットワーク設置数は、H13年より厚生労働省雇用均等・児童家庭局総務課虐待防止対策室が調査を実施。平成16年度分については本年6月に実施し、10月に公表予定。
実績目標2 被害者児童の受入体制を整備すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
虐待を受けた児童の受入体制を整備するため次のような施策を講じる。
児童養護施設に、心理療法担当職員を配置
情緒障害児短期治療施設において、虐待を受けた児童等に対するケアを実施
関連する経費
心理療法担当職員を配置(平成16年度予算額) 503百万円
(評価指標)
心理療法担当職員を配置する児童養護施設数
H12 H13 H14 H15 H16
138 202 233 265 292
(評価指標)
情緒障害児短期治療施設の施設数
H12 H13 H14 H15 H16
17 19 21 25 25
(備考)
 心理療法担当職員を配置する児童養護施設数と情緒障害児短期治療施設の施設数は、厚生労働省雇用均等・児童家庭局家庭福祉課調べ。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 児童虐待の一つの動向を示す児童相談所の虐待に関する相談処理件数は、平成13年度から平成14年度にかけては、一定の落ち着きの傾向が見られたが、平成15年度には再び増加傾向に転じ、さらに、その内容は質的に困難な事例が増加してきており、児童虐待問題は依然として早急に対応すべき社会的課題である。
 こうした児童虐待は、家族の抱える社会的、経済的、心理的、精神医学的な様々な要因の複合的な相互作用の結果生じるものであり、その背景には、家庭の養育力の不足や地域の支援機能の低下があると考えられるが、児童虐待を防止し、子どもの健全な心身の成長と自立を促していくためには、発生の予防から保護・支援に至るまで、切れ目のない総合的な支援が必要である。このため、児童虐待防止対策をより一層充実・強化するため、平成16年度において「児童虐待の防止等に関する法律」(平成16年10月施行)及び「児童福祉法」(主に平成17年4月施行)を改正し、児童虐待防止に向けた体制の整備を図ったところである。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
(実績目標1)
 児童相談所の虐待に関する相談処理件数の増加については、昨今の児童虐待に対する国民の関心の高まりや関係機関間の連携強化が図られた結果であるとの一面も持ち合わせており、虐待への対応の体制整備が図られてきていることを示していると考えられる。

 児童相談所による立入調査件数の顕著な増加(42件(平成11年度)→226件(平成15年度))を見ると、早期対応に向けての児童相談所における積極的な取組が行われていると考えられる。

 児童相談所による一時保護については、前述の評価指標である相談、立入調査を経た上で児童虐待の重篤性を勘案して実施するものであることから、相談処理件数、立入調査の件数が増加すれば重篤ケースも増加するのが自然である。
 しかし、平成15年度は、相談処理件数、立入調査件数のいずれもが増加する一方で、一時保護件数のみが減少を示しており、単年度における現象として捉えざるを得ないと考える。この傾向が3年ないし5年程度、永続的に見られれば重篤事例の減少として評価できると考えられる。

 虐待に関する相談が増加する中で、地域に密着し夜間や緊急時の対応も可能な児童家庭支援センターの設置数の増加(46か所(平成15年度)→52か所(平成16年度))や住民に身近な市町村において児童に関する情報や考え方を共有し、密接な連携の下で有効に対応することができる児童虐待防止ネットワークの設置数の増加(702か所(14年度)→967か所(15年度))は、虐待の早期発見・早期対応の取組が着実に進められていると考えられる。
以上のことから、各手段は、虐待等の早期発見・早期対応のための体制の整備という目標達成のために有効であったと評価できる。

(実績目標2)
 虐待を受けた児童のケアについては、単に安全な生活を保障することのみならず、心理的治療が不可欠なケースも多い。こうしたケアを行う心理療法担当職員の児童養護施設への配置数は、平成15年度265施設から平成16年度292施設へと増加している。また、情緒障害児短期治療施設においては、虐待を受けた児童等に対して心理学的治療を専門的に行っており、目標達成に向けて有効であった。
政策手段の効率性の評価
(実績目標1)
 児童への虐待は密室で行われることが多く、発見されにくい。また時間的な猶予を許されず緊急な対応が求められることが少なくないことから、児童相談所の立入調査、一時保護等により即時的に対応することや、地域に根ざした市町村ネットワークや児童家庭支援センターの設置が、児童虐待の早期発見・早期対応を可能とし、結果的に虐待が重篤化することを抑制することにつながる意味で極めて効率的な対応であると考える。

 都道府県(児童相談所)の体制の充実に加えて、市町村に対しても虐待の予防や早期発見について重点的に取り組むことを求め、さらに行政機関のみならず民間も含めた多様な関係者が参加する虐待防止ネットワークの設置を進めるなど、様々な社会資源を活用した効率的な体制の整備に努めている。

(実績目標2)
 虐待を受けた児童の多くは、心身に傷を負い、情緒面・行動面の問題を抱え、よりきめ細かなケアや治療を必要としているが、心理療法担当職員の対応によって、傷ついた心を癒し、早期に問題解決ができるため、最も効率的であると考える。
総合的な評価
 児童相談所の体制の充実や密接な連携によるネットワークの整備、児童養護施設への心理療法担当職員の配置等の虐待を受けた児童の受入れの体制整備は、児童虐待防止や虐待を受けた児童の保護に資する取組であり、一定の成果を示している。また、今般の児童福祉法の改正により、児童虐待に関する相談を住民に身近な市町村が相談窓口になるよう体制整備を図るとともに、市町村における保護が必要な児童を支援するネットワークの運営に関する規定を整備するなど、虐待の予防や早期発見の強化に努めている。
 こうしたことから、目標達成に向けて進展があったものと考える。
 しかしながら、虐待に関する相談件数は依然として増加傾向を示しており、改正法の着実な実施を含め、発生の予防から虐待を受けた児童の保護や社会的自立の支援に至るまでの、切れ目のない総合的な支援体制の整備が不可欠であると考える。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
  平成16年10月に施行された「児童虐待の防止等に関する法律の一部を改正する法律」などを踏まえ、同年10月に社会保障審議会児童部会の下に「児童虐待等要保護事例の検証に関する専門委員会」が設置され、様々な専門分野で構成される有識者が、継続的・定期的に全国の児童虐待による死亡事例等を分析・検証し、全国の児童福祉関係者が認識すべき共通の課題とその対応を取りまとめるとともに、制度やその運用についての改善を促すことなどについて検討を行い、平成17年4月に第1次報告書がとりまとめられた。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 (「地方分権推進計画」「国の行政組織等の減量、効率化等に関する基本計画」「第10次定員削減計画」「行政改革大綱」等)
 平成16年12月に全閣僚で構成される少子化社会対策会議で決定された「子ども・子育て応援プラン」において、児童虐待防止対策の推進として、
 @  虐待防止ネットワークを平成21年度までに全市町村で設置
 A  児童相談所の夜間対応等の体制整備を今後5年間で全都道府県・指定都市で実施
 B  児童家庭支援センターを平成21年度までに100か所整備
などに取り組むとともに、概ね10年後を展望した目指すべき社会の姿では、「児童虐待により子どもが命を落とすことがない社会になる(児童虐待死の撲滅を目指す)」としており、施策を強力に推進することとしている。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 @  児童福祉法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(平成16年11月10日 衆議院厚生労働委員会)
 児童福祉司等の資質向上及び配置基準の見直しなど児童相談所及び市町村のの体制拡充、家庭裁判所の児童福祉に関する機能強化への取組推進、国及び地方自治体における関係機関との連携強化、保護者への指導・支援のあり方及び虐待事件の検証結果等の地方自治体への周知徹底について、適切な措置を講ずるべきとされている。
 A  児童福祉法の一部を改正する法律案に対する付帯決議(平成16年11月25日 参議院厚生労働委員会)
 児童福祉司等の資質向上及び配置基準の見直しなど児童相談所の体制拡充、要保護児童対策地域協議会の全市町村設置、市町村への技術的支援、家庭裁判所の児童福祉に関する機能強化への取組推進、国及び地方自治体における関係機関との連携強化、保護者への指導・支援のあり方及び虐待事件の検証結果等の地方自治体への周知徹底について、適切な措置を講ずるべきとされている。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。

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