政策評価の結果

(10−1−I)
実績評価書要旨
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 国際機関の活動に対し協力すること
I 国際労働機関が行う技術協力に対し積極的に協力すること
担当部局・課 主管課 大臣官房国際課
関係課 職業能力開発局海外協力課


1.現状分析

実績目標1 開発途上国における雇用開発、女性の就業・雇用機会の拡大に貢献すること
(評価指標)
プロジェクトの対象人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
72
実績目標2 開発途上国の労働基準の向上のためのセミナー等を通じて、健全な労働環境の整備に貢献すること
(評価指標)
参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
75 81 304
実績目標3 アジア太平洋地域技能開発計画(APSDEP)への協力を通じて、アジア太平洋地域の職業能力開発の向上に貢献すること
(評価指標)
任意拠出金支出額(百万円)
H9 H10 H11 H12 H13
19 21 19 21 19


2.評価

現状分析 グローバル化が進展する中で、雇用・労働分野における諸問題は開発途上国の安定的で継続的な経済発展を妨げている主要因の一つとなっている。その一方でアジア太平洋地域開発途上国においては、未だ非常に脆弱な基盤しか備えていないため、このような諸問題を自立的に解決するための体制が十分ではない。
 こうした状況において、アジア太平洋地域の安定的で継続的な経済発展に資するためには、雇用・労働分野において見識、ノウハウ等を豊富に有すグローバルな組織である国際労働機関の枠組みを活用することが効果的であることから、国際労働機関の行う技術協力に対する資金・技術両面での積極的な協力が重要となっている。
施策手段の適正性の評価 ILO等に資金を任意拠出し、マルチ・バイ方式で事業を実施することは、ILOの有する域内加盟国関係者との幅広いネットワークや長年にわたって蓄積してきた豊富な経験・ノウハウを利用できるとともに、援助国である日本が二国間で直接支援を行う場合と同様に、事業の企画・実施の全段階を通して積極的に関与することができるので、我が国として資金を効率的に活用できる。また、一度に複数の国を対象にした事業を実施することができることから、広い波及効果が期待でき、効率的かつ適正な施策手段といえる。
総合的な評価 ILOやAPSDEPを通じた本事業は、国際機関の豊富なネットワークと専門知識、ノウハウに加え、加盟国同士が相互に協力し合う仕組みにより、二国間協力ではカバーできない国々を含め、アジア太平洋地域の雇用・労働分野における諸問題の解決に関して、幅広くかつ効率的に貢献している。


(10−1−II)
実績評価書要旨
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 1 国際機関の活動に対し協力すること
II APECの人材養成分野の活動に対し協力すること
担当部局・課 主管課 職業能力開発局海外協力課
関係課  


1.現状分析

実績目標1 APECの人材養成分野での協力を通じて、アジア太平洋地域の職業能力開発の向上に貢献すること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 対象国の現地日系企業の研修施設等を活用し、現地の地域住民に対して基礎的な技術技能を習得させるための長期の研修事業(APEC人材養成技能研修事業)、APEC域内の人材養成政策担当者等を対象として、域内の人材養成のあり方について議論する官・民代表者等による国際会議(APEC人材養成国際フォーラム)及び開発途上国における物流管理、生産管理に携わる指導的立場のホワイトカラー労働者に対し、民間企業を活用して必要とされる知識・技能を習得させる研修事業(APECホワイトカラー能力開発研修事業)を実施する。
(評価指標)
APEC人材養成技能研修事業修了者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
611 1,100 1,314 1,562 1,470
(備考)
評価指標は(財)海外職業訓練協会の事業報告から集計したものである。
(評価指標)
APEC人材養成国際フォーラム
H9 H10 H11 H12 H13
(備考)
毎年、テーマを変えて実施していることから、参加者数の増減等で客観的に評価するのは不適切であるため、評価指標は、当フォーラムの参加者に対し行っている評価調査による。
(評価指標)
APECホワイトカラー能力開発研修事業修了者数(人)
H9 H10 H11 H12 H13
16 13 15 15 14
(備考)
評価指標は(財)日経連国際協力センターの事業報告から集計したものである。


2.評価

現状分析  アジア太平洋地域の国・地域における貿易投資の自由化・円滑化及び経済・技術協力の推進による域内の経済発展を目的としたAPEC(アジア太平洋経済協力)では、APEC人材養成枠組み宣言等において、経済成長、貧困撲滅、完全雇用等の実現のためには人材養成がきわめて重要であり、その推進には公共部門と民間部門との協調的行動が必要であるとしており、このため、APECの人材養成分野の活動に対する官民による協力が求められている。
施策手段の適正性の評価  APECは、域内の経済開発のためには官民協力によるAPEC域内の人材養成が重要課題であるとしている。我が国が行っている事業は、APEC人材養成技能研修事業において現地日系企業の研修施設、教材等を活用し、また、APECホワイトカラー能力開発研修事業では事業全体を通じ海外の経営者団体及び国内の民間企業とのネットワークを活用しつつ、実地研修の場としても民間企業の協力を得ているなど、民間のノウハウ等を有効に活用した実施スキームとなっており、適正な手段と認められる。
総合的な評価  我が国は、APEC域内の人材養成分野の活動に対する協力として、官民の特長を活かした効果的な手段により、技術面の協力、先進的な事例等の情報を共有する機会の付与等を行っており、その成果についても、参加者及びAPECの人材養成分野における技術協力の推進を担うAPEC人材養成作業部会からも高い評価を得ており、APECの人材養成分野での協力を通じ、アジア太平洋地域内の経済格差の是正、持続的な経済成長に貢献している。


(10−2−I)
実績評価書要旨
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 国際協力の促進により国際社会へ貢献すること
I 福祉医療分野における人材育成のための技術協力を推進すること
担当部局・課 主管課 大臣官房国際課
関係課  


1.現状分析

実績目標1 開発途上国の行政官の研修を通じて、開発途上国の社会開発に貢献すること
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
研修生受入人数  (人) 111 172 233 399 147
研修参加者からの事業評価
実績目標2 開発途上国の制度作りの立案・推進のための日本人人材養成研修を通じて、開発途上国の社会開発に貢献すること
(評価指標) H9 H10 H11 H12 H13
研修生参加者数  (人) 17 16 24 26 22
研修参加者からの事業評価


2.評価

現状分析  開発途上国において、特に自立的で持続可能な開発を進めていくためには、人材開発は極めて重要な要素である。東南アジア諸国においては、過去の我が国の援助及び自国の経済成長によって、ある程度の開発が進められてきたが、20世紀末に起こったアジア通貨危機に見るようにその社会的基盤は未だ脆弱であり、今後の一層の開発には、人材開発を中心としたソフト分野の支援を始めとする技術支援が不可欠である。
 脆弱な社会基盤の中で社会開発の先鞭をつけていくのは中央政府であり、人材開発の中でも、開発途上国における中央政府の安定性と役割は非常に重要であり、中央政府の機能向上及び人材育成が最優先課題となっている。
 特に開発の礎となる福祉医療分野においては、その基盤整備を担う優れた人材の養成が急務である。
施策手段の適正性の評価  開発途上国の福祉医療の整備を図るためには、専門知識を有する人材の質的量的充実が不可欠であるが、限られた経費の中で多数の開発途上国の人材開発を支援する必要がある。そのため、日本における経験を伝授するための研修を行うことが最も効果的な手段である。また、途上国への技術移転を担う日本人専門家は技術協力の要であり、その養成は我が国の国際協力を効率的・効果的に進める上で極めて重要である。
総合的な評価  過去、厚生分野での研修卒業生は全開発途上国で2500名を超え、東南アジア諸国のみで2000名を超えている。各国平均で約200名の中央政府職員を育成しており、対象機関がほぼ保健省と社会福祉省に限られていることを考慮すると、各省幹部の相当数が研修を卒業していることとなり、その影響力及び貢献は図りしれず、各国政府から多大な感謝と高い評価を得ている。
 また、日本人専門家養成事業についても、技術移転による途上国の専門家の質的量的向上に貢献している。


(10−2−II)
実績評価書要旨
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 10 国際化時代にふさわしい厚生労働行政を推進すること
施策目標 国際協力の促進により国際社会へ貢献すること
II 労使関係、労働分野における人材育成のための技術協力を推進すること
担当部局・課 主管課 大臣官房国際課
関係課 職業能力開発局海外協力課、外国人研修推進室


1.現状分析

実績目標1 開発途上国の健全な労使関係の構築に貢献する人材を確保すること
(評価指標)
 研修参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
33 29 26 28 29
実績目標2 開発途上国のIT人材の養成に貢献すること
(評価指標)
  国内研修修了者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
36
実績目標3 開発途上国において職業訓練指導を担う者を養成すること
(評価指標)
 外国人留学生受入事業における外国人留学生の受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
10 16 16 18
実績目標4 開発途上国の労働者等の受入れを通して、開発途上国への技術移転を推進すること
(評価指標)
 国際技能開発計画における外国人研修生受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
202 197 162 158 141
(評価指標)
 外国人基礎技能研修生受入事業における外国人研修生受入人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
549 526 519 534 450
(評価指標)
 外国人研修指導、援助事業における、集合座学研修を効果的に実施するための公共職業能力開発施設での集合研修実施支援人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
2,107 511 614 1,081 533
(評価指標)
 外国人研修指導、援助事業における、中小企業に対する日本語教育における支援研修生人数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
153 1,098 1,475 1,871 2,288
(評価指標)
 技能実習制度推進事業における、セミナー参加者数  (人)
H9 H10 H11 H12 H13
264 324 342 251 350
(評価指標)
 技能実習制度推進事業における、指導書等の作成数  (部)
H9 H10 H11 H12 H13
6,500 9,000 15,300 8,000 9,000


2.評価

現状分析 開発途上国にとって、国造りの担い手となる優れた人材を育成・確保することは、持続可能な社会経済の開発を推進するための重要な基盤である。しかしながら、開発途上国においては、経済・産業発展のために必要とされる技術者及び技能労働者の人材不足はもとより、これら人材を指導する管理・監督者、職業訓練を行う指導員及び労使関係安定のための取組みを行う人材も非常に不足している現状にある。また、近年の情報技術(IT)の進展に伴い情報へのアクセス、情報の活用といった面で国際的な格差(情報格差)が発生している。この解消を図ることが国際社会全体の新たな課題となっており、その解決手段のひとつとしてITに係る人材育成の重要性も増しているところである。
施策手段の適正性の評価 開発途上国労働問題労使協力事業については、日本の過去の経験から明らかなように、労使間問題の解決は、政府が直接介入するより当事者同士で解決を目指すことが有効である。また我が国の労使団体の協力を得られ易い公益法人を推進母体として事業を行うことで、個別問題処理の好事例情報及び経験の共有等実践的なレベルの協力が行える。開発途上国人事・労務管理者育成事業については、限られた経費の中で多数の開発途上国の人材育成を支援する必要があるため、日本における人事労務管理手法を伝授するための研修を行うことが最も効果的な手段である。ITに係る開発途上国を対象とした研修事業は、日本国内に招聘して行う国内研修と、開発途上国で行う現地研修を組み合わせ、36名の国内研修修了者数に対し、現地研修についてはその27倍に相当する971名が参加したことから、波及効果は十分に認められ、効率的・効果的な実施が図られており、施策手段は適正であったと言える。外国人留学生受入事業、国際技能開発計画及び外国人基礎技能研修生受入事業については、我が国に外国人留学生・研修生を国費により受入れ、高度な技術・技能を付与するものであり、開発途上国の人材育成のための技術協力を推進するという点から一定の効果が期待できる。また、外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業は、我が国に受け入れた研修員の能力向上のみならず、研修員が我が国において習得した技術・技能をもって自国で活躍することによる技術移転の効果が期待できる効率的な手段であり、研修員受入れに関わる制度の推進事業とあいまって、事業全体の適正かつ円滑な推進を実現する効果的手段といえる。
総合的な評価 アジア・太平洋地域開発途上国における労使関係安定に資するための人材開発・育成に対し、我が国の労使団体の自主的な協力を得て支援を行うことは、各対象国に対し、より実践的で細かいニーズに沿った事業が行えるものであり、各国からの高い評価を得ているところである。ITに係る開発途上国を対象とした研修事業は、開発途上国の民間企業におけるIT導入の際に必要な人材育成に焦点を当て、企業内の指導者層に対象を絞って実施したことや現地経営者団体の協力を得たことにより、波及効果が十分に得られ、効果的・効率的な実施が図られた。外国人留学生受入事業、国際技能開発計画及び外国人基礎技能研修生受入事業については、我が国における技術・技能の開発途上国への移転を図ることを目的として実施しており、技術移転の効果が認められている。また、外国人研修指導、援助事業及び技能実習制度推進事業は、我が国における技術・技能の開発途上国への移転を図ることを目的とする外国人研修・技能実習制度の適正かつ円滑な推進を図るために実施しており、上記2.(1)のとおりの技術移転の効果が認められる。なお、今後においても、より一層適正かつ円滑な制度の運営が図られるよう、また、効率的かつ効果的な指導、援助が行われるよう、必要に応じ所要の見直しを図ることとする。


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