(3−1−II)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 労働者が安心して快適に働くことができる環境を整備すること
施策目標 労働条件の確保・改善を図ること
II 年間総実労働時間1800時間の達成・定着
担当部局・課 主管部局・課 労働基準局賃金時間課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 労働時間短縮の促進を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 実績目標の達成に向け、年次有給休暇の取得促進、所定外労働の削減、週時間40労働制の定着を図るため以下の取組を行う。
・時間外労働の限度基準の設定及びその履行確保に向けた指導
・労働時間の短縮を図るための措置に係る事業主等に対する相談その他の援助
・労働時間の短縮を行う事業主団体等に対する助成金の支給
・労働時間の短縮に関する情報及び資料の総合的な収集並びに事業主等に対する提供
・労働時間の短縮に関する啓発活動
関連する経費
労働時間短縮促進援助事業等交付金(平成16年度予算額) 2,443百万円
(評価指標)
労働時間の状況(年間総実労働時間)
H12 H13 H14 H15 H16
1,854h 1,843h 1,841h 1,853h 1,834h
(備考)
資料出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
・労働者1人平均年間総実労働時間(事業所規模30人以上)
(評価指標)
所定外労働時間の状況(所定外労働時間)
H12 H13 H14 H15 H16
140h 133h 139h 147h 149h
(備考)
資料出所:厚生労働省「毎月勤労統計調査」
・労働者1人平均年間所定外労働時間(事業所規模30人以上)
(評価指標)
年休の取得状況(年休取得率)
H12 H13 H14 H15 H16
49.5% 48.4% 48.1% 47.4% 集計中
(備考)
資料出所:厚生労働省「就労条件総合調査」
・労働者1人平均年次有給休暇取得率(企業規模30人以上)
・平成16年度の数値については現時点では集計中


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 年間総実労働時間は、政府が労働基準法の改正を行って本格的に労働時間短縮に取り組み始めた昭和62年度の2,120時間から減少傾向にある(厚生労働省「毎月勤労統計調査」)。
 平成16年度の年間総実労働時間は1,834時間で、前年度の1,853時間から19時間減少し、目標としている1,800時間に一歩近づいた。このうち、所定内労働時間は1,685時間と前年度に比べ21時間減少したが、所定外労働時間は149時間と前年度に比べ2時間の増加となっている。また、平成15年度の年次有給休暇の取得率は、47.4%(平成14年度48.1%)(厚生労働省「就労条件総合調査」)と低下した。
 なお、近年、長時間労働者と短時間労働者の全労働者に占める割合が同時に高まり、労働時間分布の長短二極化が進展していること等を踏まえ、労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法(平成4年法律第90号)について、「年間総実労働時間1800時間」を法に基づく計画目標とする労働時間の短縮のための法律から、労働時間等の設定を労働者の健康と生活に配慮したものへ改善するための法律へと改正する法案を平成17年通常国会に提出したところであるが、今回の評価の対象は平成16年度の実績であるため、現行の制度に沿って評価する。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 長時間にわたる時間外労働の抑制を図り、また過重労働による健康障害を防止するため、労働基準法第36条第1項の協定で定める労働時間の延長の限度等に関する基準(以下「限度基準」という。)が遵守されるよう、使用者、労働組合等の労使当事者に対し周知・指導を行い、遵守の徹底を図った。また、特別条項付き協定を締結する場合の「特別の事情」は「臨時的なものに限る」ことを明確にする限度基準の改正が、平成16年4月1日より施行されたことから、施行通達(平成15年10月22日付け基発第1022003号)を踏まえ、労使当事者に対し、同改正内容の周知・指導を行い、遵守の徹底を図った。
 また、労働時間短縮を目的とした助成金の1つである長期休暇制度基盤整備助成金について、その支給対象事業に平成16年度は89団体(対前年度比7団体増)が取り組んだ。平成15年度における本助成金利用の結果、238事業場が連続7日以上の連続休暇を新たに導入したところである(資料は(社)全国労働基準関係団体連合会作成事業報告書。以下、同じ)。
 さらに、事業主等に対する労働時間短縮に向けた取組を促進するための支援事業として、労働時間に関する制度改善の取組に関する研修(平成16年度は219回(対前年度比4回増))を行うとともに、個別事業場について、改善のための助言・指導等(平成16年度は1,325事業場(対前年度比7事業場増))を行った(労働時間制度改善支援事業)。この支援事業を利用した事業場については、年間総実労働時間(1事業場平均)の短縮(19時間短縮)、所定外労働時間(1事業場1ヶ月平均)の短縮(1時間6分短縮)、年次有給休暇取得率(1事業場平均)の上昇(1.7ポイント増)等、いずれの数値も改善がみられた。
 したがって、各政策手段については、実施規模等の問題もあり、評価指標の数値の一部に悪化が見られたが、年間総実労働時間が短縮されており、事業主等による労働時間短縮に向けた取組を促進するための支援等として有効であったと評価できる。
政策手段の効率性の評価
 助成金については、団体及び企業の規模別及び要した事業項目別に上限額を設定し、要した費用で必要と認められるものを支払うこととしており、効率的に施策を実施している。また助成金以外の施策についても、項目別に各種妥当な単価を設定するとともに、事業場に対するアンケート調査を行い、施策の効果、意見等を把握し、事業の効率化を図っている。さらに、所定外労働削減に係る事業においては所定外労働時間が全産業平均より長い業種を選定することにより効率的に施策を実施している。
総合的な評価
 時間外労働協定において、特別条項付き協定が必要となる「特別の事情」を「臨時的なものに限る」ことを明確にする限度基準の改正内容について労使当事者に対し周知・指導を行い、遵守の徹底を図るとともに、事業主等による労働時間短縮に向けた取組を促進するための支援を行うこと等により、年間総実労働時間は減少し、目標の達成に向けて進展があった。
評価結果分類 分析分類
(2) (1)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
なし
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 「労働時間の短縮の流れを一層確実なものとし、平成17年度までの間に年間総実労働時間1800時間の達成・定着を図るため、年次有給休暇の取得促進及び所定外労働の削減に重点を置いて取組を進める。」(資料出所:労働時間短縮推進計画 平成13年8月3日閣議決定により最終改定)
 また、平成16年6月4日に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」中、長期休暇の取得促進に係る記述が盛り込まれている。
 第2部 1. (3)地域の基幹産業等の再生・強化(観光戦略の強化)
 ・  具体的には、観光分野の人材育成、良好な景観形成、長期休暇の取得促進、外国人観光客に配慮した諸環境の整備、都市と農山漁村の共生・対流の促進、世界遺産をはじめとする自然・文化等の活用等の施策を強力に推進する。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
なし
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 「労働時間の短縮の促進に関する臨時措置法の一部を改正する法律案」の審議の際、衆参両院で、各派共同提案による附帯決議案が提出され、いずれも全会一致で採択された。
 ○ 平成13年3月23日 衆議院厚生労働委員会
 「政府は、累次の経済計画における国際公約ともなっている年間総実労働時間千八百時間が未だ達成されていないことも踏まえ、一日も早く国民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現できるよう、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 政府目標である年間総実労働時間千八百時間を実現するため、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、本法に基づく実効性ある労働時間短縮推進計画を策定し、政府の強い指導により労働時間短縮対策を総合的に推進すること。
 時間外労働を削減するため、限度基準に基づく指導に努めるとともに、「所定外労働削減要綱」について、実効性を高めるよう見直しを行い、これに基づく周知を行うこと。また、いわゆる「サービス残業」は違法であることから、労働時間管理の徹底を指導するなど、監督行政による重点的な指導監督を行うこと。
 男女共同参画社会に向けた新しい働き方の実現のための時間外労働の限度基準の見直し、並びに、時間外・休日及び深夜労働の割増率の水準の見直しについて、検討を行うこと。
 年次有給休暇の取得率向上に向けて、長期休暇制度の普及促進等実効性ある施策を行うこと。
 本年四月一日より一週四十四時間に短縮される特例措置対象事業場を含め中小零細企業における労働時間短縮の促進のための環境整備その他必要な援助等を行うこと。
 変形労働時間制、及び裁量労働制の運用に当たっては、長時間労働にならないよう適切な監督指導を実施し、制度の趣旨を踏まえた適正な労働条件の確保を図るものとすること。」
 ○ 平成13年3月29日 参議院厚生労働委員会
 「政府は、累次の経済計画における国際公約ともなっている年間総実労働時間千八百時間が未だ達成されていないことも踏まえ、一日も早く国民がゆとりと豊かさを実感できる社会を実現できるよう、次の事項について適切な措置を講ずべきである。
 政府目標である年間総実労働時間千八百時間を早期に実現するため、関係省庁間の連携・協力を一層強化し、本法に基づく実効性ある労働時間短縮推進計画を策定し、政府の強い指導により労働時間短縮対策を総合的に推進すること。
 年次有給休暇の取得率向上に向けて、計画年休制度の導入促進や長期休暇制度の普及促進等実効性ある施策を推進すること。
 時間外労働を削減するため、限度基準に基づく指導に努めるとともに、「所定外労働削減要綱」について、実効性を高めるよう見直しを行い、これに基づく周知を行うこと。また、いわゆる「サービス残業」は違法であることから、この解消に向けて、始業、終業時刻の把握等労働時間管理の徹底を指導するなど、重点的な監督指導を行うこと。
 男女共同参画社会に向けた新しい働き方の実現のための時間外労働の限度基準の見直し、並びに、時間外・休日及び深夜労働の割増率の水準の見直しについて、検討を行うこと。
 本年四月一日より一週四十四時間に短縮される特例措置対象事業場を含め中小零細企業における労働時間短縮の推進のための環境整備その他必要な援助等を行うこと。
 変形労働時間制及び裁量労働制の運用に当たっては、長時間労働にならないよう適切な監督指導を実施し、制度の趣旨を踏まえた適正な労働条件の確保を図るものとすること。
右決議する。」
(5) 会計検査院による指摘
なし

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