(1−9−I)
実績評価書
平成17年8月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 新医薬品・医療機器の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること
I 医薬品・医療機器の製造業や販売業等の振興を図ること
担当部局・課 主管部局・課 医政局経済課
関係部局・課 大臣官房厚生科学課、医政局研究開発振興課等


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 質の高い医薬品・医療機器等の安定供給等を確保する観点から、医薬品・医療機器に関する事業者の振興を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
これまで下記の施策を実施。
(1) 研究開発に対する支援
 医薬品副作用被害救済・研究振興調査機構(平成16年4月より(独)医薬品医療機器総合機構、平成17年4月より(独)医薬基盤研究所)の基礎研究推進事業や出融資事業、産学官連携の創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業、増加試験研究税制及び総額試験研究税制等

 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構開発振興勘定運営費交付金
9,071百万円(施策に対しての予算は運営費交付金の一部)
産業投資特別会計出資金 600百万円
創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業(厚生労働科学研究費補助金)
2,528百万円

(2) 治験の推進
 治験施設整備補助、治験推進ネットワークモデル事業等

 ○ 関連する経費(平成16年度予算額)
独立行政法人医薬品医療機器総合機構審査等勘定運営費交付金
90百万円(※施策に対しての予算は運営費交付金の一部)
産業情報確保対策事業  11百万円
医薬品等供給動向調査事業  57百万円
医療機器産業振興調査事業  5.5百万円
(評価指標) H12 H13 H14 H15 H16
市場規模(単位:億円) (医薬品) 66,850 71,373 71,739 72,501
(医療機器) 19,442 19,558 19,667 19,622
(備考)
 薬事工業生産動態統計(厚生労働省医政局経済課)による(平成16年分は集計中)。
(評価指標) H12 H13 H14 H15 H16
製造業者数(単位:社) (医薬品) 1,396 1,391 1,347 1,342
(医療機器) 1,580 1,631 1,574 1,439
(備考)
 医薬品・医療機器産業実態調査(厚生労働省医政局経済課)による(平成16年度分は集計中)。
(評価指標) H12 H13 H14 H15 H16
販売業者数(卸売業者)
(単位:社)
(医薬品) 309 278 231 214 206
(医療機器) 1,595 1,385 1,279 1,289 1,305
(備考)
 医薬品については、(社)日本医薬品卸業連合会・日本医薬品販社協会会員数
 医療機器については、日本医療機器販売業協会団体会員数
(評価指標)
新医薬品・医療機器の承認取得数
(上段:医薬品、下段:医療機器)
H12 H13 H14 H15 H16
39 23 24 31
13 6 3 8
(備考)
 厚生労働省医薬食品局審査管理課調べによる(医薬品については、医療用医薬品における新成分による承認取得数を記載。平成16年度分は集計中。)。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
(1)医薬品
 我が国の医薬品産業は21世紀におけるリーディング産業として期待されている。しかし、産業を取り巻く環境は、「ゲノム創薬」を巡る国際的な新薬開発競争の激化による研究開発費の急増、治験等の創薬環境の不十分さ、医療保険財政の悪化など非常に厳しい状況にあるため、このままでは産業の国際競争力は弱体化してしまうおそれがある。
(2)医療機器
 近年、医療工学技術が高度化し、医療機器の最先端医療への応用が進展してきた。医療機器についても、世界的な競争が激化しており、企業の研究開発費は増加し続けている。また、患者安全への対応の必要性が増しているとともに、厳しい医療保険財政の下にあって、多様化する医療ニーズに対応した医療機器の開発が求められている。
 こうした状況の中、我が国の医療機器市場を治療系医療機器と診断系医療機器に大別すると、外資企業の競争力が強い治療系医療機器の市場の成長率が高い一方、日本企業が比較的競争力を有する診断系医療機器の市場においては、成長率は低く、近年医療機器市場全体に占めるそのシェアは低下する一方である。平成15年においては、医療機器市場全体で輸入超過となっている。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 産業発展は、基本的に各企業が市場原理に基づき自由に競争を行っていく中で進むものであるが、国の役割としては、一般的に
(1)  国の制度の改善に関すること及び市場競争原理が有効に機能することを阻害している条件や要因を排除すること
(2)  民間企業では採算上なかなか手を出せない分野における研究開発を進めること
(3)  国が国家戦略上重点的に支援すること
 が考えられる。
 こうした考え方に基づき国も一定の役割を果たしていくべきであるが、その場合には、医薬品・医療機器産業が他の産業と比べて、
(1)  医薬品の研究開発には多大な時間と費用を要し、成功確率は低く、ハイリスクであるにもかかわらず、模倣が簡単である。また、他の製品は一つの製品に数百から数千の特許が絡みクロスライセンスが進みやすいが、医薬品は基本特許が原則として一つであることから、特許取得が製品生命に与える影響が非常に大きい、
(2)  医薬品・医療機器は上市する前に治験が必要であり、医療機関及びその医療関係者の協力が不可欠である、
(3)  医薬品・医療機器は、国民の生命・健康に重大な影響を与えるため、その品質、有効性及び安全性の確保を目的として薬事制度等によって規制されているほか、安定供給の確保や情報提供が不可欠である、
(4)  医療保険が適用される医療用医薬品・医療材料の価格は公定されており、企業が自由に設定できない、
(5)  最近の科学技術の進歩により、ヒト組織・細胞を用いた研究開発が進展し、提供者の意思確認(インフォームド・コンセント)や倫理的側面からの配慮が一層必要となってきている、
といった特徴を有することに十分留意し、施策目標を実現するために産業界と協力してこうしたハードルを越える努力を行っていくことが重要である。
 こうした状況の下、今まで行ってきた、診療所等での治験を推進するためのネットワークモデル事業、治験管理室・専門外来の設置促進等による治験の推進、増加試験研究税制及び総額試験研究税制をはじめとする税制措置、(独)医薬品医療機器総合機構の基礎研究推進事業(平成17年4月から(独)医薬基盤研究所に移管)や出融資事業、産学官連携の創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業等による研究開発に対する支援等といった施策は、医薬品・医療機器産業において各企業が市場原理に基づき、自由に競争を行うための環境整備と位置付けることができ、医薬品・医療機器の製造業や販売業等の振興を図るために有効である。
政策手段の効率性の評価
 医薬品・医療機器産業に関するビジョンの策定、診療所等での治験を推進するためのネットワークモデル事業、治験管理室・専門外来の設置促進等による治験の推進、増加試験研究税制及び総額試験研究税制をはじめとする税制措置、(独)医薬品医療機器総合機構の基礎研究推進事業(平成17年4月から(独)医薬基盤研究所に移管)、産学官連携の創薬等ヒューマンサイエンス総合研究事業等による研究開発に対する支援等の施策を実施することにより、企業の戦略的な経営展開を促すことによって、企業間の競争を通じた産業全体の生産性の向上や産業構造の再編等が進み、医薬品・医療機器産業の振興が効率的に図られる。
総合的な評価
 産業界の関係者を参集して開催した懇談会の場において、各施策の実施状況について、研究開発の推進をはじめ、全般的に一定の評価を受けており、施策目標の達成に向けて進展しているといえる。しかし、医薬品・医療機器産業において、治験の迅速化と質の向上をもたらす国際競争力のある治験環境が完全には実現されていないなど、一部において施策目標が十分に達成されていないという指摘もあることから、今後とも現行施策を推進し、施策目標の達成に向けた取組みを講じる必要がある。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「医薬品産業ビジョン」(平成14年8月厚生労働省公表)及び「医療機器産業ビジョン」(平成15年3月厚生労働省公表)のアクションプランの進捗状況等を平成16年4月に公表した上で、「医薬品産業政策の推進に係る懇談会」及び「医療機器産業政策の推進に係る懇談会」を5月から6月にかけて各2回開催し、関係団体や学識経験者等から意見聴取した。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。
(5) 会計検査院による指摘
 なし。

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