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(1−9−III)
実績評価書
平成15年10月

政策体系 番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 新医薬品・医療用具の開発を促進するとともに、医薬品産業等の振興を図ること
III バイオ技術、ナノ技術等の先端技術を活用し、画期的な医薬品、医療用具等の研究開発を推進すること
担当部局・課 主管部局・課 医政局研究開発振興課
関係部局・課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 画期的な医薬品、医療用具等の開発の促進による治癒率の向上、患者のQOLの向上を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 画期的医薬品や医療用具等のシーズ開発研究費の確保、治験等の臨床研究実施に必要な治験コーディネーター(CRC)の養成や治験活性化のモデル事業の実施等の基盤整備事業等を実施している。
(評価指標) H10 H11 H12 H13 H14
新医薬品・医療用具の承認取得数(件) 21 39 39 23 24
(上段:新医薬品、下段:新医療用具) 33 33 13 10
(備考)



2.評価

(1) 現状分析
現状分析
 21世紀に入って、ヒトの遺伝子が解読され、ゲノム科学やタンパク質科学等を応用した新しい創薬手法(「ゲノム創薬」と呼ばれている)による新薬開発競争が激化しており、その成果が本格的に現れる10年後の2010年頃には、「新薬黄金時代」を迎えることが予想され、急速な高齢化が進展する我が国においても、活力ある長寿社会の実現のための実用化が期待されている。しかしながら、医薬品・医療機器が開発され医療の現場に流通するまでには、膨大な研究費用と長い研究期間を要するとともに、国民の生命・健康を守るために必要不可欠な安全確保に資する厳しい薬事規制等のハードルを越えなくてはならない。
 また、近年は、医薬品の研究開発を巡って製薬企業間によるグローバルな競争が激化しているが、残念ながら、創薬環境として我が国の市場は国際的に魅力的なものとはなっておらず、このままでは、我が国の医薬品等産業の国際競争力は将来弱体化していく可能性が高い。

(2) 評価結果
政策手段の有効性の評価
 最近の科学技術研究のうち、ライフサイエンス分野に関しては、先進各国とも経済発展の牽引分野として位置づけ、重点領域化して取組を強化している。特に研究開発費の絶対額の差は日米で拡大し、例えば、画期的な医薬品開発技術のイノベーションに期待の高い「ゲノム創薬」関連の我が国の研究開発水準は欧米に遅れている点は否めない。これに対し、我が国におけるミレニアム・ゲノム・プロジェクト等の集中的予算配分によるライフサイエンスの充実に関しては、海外との競争力強化等の観点から一定の効果が認められる。
 また、「ゲノム創薬」においては、研究者が取り扱う生命関連データ(SNPs(SingleNucleotidePolymorphism:遺伝子多型)、疾患関連遺伝子、タンパク質データ等)の量が飛躍的に増加しているため、ITとバイオ技術を融合させて新薬に結びつける情報を引き出す技術を駆使して、研究スピードを引き上げることが必要となっており、そのような研究分野への重点的配分の実施も、今後一定の効果が期待されているところである。
 さらに、治癒率やQOLを向上させるための画期的医薬品の実用化に向けては、治験を含む臨床研究が不可欠であるが、治験が主に海外で実施され、日本の医療機関では治験が実施されないという治験の空洞化等の問題を抱える我が国において、企業単独では実施の困難な、CRCの養成等の臨床研究の推進に向けた基盤整備の実施についての政策的有効性は高いと考えられる。
政策手段の効率性の評価
 我が国のミレニアム・ゲノム・プロジェクト等のライフサイエンス分野への集中的予算配分については、総合科学技術会議を頂点として、各研究に関して多角的視点から分析・評価を実施することにより、全省庁を通じて効率的に実施されているところである。
 また、厚生労働省においては、個別の研究分野に係る研究の一層の活性化を図るため、「厚生科学研究に係る評価の実施方法に関する指針」に基づき、外部評価委員による評価を実施し、画一的、短期的な視点のみにとらわれないよう留意しつつ、その評価結果を研究費等の研究開発資源の重点的・効率的配分、研究開発計画の見直し等の研究企画に適切に反映させている。
総合的な評価
 CRCの養成等の臨床研究の推進に向けた基盤整備事業等の実施により、治癒率や患者のQOLを向上させるための画期的医薬品の実用化に向けた取組が見られるとともに、ミレニアム・ゲノム・プロジェクト等のライフサイエンス分野へ効率的に研究資源配分がなされており、施策目標の達成に向けて進展があったものと評価できる。
評価結果分類 分析分類
(3) (2)


3.政策への反映方針

 現在、ミレニアム・ゲノム・プロジェクト(平成12〜16年の5ヶ年プロジェクト)等の国家的事業により、研究資源を集中的・重点的に配分する施策を展開しており、今後の成果が期待されるところであるが、今後さらに、ポストゲノム研究及びその産業応用で巻き返しを図るため、創薬に直結する可能性の高い疾患関連たんぱく質の解析研究やSNPsの研究等「医薬品産業ビジョン」及び「医療機器産業ビジョン」に基づくアクションプランを着実に実施していく。
 また、「生命の世紀」とも言われる21世紀において、重点分野の一つであるライフサイエンス分野の柱となる医薬品・医療機器産業は、国民の保健医療水準の向上に資するだけでなく、我が国を担うリーディング産業として、国民経済の発展にも大きく貢献することが期待される。また、医薬品・医療機器産業の発展により、国民には最先端医療へのアクセスが約束され、生活習慣病への対処、大手術の回避等により、社会的・経済的損失や物理的・精神的負荷の軽減がもらたされるとともに医療の効率化が図られるという意味からも、医薬品・医療機器の研究開発を重点的に推進していく必要がある。
反映分類
(4)


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 内閣官房主導の学識経験者からなる評価・助言会議の実施、厚生労働省における外部評価委員による評価の研究費採択等への活用。

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 ミレニアム・ゲノム・プロジェクトについては、平成12年の内閣総理大臣決定に基づき実施されており、また、その他の研究についても、平成14年6月に閣議決定された「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2002」の柱となる技術力戦略に記載される内容の事業が主体となっている。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし

(5)会計検査院による指摘
 なし


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