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事業評価書(
事前
・事後)
平成14年9月

評価対象(事務事業名) シルバー人材センターによる子育て支援事業の実施
(高齢者活用子育て支援事業)
担当部局・課 主管課 職業安定局高齢・障害者雇用対策部高齢者雇用対策課
関係課  


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 経済・社会の変化に伴い多様な働き方が求められる労働市場において労働者の職業の安定を図ること
施策目標 労働者等の特性に応じた雇用の安定・促進を図ること
I 高齢者の雇用就業を促進すること

(2) 事務事業の概要
事業内容(
新規
・一部新規)
 シルバー人材センターが、高齢者への就業機会の確保・提供を行うことを目的とする事業の一環として、子育ての支援につながる事業を実施する場合、国はその体制整備(事業実施にあたっての関係機関等との調整、サービス提供体制の確保、技能講習、会員と利用者のマッチング、トラブル相談等)に要する経費について補助する。
 (子育て支援事業の具体的事例)
・就学前の幼児の保育施設からの送迎、世話
・就学児童の放課後・土日学習、生活習慣指導 等
予算額 (単位:百万円)
H11 H12 H13 H14 H15
1,733

(3) 問題分析
(1)現状分析
 平成14年4月の高齢者(60歳から64歳まで)の完全失業率は、全体の失業率5.2%と比較して3.2%高い8.4%となるとともに、有効求人倍率も全体の0.52倍と比較して0.38倍低い0.14倍となるなど、高齢者の雇用失業情勢が極めて厳しい状況の中、高齢者の任意就業を通じた社会参加の促進を図ることが重要な課題となっている。
 また、子育て支援については、平成13年の合計特殊出生率が1.33となるなど、依然として低い水準で推移し、人口を維持するのに必要な水準を大幅に下回る状況となっており、少子化対策の推進は引き続き重要な課題となっている。

(2)原因分析
 高齢者の任意就業を通じた社会参加の促進を図るためには、シルバー人材センターのサービス提供会員(シルバー人材センターに会員登録されている60歳以上の健康で就業意欲のある高齢者)のニーズに応じた就業分野を開拓することが重要である。会員の中には、育児分野における資格を有するものもいるが、シルバー人材センターにおいて育児支援サービスが提供可能であることが広く周知されていないため、この分野での就業機会を提供することが困難となっている。
 また、核家族化や働き方の多様化により、働く女性が増加しているにも関わらず、市区町村において、地域に密着した子育て支援策の担い手が不足しているため、保育サービス等が十分でなく、育児等の家庭的な責任を中心的に担っている女性の負担が大きくなっており、家庭生活と職業生活を両立し、子供を産みやすい環境になっていない。

(3)問題点
 シルバー人材センターにおいて育児支援事業を実施し、高齢者の就業機会を確保・提供するため、育児支援事業を効果的に実施できる体制を整備する必要がある。また、育児支援事業等を推進し、地域に密着した子育て支援策の担い手を確保することにより家庭生活と職業生活を両立し、子供を産みやすい環境を創出する必要がある。

(4)事務事業の必要性
 当該事業は、就業意欲のある高齢者が活躍する分野として適当であり、当該分野における高齢者の就業の促進を図ることは、育児支援事業等の担い手の確保の観点及び高齢者の就業機会の観点の双方から必要なものである。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成15年度
アウトプット指標 H15 H16 H17 H18 H19 目標値/基準値
就業延人員            
(説明)
 当該事業に係る会員の就業延人日数
(モニタリングの方法)
 シルバー人材センターからの報告を職業安定局にて集計


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 当該事業の実施により高齢者の就業を通じた社会参加の促進が図られるとともに、地域における育児支援事業等の安定的な担い手の確保に資するものであり、高い公益性を有する。
 また、高齢者の多様な就業ニーズに合致した臨時的・短期的な就業機会の確保・提供は、民間のみによる普及に全てを期待するのは困難であり、国及び地方公共団体において、そうした役割を担う民間団体であるシルバー人材センターに対する支援を行うことが重要である。
国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
その他
(理由)
 高齢化の急速な進展、年金等社会制度改革の実施等を受け、高齢者の多様な就業を通じた社会参加の促進を図るに当たっては、国と地方が連携してシルバー人材センターの支援を図ることが必要である。
 また、少子・高齢化が進む中で、子育て支援は全国的な課題となっており、地方の取組みについて、国がシルバー人材センターへの支援を通じてサービスの担い手を確保することが適当である。
民営化や外部委託の可否
可 否
(理由)
 高齢者を主体として地域に密着した事業を実施している民間団体であるシルバー人材センターの支援を通じて実施するものである。
緊要性の有無
(理由)
 少子・高齢化の急速な進展、年金等制度改革の実施、高齢者を巡る厳しい雇用失業情勢等を受け、早急に対策を講じる必要がある。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 シルバー人材センターが行う子育て支援事業に要する経費の補助→子育て支援事業等の推進→就業機会の拡大→高齢者の雇用就業機会の拡大
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
 本事業を実施することにより、高齢者の雇用就業機会の拡大が図られ、就業を通じた高齢者の経済的自立につながる。さらに、事業が地域で定着していくことにより、今後は会員の創意工夫により実施する独自事業が活発化し、シルバー人材センター運営の自立化が一層促進される。
 また、この就業機会創出効果以外に、子育ての負担を軽減し家族生活と職業生活を両立できる環境が整備され、高齢者の培ってきた豊かな知識と経験を次代を担う児童等に伝承し、高齢者の健康・生きがいにつながり、地域社会の福祉の増進に寄与するとともに、公平で安心な高齢化社会・少子化対策に対応する。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 


(3) 効率性
手段の適正性
 高齢者の多様な就業形態による社会参加の促進を図るためには、地域に密着した仕事を確保・提供することが必要であるが、高齢者を主体として地域に密着した事業を実施している民間団体であるシルバー人材センターの支援を通じて実施していくことが適正である。
効果と費用との関係に関する分析
 本事業は1市区町村(シルバー人材センター)当たり、369万円程度の費用が見込まれるが、先駆的事例をみると、学習支援(おさらい教室)事業で約550人日の高齢者の就業機会を確保・提供しており、本事業を実施することにより、高い雇用創出効果を生じることが期待できるものである。
 この雇用創出効果以外に、地域の高齢者福祉政策の充実等、定量化できない多様な政策効果を生むことに留意が必要である。
他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無
(有の場合の整理の考え方)
 子育て支援に関する施策の1つとしてファミリーサポートセンター事業があるが、本事業とファミリーサポートセンター事業を比較すると、サービス提供会員、サービス提供方法、請負形態等について、互いの事業の特性により明確な区別がなされているところである。

(4) その他
 本事業は、市区町村における子育て支援事業等の少子化対策の実施に対して、シルバー人材センターがその安定的な担い手を確保し、提供することにより「公平で安心な高齢化社会・少子化対策」に資することから、優先的に対策を講じる必要がある。


3.特記事項

(1)学識経験を有する者の知見の活用に関する事項
 「年齢にかかわりなく働ける社会に関する有識者会議の中間とりまとめ」において、シルバー人材センターにつき「今後は、高齢化のさらなる進展、高齢者のニーズの多様化等を受けて、地域における高齢者の労働力需給調整機能から社会参加促進機能まで一層幅広い機能を果たし、地域社会に貢献していくための役割の強化が必要である」とされている。
(2)各種政府決定との関係及び遵守状況
 なし
(3)総務省による行政評価・監視等の状況
 平成14年3月に、総務省の行政監察による勧告「高齢者雇用対策に関する行政評価・監視結果に基づく勧告」がある。
 《勧告要旨》
  ・  シルバー人材センターの会員が雇用関係を有しない就業を通して自己の労働能力を活用するという本来の趣旨に沿って、会員の能力と希望に応じて公平な就業が実現するよう都道府県に対し助言・指導すること

(4)国会による決議等の状況(警告決議、付帯決議等)
 参議院労働・社会政策委員会の高年齢者等の雇用の安定等に関する法律の一部を改正する法律案に対する附帯決議において、政府は、「シルバー人材センターが、高年齢者の多様な就業ニーズに的確に対応した就業機会の確保のために十分な役割を果たすよう、その運営に対する支援の強化を図ること」について適切な措置を講ずるよう努めるべきであるとされている。
(5)会計検査院による指摘
 なし


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