戻る

(13)
事業評価書(
事前
・事後)
平成15年8月

評価対象(事務事業名) 日本版デュアルシステムの実施について
担当部局・課 主管課 職業能力開発局基盤整備室
関係課 職業能力開発局能力開発課、特別訓練対策室、育成支援課


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともにその能力を十分に発揮できるような環境の整備をすること
施策目標 労働者の就業状況等に対応した多様な職業訓練・教育訓練の機会の確保を図ること
II 若年者の職業能力開発を推進すること

(2) 事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 若年者の求人の大幅な減少や即戦力志向が高まる中で、学校卒業後、未就職者、フリーター等となる者が増えているが、こうした者を含め広く若年者を対象として、一定期間、企業実習及びそれに関連した教育訓練を行うことにより、一人前の職業人として育て、職場定着を図る新たな仕組みである「日本版デュアルシステム」を我が国に導入する。
 このため、中央に産学官の関係者からなる協議会を設置するとともに、日本版デュアルシステム(企業雇用型)の普及を促進するためモデル事業を実施する。また、既存の公共職業訓練を活用して公的部門における日本版デュアルシステムを実施するとともに、企業と民間教育訓練機関のコーディネートの実施、キャリア形成促進助成金の活用による企業に対する支援を通じて、民間部門における日本版デュアルシステムを推進する。

(日本版デュアルシステムの類型)
(1) 企業雇用型:若年者と実習先企業とのマッチングを行い、有期パート雇用契約等を締結した上で、相応の教育訓練(OFF−JT)を選択し、同時に企業内で実習訓練(OJT)を受けさせる方式。
(2) 教育訓練型:教育訓練機関が教育訓練を受ける者(職業訓練生、専修・各種学校生等)について、実習先企業を見つけ、企業内OJT計画を共同立案し、実習訓練を組み合わせる方式。
 当面の制度設計については、(2)の教育訓練型を中心に公的に推進するとともに、(1)の企業雇用型についてはモデルを作り企業に導入を進めていく。
予算額(単位:百万円)
H12 H13 H14 H15 H16
8,883

(3) 問題分析
(1)現状分析
 近年、若年者については、高い失業率、無業者やフリーターの増加、高い離職率等の問題が生じており、このような状況が続けば、若者の職業能力の蓄積がなされず、中長期的な競争力・生産性の低下といった経済基盤の崩壊はもとより、不安定就労の増大や生活基盤の欠如による所得格差の拡大、社会保障システムの脆弱化、ひいては社会不安の増大、少子化の一層の進行等深刻な社会問題を惹起しかねない。
 (参考)

○失業者の増加15〜24歳の失業者数  1992年40万人→2002年69万人
○高い失業率15〜24歳の失業率   1992年4.5%→2002年9.9%
○フリーターの増加1992年101万人 → 2002年193万人
○無業者比率の増加大卒無業比率 1992年5.7%→2002年21.7%(約12万人)
高卒無業比率 1992年4.7%→2002年10.5%(約14万人)
○高い離職率(7・5・3減少)
 就職後3年以内の離職率が中卒7割、高卒5割、大卒3割

(2)原因分析
 (1)の背景として、
  第1に、需要不足等による求人の大幅な減少と、求人のパート・アルバイト化及び高度化の二極分化により需給のミスマッチが拡大していること、
 第2に、将来の目標が立てられない、目標実現のための実行力が不足する若年者が増加していること、
 第3に、社会や労働市場の複雑化に伴う職業探索期間の長期化、実態としての就業に至る経路の複線化、求められる職業能力の質的変化等の構造的変化に、従来の教育・人材育成・雇用のシステムが十分対応できていないこと
などが挙げられる。

(3)問題点
 若年者問題の原因を、若年者自身のみに帰することなく、教育、人材育成、雇用などの社会システムの不適合の問題として捉えて対応する必要がある。
 特に、職業探索期間の長期化や就業に至る経路の複線化に対応して、これまでの卒業即雇用という仕組みだけでなく、各個人の能力、適性に応じ、試行錯誤を経つつも、職業的自立を可能とする仕組みが必要となっている。

(4)事務事業の必要性
 (1)の現状、(2)の原因分析、(3)の問題的に鑑み、若年者の求人の大幅な減少や即戦力志向が高まる中で、学校卒業後、未就職者、フリーター等となる者が増えているが、こうした者を含め広く若年者を対象として、一定期間、企業実習及びそれに関連した教育訓練を行う新たな仕組みである「日本版デュアルシステム」を我が国に導入し、実践的な能力開発を行い、若年者を一人前の職業人として育て、安定就労と職場定着を図る必要がある。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成16年度以降
アウトプット指標 H16 H17 H18 H19 H20 目標値/基準値
実施訓練機関数            
実習等受入れ企業数            
訓練受講者数(人) 4万人          
訓練受講者のパート雇用への移行率(%)            
訓練受講者のフルタイム雇用への移行率(%)            
(説明)
 当該指標を確認することにより、日本版デュアルシステムの事業成果の確認が可能。
(モニタリングの方法)
 事業実施報告


2.評価
(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 本事業は、未就職卒業者やフリーター等を含め広く若年者の安定就労の促進やキャリア形成を支援することにより、経済や雇用の安定・拡大を図るものであり、公益性を有する。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 本事業は、企業での実習と教育訓練を組合せる新たな制度であり、産学官の関係者からなる場において全国的に共通な運営のための指針について協議するなど全国的な枠組みを定めるとともに、具体的な推進にあたっては、産学の全国団体や他省庁とも連携・協力し、導入・普及の促進を行っていく必要がある。
 このため、国レベルで行う必要性を有する。
民営化や外部委託の可否
   
(理由)
 本事業は、公的なコーディネートや助成金等による支援措置は国で行うものの、企業実習は企業、教育訓練は一部民間の教育訓練機関も活用して行うものであり、民間の活用も積極的に行うものである。
緊要性の有無
   無
(理由)
 高卒者等が学校から職業生活への移行を円滑に行うことができず、高卒未就職者、フリーター、無業者等が急増し、若者の職業能力の蓄積に深刻な影響が生じるとともに、今後、これを通じて我が国の競争力・生産性の低下といった経済基盤の崩壊等につながりかねない事態であることから、緊急に対応することが必要である。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
(1) 企業内での実習訓練(OJT)と教育訓練(OFF−JT)を効果的に組合せることにより、企業の即戦力志向や求める職業能力の高度化等に対応した実践的な訓練が可能。〔実践的な訓練の実施による若年者の能力開発の効果〕
(2) 訓練修了後は、修得した実践的な能力により、実習した企業や他企業への安定的な就職を促進することが可能。〔若年者の能力が向上したことによる雇用の安定・拡大の効果〕
(3) (1)(2)の結果、失業、フリーター、無業となっている者が減少し、適切なキャリア形成を行う若者が増加することにより、我が国の中長期的な競争力・生産性の維持・向上が達成されるもの。〔経済基盤の維持・向上の効果〕
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 本事業による人材育成の対象となった者の安定就職や実践的な能力開発が見込まれる。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 特になし。

(3) 効率性
手段の適正性
 若年者を、一人前の職業人に育て、職場に定着する仕組みとして、既存の職業訓練の活用や企業による受入れを図るなど、既存の教育訓練資源を最大限活用するものであり、手段として適正である。
 また、そのための国の支援としては、統一的な運営のための指針の策定や、産学の団体との連携・協力、公的なコーディネートの実施、助成金の活用等の日本版デュアルシステムを推進するための最低限の環境整備であり、手段として、効率的かつ適正であると考えられる。
効果と費用との関係に関する分析
 上記のとおり、企業や民間教育訓練機関等既存の教育訓練資源を最大限活用するものであり、国自らが公共職業訓練として実施する場合に比べ、割安であることは明白である。
 また、企業内での実習訓練(OJT)と教育訓練(OFF−JT)を効果的に組合せることにより、企業の求める能力の高度化に対応した実践的な能力開発を可能とするものであり、従来の実習訓練のウェイトが相対的に低い訓練に比べ、訓練効果は向上すると思われる。
 この結果、効果と費用との関係について見ても、従来より高い費用対効果をあげることができるものと考えられる。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
  
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他
 特になし



3.特記事項

(1) 学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 日本版デュアルシステムのあり方の検討にあたり、研究会やヒアリングを通じ、学識経験を有する者の活用を図る予定。
(2) 各種政府決定との関係及び遵守状況
 「経済財政運営と構造改革に関する基本方針2003」に、「企業ニーズ等労働市場の状況に応じ企業実習と教育・職業訓練を組み合わせた若年者への「実務・教育連結型人材育成システム(日本版デュアル・システム)」を導入する。」と盛り込まれた。
(3) 総務省による行政評価・監視等の状況
特になし
(4) 国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
特になし
(5) 会計検査院による指摘
特になし


トップへ
戻る