(1) | サービス改革の推進−「量」から「質」へ−
制度施行後サービス利用は急速に拡大し、在宅サービスの利用者は4年間で約2倍に増大している。こうした「量的な拡大」に伴い、「説明・情報の不足」などの問題を指摘する利用者の声も強く、不正により指定取消を受ける事業者数も増加するなど、「サービスの質」が今日大きな課題となっている。
介護保険制度の創設により、様々な事業主体の参入を認め、利用者の適切な選択と事業者間の競争によりサービスの質を確保する仕組みを導入したことは、これまでの成果であるといえるが、今後は、この成果を活かしつつ、良質なサービスが提供されるよう、利用者の選択を実効あるものにするための情報開示の徹底や劣悪なサービスを迅速に排除する実効ある事後規制ルールの確立など、適切な選択と競争が行われる方向を目指す必要がある。 |
(2) | 在宅ケアの推進
制度施行後、在宅サービスの利用は増大したが、在宅ケアの基盤は未だ十分とは言えず、特に、要介護4や5といった重度者は半数以上が施設に入所・入院しているなど在宅生活の継続が困難な状況にある。また、高齢者本人はできる限り在宅生活を継続することを希望しているが、実際には家族などの意向で入所・入院の申込みが行われているなど「施設指向」も依然として強い。
高齢者が介護が必要な状態になってもできる限り在宅での生活が継続できるよう、在宅ケアを推進する観点から、「在宅支援体制の強化」を図るとともに、居住費用や食費が保険給付の対象となっている施設サービスに比べ、これらの費用が全額自己負担であることが原則である在宅サービスの方が実質的に「利用者負担」が重い状況などを是正する必要がある。 |
(3) | 地方分権の推進
介護保険制度は、地方分権の観点から市町村を保険者として位置づけており、各市町村は制度の安定的運営に努めてきている。
しかしながら、市町村がそれぞれの事業計画に盛り込まれたサービス見込み量をもとに保険料水準を定めている一方で、事業者の指定・指導監督権限が都道府県に所属していることにより、計画策定時に想定していなかったサービス供給増に対して、市町村が十分関与できていない状況にある。
今後、市町村が利用者と事業者の間に立って保険者としての機能をより発揮することができるよう、サービスに対する関与の強化や地域の独自性や創意工夫を活かしたサービスの導入など、「保険者としての機能」を強化する必要がある。
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