戻る

(4−1−I)
実績評価書
平成15年8月

政策体系 番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 労働力需給のミスマッチの解消を図るために需給調整機能を強化すること
I 公共職業安定機関における需給調整機能を強化すること
担当部局・課 主管部局・課 職業安定局業務指導課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況
実績目標1 セーフティネットとして、きめ細かな職業相談・職業紹介を実施すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 公共職業安定所において、積極的な求人開拓によって求人の確保に努めるとともに、求職者のニーズにあったきめ細かな職業相談・職業紹介を実施している。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
紹介件数(件)
6,036,202 6,836,936 6,939,039 8,245,570 9,847,961
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
就職件数(件)
1,667,986 1,762,950 1,868,742 1,902,981 2,048,300
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
求人開拓数(件)
1,137,532 1,380,499 1,905,237 2,142,492 2,252,267
新規求人数に占める割合(%)
19.6 22.8 26.3 30.7 30.6
(備考)
評価指標は職業安定局の調べによる。
本実績目標のきめ細かな職業相談・職業紹介については、数値的に表し得ない側面が強く、また、以上の数値は経済の動向に大きく左右されるものであり、参考指標である。
実績目標2 求人情報、労働市場情報等の提供を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 急速に普及してきているインターネット技術を活用するなどにより、求職者や求人者に対し求人情報等の提供を行っている。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
ハローワークインターネットサービスのアクセス件数(件) 1,235,079 4,716,731 12,818,288 42,942,242
(備考)
評価指標は、ハローワークインターネットサービスの求人情報検索画面へのアクセス件数である。(労働市場センター業務室調べ。)
評価指標のハローワークインターネットサービス事業は、平成11年3月29日からの事業であり、平成14年1月29日より取り扱い求人が全国のハローワークの求人に拡大され、さらに平成15年1月14日より求人事業主の意向を踏まえ求人企業名等の提供を行うこととした。
評価指標の平成11年度は平成10年度の3日分を含んでおり、平成10年度分のみの数値は存在しない。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
ネット上での応募者数(人)
258,347
(備考)
評価指標は、ハローワークインターネットサービスの応募票画面閲覧数である。(労働市場センター業務室調べ。)
評価指標の平成14年度実績は、求人企業名等の提供に伴い、インターネット上での応募を可能とした平成15年1月14日からの数値である。
実績目標3 求人年齢制限の緩和を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 平成13年10月に、雇用対策法に労働者の募集・採用に当たっての年齢制限緩和の努力義務が設けられたことを踏まえ、官民の職業紹介機関の窓口や地域の経済団体、マスメディア等への働きかけを通じた事業主への周知・啓発に努めてきたところであるが、求人年齢制限の緩和の徹底に向けて、平成15年1月に、公共職業安定所で受理した求人のうち年齢不問求人の割合を平成17年度に30%とする目標を定めたところである。この目標の達成に向け、経済団体に対する求人年齢制限緩和についての要請、求人開拓の際や安定所窓口での個別企業に対する説明、指導等を行っている。
(評価指標)年齢階層別求人数 H10 H11 H12 H13 H14
年齢計(件)
5,325,097 5,539,316 6,670,865 6,419,111 6,750,715
44歳以下(件)
4,290,360 4,469,694 5,421,832 5,005,959 5,281,184
45〜54歳(件)
677,374 705,913 827,693 850,967 873,211
55歳以上(件)
357,363 363,709 421,340 562,185 596,320
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
年齢不問求人の割合(%) 1.6 13.5
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
13年度の実績は、法施行前の13年9月分につき、試行的に全国集計調査したもの。
年齢不問求人の割合については、平成14年4月より正式に全国集計実施。
実績目標4 適切な職業訓練受講指示を行うこと
(実績目標を達成するための手段の概要)
 求職者の技能、知識等と労働市場の状況から判断して、職業訓練を受けさせることが適職に就かせるために必要であると認められる者に対して、公共職業安定所長が職業訓練の受講指示を行う。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
職業訓練受講指示件数(件) 57,262 113,399 172,642 218,341 184,751
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
実績目標5 失業等給付受給者が求職活動のノウハウを習得できるようになること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 失業等給付受給者の早期再就職を図るため、公共職業安定所において、民間への委託等により民間のノウハウも活用し、労働市場状況についての情報提供、求職者が有している職業経験・技能の再評価と自己分析、再就職のための技法等を内容とする就職支援セミナーを開催している。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
就職支援セミナーの受講者数(人) 174,898
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
就職支援セミナーは、平成14年9月より実施。セミナーの受講者数については、平成15年2月より全国集計実施。
実績目標6 求職者が、キャリア・コンサルティングを通じて的確な求職活動を行えるようになること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 求人・求職のミスマッチの解消を図り求職者の再就職を促進するため、公共職業安定所の利用者のうち、特に、希望条件等に固執するなど、再就職に困難が伴うような者に対して、キャリア・コンサルティングを行っている。
 また、プライバシーが保たれた落ち着いた環境でコンサルティングを行うため、全国47カ所にキャリア・コンサルティングの専門コーナーを設置している。
 さらに、中高年ホワイトカラー求職者等を対象として、キャリア・コンサルティングを含む一貫した就職支援を集中的に行うため、全国12ヶ所にキャリア交流プラザを設置している。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
キャリア・コンサルティング対象者数(人) 14,626
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
キャリア・コンサルティング事業は、平成15年2月より実施。キャリア・コンサルティング対象者数については、平成15年2月より全国集計実施。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
キャリア交流事業参加者数(人) 1,292 3,687 6,112 6,448
(備考)
評価指標は職業安定局調べによる。
評価指標のキャリア交流事業は、平成11年10月より実施。


2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 13年12月に失業率が過去最高記録を示して以来、依然として厳しい雇用失業情勢が続いている。また、非自発的離職者についても平成14年度に151万人と前年より45万人も増加しており、今後不良債権処理の加速によりさらに離転職を余儀なくされる者が増加することが懸念されるため、公共職業安定機関における需給調整機能を強化する必要がある。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
実績目標1について
 雇用失業情勢が厳しい中、求人開拓数は平成13年度を上回っており、求人開拓による求人確保率についても、平成13年度に引き続き全求人の3割を超えている。また、これらの求人を活用した職業紹介件数は平成13年度に比し約2割増、就職件数についても約1割弱の増加となっており、有効に機能したと評価できる。

実績目標2について
 平成14年1月よりインターネットによる公共職業安定機関の求人情報提供の対象地域を拡大して、全国の公共職業安定所の取り扱い求人をハローワークインターネットサービスにおいて閲覧できるようになり、さらに平成15年1月より求人事業主の意向を踏まえ求人企業名等の提供を行うなど、情報提供機能が格段に充実された。
 また、情報提供機能の充実に伴ってアクセス件数も増加しており、広く活用されているため、求人情報等の提供を図るうえで、有効に機能したと評価できる。

実績目標3について
 全体の求人数が、平成13年度から平成14年度にかけて約640万件から約680万件へ増加している中で、とりわけ55歳以上の年齢階層における求人数は、前年度比6.1%増と大きく上昇している。また、年齢不問求人の割合も、法施行前の平成13年9月から平成14年度にかけて、11.9ポイント増加しており、官民の職業紹介機関の窓口や地域の経済団体、マスメディア等への働きかけを通じた事業主への周知・広報が、有効に機能していると評価できる。

実績目標4について
 雇用失業情勢が厳しい中で公共職業訓練により能力を身につけることの重要性が増しているところ、公共職業訓練受講者数がこのところ大きく伸びているため、公共職業訓練の有効な活用が図られている。

実績目標5について
 平成15年2、3月における就職支援セミナーの受講者数は延べ約17万人であるが、これは同期間における雇用保険初回受給者の約54%に相当するものである。また、4労働局におけるアンケート調査の結果では、「参考になった」と評価する人の割合がほぼ9割となっており、失業等給付受給者が求職活動与のノウハウを習得するうえで、有効に機能したと評価できる。

実績目標6について
 平成15年2、3月において就職支援アドバイザーによるキャリア・コンサルティング対象者数は1万件を超えている。また、多数の好事例でも報告されているように、キャリア・コンサルティング及び集中的な就職活動支援により、積極的かつ的確な求職活動が可能となっており、再就職に困難を伴っていた者の心理的な問題を解決し、再就職の促進に有効に機能していると評価できる。
 さらに、キャリア交流プラザについても、キャリア・コンサルティングを含む一貫した就職支援により、積極的かつ的確な求職活動が可能となっており、特に就職が困難な中高年ホワイトカラー求職者等の心理的な問題を解決し、再就職の促進に有効に機能していると評価できる。
政策手段の効率性の評価
実績目標1について
 求人開拓、職業相談、職業紹介等は、厳しい雇用失業情勢にもかかわらず、前年を上回る成果を上げており、より効率的に運営がなされているものと評価している。

実績目標2について
 ハローワークインターネットサービスを利用することは、情報システムの集中的な運用によって情報提供に係るコストの効率化を図るとともに、全国の公共職業安定機関の有する豊富な求人情報等を公共職業安定機関を直接利用する以外にも、広く効率的に提供することができる。

実績目標3について
 積極的な周知・広報や公共職業安定所窓口での個別指導等により年齢制限緩和の促進を図っていることから経費的な負担は少なくなっており、55歳以上の層の新規求人数及び不問求人率の増加を考えれば、当該事業は効率的に行なわれているものと評価できる。

実績目標4について
 平成14年1月より中高年齢(45歳から60歳未満)雇用保険受給者に対する複数の長期訓練受講指示や早期受講指示基準を新たに設けて、より効率的な事業の実施に努めているところである。

実績目標5について
 また、失業等給付受給者に対し、セミナーという集団形式により、再就職の促進に必須な知識の付与を図っていくことは、少ない投入コストで多数の者が求職活動のノウハウを習得することを可能とする、効率的なものであると評価している。

実績目標6について
 再就職を妨げる問題を抱え、より立ち入った相談が必要な者に対してキャリア・コンサルティングを行なうことで、綿密な相談を受けることなくやみくもに求職活動を続けたまま再就職できない状況を解消するものであり、効率的に再就職支援を図ることができるものである。
 また、キャリア交流プラザについても、中高年ホワイトカラー求職者等の再就職に関して同じような問題を抱える者に対して、キャリア・コンサルティングを含む一貫した就職支援を行うことにより、効率的に再就職支援を図ることができるものである。
総合的な評価
 昨年度実施された各施策については、上記評価のとおり、概ね良好に機能しており、施策目標達成をほぼ達成した。
 なお、求人年齢制限緩和については、平成15年1月に、安定所で受理した求人のうち年齢不問求人の割合を平成17年度に30%とする目標を設定したところであり、平成15年度においては、シンポジウムや事業主懇談会の開催、個別の企業が抱える問題に応じた助言、援助等を内容とするエイジフリー促進事業を通じ、求人年齢制限緩和のさらなる推進を図ることとした。
 また、適切な職業訓練受講指示を行うため、既存の中高年(45歳から60歳未満)雇用保険受給者に対する複数の訓練受講指示につき、平成15年5月より対象者を35歳以上とした。
 さらに、就職支援アドバイザーによるキャリア・コンサルティングについては、これまでの好事例等も踏まえながら、就職状況も適切に把握し、その結果も踏まえ、再就職支援が効率的かつ効果的に行われるよう努める。
評価結果分類 分析分類
(2) (2)


3.政策への反映方針

 昨年度の施策を踏まえた上で、未充足求人対策の充実、失業者向けの生活関連情報のハローワークによるワンストップでの提供体制の整備、「再就職プランナー」による早期再就職支援を実施し、公共職業安定機関における需給調整機能の強化を図ることを検討する。
反映分類
(4)


4.特記事項

(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
「労働者が自らの能力と適性を的確に把握し、これに基づいて主体的な選択を行いうるようにするためには、社会的インフラのひとつとしての能力等に関する相談・評価機能を各人からみたアクセスしやすさも視野に入れつつ整備することが必要である。こうした観点から、企業の内外いずれにおいても各人が必要なときにキャリアコンサルティングが受けられる体制の整備が重要」
(「雇用政策の課題と当面の展開」(平成14年7月雇用政策研究会)
「早期再就職の実現に向け、雇用保険の支給期間中について、ハローワークが求職活動に対する様々な支援を積極的に行なうべきではないか」
(「雇用保険制度の見直しについて(中間報告)平成14年7月19日労働政策審議会職業安定分科会雇用保険部会)

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002
(平成14年6月25日閣議決定)
1.6つの戦略、30のアクションプログラム
(1)人間力戦略
(高齢者、女性、若者等がともに社会を指させる制度の整備)
「厚生労働省は、(略)「ハローワーク・インターネットサービス」への求人企業名の掲載等を通じて就労等に関する多面的情報提供を充実する」
「厚生労働省は、民間活用によるキャリアカウンセリングを促進する。」
経済財政諮問会議の「改革加速のための総合対応策」(平成14年10月)において、
〔III 1.(3)民間による労働力需給調整の活性化・多様な就業形態への対応〕で「ハローワークの求人について、インターネットによる求人企業名の公開を行う。」とされている。
経済対策完了会議の「改革加速プログラム」(平成14年12月)において、
〔II 1.(1)雇用対策の強化 (3)市場のニーズに沿ったキャリア形成の支援やマッチング機能の強化〕で「ハローワークインターネットサービスの求人企業名の公開」及び「キャリア・コンサルティングの充実を図る。」とされている。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
 なし。
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 衆・参の「経済社会の変化に対応する円滑な再就職を促進するための雇用対策 法等の一部を改正する等の法律案に対する附帯決議」において「労働者の募集及 び採用について年齢にかかわりなく均等な機会を与えるべき事業主の努力義務については、その趣旨に沿った適切な運用に努めること。」とされている。
 (平成13年3月30日衆議院厚生労働委員会・平成13年4月12日参議院厚生労働委員会)
 「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において「雇用保険三事業の各種給付金等について、政策評価を適切に行い、今後とも必要な見直しを行うよう努めるとともに、中小企業の利用に配慮しつつ、不正受給の防止に万全を期すこと」とされている。(平成15年4月15日衆議院厚生労働委員会)
 「雇用保険法等の一部を改正する法律案に対する附帯決議」において「雇用保険三事業の各種給付金等については、政策評価を適切に行い、真に失業予防や再就職の促進に有用であると認められるものを実施するよう、不断の見直しを行うとともに、中小企業の利用促進に配慮しつつ、不正受給の防止にも万全を期すこと」とされている。(平成15年4月24日参議院厚生労働委員会)
(5) 会計検査院による指摘
 なし。


トップへ
戻る