(1−9−III)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 新医薬品・医療用具の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること
III バイオ技術、ナノ技術等の先端技術を活用し、画期的な医薬品、医療用具等の研究開発を推進すること
担当部局・課 主管部局・課 医政局研究開発振興課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 画期的な医薬品、医療用具等の開発の促進による治癒率の向上、患者のQOLの向上を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
・画期的な医薬品、医療用具等のシーズの研究開発費の確保、治験等の臨床研究実施に必要な治験コーディネーター(CRC)の養成、治験活性化のモデル事業の実施等の基盤整備事業等を実施している。
 ○ 関連する経費(平成16年度予算)
 ・ 独立行政法人医薬品医療機器総合機構開発振興勘定運営費交付金 9,071百万円
 (施策に対しての予算は運営費交付金の一部)
(評価指標)
 新医薬品、医療用具の承認取得数(件)
上段: 新医薬品
下段: 新医療用具
H12年 H13年 H14年 H15年 H16年
39 23 24 24 16
28 35 9 11 2
(備考)


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 21世紀に入って、ヒトの遺伝子が解読され、ゲノム科学やタンパク質科学等を応用した新しい創薬手法(「ゲノム創薬」と呼ばれている)による新薬開発競争が激化しており、その成果が本格的に現れる2010年頃には、「新薬黄金時代」を迎えることが予想されている。急速な高齢化が進展する我が国においても、活力ある長寿社会の実現のためゲノム科学等の成果を活用した画期的医薬品の開発が期待されている。一方で、医薬品・医療用具が開発され医療の現場に流通するまでには、膨大な研究費用と長い研究期間を要するとともに、国民の生命・健康を守るために必要不可欠な安全確保に資する薬事規制等のハードルを越えなくてはならない。
 また、近年は、医薬品の研究開発を巡って製薬企業間によるグローバルな競争が激化しているが、我が国における創薬環境は、未だ国際的に魅力的なものとなっておらず、このままでは、我が国の医薬品等産業の国際競争力は将来弱体化していくおそれがある。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 最近の科学技術研究のうち、ライフサイエンス分野に関しては、先進各国とも経済発展の牽引分野として位置付け、重点領域化して取組を強化している。特に研究開発費の絶対額の差は日米で拡大しており、例えば、画期的な医薬品開発技術のイノベーションに期待の高い「ゲノム創薬」関連の我が国の研究開発水準は、欧米に遅れている点は否めない。しかしながら、我が国におけるゲノム関連研究への集中的予算配分(総合科学技術会議において、資源配分の重点分野となっている)によるライフサイエンスの充実に関しては、海外との競争力強化等の観点から一定の効果が認められる。
 また、「ゲノム創薬」においては、研究者が取扱う生命関連データ(SNPs(Single Nucleotide Polymorphism:遺伝子多型)、疾患関連遺伝子、タンパク質データ等)の量が飛躍的に増加しているため、ITとバイオ技術を融合させて新薬に結び付ける情報を引き出す技術(バイオインフォマティックス)を駆使して、研究スピードを引き上げることが必要となっている。このため、バイオインフォマティックス分野を含めたゲノム関連研究分野への予算の重点的配分を実施しているところであり、今後一定の効果が生ずることが期待されている。
 さらに、治癒率やQOLを向上させるための画期的医薬品の実用化に向けては、治験を含む臨床研究が不可欠である。治験が主に海外で実施され、国内の医療機関では実施されないという治験の空洞化等の問題を抱える我が国において、企業単独では実施の困難なCRCの養成等、臨床研究の推進に向けた基盤整備を実施することの政策的有効性は高い。
政策手段の効率性の評価
 我が国のゲノム関連研究等のライフサイエンス分野への集中的予算配分については、総合科学技術会議を頂点として、各研究に関して多角的視点から分析・評価を実施することにより、全省庁を通じて効率的に実施されているところである。
 また、厚生労働省においては、個別の研究分野に係る研究の一層の活性化を図るため、「厚生労働省の科学研究開発評価に関する指針」(平成14年8月)に基づき、外部評価委員による評価を実施し、その評価結果を、画一的、短期的な視点のみにとらわれないよう留意しつつ、研究費等の研究開発資源の重点的・効率的配分や研究開発計画の見直し等の研究企画に適切に反映させている。
総合的な評価
 CRCの養成等の臨床研究の推進に向けた基盤整備事業等の実施により、治癒率や患者のQOLを向上させるための画期的医薬品等の実用化に向けた取組が進むとともに、ゲノム関連研究等のライフサイエンス分野の研究開発へ効率的に資源配分がなされており、その結果実際に治験届提出数が平成13年以降増加傾向にあり、平成16年も前年とほぼ同程度の申請件数を維持している(治験届の提出数…平成13年:43件、平成14年60件、平成15年60件、平成16年56件)ことから、施策目標の達成に向けて進展があったものと評価できる。
 なお、医薬品・医療機器の承認件数が減少しているが、全世界的に見ても新薬が上市される件数は減少し、その原因は治験期間の長期化、ターゲットの高度化に伴う開発の断念数の増加など様々であり、今後はそれらの原因を検討する必要があると考えられる。施策目標の達成に向けては、(独)医薬品医療機器総合機構を通じてCRC養成のための研修を実施し(実績数:13年度58人、平成14年度92人、平成15年度113人、平成16年度120人)、また、(財)医療研修推進財団を通じて、施設長により構成される治験推進協議会及び医師、治験に関わる事務職員を対象とした研修会(全国7地区8会場)を開催している。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 ゲノム関連研究のうち、ミレニアム・ゲノム・プロジェクト(※)については、内閣官房に学識経験者からなるミレニアム・プロジェクト評価・助言会議が置かれ、評価を実施している。また、これ以外の厚生労働科学研究費事業については、厚生労働省において外部評価委員による評価の研究費採択等への活用を行っている。
 ミレニアム・ゲノム・プロジェクト(新しい千年紀プロジェクト)は、平成11年12月、新しいミレニアム(千年紀)の始まりを目前に控え、夢と活力に満ちた次世紀を迎えるために、今後我が国経済社会にとって重要性や緊急性の高い情報化、高齢化、環境対応の三分野について、産学官共同プロジェクトを構築し、明るい未来を切り開く核を作り上げるもの。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 ゲノム関連研究のひとつであるミレニアム・ゲノム・プロジェクトについては、平成12年の内閣総理大臣決定に基づき実施されており、また、その他の研究についても、平成14年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の柱となる技術力戦略に記載される内容の事業が主体となっている。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。

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