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(9−1−I)
実績評価書
平成16年8月

政策体系 番号  
基本目標 高齢者ができる限り自立し、生きがいを持ち、安心して暮らせる社会づくりを推進すること
施策目標 老後生活の経済的自立の基礎となる所得保障の充実を図ること
I 公的年金制度の安定的かつ適正な運営を図ること
担当部局・課 主管部局・課 年金局年金課
関係部局・課 年金局数理課、運用指導課

1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 公的年金給付が老後生活に役に立つこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 公的年金制度は、社会全体が連帯し、収入のある現役期に保険料を納付して収入が得られなくなった高齢者を支え、高齢期に収入が得られなくなったときに、かつて高齢者の生活を支えた貢献の度合い(個々人の現役期の保険料納付の実績)に応じて、その時の現役世代が納付する保険料に支えてもらうという考え方を基本として組み立てられている。
 いわば、社会全体での世代間扶養に保険料納付という自助努力を組み合わせた仕組みであり、個々人の現役時代の暮らしぶりを反映させつつ、その時々の現役世代の賃金や物価水準に応じた年金給付を可能にしている。
 これにより全国民に共通して給付される基礎年金は老後生活の基礎的な費用を賄うとともに、被用者に対しては、退職後に賃金収入がなくなることに配慮して、報酬比例の年金を支給することにより、高齢者の生活の基本部分を支えている。
 老齢年金を受給し始める時点の年金額は、過去の報酬を現在の価値に再評価して計算され(賃金再評価)、受給開始後の年金額は、物価スライドにより、実質的な水準が維持されている。(平成15年度においては、前年14年の消費者物価指数の変動が0.9%の減となり、国民年金法等の規定のとおりの取扱いによると、過去3年(平成12年度、13年度、14年度)据え置いたマイナス1.7%減分とあわせて、マイナス2.6%の改定が必要となるところ、保険料を負担する現役世代との均衡を考慮し、高齢者等の生活にも配慮しつつ、平成14年の消費者物価の下落分であるマイナス0.9%のみの改定を行った。)
(評価指標)
モデル年金額(月額)
H11 H12 H13 H14 H15
230,938円 238,125円 同左 同左 235,992円
(備考)
 モデル年金額は、被用者について標準的な被保険者像を想定し、その被保険者が世帯として得られる額を示したものであって、年金水準や制度的に保障される年金の姿を端的に示す際に標準として用いられるものである。
実績目標2 公的年金の財政が安定していること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 人口構成や社会経済情勢の変化に伴う様々な要素を踏まえ、少なくとも5年に一度、新たに被保険者数・年金受給者数、年金給付費等の推計を行い、将来の財政見通しを作成する(財政再計算という)とともに、必要な制度改正を行っている。
 財政再計算は平成11年に実施され、平成12年には、将来に向けて給付総額の伸びを抑えるとともに、将来の保険料負担を負担可能な水準(現在の欧州諸国と同水準の年収の2割程度)に抑えることを内容とした制度改正が行われ、施行されている。(本評価の対象年度は平成15年度時点である。)
(評価指標)
積立度合(厚生年金)
H11 H12 H13 H14 H15
5.3 5.2 5.1 4.7
(評価指標)
積立度合(国民年金)
H11 H12 H13 H14 H15
2.9 3.0 2.9 2.8
(評価指標)
最終保険料率(厚生年金)
H11 H12 H13 H14 H15
年収の
(@)19.8%
(A)21.6%
(評価指標)
最終保険料(国民年金)
H11 H12 H13 H14 H15
月額
(@)18500円
(A)25200円
(備考)
 積立度合とは、前年度末に保有する積立金が、国庫負担を含めた実質的な支出総額の何年分に相当するかを表す指標である。
 平成15年の積立度合は実績が未確定である。
 最終保険料(率)は、平成11年財政再計算による。数値は、(@)基礎年金の国庫負担割合が2分の1の場合、(A)基礎年金の国庫負担割合が3分の1の場合である。
実績目標3 的年金積立金について、基本ポートフォリオを適切に管理すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 年金資金運用基金において、時価による資産構成割合に係る基本ポートフォリオ(平成20年度までは移行ポートフォリオ)からの乖離状況を毎月把握し、乖離許容幅を超えて乖離している場合には、その範囲内に収まるように資産構成割合の変更を行うことなどにより、基本ポートフォリオ(移行ポートフォリオ)の達成を目指す。
(評価指標)
年度末における各資産の構成割合と移行ポートフォリオの乖離幅
H11 H12 H13 H14 H15
13年度移行ポートフォリオ 14年度移行ポートフォリオ 15年度移行ポートフォリオ(評価欄参照)
(備考)
 平成13年度から厚生労働大臣による自主運用が開始され、新たな運用方針に基づく運用となったため、平成13年度から本評価を行っている。なお、平成12年度までは、法律上、年金積立金の全額を旧資金運用部(現財政融資資金)に預託する義務が課されており、また、旧年金福祉事業団は、旧資金運用部からの借入金を原資として資金運用事業を行っていたものであり、現在の自主運用の仕組みとは全く異なるものであった。
 基本ポートフォリオ(長期的に維持すべき資産構成割合)は、社会保障審議会の審議を経て厚生労働大臣が定めており、旧資金運用部への預託金が全額償還される平成20年度末までに達成することとしている。また、それまでの間は、厚生労働大臣が社会保障審議会の審議を経て、各年度末に達成すべき資産構成割合(移行ポートフォリオ)を定めている。
 移行ポートフォリオは、運用資産全体の移行ポートフォリオ(年金資金運用基金の運用資金と財政融資資金への預託金の合計)と年金資金運用基金の移行ポートフォリオ(市場運用部分)について作成している。

2.評価
(1) 現状分析
現状分析
 公的年金制度においては、原則として5年に一度財政再計算を行い、必要な制度の見直しを行うこととしており、この見直しをもとに実績の評価を行うこととしている。平成16年6月に財政再計算を踏まえ年金制度改正が行われたが、今回の評価の対象は平成15年度の実績であるため、実績目標3の基本ポートフォリオの管理についてのみ評価する。
 少子高齢化が急速に進む我が国においては、将来世代の保険料負担が急激に上昇して、過度なものとならないよう、一定の積立金を保有し、その運用収入を活用することにより、将来世代の負担を軽減することが不可欠である。年金積立金の運用は、長期的な観点から、安全かつ効率的に行うため、国内債券を中心としつつ、株式を一定程度組み入れた分散投資の考え方に基づき行っているところである。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 年金制度は長期的な制度であるため、年金積立金の運用も長期的な観点から行われるべきものであるが、長期運用においては、基本ポートフォリオを定め、これを維持するように運用を行うことにより、長期的に見てより小さなリスクでより効率的に収益をあげることができるため、このような運用方法を維持していくことが、年金制度の安定的かつ適正な運営に資する。
 平成15年度末の年金資金運用基金分の資産構成割合は以下のとおりであり(C)、すべての資産クラス(国内債券、国内株式等)が移行ポートフォリオ(A)の乖離許容幅(B)の範囲内に収まっており、適切に管理が行われた。
  国内債券 国内株式 外国債券 外国株式 短期資産
移行ポートフォリオ(A) 55% 21% 9% 13% 2%
乖離許容幅(B) ±5% −5% −5% −5%
年度末の資産構成割合(C) 52.44% 24.97% 8.22% 12.33% 2.04%
政策手段の効率性の評価
 平成15年度における資金配分については、移行ポートフォリオよりも低い資産構成割合となっている資産には資金を多く配分する一方、移行ポートフォリオよりも高い資産構成割合となっている資産には資金を配分せず、又は少なく配分するなどにより、なだらかに移行ポートフォリオを達成した。
総合的な評価
 年金積立金の運用は、国内債券を中心としつつ、株式を一定程度組み入れた分散投資の考え方に基づき行っている。平成15年度末の年金資金運用基金分の資産構成割合は、すべての資産クラスが移行ポートフォリオの乖離許容幅の範囲に収まっており、適切に管理が行われたと判断できるため、目標を達成したと考えられる。
評価結果分類 分析分類
(1) (1)

3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 基本ポートフォリオ(移行ポートフォリオ)は、厚生労働大臣が社会保障審議会年金資金運用分科会に諮問した上で策定。
 年金資金運用基金においては、経済・金融等について高い見識を持つ投資専門委員の意見を聴いた上で、管理運用業務が行われた。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
特になし。

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
特になし。

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
特になし。

(5) 会計検査院による指摘
特になし。


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