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(1−8−I)
実績評価書
平成16年8月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 保健衛生上必要不可欠なワクチン等の安定供給を確保するとともに、緊急時等の供給体制についても準備を進めること
I 希少疾病ワクチン・抗毒素及びインフルエンザワクチンの安定供給を図ること
担当部局・課 主管部局・課 医薬食品局血液対策課
関係部局・課  

1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 国家買上げ及び備蓄を実施すること
 (実績目標を達成するための手段の概要)
 国は、外来伝染病用としてコレラワクチンを、緊急治療用として乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、乾燥ガスえそウマ抗毒素及び乾燥ジフテリアウマ抗毒素等をそれぞれ買上げ、備蓄・供給している。また、これらを全国9か所の医薬品メーカー等に保管し、24時間体制で緊急時の供給要請に対応できる体制を確保している。
(評価指標) H11 H12 H13 H14 H15
供給要請本数と売払数 (本) 供給要請本数 548 157 539 104 257
売払本数 548 157 539 104 257
(備考)
・評価指標は、都道府県から提出された供給申請書、受領書に基づく実績。
実績目標2 需給調査及び需要予測を行うこと
 (実績目標を達成するための手段の概要)
 厚生科学研究事業研究班において、インフルエンザワクチン需要予測のための調査を実施し、その調査結果を参考として、インフルエンザワクチン需要検討会において需要予測について検討を行い、これに基づき必要量のワクチン製造が行われている。
(評価指標) H11 H12 H13 H14 H15
需要量と供給量 (万本) 需要量 633 871 1,040 1,463
供給量 759 1,060 1,300 1,481
(備考)
・インフルエンザワクチン需要検討会における検討は平成12年3月から開始。
・評価指標は医薬品メーカーからの報告に基づく実績。
・供給量については供給可能量である。
実績目標3 新型インフルエンザワクチン株の開発を行うこと
 (実績目標を達成するための手段の概要)
 ウィルス株の抗原性、免疫原性、増殖性、病原性、安全性等を検討し、新型インフルエンザワクチン株として適当と判断される株について、製造株としての適格性を検証し、新型インフルエンザワクチン製造株の開発・製造及び試作ワクチンの品質管理検査を国立感染症研究所において行っている。
(評価指標)
新型インフルエンザワクチン株の開発株数
H11 H12 H13 H14 H15
0 2 2 2
 (備考)
 平成12年度より6か年計画で行う予定。

2.評価
(1)現状分析
現状分析
(1)  ワクチン・抗毒素は、伝染病等の予防や治療に用いられる医薬品であるが、その製造に当たっては、病原微生物等を原料とすることから、高度な製造技術と設備を必要とし、製品ができあがるまで長期間を要する。また、比較的有効期間が短く、しかも伝染病の発生・流行は極めて予測し難いことから、需給調整も極めて困難である。
 そこで、外来伝染病用としてコレラワクチン、緊急治療用として乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチン、乾燥ガスえそウマ抗毒素及び乾燥ジフテリアウマ抗毒素等について国家買上げを行い、一定量の備蓄を行うことにより、緊急時の供給要請に対応し、安定した供給を確保している。
(2)  インフルエンザワクチン需要検討会においては、インフルエンザワクチンの需要予測を行い、需要に見合う量のワクチンを確保してきたが、平成15年度についてはSARS(重症急性呼吸器症候群)対策で接種を積極的に推奨したこともあり、例年と比べ、早期に接種の動きが進んだため、流通に支障が生じた。
(3)  新型インフルエンザワクチンの安定供給を図るためには、予想される新型インフルエンザワクチン製造株をある程度準備することにより、できる限り製造期間を短縮する必要があり、その開発等を国立感染症研究所において行っているところである。

(2)評価結果
政策手段の有効性の評価
(1)  備蓄状況、有効期限等を考慮し、平成15年度には、コレラワクチン1,200本、乾燥ガスえそウマ抗毒素350本について国家買上げを行った。
 一方、供給要請は、乾燥ガスえそウマ抗毒素が224本、ガスえそウマ抗毒素が10本、乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチンが3本、乾燥ジフテリアウマ抗毒素が9本等であった。すべての要請に対して保管場所から迅速に供給が行われており、国家買上げ及び備蓄はワクチンの安定供給を確保する上で有効である。
 なお、平成16年3月31日現在の備蓄量は、乾燥ガスえそウマ抗毒素が126本、コレラワクチンが1,200本、乾燥組織培養不活化狂犬病ワクチンが472本、乾燥ジフテリアウマ抗毒素が829本等である。
(2)  インフルエンザワクチン需要検討会において、H15シーズンの需要予測量は1,244万本〜1,400万本とされ、1,481万本のワクチンが製造された。これは、前年度需要量の約4割増の規模となった。シーズン中に在庫が偏在したことなどから、18万本の未使用が生じたものの、使用量は1,463万本であった。
 平成12年度以来、需要予測の結果は、製造業者が製造量を決定するための判断材料とされており、需要に見合った供給を確保する上で有効である。今後、さらに予測の精度を上げるよう検討していくこととする。
(3)  平成15年度においては、海外から新型インフルエンザウイルス流行株を入手し、試作ワクチン2株rgHK213 HASDM,NA×PR8(H5N1),A/mallard/NL/12/2000(H7N3)と標準抗血清の作製がそれぞれ終了し、試作ワクチンの力価測定が行えるようになった。
 これにより、試作ワクチンと抗原性の近い新型ウイルスが発生した場合に、ワクチン製造株として供給が可能となった。
政策手段の効率性の評価
(1)  仮に、ワクチンを国が買上げを行わず、市場原則に任せた場合、採算性等の観点から、医薬品メーカーが自ら製造・供給することは困難であると考えられることから、ワクチンの安定供給を確保する上で、国家による買上げは効率的である。
(2)  平成12年度以来のインフルエンザワクチンの需要量の増加を需要予測の結果に基づく供給量の増加が支えており、概ね施策目標は達成されていることから、需給調査及び需要予測は効率的であるといえる。ただし、外部要因によりワクチンの需要が大きく変動することがあり、平成15年度においては、SARS対策の接種推奨の影響により、供給量の98.8%まで需要量が増加し、一部で供給困難をきたすといった事態も見られた。このため、引き続きインフルエンザワクチンの安定供給の確保をするためには、今後も継続的に需給調査と需要予測のデータを積み重ね、予測の精度の向上を図る必要がある。
(3)  新型インフルエンザワクチン製造株の開発が行われないとすると、新型インフルエンザが発生した場合に、ワクチン製造株の作成から着手する必要があり、製品が供給されるまでに長期間を要することから、迅速に必要量のワクチンを確保することは困難となる。また、ウイルスの抗原性が変異することから、新しく分離された株を取り入れていく必要がある。このため、ワクチン製造株の作製によりワクチンの製造期間が短縮されることで、新型ウイルス感染拡大による健康被害を減らすことが可能になることを考慮すれば、社会全体の費用対便益という観点から、効率的である。
総合的な評価
(1)  ワクチン・抗毒素の国家買上げ及び備蓄並びに、インフルエンザワクチンの需給調査及び需要予測については、施策目標達成のための手段として機能している。
(2)  新型インフルエンザワクチン製造株の作製については、引き続き計画に沿って行う必要がある。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)

3.特記事項
(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし。

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし。

(5) 会計検査院による指摘
 なし。


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