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(4−4−I)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 求職活動中の生活の保障等を行うこと
I 雇用保険制度の安定的かつ適正な運営及び求職活動を容易にするための保障等を図ること
担当部局・課 主管部局・課 職業安定局雇用保険課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 セーフティネットとして財政が安定していること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用保険制度のうち、失業等給付は、労働者及び使用者から徴収される保険料と国庫負担とにより運営されているが、支出が収入を上回る場合には積立金を取り崩すこととしており、また、雇用情勢の急激な悪化による受給者の急激な増加により積立金の取り崩しによっても対処し得ない場合においても、弾力条項による保険料率の引き上げ等、必要な給付に支障を来さないような仕組みが制度化されている。
 また、三事業についても、積立金に準じた雇用安定資金が設けられているとともに、弾力条項が設けられている。
(評価指標)収支バランス(失業等給付関係)

H10 H11 H12 H13 H14
収入額
(億円)
17,397 17,317 16,239 23,829 25,886
18,152 18,244 16,789 24,244 25,899
収入額(うち保険料収入)
(億円)
12,929 12,335 12,164 18,251 19,211
13,547 12,959 12,708 18,839 19,251
支出額
(億円)
27,018 27,806 26,660 27,275 26,820
27,066 28,871 29,498 27,227 27,998
支出額(うち失業等給付費)
(億円)
25,762 26,550 25,138 26,007 25,292
25,800 27,589 28,176 26,153 26,728
積立金残高
(億円)
29,354 18,865 8,444 4,998 4,064
30,061 18,727 6,157 5,461 2,899
(備考)
 評価指標の上段は各年度の決算値(14年度は決算見込み)、下段は補正後予算である。
 失業等給付に係る収入は、事業主及び労働者から徴収される保険料、国庫負担及び積立金の運用による利子収入等からなる。
 失業等給付に係る支出は、失業等給付に要する費用及び雇用保険事業の運営に必要な経費からなる。
(評価指標)収支バランス(三事業関係)

H10 H11 H12 H13 H14
保険料収入額
(億円)
5,660 5,399 5,324 5,346 5,255
5,809 5,672 5,561 5,516 5,263
支出額
(億円)
4,680 5,392 6,015 5,839 4,853
6,094 7,147 7,148 6,831 6,119
雇用安定資金残高
(億円)
3,786 3,793 3,102 2,609 3,011
2,522 2,311 2,206 1,787 1,753
(備考)
 評価指標の上段は各年度の決算値(14年度は決算見込み)、下段は補正後予算である。
 三事業に係る収入は、事業主から徴収される保険料からなる。
実績目標2 給付を適正に行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 雇用保険の失業等給付(求職者給付(基本手当等)、就職促進給付(再就職手当等)、教育訓練給付及び雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付)については、全国の公共職業安定所において支給事務を実施しており、法令等に基づきその適正な給付に努めているところである。
(評価指標)適用状況

H10 H11 H12 H13 H14
適用事業所数(年度月平均)(千所) 1,995 2,002 2,018 2,028 2,023
(備考)
評価指標は、雇用保険事業統計による。

H10 H11 H12 H13 H14
新規適用事業所数(千所) 77 87 98 90 83
(備考)
評価指標は、雇用保険事業統計による。

H10 H11 H12 H13 H14
廃止事業所数(千所) 62 80 81 89 94
(備考)
評価指標は、雇用保険事業統計による。

H10 H11 H12 H13 H14
被保険者数(年度月平均)(千人) 34,195 33,902 33,905 34,111 33,962
(備考)
評価指標は、雇用保険事業統計による。
(評価指標)失業等給付給付状況

H10 H11 H12 H13 H14
基本手当基本分(受給者実人員)
(年度月平均) (千人)
1,053 1,068 1,029 1,106 1,048

H10 H11 H12 H13 H14
基本手当基本分(給付額)
(億円)
19,216 20,125 18,923 20,128 19,360
(備考)
評価指標の受給者実人員は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。
基本手当基本分とは、基本手当のうち、延長給付部分を除くものをいう。

H10 H11 H12 H13 H14
再就職手当(受給者数)(千人) 418 396 403 394 383

H10 H11 H12 H13 H14
再就職手当(給付額)(億円) 1,927 1,842 1,598 1,221 952
(備考)
評価指標の受給者数は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。

H10 H11 H12 H13 H14
教育訓練給付(受給者数)(千人) 0.2 150 270 285 381

H10 H11 H12 H13 H14
教育訓練給付(給付額)(億円) 0.1 131 271 395 683
(備考)
評価指標の受給者数は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(高年齢雇用継続給付)(初回受給者数)
(千人)
100 105 115 141 147

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(高年齢雇用継続給付)(給付額)(億円) 773 954 1,086 1,250 1,437
(備考)
評価指標の初回受給者数は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(育児休業基本給付金)(初回受給者数)(千人) 71 76 85 93 98

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(育児休業基本給付金)(給付額)(億円) 246 268 314 512 563
(備考)
評価指標の初回受給者数は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(介護休業給付)(受給者数)(千人) 3 4 5 4

H10 H11 H12 H13 H14
雇用継続給付(介護休業給付)(給付額)(億円) 5 6 12 12
(備考)
価指標の受給者数は雇用保険事業統計によるものであり、給付額は各年度の決算値(14年度は決算見込み)による。
平成11年度からの支給である。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 雇用保険制度は、制度創設以来最も厳しい財政状況にある。その要因としては、平成6年度以降毎年度赤字が続き、特に平成10年度から平成12年度にかけては3年連続で1兆円前後の赤字を記録し、平成13年度から給付体系の見直し、保険料率の引上げ、国庫負担の原則復帰等の制度改正が実施に移されたものの、その後の労働市場において、構造的摩擦的失業率の上昇が続く中で雇用保険受給者が増加する一方、常用雇用労働者の減少、パートタイム労働者の増加、賃金水準の低下により保険料収入が減少するなど、雇用保険財政について前回の改正の想定を超える構造的な変化が進んだことがあげられる。
 雇用保険制度は社会保障制度の中でも厳しい経済状況下で大きな役割を発揮すべき雇用のセーフティ・ネットであり、当面する財政破綻を回避するとともに、将来にわたり制度の安定的運営を確保するため、雇用政策全体との関連にも留意しつつ、給付・負担の両面にわたり見直しを早急に行う必要がある。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
実績目標1について
 雇用保険制度のうち失業等給付については、支出が収入を上回る場合には積立金を取り崩すこととしており、また、雇用情勢の急激な悪化による受給者の急激な増加により毎会計年度において、徴収保険料額及び国庫負担の合計額と失業等給付額との差額をその会計年度末における積立金に加減した額が、失業等給付額を下回った場合には、弾力条項による保険料率の引き上げを行うことができる等、セーフティネットとして財政が安定するような有効な制度設計となっている。
 厳しい雇用保険財政の下、平成14年10月には失業等給付に係る保険料率を引き上げたことにより(12/1,000から14/1,000に引き上げ)保険料収入が増加し、また、受給者実人員が前年度より減少したため、支出額が前年度より減少したが、依然として支出が収入を上回ったことから、積立金の取り崩し(632億円)により対処したため、必要な給付に支障を来たすことはなかった。

実績目標2について
 雇用保険の失業等給付(求職者給付(基本手当等)、就職促進給付(再就職手当等)、教育訓練給付及び雇用継続給付(高年齢雇用継続給付、育児休業給付及び介護休業給付)については、その適正な給付に努めているところである。また、各種給付の実績は順調に推移しており、特に教育訓練給付、高年齢雇用継続給付及び育児休業給付については、制度発足以来着実に利用が伸びているところである。
政策手段の効率性の評価
実績目標1について
 雇用保険制度のうち失業等給付については、支出が収入を上回る場合には積立金を取り崩すこととしており、また、雇用情勢の急激な悪化による受給者の急激な増加により毎会計年度において、徴収保険料額及び国庫負担の合計額と失業等給付額との差額をその会計年度末における積立金に加減した額が、失業等給付額を下回った場合には、弾力条項による保険料率の引き上げを行うことができる等、セーフティネットとして財政が安定するような効率的な制度設計となっている。

実績目標2について
 受給者数が依然として多い状況にあるが、支給業務を担当する公共職業安定所においては、一定の組織定員の範囲内において法令等に基づき適正な給付に努めているところである。
総合的な評価
 厳しい財政状況にあることなどから、当面の措置として、平成14年9月30日より失業認定の在り方を見直すとともに、同年10月から失業等給付に係る保険料率を12/1,000から14/1,000に引き上げ、保険料収入の増加を図った。また、14年度の受給者実人員(1,048千人(年度月平均))が13年度(1,106千人(年度月平均))よりも減少し、基本手当支給額も13年度より減少した。しかしながら、依然として支出(26,526億円)が収入(25,894億円)を上回ったため、積立金の取り崩しにより対処した。
 各種給付の実績は順調に推移しており、特に教育訓練給付等について着実に利用が伸びており、(1)セーフティネットとして財政が安定していること、(2)給付を適正に行うこと、という目標をほぼ達成したと考えられる。
 厳しい雇用失業情勢が長期化する中で、経済社会の変化に的確に対応し、雇用保険制度の安定的運営を確保するため、給付について(1)早期再就職の促進、(2)多様な働き方への対応、(3)再就職の困難な状況に対応した重点化を図るとともに、保険料率について労使負担の急増の緩和に配慮した上で、制度の安定的運営のために必要最小限の引上げを行うこと等を内容とする「雇用保険法等の一部を改正する法律」を本年5月1日から施行したところである。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.政策への反映方針

 「雇用保険法等の一部を改正する法律」に基づいて引き続き、適正な給付を行うとともに、雇用のセーフティネットとして雇用保険制度の安定的運営に努めることとする。
反映分類
(3)


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「雇用保険制度は、制度創設以来最も厳しい財政状況にあり、当面する財政破綻を回避するとともに、将来にわたり制度の安定的運営を確保するため、給付・負担の両面にわたり見直しを早急に行う必要がある。この見直しについては、短期的な雇用・失業の動向に加え、中長期的な労働市場の変化を背景とした雇用保険財政の構造的な変化等を踏まえる必要がある。見直しの方向としては、給付について、失業中の生活の安定に加え再就職の促進を図るという雇用保険制度の基本的役割が適切に果たせるよう、(1)早期再就職の促進、(2)多様な働き方への対応、(3)再就職の困難な状況に対応した給付の重点化等を図るとともに、保険料率について、給付と負担の公平性を確保しつつ、制度の安定的運営の確保に必要な水準とすることとする。」(平成14年12月18日「労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会報告書」)

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
○「規制改革推進3か年計画(再改訂)」(平成15年3月28日閣議決定)
II−7−1
(2) 職業紹介規制の抜本的緩和
(4) 公共職業安定所紹介要件の緩和
 雇用保険法(昭和49年法律第116号)に定める就職促進給付のうち再就職手当の一部及び常用就職支度金についても、不正防止等の観点から公共職業安定所の紹介を支給要件とされているが、厳しい雇用保険財政に留意しつつこれを緩和する。
II−7−3
(2) 社会保険制度の改革等
 雇用保険法は原則としてすべての民間被用者を対象とした制度であり、現在も、低い加入水準にとどまっている私立学校教員等については、雇用保険への加入を更に促進する。

「改革加速プログラム」(平成14年12月12日経済対策閣僚会議)
II.施策の概要
1.経済・社会構造の変革に備えたセーフティー・ネットの構築
(1)雇用対策の強化
(2)早期再就職者支援基金事業(仮称)」の創設
不良債権処理の加速による影響への対応として、失業期間の短縮化を図るため、離職者の早期再就職を強力に促進する事業を実施する。

「改革加速のための総合対応策」(平成14年10月30日経済財政諮問会議)
III.セーフティー・ネットの拡充
1.雇用対策の推進
(4) 雇用保険制度の見直し
 マクロ経済の観点からは景気への自動安定化機能を有している雇用保険制度について、将来にわたりセーフティ・ネットとしての安定的運営を確保するため、早期再就職の促進、多様な働き方への対応、再就職の困難な状況に対応した給付の重点化を中心とした制度の見直しを行う。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 「今後とも、セーフティネットとしての雇用保険の健全運営の確保に万全を期するとともに、雇用失業情勢に対応し、雇用対策の効果的な実施に努めること。」
 「雇用保険制度の将来的な在り方の検討については、拙速を避け、十分な時間をかけて行うこととするが、その着手は早急に行うこと。その検討においては、基本手当、高年齢雇用継続給付の給付水準に十分留意すること。」
 (「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成15年4月15日衆議院厚生労働委員会))
 「雇用保険が今後とも雇用のセーフティネットとして、その機能を十分発揮することができるよう制度の安定的運営の確保に努めること。」パートタイム労働者の適用等雇用保険制度の適用範囲についての検討に努めること。」

 「雇用保険制度の将来的な在り方について早急に検討に着手することとし、検討に当たっては十分な時間をかけて行うとともに、基本手当及び高年齢雇用継続給付の給付水準等に十分留意すること。」
(「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」(平成15年4月24日参議院厚生労働委員会))

(5)会計検査院による指摘
 失業等給付金の支給の適正を期するため、受給資格者等に正しい失業認定申告書、再就職手当支給申請書等の提出を行わせるよう指導を徹底するとともに、失業等給付金の支給決定時における調査確認の一層の充実強化を図る必要があると認められる。(「平成13年度決算検査報告」)


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