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(26)
事業評価書(
事前
・事後)
平成15年8月

評価対象(事業名) 育児支援家庭訪問事業
担当部局・課 主管部局・課 雇用均等・児童家庭局 総務課
関係部局・課 雇用均等・児童家庭局 母子保健課、家庭福祉課


1.事業の内容
(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 男女がともに能力を発揮し、安心して子どもを産み育てることなどを可能にする社会作りを推進すること
施策目標 児童虐待や配偶者により暴力を防止すること
児童虐待の発生件数を減少させること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、他者に対する根強い不信感、否定的な自己イメージ、指導的態度に対する嫌悪感、育児ストレス等を抱えており、対人接触を図ろうとしない者もいる。このため、通所型の支援では限界があり、支援意欲をもった専門家による側面的・継続的・ねばり強い柔軟性のある訪問型の支援が必要となっている。
 このことから、出産後間もない時期の養育者は精神的にも肉体的にも過重な負担 がかかり、この時期に効果的に手厚い支援を行うことが、虐待予防に有効であることから、(1)一般子育て支援のうちでもとりわけ子育てOB(経験者)、産褥ヘルパー等の家庭訪問等による育児、家事等の援助、(2)児童虐待にまで到る育児困難な家 庭は、産後うつ病、育てにくい子どもやステップファミリー等の複雑な問題を背景に抱えているため、保育士、児童指導員、保健師、助産師等による具体的な技術指導という2種類の家庭訪問支援を効果的に活用し、育児困難な家庭の諸問題を解決、軽減し、虐待を未然に防止する。また、虐待に到ってしまったケースでも親子分離せずに家庭での養育を継続して行うことができる。
 (事業内容)
 ・産褥期の母子に対する育児指導や簡単な家事等の援助
 ・未熟児や多胎児等に対する育児指導、栄養指導
 ・母親に対する身体的・精神的不調状態に対する相談、指導
 ・乳幼児期から児童に対する発達援助指導(心の相談相手)
 ・若年親に対する育児相談・指導
予算概算要求額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16
予算調整中

(3) 問題分析
(1)現状分析
 児童虐待の動向を示す一つの指標と考えられる全国の児童相談所に寄せられる児童虐待に関する相談処理件数はここ数年急増し、平成13年度は23,274件で、児童虐待防止法施行直前の平成11年度の11,631件の約2倍となっている。また、児童相談所の職権による一時保護や、保護者の意に反する児童福祉施設への入所措置を家庭裁判所に申し立てる件数(88件(11年度)→134件(13年度))の増加など 質的にも困難なケ−スが増加している。さらに、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、人間に対する根強い不信感等を抱えており、対人関係を図ろうとしない者もいるため、問題が一層深刻・複雑化している。
 また、大阪児童虐待研究会の研究においても、虐待ハイリスク家庭(6歳未満児)に対して保健師が1年間継続支援した結果、リスク低下は1割、現状維持が7割、虐待発生は2割であった。このことから、いったん特段に援助が必要な状態にまで 至ってしまうと、その改善は容易ではなく、相当手厚い支援を必要とすることになる。
(主な訪問支援対象)
  児童相談所において養護相談、育成相談等の継続指導を受けた件数・・・288,016件
家庭児童相談室における虐待相談件数・・・・・・・・・・・・・・・・・80,433件
(2)問題点
 虐待は、その後の子どもの発育障害や発達遅滞、情緒面や行動面の問題、さらには虐待の世代間連鎖などを引き起こすこともあると言われており、子どもの一生涯、さらには世 代を超えて大きな影を落とすものである。また、児童虐待にまで至る育児困難な家庭は、産後うつ病、育てにくい子どもやステップファミリー等の複雑な様々な問題を抱えており、また、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、人間に対する根強い不信感、否定的な自己イメージ、指導的態度に対する嫌悪感、育児ストレス等を抱えており、対人接触を図ろうとしない者もおり、通所型の支援では限界となっている。
(3)問題分析
 社会保障審議会児童部会に児童虐待の防止等に関する専門委員会において、児童虐待に関する現行制度の実施状況等を踏まえた制度全般にわたる検討を行い、先般、その報告書がとりまとめられたところ。その中でも、『「待ちの支援」から要支援家 庭への「積極的なアプローチによる支援」』や『家族再統合や家族の養育の再生・強化を目指した子どものみならず親も含めた家庭への支援』が指摘されている。
(4)事業の必要性
 児童虐待の特性(家庭(地域)内で発生、虐待と認めない親が多いなど)にかんがみ、その解決に向け、親の権利や個人のプライバシ−には最大限配慮しつつも、幅広い関係機関が、積極的に親・子にアプロ−チする形の新たな支援が必要である。特に出産後間もない時期の養育者は精神的にも肉体的にも過重な育児負担があり、この時期に効果的に手厚い支援を行うことが虐待予防に有効である。また、虐待をした保護者の多くは治療意欲が乏しく、指導的態度に対する嫌悪感、育児ストレス等を抱えており対人接触を図ろうとしない者もいるため、通所型の支援では限界があり、訪問型の支援が必要である。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度  
アウトカム指標 H16 H17 H18 H19 H20 目標値/基準値
             
(説明) (モニタリングの方法)

アウトプット指標 H16 H17 H18 H19 H20 目標値/基準値
事業実施か所数            
(説明)
本事業は、虐待の予防から自立支援に至るまですべての段階で有効であるため、3,209全市町村(平成15年6月現在)での実施が望まれる。
(モニタリングの方法)
市町村(都道府県)からの報告


2.評価
(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 虐待防止の本格的な取組は、平成12年度の児童虐待防止法の施行が契機であり、まだ始まったばかりである。
 同法の第4条には、国及び地方公共団体の責務等が明確に規定されており、民に委ねられる状況になく、率先して国が取り組むべき課題である。
 また、参議院の共生社会に関する調査会での児童虐待の防止に関する決議や社会保障審議会児童部会児童虐待の防止等に関する専門委員会の報告書でもその指摘がされており国が率先して取り組む必要がある。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 児童虐待防止法第4条第1項において、国及び地方公共団体の責務として、児童虐待の早期発見・早期対応に向けて、関係機関及び民間団体の連携の強化、その他児童虐待の防止等のために必要な体制の整備に努めなければならないことを規定している。
 このため、地方レベルの関係機関、中でも児童虐待の中核的機関である児童相談所を核として、福祉事務所、保健所(保健センター)、保育所、病院等と連携を図りながら、国が率先して取り組む必要がある。
民営化や外部委託の可否
   
(理由)
 同法の第4条には、国及び地方公共団体の責務等が明確に規定されており、民に委ねられる状況になく、率先して国が取り組むべき課題である。
緊要性の有無
   無
(理由)
 虐待は子どもの心身の成長や人格の形成など、子どもの健全な成長に重大な影響を与え、更には虐待の世代間連鎖を引き起こすこともあるといわれており、その対応は、早急に取り組むべき社会全体の課題である。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 市町村が、児童相談所、医療機関、保健所、学校、保育所等の市町村ネットワークを活用し、出産後間もない時期から育児支援が必要な家庭や育児困難な家庭(産後うつ病、育てにくい子ども、ステップファミリー等)を把握
 市町村が、子育て支援を決定、家庭訪問支援メニューを組立てし、(1)子育てOB、産褥ヘルパーによる家事援助、母親への相談等の育児・家事等の援助、(2)保健師、保育士等による育児・栄養指導、発達援助指導等の専門的な家庭訪問支援を実施
 育児困難な家庭における諸問題の解決、軽減に誘導し、児童虐待を未然に防止
 継続的な養育支援を実施することにより、結果的に施設入所に至らず、家庭での養育を継続することができる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 出産後間もない時期で養育者は肉体的にも精神的にも過重な育児負担があり、この時期に一般子育て支援のうちでも、とりわけ子育てOB(経験者)や産褥ヘルパ ー等の家庭訪問による育児、家事等の援助は、育児困難な家庭の諸問題を解決、軽減しており、効果を上げている。こうした効果を踏まえ、これまでの産褥期ヘルパー事業等は、必ずしも虐待を念頭において支援、対象者等を決定してこなかったことから、より虐待の発生予防に資するよう、本制度を拡充し、サービス利用の対象者等の見直しを図るものである。
 今後、子育てOB(経験者)や産褥ヘルパー等による育児、家事等の援助と、保育士、保健師、助産師等による具体的な技術指導という2種類の家庭訪問支援を効果的に活用することにより、虐待を未然に防止するとともに、児童虐待に至ってしまったケースでも親子分離せずに家庭での養育を継続することが可能となる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 乳幼児健診未受診者等、自ら訴え出ない様々な背景要因を持つ養育者に対してもアプローチしていくことにより、虐待リスクを早期に把握し、必要な支援につなげ ていくことが必要であり、虐待リスクのある家庭を的確に把握することが重要である。また、家庭訪問支援サービスを強化するとともに、的確な家庭訪問支援活動を行えるような保健師等の研修が重要である。

(3) 効率性
手段の適正性
 出産後間もない時期の養育者や児童虐待にまで至る育児困難な家庭(保護者)に対しては通所型の支援では限界があり、継続的な、柔軟性のある訪問型の支援が必要である。
費用と効果の関係に関する評価
 支援の必要な家庭に対して、産褥ヘルパーや保育士、保健師等が家庭訪問による支援をすることにより、養育者の孤立化を防ぐことができ、その結果、虐待を未然に防止することにより、施設入所による支援の必要性がなくなり、施設運営に必要な経費の縮減となる。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
   無
(有の場合の整理の考え方)
 現在、類似事業として、産後で体調不良である家庭(新生児及び産褥婦)等に保育士等を派遣して身の回りの世話や育児を行う「産褥期ヘルパー事業」と、軽度な被虐待経験等の問題を抱える家庭に子ども家庭支援員を派遣する「家庭訪問支援事業」を市町村事業として実施しているところだが、本事業が平成16年度に創設されれば、本事業に統合され、廃止することとしている。

(4) その他
 



3.特記事項

(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 社会保障審議会児童部会「児童虐待の防止等に関する専門委員会」報告書
 6月18日に同委員会がとりまとめた報告書においても、「虐待リスクのある家庭(育児困難家庭)の把握と、養育者が精神的にも肉体的にも最も支援を必要とする出産後間もない時期を中心に家庭訪問等の積極的なアプローチ」などが指摘されている。

(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
なし

(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
なし

(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等
 参議院共生社会調査会による決議(平成15年6月16日)
 同調査会の児童虐待の防止に関する決議において、「虐待の予防には早期の把握や 対応が重要なことから、妊産婦健診、周産期診療、乳幼児健診等の充実・強化に努めるとともに、保健師や助産師等の役割の重要性や市町村レベルでの協力体制の推進」などが指摘されている。
 児童虐待防止法改正検討チーム
 衆議院青少年問題に関する特別委員会、参議院共生社会に関する調査会の理事を中心に、改正に向けた定期的な勉強会が開催されている。

(5) 会計検査院による指摘
なし


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