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(整理番号 12)
事業評価書(
事前
・事後)
平成16年8月

評価対象(事業名) 精神障害者の雇用の段階に応じた体系的支援プログラムの実施
担当部局・課 主管部局・課 職業安定局高齢・障害者雇用対策部障害者雇用対策課
関係部局・課  


1.事業の内容
(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 労働者等の特性に応じた雇用の安定・促進を図ること
II 障害者の雇用を促進すること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 精神障害者の雇用の拡大及び雇用の継続を推進するため、独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の地域障害者職業センター(以下「センター」という。)において、障害者職業カウンセラーによる支援体制を強化し、事業主を対象として、休職中の精神障害者の復職支援、在職精神障害者の雇用継続支援、精神障害者の雇用促進支援を総合的・体系的に実施するとともに、障害者職業総合センター職業センターにおいて、精神障害者の職業生活への円滑な移行を図るための支援技法の開発を行う。
 具体的には、以下の事業を実施する。
 精神障害者の復職支援
 休職中の精神障害者の復職について、事業主や主治医等の関係者間の連絡調整を行い協働体制の確立を図るとともに、リハビリ出勤等を利用した職場復帰支援を実施する。
 精神障害者の雇用継続支援
 就業中の精神障害者の職場定着について、事業主や主治医等の関係者間の連絡調整を行い、適切な雇用管理が可能となるよう体制の整備を図るとともに、ジョブコーチ支援を強化する。
 精神障害者の雇用促進支援
 精神障害者を雇用しようとする事業主を対象に、採用計画等についてのコンサルティングを行うとともに、関係機関との調整、雇用管理手法についての専門的助言を行う。
 雇用への移行支援技法の開発
 気分障害及び統合失調症を有する者を対象に、医療・福祉の分野から雇用の分野への移行を図るための支援技法の開発を行う。
予算概算要求額(単位:百万円)
H13 H14 H15 H16 H17
694

(3) 問題分析
(1)現状分析
 精神障害者については、雇用者数、求職者数ともに増加傾向にあるが、保健医療、福祉施策における「施設から地域へ」の流れが強まるなか、今後も精神障害者の就業ニーズはますます高まることが予想される。
 また、経済・産業構造の転換等により、仕事、職業生活に対する強い不安、悩み、ストレスを訴える労働者や精神疾患の外来患者数が増加しており、企業に採用されてから精神障害を有するようになった者の雇用の継続も課題となっている。
(参考)
有効求職者数 平成6年度: 2,884人→ 平成14年度  12,553人
 (障害者全体に占める割合:  3.6%→7.5%)
就職件数 1,004人→  1,890人
 (障害者全体に占める割合:  3.5%→6.0%)
雇用障害者数 平成5年:23千人→平成10年51千人(障害者雇用実態調査)
 (うち採用後に精神障害を有するようになった者は13千人(平成10年))

(2)問題点
 精神障害者については、障害特性に応じた雇用管理ノウハウの不足やそれに伴う不安感、また、雇用精神障害者の4分の1を占める採用後に精神障害を有するようになった者の雇用管理負担等が、企業が精神障害者を雇用することを躊躇する一因となっていると考えられる。

(3)問題分析
 精神障害者については、就職後も医療面からのケアが不可欠であり、主治医等医療関係者との連携が必要であること、また、雇用管理に当たって、症状に波があるなどの障害特性を踏まえた配置や業務内容、労働時間、通院への配慮等を要すること、さらに、その障害特性から生活面も含めたきめ細かな支援を継続的に行う必要があることなど、企業が直面する精神障害者の雇用に関する諸課題に対応するための支援体制が不十分であると考えられる。

(4)事業の必要性
 精神障害者については、現在、将来的な雇用義務化をにらみつつ、障害者雇用率の実雇用率に算入するための法改正が検討されているが、精神障害者の雇用を促進するためには、こういった制度面からの働きかけとあわせ、事業主に対して、休職中の精神障害者の復職、在職精神障害者の雇用継続、精神障害者の雇用促進に係る支援を総合的に行っていくことが必要である。

(4) 事業の目標
目標達成年度  
政策効果が発現する時期 事業開始時から効果の発現が見込まれる
アウトプット指標 H17 H18 H19 H20 H21 目標値/基準値
支援対象事業所数            
(説明)復職、雇用継続、雇用促進に係る支援対象事業所数 (モニタリングの方法)
高齢・障害者雇用支援機構からの報告による


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)本事業は、企業が直面する精神障害者の雇用に関する諸課題に対して適切な支援を行うことにより、精神障害者の雇用に伴う負担感の緩和を図り、企業の精神障害者の雇用に対する理解の浸透、精神障害者の雇用の拡大及び安定に資するものであり、公益性が高い。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)事業主に対して精神障害者の障害特性を踏まえた専門的な支援を実施し、精神障害者の雇用の拡大及び安定を図ることは、地域的な問題ではなく、全国的に施策を講じる必要がある。その際、専門的なノウハウを蓄積した独立行政法人高齢・障害者雇用支援機構の全国47の地域障害者職業センターにおいて直接支援業務を実施することが適当である。
民営化や外部委託の可否
   
(理由)本事業は、精神障害者の障害特性を踏まえた専門的な支援に関するノウハウを有する高齢・障害者雇用支援機構において実施することが適当である。
緊要性の有無
   無
(理由)精神障害者の就業ニーズが年々高まっていることに加え、企業に採用されてから精神障害を有するようになった者も増加しており、雇用の継続が課題となっている。また、障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の付帯決議において、「精神障害者の障害者雇用率制度の適用については、雇用支援策の展開を図り・・・」とされており、現在、将来的な雇用義務化をにらみつつ、障害者雇用率の実雇用率に算入するための法改正が検討されていることから、早急に支援策を講じる必要がある。さらに、経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(平成16年6月閣議決定)においても、精神障害者の雇用促進について法的整備を含め充実強化を図ることとされており、その緊要性は高い。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 事業主を対象とした、休職中の精神障害者の復職支援、在職精神障害者の雇用継続支援、精神障害者の雇用促進支援を総合的に実施→医療等関係機関との連携体制の構築、企業における雇用管理ノウハウの蓄積→精神障害者の雇用に関する理解の浸透→精神障害者の復職率の向上、職場定着率の向上、就職の促進
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 本事業を実施することにより、精神障害者の復職、職場定着等に対する支援体制が構築され、企業における精神障害者の雇用に対する理解の浸透、雇用管理ノウハウの蓄積が図られ、精神障害者の雇用の拡大及び継続が図られる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
なし

(3) 効率性
手段の適正性
 精神障害者の雇用の拡大及び継続を促進するためには、制度面の整備も必要であるが、事業主に対してソフト面から技術的に支援することも重要であり、精神障害者の雇用に関し専門的なノウハウを有する地域障害者職業センターにおいて行う本事業は手段として適正である。
費用と効果の関係に関する評価
 本事業は、既に精神障害者の雇用に関しノウハウを有する地域障害者職業センターにおいて、事業主に対して、休職中の精神障害者の復職、在職精神障害者の雇用継続、精神障害者の雇用促進に係る支援を総合的・体系的に行うことにより、精神障害者の雇用の拡大及び安定を図るものであることから、費用対効果の観点からも効率的支援であると考えられる。
他の類似事業(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
  無
(有の場合の整理の考え方)
 精神障害者職場復帰支援事業(平成16年度)を発展的に解消し、事業主に対し、精神障害者の復職、雇用継続、雇用促進支援を体系的に実施する本事業を創設。

(4) その他
 



3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「精神障害者の雇用の促進等に関する研究会」報告(平成16年5月)において、「障害者職業センターにおいては、これまで以上に復職支援など在職精神障害者に対する支援機能を充実させ、職業リハビリテーションの中核的な推進機関として、上記の精神障害者職場復帰支援事業をはじめ、本人、企業に対する相談支援を積極的に実施していく必要がある。」とされている。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 障害者雇用対策基本方針(平成15年3月27日告示)においては、「障害者基本計画」「重点施策実施5か年計画」の策定を踏まえ、各般の障害者雇用施策の推進により障害者雇用を促進する旨記載されている。
 障害者基本計画(平成14年12月24日閣議決定)においては、「雇用・就業は、障害者の自立・社会参加のための重要な柱であり、障害者が能力を最大限発揮し、働くことによって社会に貢献できるよう、その特性を踏まえた条件の整備を図る。」とされている。
 重点施策実施5ヶ年計画(新障害者プラン)(平成14年12月24日障害者施策推進本部決定)における重点的に実施する施策及びその達成目標並びに計画の推進方策として、「精神障害者施策の充実」が挙げられている。また、雇用・就業の確保について「トライアル雇用、職場適応援助者(ジョブコーチ)、各種助成金等の活用、職業訓練の実施などにより平成19年度までにハローワークの年間障害者就職件数を30,000人に、平成20年度の障害者雇用実態調査において雇用障害者数を600,000人にすることを目指す。」とされている。
 経済財政運営と構造改革に関する基本方針2004(平成16年6月閣議決定)において、精神障害者の雇用促進について法的整備を含め充実強化を図ることとされている。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 障害者の雇用の促進等に関する法律の一部を改正する法律の附帯決議において、「精神障害者の障害者雇用率制度の適用については、雇用支援策の展開を図り、関係者の理解を得るとともに、人権に配慮した対象者の把握・確認方法の確率等の課題を早急に解決し、実施されるように努めること。」とされている。
 障害者基本法の一部を改正する法律の附帯決議において、「障害者の雇用・就業、自立を支援するため、障害者の地域における作業活動の場の育成等を推進するとともに、併せて精神障害者の雇用率の適用・復職支援、在宅就労支援を積極的に推進するため、これらについて法的整備を含め充実強化を図ること。」とされている。

(5)会計検査院による指摘
 なし。


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