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事業評価書(
事前
・事後)
平成14年9月

評価対象(事務事業名) 求人、新規学卒者等の求める能力の明確化の促進
担当部局・課 主管課 職業能力開発局キャリア形成支援室
関係課  


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 労働者の職業能力の開発及び向上を図るとともにその能力を十分に発揮できるような環境の整備をすること
施策目標
雇用の安定・拡大を図るための職業能力開発の枠組みを構築すること
I キャリア形成支援システムを整備すること

(2) 事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 公共職業安定所にアドバイザーを配置し、求人企業に「生涯職業能力開発体系」等を活用した能力情報を求人情報に反映するよう、要請することによって、求職者に求められる能力要件の明確化を推進する。
 また、アドバイザーが、「生涯職業能力開発体系」を活用し、能力情報開示の推進業務を実施できるよう、雇用・能力開発機構において研修を実施する。
(注)「生涯職業能力開発体系」
 産業・業種ごとの各職業・職務において求められている職業能力を、仕事の種類と仕事の難易度に応じて整理、体系化し、さらに、その各職業能力を習得するのに必要な能力開発コースを段階的・体系的に整理したもの。
予算額 (単位:百万円)
H11 H12 H13 H14 H15
754

(3) 問題分析
(1)現状分析
 今後、労働者がキャリア形成を図っていくためには、企業が労働者に対して能力情報の開示を進めることにより、職種横断的な労働市場の形成、能力の見える社会を目指していくことが必要であるが、現状では、企業が労働者に対して求める能力情報の開示は十分になされていない。
(参考)
 「従業員に求める能力」を従業員に「十分知らせている」「知らせている」企業の割合
 21.3%
 (資料出所 旧(株)三和総合研究所「職業能力開発に関する調査」(平成12年)

 また、新卒者については、就業後早期離職の増加等の問題が生じ、若年者のキャリア形成上大きな問題となっている。
(参考)
 ○就職後離職率  就職後3年以内の離職率が中卒約7割、高卒約5割、
 大卒約3割(いわゆる7・5・3問題)
 (資料出所 厚生労働省「職業安定業務統計」)
(2)原因分析
 (1)の背景として、企業による労働者個人のキャリア形成支援策は、次第に強化されつつあるものの、現状では、なお一部の企業が積極的に取り組んでいるに止まっている。
 また、新卒者については、厳しい学卒市場で、自分の能力・適性に合致した就職先に遭遇する確率が低下している等の背景がある。
(3)問題点
 求職者に対して企業側(求人側)から提供される情報が不十分であるため、求職者の考える企業の仕事内容やキャリアルートと、就職した後の実際の内容との間に乖離が発生し、早期離職率の高まり、または離職しないまでもキャリア形成を行うための意欲の低下等が起きている。
(4)事務事業の必要性
 企業の求める能力要件を的確に求職者に伝えるために、公共職業安定所にアドバイザーを設置し、求人企業の能力情報の開示を推進する必要がある。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成15年度
アウトプット指標 H15 H16 H17 H18 H19 目標値/基準値
能力要件明確化アドバイザーの相談件数            
(説明)
 求人者に対して、アドバイザーが相談・指導を行った件数
(モニタリングの方法)
 雇用・能力開発機構による調査


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 公益性がある公共職業安定所の職業紹介事業の機能を高めるとともに、企業のキャリア形成支援を促進するための環境づくりやシステムづくりを進めるものであり、民間では実施が難しいため。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 必要とされる職業能力を各職業・職務ごとに明確化するためのツールである「生涯職業能力開発体系」の作成は全国規模で行われており、そのツールを利用しての相談援助により、求人と求職の間の職業能力のミスマッチを解消していくことは、全国一律で行う必要があり、国が実施するのが適当である。
民営化や外部委託の可否
(理由)
 本事業の実施には「生涯職業能力開発体系」の活用が前提となるが、「生涯職業能力開発体系」の開発・運用は、公共職業訓練により蓄積されたノウハウや、全国の事業主団体等民間の活力を積極的に活用している。しかし、それにより明確化された情報をもとに個人が自発的にキャリア形成を行っていくことを推進し、職業能力のミスマッチの解消等を図り、雇用の安定・拡大を目指すことは、全国一律に、公平な事業運営が要求されるため、国を主体とした実施が必要なものであり、この事業についての民営化は困難である。
 また、雇用・能力開発機構は、すでに「生涯職業能力開発体系」に関してのノウハウの蓄積があるため、国が直接実施するよりも、国の管理の下、雇用・能力開発機構に事務の一部を委託することが適切である。
緊要性の有無
(理由)
 産業構造等の変化に伴い、労働者に求められる職業能力が急速に変化している中、労働者の失業や就職困難の原因の1つとされている、職業能力のミスマッチを解消するためにも、求人者による能力要件の明確化を通じて、キャリア形成を推進していくためのシステムを構築していくことが喫緊の課題となっている。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 労働者のキャリア形成に関する業務に従事することを希望し、かつ人事労務管理の経験を有する中高年離職者を公共職業安定所にアドバイザーとして配置し、さらに、アドバイザーが効果的に能力情報開示の推進業務が実施できるように研修を実施する。
 そのうえで、企業内における職務、仕事を遂行するために必要な職業能力、能力開発目標やキャリア・ルート等を明確化するための情報提供、相談援助とともに、それらの情報を求人情報に反映するよう、アドバイザーから求人者に対して要請する。
 その結果として、求職者側が、キャリア・コンサルティングや職業相談を受け、上記のような明確化された情報をもとに、公共職業能力開発施設又は民間教育訓練施設において、能力開発等が行われる。
 その成果として、求人者側は、必要な能力要件を明確化することで、より希望に近い人材を雇用することができ、求職者側は、希望する職種または企業に就職するために必要な能力要件を容易に入手することができるため、適切なキャリア形成が可能となる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 今後見込まれる効果として、明確化された能力情報をもとに、能力開発等の個人のキャリア形成が行われる一方、求人側と求職側の職業能力のミスマッチが解消され、雇用の安定・拡大が図られる。
 また、この事業の副次的効果として、公共職業安定所を訪れた求職中の中高年離職者をアドバイザーとして新しく雇用するため、直接の雇用創出による中高年の雇用対策という面もある。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 なし


(3) 効率性
手段の適正性
 求人の集まる公共職業安定所にアドバイザーを配置し、求人を出しているにもかかわらず、その企業が求めているような求職者が集まらないといったような企業に対して、相談援助を行い、その相談に際して、労働市場を通じて職業能力を分析、表現できる「生涯職業能力開発体系」を利用することとしている。そして、この事業をすでに「生涯職業能力開発体系」のノウハウの蓄積を有している雇用・能力開発機構に委託することとしており、効果的かつ効率的な事業の実施が可能となり、手段として適正である。
効果と費用との関係に関する分析
 費用−効果分析によると、この事業を行う雇用・能力開発機構は、すでに「生涯職業能力開発体系」のノウハウの蓄積を行っているため、仮に別の団体に同じ額の予算を組み、事業委託したとすると、雇用・能力開発機構ではかかることのないこの事業に必要不可欠な、「生涯職業能力開発体系」の開発費等の費用の分は、本事業の他の費用にかけることができなくなる。
 よって、同じ費用で当該事業を雇用・能力開発機構と別の団体で行った場合とを比較すると雇用能力開発機構で実施した方が、より効率的で効果的な事業を行うことができる。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他    
 なし




3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 なし
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 なし
(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 なし
(5)会計検査院による指摘
 なし


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