戻る

(3−7−I)
実績評価書
平成14年9月

政策体系 番号  
基本目標 労働者が安心して快適に働くことができる環境を整備すること
施策目標 個別労働関係紛争の解決の促進を図ること
I 個別労働関係紛争の解決の促進を図ること
担当部局・課 主管課 大臣官房地方課
関係課  


1.施策目標に関する実績の状況

実績目標1 個別労働関係紛争の迅速適正な解決を図ること
(実績目標を達成するための手段の概要)
 企業組織の再編や人事労務管理の個別化等に伴い、労働関係に関する事項についての個々の労働者と事業主との間の紛争(以下「個別労働関係紛争」という。)が増加していることにかんがみ、これらの紛争の実情に即した迅速かつ適正な解決を図るため、下記の総合的な個別労働関係紛争解決システムの整備を図るもの。
(1)  都道府県労働局長による情報提供、相談等
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争の未然防止及び自主的な解決の促進のため、労働者又は事業主に対し、情報の提供、相談その他の援助を行うものとする。
(2)  都道府県労働局長による助言及び指導
 都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(男女雇用機会均等法第12条に規定する紛争を除く。)に関し、当事者の双方又は一方からその解決につき援助を求められた場合には、当事者に対し、必要な助言又は指導をすることができるものとする。
(3)  紛争調整委員会によるあっせん
 都道府県労働局に、紛争調整委員会を置き、都道府県労働局長は、個別労働関係紛争(男女雇用機会均等法第12条に規定する紛争を除く。)について、当事者の双方又は一方からあっせんの申請があった場合において、当該紛争の解決のために必要があると認めるときは、紛争調整委員会にあっせんを行わせるものとする。
(評価指標)
民事上の個別労働紛争相談件数
H9 H10 H11 H12 H13
41,284
(備考)
 評価指標に係る個別労働紛争解決制度は平成13年10月1日より施行されたものであり、よって数値は、平成13年度下半期分のみのものである。当該指標に係る調査は3か月ごとに実施している。
(評価指標)
助言・指導申出受付件数
H9 H10 H11 H12 H13
769
(備考)
 評価指標に係る個別労働紛争解決制度は平成13年10月1日より施行されたものであり、よって数値は、平成13年度下半期分のみのものである。当該指標に係る調査は3か月ごとに実施している。
(評価指標)
あっせん申請受理件数
H9 H10 H11 H12 H13
764
(備考)
 評価指標に係る個別労働紛争解決制度は平成13年10月1日より施行されたものであり、よって数値は、平成13年度下半期分のみのものである。当該指標に係る調査は3か月ごとに実施している。
(評価指標)
処理期間
H9 H10 H11 H12 H13
  助言・指導 1か月以内 66
1か月〜2か月以内 21
2か月〜3か月以内 8
3か月超え 5
あっせん 1か月以内 59
1か月〜2か月以内 33
2か月〜3か月以内 6
3か月超え 2
(備考)
 助言・指導、あっせんそれぞれの手続終了件数に占める当該処理期間の割合(パーセント)を示すもの。
 評価指標に係る個別労働紛争解決制度は平成13年10月1日より施行されたものであり、よって数値は、平成13年度下半期分のみのものである。当該指標に係る調査は3か月ごとに実施している。
(評価指標)
手続終了件数
H9 H10 H11 H12 H13
  助言・指導 701
あっせん 523
(備考)
 個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律は平成13年10月1日より施行された。よって評価指標の数値は、平成13年度下半期分のみのものである。


2.評価

(1) 実績目標の達成状況の評価
実績目標1 個別労働関係紛争の迅速適正な解決を図ること
有効性  個別労働紛争解決制度が平成13年10月に施行される以前においては、旧労働基準法第105条の3に基づく労働条件に関する紛争についての紛争解決援助(労働局長が助言・指導を行う。以下、「旧紛争解決援助」という。)が行われていた。この件数との比較を行う。
 民事上の個別労働紛争相談件数
 労働基準法等法令違反を伴わない民事上の個別労働紛争に関する相談件数は、41,284件であり、旧紛争解決援助制度の申出受付件数(平成12年度下半期24,933件)と比較すると1.66倍(小数第3位四捨五入。以下同じ)の増加となっている。
 助言・指導申出受付件数
 都道府県労働局長による助言・指導に係る申出受付件数は平成13年度下半期で769件であり、旧紛争解決援助制度の申出受付件数(平成12年度下半期346件)と比較すると2.2倍の増加となっている。
 あっせん申請受理件数
 紛争調整委員会によるあっせんに係る申請受理件数は平成13年度下半期で764件であり、解決手段としては異なるが旧紛争解決援助制度の申出受付件数(平成12年度下半期346件)と比較すると2.4倍の増加となっている。
 従来、国(労働局)による民事上の個別労働紛争についての解決手段としては、旧紛争解決援助あったが、平成13年10月1日以降、労働局長による助言・指導と紛争調整委員会によるあっせんと2つの手段を選べるようになり、合計で1,533件にも達する。このことは利用者である紛争当事者による紛争解決ニーズの高まりに対し、紛争解決手段の多様化がマッチしたことの現れである。
 処理期間は、助言・指導制度、あっせん制度ともに、そのほとんどが1か月以内にその処理を終えている。平成13年度の労働関係民事通常訴訟事件の既済事件(合計2095件)の平均審理期間が13.5か月(3か月未満19%、3か月〜6か月未満17%、6か月以上64%)であることと比較すると、処理期間は圧倒的に短く、ADR(裁判外紛争処理)として国民に大きく寄与しているといえる。
効率性  個別労働関係紛争の解決を図るために講じている労働局長の助言・指導及び紛争調整委員会によるあっせん制度については、それぞれの特性を生かした迅速かつ適正な処理が行われており、効率的に運用されているといえる。

(2) 施策目標の達成状況と総合的な評価
現状分析  社会経済情勢の変化に伴う企業再編、人事労務管理の個別化等を背景として、個々の労働者と事業主との間の紛争は増加傾向にあり、助言・指導の申出受付件数及びあっせん申請受理件数を見ると、紛争解決を求めるニーズも高い。
施策手段の適正性の評価  個別労働紛争解決制度では、相談窓口においてあらゆる労働関係の相談を一旦受け止めるワンストップサービスを展開し、さらに従来労働局においては紛争解決の対象とされていなかったセクシュアルハラスメントやいじめにまでその対象事案を拡げて、解決手段として労働局長による助言・指導制度のほか、労働局に設置された第三者機関的な機能を有する紛争調整委員会によるあっせん制度により、実情に即して紛争の解決の促進を図っており、総合的な紛争解決システムを構築している。相談窓口は全国に250か所設置され、都道府県労働局がシステムを運用していることから、システムは利用者である労働者及び事業主にとって、非常に利便性及び信頼性が高く、紛争解決に有効なものとなっていると思われる。
総合的な評価  概ね施策目標を達成できていると考える。今後も社会経済情勢の変化に伴う個別労働関係紛争の増加が懸念されることから、必要な体制整備を図り、より一層、国民のニーズに応えた迅速かつ適正なシステムの運用に留意する必要がある。


3.政策への反映方針

 施策目標については概ね達成できているが、今後も増加することが懸念される個別労働関係紛争の解決について、ADRとしての特性の一つである迅速性を維持し、国民のニーズに応えられるよう、現状の施策を着実に推進していく。


4.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
「労働政策審議会個別的労使紛争処理対策部会」

(2)各種政府決定との関係及び遵守状況

「第九次雇用対策基本計画(平成11年8月13日閣議決定)」
III 雇用対策の基本的事項
7 安心して働ける社会の実現
(1) 個別労使紛争処理対策
 近年の厳しい経済情勢の下で、企業のリストラクチャリングが進展する一方、企業の人事労務管理制度においても、能力主義・成果主義的な賃金・処遇制度の導入等従来の集団管理から個別管理へ移行しつつある傾向が見受けられる。このような状況を背景として、解雇、労働条件の引下げといった問題はもとより、配置転換、セクシャル・ハラスメント、個々の労働者の業績評価等様々な問題について個別労使紛争が著しく増加しており、今後もこの状況はさらに続くものと見込まれる。
 このような状況から、労働条件に関する個別労使紛争の簡易・迅速な解決を促進するため、都道府県労働基準局において紛争解決援助制度を運用しており、この制度の積極的活用を図ることとする。
 また、今後、この制度の運用状況や都道府県機関、司法機関等による個別労使紛争への対応状況を踏まえつつ、労働関係当事者の立場に立ち、自主解決の支援を含めワン・ストップサービス及び簡易なあっせんサービスの必要性等も勘案し、セイフティ・ネットの一環として、総合的な個別労使紛争処理制度の在り方について検討を進めることとする。

「規制緩和推進三か年計画(平成12年3月31日閣議決定)」
9 雇用・労働関係
(2) 労働時間等
事項名 措置内容 実施予定時期
相談窓口の整備等  雇用・労働関係全般に係る苦情・紛争の相談体制を始めとした個別的労使紛争処理制度の在り方について検討を進める。 12年度(検討)

「経済構造の変革と創造のための行動計画(平成12年12月1日閣議決定)」
I.企業の創造的な経済活動と新規産業創出を促進するための環境整備
【具体的行動計画】
2.雇用システムの改革
(7) 個別的労使紛争処理制度の整備
 個別的労使紛争の増大と多様化に適切に対応し、簡易・迅速な紛争解決システムを整備するため、個別的労使紛争処理法案(仮称)を次期通常国会に提出する。

以上の政府決定に基づき、平成13年6月29日に「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律(平成13年法律第112号)」が成立し、同年10月より施行された。

(3)総務省による行政評価・監視等の状況
特になし

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律案附帯決議(衆議院)」
 政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 個別労働関係紛争が増加しており、相当な件数にのぼるようになっているという実態等を踏まえ、これを公正、迅速、適正に解決するために、司法、地方行政を含めた複線的な紛争解決システムの整備に努めること。
 紛争調整委員会が男女雇用機会均等法に基づく調停等を行う場合には、機会均等調停委員会の設置の趣旨や目的、名称・設立の経緯を十分に尊重し、その扱いを明確にした運営を行うこと。
 地方公共団体が地方労働委員会等において個別労働関係紛争の解決のための取組を行うに当たり、十分な連携を図るとともに、必要な支援を行うこと。また、中央労働委員会は、全国の地方労働委員会が行う個別労働関係紛争の解決のための取組に係る情報の収集及び提供その他必要な支援を行うこと。
 紛争調整委員会が行うあっせんにおいては、事実の把握、紛争当事者双方からの十分な意見聴取に努めること。また、紛争調整委員会の運営状況の評 価を地方労働審議会で行うとともに、職員の研鑽を図り、委員会の機能の充 実を図ること。
 都道府県労働局、地方労働委員会等における個別労働紛争解決制度については、裁判外紛争処理制度として適切に位置づけること。あわせて、労働関係事件への対応について、裁判外紛争処理と裁判所の連携を明確にし、十分な検討を行うこと。
 国が行う地方労働行政については、地方公共団体と十分な連携を図るとともに、地方労使団体の意見を十分尊重するものとすること。

「個別労働関係紛争の解決の促進に関する法律案附帯決議(参議院)」
 政府は、本法律の施行に当たり、次の事項について適切な措置を講ずるべきである。
 個別労働関係紛争が増加しており、相当な件数にのぼるようになっているという実態等を踏まえ、これを公正、迅速、適正に解決するために、司法、 地方行政を含めた複線的な紛争解決システムの整備を図ること。
 個別労働関係紛争については、企業内において、不満・苦情の段階で、これを適切に処理することが望ましいため、企業内における苦情処理機関等の整備やその活用の促進に向けた情報提供等の支援を強化すること。
 また、本法に基づき、労働者が紛争解決について援助を求めた場合、このことを理由に事業主が不利益な取扱いをしてはならないとの法第四条第三項の趣旨を労働関係当事者に周知徹底する。
 紛争調整委員会が男女雇用機会均等法に基づく調停等を行う場合には、機会均等調停委員会の設置の趣旨や目的、名称・設立の経緯を十分に尊重し、その扱いを明確にした運営を行うこと。
 地方公共団体が地方労働委員会等において個別労働関係紛争の解決のための取組を行うに当たり、十分な連携を図るとともに、必要な支援を行うこと。また、中央労働委員会は、全国の地方労働委員会が行う個別労働関係紛争の解決のための取組に係る情報の収集及び提供その他必要な支援を行うこと。
 紛争調整委員会が行うあっせんにおいては、事実の把握、紛争当事者双方からの十分な意見聴取に努めること。また、紛争調整委員会の運営状況の評価を地方労働審議会で行うとともに、職員の研鑽を図り、委員会の機能の充 実を図ること。さらに、本法による個別労働関係紛争処理制度が十分に活用されるよう、本制度の周知徹底に努めるとともに、利用者の利便性を高めるために体制の充実を図ること。
 都道府県労働局、地方労働委員会等における個別労働紛争解決制度については、裁判外紛争処理制度として適切に位置づけること。あわせて、労働関係事件への対応について、裁判外紛争処理と裁判所の連携を明確にし、十分 な検討を行うこと。
 国が行う地方労働行政については、地方公共団体と十分な連携を図るとともに、地方労使団体の意見を十分尊重するものとすること。

(5)会計検査院による指摘
特になし
 


トップへ
戻る