(3−6−III)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 労働者が安心して快適に働くことができる環境を整備すること
施策目標 安定した労使関係等の形成を促進すること
III 集団的労使紛争の迅速かつ適切な解決を図ること
担当部局・課 主管部局・課 政策統括官付労政担当参事官室、中央労働委員会事務局総務課
関係部局・課 中央労働委員会事務局審査課、第一部会担当審査総括室、第二部会担当審査総括室、第三部会担当審査総括室、調整第一課、調整第二課及び調整第三課


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 不当労働行為事件の迅速かつ的確な解決・処理を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 不当労働行為救済制度において、迅速かつ適切な審査を行うことにより、不当労働行為事件の命令・決定や取下・和解による終結を図る。
(評価指標)
不当労働行為事件の係属・処理状況(前年繰越、新規申立て、事由別終結件数)
H12 H13 H14 H15 H16
         
(備考)
 「別表1 不当労働行為事件の係属・処理状況(前年繰越、新規申立て、事由別終結件数)」参照
(評価指標)
不当労働行為事件の処理日数(手続段階別平均処理日数)
H12 H13 H14 H15 H16
         
(備考)
 「別表2 不当労働事件の処理日数(手続段階別平均処理日数)」参照
実績目標2 労使紛争の早期かつ適切な解決を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 中央労働委員会があっせん、調停及び仲裁を行うことにより、労働関係の公正な調整を図り、労働争議を予防し又はそれを解決する。
(評価指標)
調整事件に係る平均処理日数
H12 H13 H14 H15 H16
54.0 26.0 41.1 22.5 49.8
(備考)


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 不当労働行為再審査事件については、それまで50件台であった新規申立件数が平成12年以降60件台半ばで推移していたが、平成16年は83件となり前年に比べ18件増加した。一方、事件の終結件数は平成16年においては、命令・決定は25件と対前年比で減少したものの、和解・取下が47件と対前年比で大幅な増加となったため、合計では72件と対前年比で15件の増加となった。この結果、次年繰越件数は281件と、対前年比で11件の増加となった。
 また、終結事件のうち、命令・決定により終結した事件の平均処理日数は、複雑かつ困難で長期に渡る事件を処理した割合が高かったことに伴い1,214日と前年に比し112日増加している。
 労働争議の調整については、平成16年度において、終結した件数は11件であり、うち調整により解決に至ったものが8件となっている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 平成16年の不当労働行為再審査事件の係属・処理状況をみると、事件処理に尽力した結果、和解・取下件数は前年に比べ大幅に増加し、命令・決定件数を含めた終結件数は72件に増加した。ただ、一方で、新規申立件数は83件となり、過去5年間で最高となったこともあって、次年繰越件数が前年に比べ11件増加し、なお多くの事件について審査が長期化している状況にある。
 再審査命令に対する取消訴訟の提起率や取消訴訟における命令の全部又は一部の取消率も、平成12年〜16年平均でそれぞれ61.4%(平成7年〜11年平均で73.9%)、25.8%(同44.4%)となっており、取消訴訟における取消率の改善は見られるものの、命令内容のより一層の的確化が課題となっている。
 また、平成16年度の調整事件の実績については、係属件数が11件であり、うち同年度に終結した件数は11件である。終結した事件のうち、調整により解決に至ったものは8件であり、解決率は72.7%と向上した。
 集団的労使紛争については、不当労働行為審査制度と労働争議調整制度が、安定した労使関係の形成に寄与していると考えられるが、特に不当労働行為審査制度については、審査のより一層の迅速化、的確化に向けた取組が求められる。
政策手段の効率性の評価
 平成16年の不当労働行為再審査請求事件の終結事件のうち、命令・決定により終結した事件の平均処理日数は、1,214日を要している。平均処理日数は前年に比し112日増加しているが、これは、複雑かつ困難で長期に渡る事件を処理した割合が高かったことに伴うものである。
 これを手続段階別平均処理日数でみると、結審から命令・決定書交付までの処理日数は前年に比べると84日減少しているが、申立てから第1回審問までの期間、第1回審問から結審までの処理日数は前年と比べるとそれぞれ138日、58日増加している。
 労使紛争の調整については、一部自主交渉を促した事件もあり、平成16年度に終結した調整事件の平均処理日数は49.8日となった。
総合的な評価
 中央労働委員会の不当労働行為審査制度及び労働争議の調整制度は、集団的労使紛争の解決に寄与し、労使関係の安定化に有効に機能していると考えられるが、不当労働行為審査制度については、多くの事件において審査が遅延していること、取消訴訟における命令の取消率について改善が見られるものの、まだ高い水準にあることなどの問題があり、審査のより一層の迅速化、的確化に向けた対応が必要である。
 このような状況を踏まえ、審査の迅速化及び的確化を図るため、労働委員会における審査の手続及び体制の整備等を内容とした「労働組合法の一部を改正する法律」が平成17年1月1日から施行されたところである。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 (実績目標1について)
 中労委及び全47都道府県労委で構成する全国労働委員会連絡協議会の下、中労委及び都道府県労委の公労使委員等をメンバーとする「審査促進等実行委員会」及び「制度基本問題研究会」が設置されており、審査計画のモデルの作成、委員の研修等の具体的課題及び不当労働行為事件の審査に係る制度の基本問題について検討を進められていたところであり、平成17年6月にそれぞれ報告がとりまとめられている。
 また、中労委独自の取組としては、公労使委員をメンバーとする委員会(不当労働行為事件の審査迅速化等に関する実行推進委員会)を設置し、改善事項の実施状況の把握、実施過程で生じた問題の解決方策の検討等を行っている。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
「労働委員会の救済命令に対する司法審査の在り方、雇用・労使関係に関する専門的な知識経験を有する者の関与する裁判制度の導入の当否、労働関係事件固有の訴訟手続の整備の要否について検討し、遅くとも本部設置期限までに、所要の措置を講ずる。(司法制度改革推進計画 平成14年3月閣議決定)

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 「今回の不当労働行為審査制度の見直しの趣旨にかんがみ、計画的な審査及び迅速・的確な事実認定が行われるよう、必要な措置を講ずること。」
 「中央労働委員会事務局に法曹資格者を配置する等事務局体制の充実・強化を図るとともに、労働委員会事務局の専門的な知識能力の向上のため、研修その他必要な措置を講ずること。」
 「公益委員の選出に当たっては専門的な知識能力を持つ適切な人材が選出できるよう努めるとともに、常勤となる公益委員については、労働紛争を解決するにふさわしい知識・経験を有する有為な人材を登用すること。」【労働組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成16年10月29日 衆議院厚生労働委員会)】
 「今回の不当労働行為審査制度の見直しの趣旨にかんがみ、計画的な審査及び迅速・的確な事実認定が行われるよう、必要な措置を講ずること。」
 「公益委員の任命に当たっては、労働分野における専門的な知識能力を持つ適切な人材が選出できるよう努めるとともに、特に常勤となる公益委員については、労働紛争を解決するにふさわしい専門的な知識・経験を豊富に有することに加え、主導的・調整的役割が期待される有為な人材を登用すること。」
 「中央労働委員会等は、合議体たる小委員会の設置に当たり、常勤となる公益委員の配置、個別事件の性格をかんがみた委員構成などを含め、効果的・弾力的運用に努めること。」
 「中央労働委員会事務局に法曹資格者を配置する等審査体制の充実・強化を図るとともに、労働委員会事務局の専門的な知識能力の向上のため、研修その他必要な措置を講ずること。」【労働組合法の一部を改正する法律案に対する附帯決議(平成16年11月9日 参議院厚生労働委員会】

(5) 会計検査院による指摘



別表1  不当労働行為事件の係属・処理状況(前年繰越、新規申立て、事由別終結状況)
(単位:件)
  係属件数 終結件数 次年繰越
前年繰越 新規申立 係属計 取下・和解 命令・決定 終結計
H12 271 64 335 41 15 56 279
H13 279 64 343 38 26 64 279
H14 279 66 345 52 31 83 262
H15 262 65 327 22 35 57 270
H16 270 83 353 47 25 72 281

(注) 実績は暦年のものである。
資料出所:労働委員会年報


別表2  不当労働行為事件の処理日数(手続段階別平均処理日数)
(単位:日)
  申立てから第1回審問までの期間 第1回審問から結審前までの期間 結審から命令書交付までの期間
H12 257 64 1,135 1,456
H13 287 115 881 1,283
H14 387 128 508 1,023
H15 271 27 804 1,102
H16 409 85 720 1,214

(注1) 実績は暦年のものである。
(注2) 審問を経て、その年に命令・決定がなされたものを対象としている。
資料出所:労働委員会年報

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