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(9−4−I)

総合評価書(新方式)

平成17年2月


政策体系 番号  
基本目標 高齢者ができる限り自立し、生きがいを持ち、安心して暮らせる社会づくりを推進すること
施策目標 介護保険制度の適切な運営等を通じて、介護を必要とする高齢者への支援を図ること
I 介護保険制度の適切な運営を図ること
担当部局・課 主管部局・課 老健局総務課
関係部局・課 老健局介護保険課、計画課、振興課、老人保健課


1 評価対象の設定

評価対象 介護保険制度
評価の契機等  介護保険法(平成9年法律第123号)附則第2条においては、法施行後5年を目途として制度全般に関して検討を加え、その結果に基づき必要な見直しを行うこととされている。


2 評価の方法等

評価の観点
1. 「基本理念」を踏まえた施行状況の検証
 自立支援という介護保険制度の基本理念並びにこれを実現するための利用者本位のサービス改革、在宅ケアの推進及び地方分権の推進という政策目標を踏まえ4年間の施行状況を検証した結果、どのような成果と課題が明らかになったか。

2. 「将来展望」に基づく新たな課題についての検討
 高齢者人口の増加、とりわけ一人暮らし高齢者や認知症(痴呆性)高齢者の増加といった将来展望を踏まえ、今後取り組むべき新たな課題は何か。

3. 「制度創設時からの課題」についての検討
 40歳以上を被保険者(保険料の納め手)とし、65歳以上を受給者(サービスの受け手)の中心とする「被保険者・受給者の範囲」のあり方など、制度創設時からの課題についてどう考えるべきか。
収集した情報・データ及び各種の評価手法を用いて行った分析・測定の方法
1. 介護保険制度の見直しについては、平成15年5月に社会保障制度 審議会介護保険部会を設置し、平成16年12月まで21回にわたり 検討を行ってきた。

2. 同部会では、介護給付費実態調査、介護保険事業状況報告等の統計等を用いて介護給付費の動向やサービス利用状況等の分析を資料として提出し、それを基に有識者の委員による検討を行った。


3 評価結果等

評価結果
(問題点及びその原因)
1. 「基本理念」を踏まえた対応
 (1) サービス改革の推進−「量」から「質」へ−
 制度施行後サービス利用は急速に拡大し、在宅サービスの利用者は4年間で約2倍に増大している。こうした「量的な拡大」に伴い、「説明・情報の不足」などの問題を指摘する利用者の声も強く、不正により指定取消を受ける事業者数も増加するなど、「サービスの質」が今日大きな課題となっている。
 介護保険制度の創設により、様々な事業主体の参入を認め、利用者の適切な選択と事業者間の競争によりサービスの質を確保する仕組みを導入したことは、これまでの成果であるといえるが、今後は、この成果を活かしつつ、良質なサービスが提供されるよう、利用者の選択を実効あるものにするための情報開示の徹底や劣悪なサービスを迅速に排除する実効ある事後規制ルールの確立など、適切な選択と競争が行われる方向を目指す必要がある。
 (2) 在宅ケアの推進
 制度施行後、在宅サービスの利用は増大したが、在宅ケアの基盤は未だ十分とは言えず、特に、要介護4や5といった重度者は半数以上が施設に入所・入院しているなど在宅生活の継続が困難な状況にある。また、高齢者本人はできる限り在宅生活を継続することを希望しているが、実際には家族などの意向で入所・入院の申込みが行われているなど「施設指向」も依然として強い。
 高齢者が介護が必要な状態になってもできる限り在宅での生活が継続できるよう、在宅ケアを推進する観点から、「在宅支援体制の強化」を図るとともに、居住費用や食費が保険給付の対象となっている施設サービスに比べ、これらの費用が全額自己負担であることが原則である在宅サービスの方が実質的に「利用者負担」が重い状況などを是正する必要がある。
 (3) 地方分権の推進
 介護保険制度は、地方分権の観点から市町村を保険者として位置づけており、各市町村は制度の安定的運営に努めてきている。
 しかしながら、市町村がそれぞれの事業計画に盛り込まれたサービス見込み量をもとに保険料水準を定めている一方で、事業者の指定・指導監督権限が都道府県に所属していることにより、計画策定時に想定していなかったサービス供給増に対して、市町村が十分関与できていない状況にある。
 今後、市町村が利用者と事業者の間に立って保険者としての機能をより発揮することができるよう、サービスに対する関与の強化や地域の独自性や創意工夫を活かしたサービスの導入など、「保険者としての機能」を強化する必要がある。

2. 「将来展望」に基づく新たな課題への対応
 (1) 介護予防の推進
 高齢者人口が増大する中にあって、介護保険制度の「持続可能性」を高め、「明るく活力ある超高齢社会」を築くためには、制度全体を『予防重視型システム』へ転換することが重要である。
 このため、要介護状態になる前の段階から、要支援、要介護1程度までの高齢者に対して、統一的な体系の下で、効果的な介護予防サービスが提供される「総合的な介護予防システム」を確立する必要がある。
 (2) 地域ケア体制の整備
 高齢者独居世帯や夫婦のみ世帯が、介護が必要となっても、できる限り住み慣れた地域で人生を送ることが可能となるように、利用者一人一人について地域で主治医やケアマネジャーをはじめ様々な職種や人材が連携しながら継続的にフォローアップする体制を確立する「地域ケア体制」を整備していくことが求められる。
 このため、「夜間・緊急時の対応」も視野に置いた「包括的・継続的なケア体制」と、地域における総合的なマネジメント体制の整備を進めるとともに、これを支える「地域基盤」を面的に整備する取組み(身近な生活圏域における様々なサービス拠点の連携)が必要である。
 (3) 認知症(痴呆)ケアの推進
 1990年以降の「ゴールドプラン」によって構築され、2000年の介護保険制度の創設以降も基本的に継続している現行の高齢者サービス体制は、サービスの基本を身体障害を有する高齢者に対する「身体ケア」に置いてきたところである。今後は、今後10年間で約250万人に増加する認知症(痴呆性)高齢者に対応するため、制度の軸足を「認知症(痴呆)ケア」にも置く必要がある。
 このため、「高齢者の尊厳の保持」を基本に、環境変化の影響を受けやすい認知症(痴呆性)高齢者の特性に配慮した小規模・多機能型サービスなどの「地域密着型サービス」の創設や、早期の診断・対応から始まる「継続的な地域支援体制」の整備、虐待防止のための「権利擁護システム」の充実等が必要である。
3. 「制度創設時からの課題」への対応制度創設当初からの課題である「被保険者・受給者の範囲」に関しては、制度の将来的な在り方として、要介護となった理由や年齢の如何に関わらず介護を必要とする全ての人にサービスの給付を行い、併せて保険料を負担する層を拡大していくことにより、制度の普遍化の方向を目指すべきであるという意見が関係審議会においても多数であったが、制度設計にあたっては、「給付対象者の年齢をどう考えるか」、「保険料の負担者の年齢をどう考えるか」、「年齢の引き下げを一括して実施するか、段階的に実施するかなど、実施方法をどう考えるか」等の今後引き続き検討すべき課題がある。
今後の検討の方向性
1. 介護保険制度については、制度の基本理念である高齢者の「自立支援」、「尊厳の保持」を基本としつつ、制度の持続可能性を高めていくため、以下の改革に取り組む(平成17年通常国会に関連法案を提出予定)。
 (1) 介護保険制度の改革
(1)予防重視型システムへの転換
「明るく活力ある超高齢社会」を築くために、市町村を責任主体とし、一貫性・連続性のある「総合的な介護予防システム」を確立する。
(2)施設給付の見直し
在宅と施設の利用者負担の公平性、介護保険と年金給付の機能の調整の観点から、介護保険施設に係る給付の在り方を見直す。
(3)新たなサービス体系の確立
認知症(痴呆)ケアや地域ケアを推進するため、身近な地域で地域の特性に応じた多様で柔軟なサービス提供を可能とする体系の確立を目指す。
(4)サービスの質の向上
 サービスの質の向上を図るため、情報開示の徹底、事業者規制の見直し等を行う。
(5)負担の在り方・制度運営の見直し
低所得者に配慮した保険料設定を可能とするとともに、市町村の保険者機能の強化等を図る。
 (2) 介護サービス基盤の在り方の見直し
 高齢者が住み慣れた身近な地域で暮らし続けることができるよう、地域に おける介護サービス基盤の計画的整備を推進する。
 (3) 「被保険者・受給者の範囲」の見直し
 今後、現在40歳以上となっている被保険者の年齢を引き下げ、若年の障害者も受給者の範囲に含める「被保険者・受給者の範囲の拡大」に関連した制度改正を実施するとした場合には、相当な準備が必要である一方、政府の基本方針(「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004」)においては、社会保障制度全般について一体的な見直しを開始し、平成17年度及び平成18年度の2年間を目途に結論を得ることとされているところである。
 被保険者・受給者の範囲の拡大、すなわち、年齢や要介護となった原因を問わずに全国民の介護ニーズを支えることとする「介護保険制度の普遍化」については、こうした動向も十分に踏まえる必要がある。
 したがって、介護保険制度の普遍化に関しては、これらの状況を踏まえ、円滑な制度改革を図ることが重要であり、社会保障制度の一体的見直しの中で、その可否を含め国民的な合意形成や具体的な制度改革案についてできる限り速やかに検討を進め、結論を得ることが求められる。


※ 以下は、原則としてフォローアップ時に記入する。


4 評価結果の反映状況

政策への反映状況  




5 その他

評価実施過程において明らかになった課題  


外部有識者等の活用状況  


パブリックコメント等を行った場合はその意見  



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