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事業評価書(
事前
・事後)
平成14年9月

評価対象(事務事業名) 地域医療連携のための電子カルテシステム導入補助事業
担当部局・課 主管課 医政局研究開発振興課医療技術情報推進室
関係課  


1.事務事業の内容

(1) 関連する政策体系の施策目標
  番号  
基本目標 安心・信頼してかかれる医療の確保と国民の健康づくりを推進すること
施策目標 利用者の視点に立った、効率的で安心かつ質の高い医療サービスの提供を促進すること
医療サービスの質の向上を図ること

(2) 事務事業の概要
事業内容(新規・一部新規)
 電子カルテを活用し、地域医療機関連携の促進、地域レベルでの医療の質の向上と医療サービスの効率化を図るため、地域において中心的役割を果たしている医療機関と周辺の医療機関に電子カルテを導入し、医療情報ネットワークを構築し、患者の診療情報を共有すること等により、質が高く効率的なチーム医療・グループ診療の実践が可能な地域医療連携体制の構築を図る。
予算額(概算要求時は要求額) (単位:百万円)
H11 H12 H13 H14 H15
1,586

(3) 問題分析
(1)現状分析
 医療分野のIT化の推進は、政府IT戦略本部決定である「e-Japan重点計画」等において、国の施策として取り組みを進めていくものであり、これらの事業はその目的を達成するために実施するものである。
 また、平成14年から概ね5年間を見据えた保健医療の情報化推進計画を「保健医療分野の情報化にむけてのグランドデザイン」として平成13年12月26日にとりまとめ、公表したところである。
 この中で、医療情報システム構築のための達成目標を設定し、電子カルテシステムについては、「平成18年度までに全国の400床以上の病院と全診療所のそれぞれ6割以上へ普及」を図るなどの具体的な数値目標を掲げ、これらの目標達成に向けたアクションプランも策定したところである。
 今後は、これらの実現に向けて戦略的に取り組みを進めることとしている。
 なお、電子カルテの普及率は、昨年7月に(社)日本病院会が会員に対しアンケート調査した結果として1.1%という結果が得られている。

(2)原因分析
 電子カルテシステムの導入に関心が高い医療機関は多数であるが、導入に至らないケースとして、情報化がもたらす効果が明確でないことをあげる医療機関が見受けられる。

(3)問題点
 平成14年度に実施する診療情報共有化モデル事業により、情報化がもたらす効果の検証を行い、その結果を明らかにすることにより、今後の電子カルテ導入に結びつける必要がある。

(4)事務事業の必要性
 平成15年度においても、上記(3)を踏まえつつ、各医療機関の専門性に基づいた、質が高く効率的な医療の実践が可能な地域医療連携体制の構築を図るため、地域の特性に応じた電子カルテシステムの導入を行い、目標達成に向けた今後の普及促進につなげていくことが必要である。

(4) 事務事業の目標
目標達成年度(又は政策効果発現時期) 平成18年度
アウトプット指標 H15 H16 H17 H18 H19 目標値/基準値
普及率 全国の400床以上の病院と全診療所のそれぞれ6割
(説明)
 平成18年度までに全国の400床以上の病院と全診療所のそれぞれ6割以上へ普及を図ることを目標としている。
(モニタリングの方法)
 医療施設調査


2.評価

(1) 必要性
公益性の有無(主に官民の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 医療分野のIT化の推進は政府決定であり、普及の初期段階の期間においては、国の責任の下にIT化を促進するための種々の施策を講じる必要がある。

国で行う必要性の有無(主に国と地方の役割分担の観点から)
 無 その他
(理由)
 IT化の推進は政府決定であり、一律に地方においてこれを行わせる場合には、それ相当の財源措置等が必要であることから、国が主体となって進める必要がある。

民営化や外部委託の可否
   否
(理由)
 質が高く効率的なチーム医療・グループ診療の実践が可能な地域医療連携体制の構築を図ることは、行政の支援と指針の下、医療機関自らが行うものであり、当該支援等は特に国家主導が求められ、民営化や外部委託になじむ事業ではない。

緊要性の有無
   無
(理由)
 平成13年度に政府IT戦略本部が閣議決定した「e-Japan重点計画」において、「日本が5年以内に世界最先端のIT国家となる」という目標を掲げ、国の施策として早急にIT化へ向けた取り組みを進める必要があり、医療分野のIT化についても同様にその実現を強く求められている。

(2) 有効性
政策効果が発現する経路
 平成14年度に実施する診療情報共有化モデル事業により、情報化がもたらす効果の検証を行い、その結果を明らかにすることにより、情報化への取り組みが本格化するものと考えており、15年度における導入補助事業や医療のIT化推進のために、その最も重要な基盤である医療用語・コード等の標準化についても15年度末までの完成を目指しており、これらの事業を通じ、医療分野のIT化の推進がなされる。
これまで達成された効果、今後見込まれる効果
医療のIT化推進のために、その最も重要な基盤である医療用語・コード等の標準化について、平成15年度末までの完成を目指し策定中であるが、そのうち「病名」、「手術・処置名」、「臨床検査」、「医薬品」、「医療材料」については、現在、開発を委託している財団法人医療情報システム開発センターが希望する医療機関に対して提供を開始しており、普及・浸透を図っている。
政策の有効性の評価に特に留意が必要な事項
 

(3) 効率性
手段の適正性
(a)当該事業事務を行わない場合、e-Japan重点計画やグランドデザインにおいて定められた施策の達成は不可能
(b)ほかに想定しうる手段で行った場合、各医療機関ごとの判断に任せられるためe-Japan重点計画やグランドデザインにおいて定められた施策の達成時期がかなりずれ込む
(c)当該事務事業を行った場合、国の協力な支援により、e-Japan重点計画やグランドデザインにおいて定められた施策の達成に向け、積極的な取り組みが可能となる

効果と費用との関係に関する分析
 医療分野のIT化の推進は、医療の質の向上と効率化を図るために取り組んでいるところであるが、費用対効果を分析するには時間が必要である。
 ただし、これらの事業を行うに当たっては、考え得る限りのコスト削減を踏まえたものとしている。

他の類似施策(他省庁分を含む)がある場合の重複の有無   有 無
(有の場合の整理の考え方)

(4) その他
 



3.特記事項

各種政府決定との関係及び遵守状況
「高度情報通信ネットワーク社会推進戦略本部(IT戦略本部)」閣議決定(H13.3.29)
 ◇e-Japan重点計画
  ◆保健、医療、福祉分野の情報化
 医療分野の情報化を進め、サービスの質の向上、効率化を進めるとともにITを活用し、遠隔医療等新たなサービスニーズへの対応を進める。また、高齢者・障害者が使いやすい情報通信機器・システムの開発・普及を通じ、全ての人にやさしいバリアフリー環境の整備を行う。
 このため、医療分野のIT化を推進する。
 多様で質の高い医療サービスの提供や効率化を行うため、電子カルテをはじめ様々な医療情報の電子化の推進、遠隔医療の推進、レセプトの審査・支払いの電算化等について普及方策、普及目標等を定めた医療分野のIT化に関する戦略的なグランドデザインを2001年早期に作成する。
 電子カルテに関しては、データ交換の際のフォーマット、電子的情報交換手段、情報セキュリティ技術等を開発し2003   年度までにその標準化を行う。

e-Japan2002プログラム(H13.6.26)本部決定
(この基本方針に基づき施策を推進し、政府を挙げて重点的かつ戦略的にIT施策を一層積極的に実施していく)
  分野別施策
   4.行政の情報化及び公共分野における情報通信技術の活用の推進
(9)公共分野における情報化の推進
 研究開発を推進するとともに、科学技術・学術研究、芸術・文化、保健・医療・福祉、環境、防災、公共交通分野の情報化、ITSやGISの推進等各分野における先進的な情報通信基盤やアプリケーションの積極的導入をすすめ、重点計画の着実な実施を進める。

e-Japan重点計画−2002(H14.6.18)本部決定
 ◆保健、医療、福祉分野等の情報化
 医療分野の情報化を進め、サービスの質の向上、効率化を進めるとともに、ITを活用し、遠隔医療等新たなサービスニーズへの対応を進める。また、食料の信頼確保に係るサービスニーズに対応するため、消費者に対し食料品の履歴情報をインターネット等を通じて提供するシステムを整備する。
 ○医療分野のIT化の推進(厚生労働省、文部科学省、経済産業省及び関係府省)
情報セキュリティ技術、医療分野における認証基盤等の情報化のための所要の措置を2003年度までに行う。
電子カルテについては、2003年度までに用語・コードの標準化を図るとともに、2002年度中に実施する診療情報共有
モデル事業の導入効果の検証結果等を踏まえて、所要の策を講じ、2004年度までに全国の二次医療圏の中核的な病院、
2006年度までに400床以上の病院及び全診療所のうち6割以上に普及を促進する。

◇「経済財政諮問会議」(H13.6.26)閣議決定
今後の経済財政運営及び経済社会の構造改革に関する基本方針(「骨太方針」)
3.医療制度の改革
(2)医療サービス効率化プログラム(仮称)の策定

(C)医療機関経営の近代化
 医療機関の経営に関する情報の開示・外部評価(外部の銭、御化による経営診断・監査の実施)等を行うことにより、医療機関経営の近代化・効率化を進める。また、設備投資原資の調達の多様化や医療資源の効率的利用(高額医療機器の共同利用・稼働率の向上等)を促進するとともに、株式会社方式による経営などを含めた経営に関する規制の見直しを検討する。
また、医療サービスのIT化の推進、電子カルテ、電子レセプトの推進により、医療機関運営コストの削減を推進する。

◇総合規制改革会議「重点6分野に関する中間とりまとめ」(13.7.24)
1.医療〔具体的施策〕
(1)医療に関する徹底的な情報公開とIT化の推進
 良質で低コストかつ国民に分かりやすい医療サービスの提供を確保するために、徹底的な情報公開、医療情報(カルテ、レセプト)の電子化の推進、医療の標準化の推進、第三者による評価の充実が必要である。

(2) カルテの電子化・EBM・医療の標準化などの推進【段階的に実施】
 現在、医療機関や医師ごとに診療内容にばらつきがあり、それが医療費の格差にもつながっている。安心できる医療サービスを確保するためには、医療の標準化を推進するべきである。このためEBM(根拠に基づく医療)を推進するべきである。その際、診療ガイドラインの作成やデータベースの整備が重要であるが、これは、公正で中立な第三者機関が行うべきであり、政府はそのための環境整備を行うべきである。また、カルテの電子化及びレセプトへの主病名の記載は体系的な医療情報の処理・分析のために必要不可欠である。こうした体制を平成14年度までに整備し、平成16年度を目途にEBMの樹立を図るべきである。

(3) 複数の医療機関による患者情報(カルテなど)の共有、有効活用の促進 【平成14年度以降逐次実施】
 患者が複数の医療機関にかかった場合、患者情報はそれぞれの病院が管理している。個人情報の保護など一定の条件を備えた上で、患者情報を複数の医療機関で共有し有効活用ができるようにすることは、医療サービスの効率化に向けた有効な手段でありこれを推進するべきである。

◇総合規制改革会議「規制改革推進3か年計画(改定)」  (14.3.29 閣議決定)
  IV 分野別措置事項
   4 医療関係
    (1) 医療分野の基本方針
 我が国は、国民皆保険制度により、全国民が平等に診療を受けられる制度を維持してきた。その一方、医療保険制度は、高齢化の進展に伴って医療費の増加に直面しており、医療費、特に延びが著しい老人医療費について、経済の動向と大きく乖離しないようにするとともに、国民が納得できる公平な医療費負担制度の再構築が大きな課題となっている。また、長い入院期間、過剰な投薬・検査など我が国の医療について無駄、非効率がないか、医療を提供する側、受ける側のコスト意識の喚起を含め、改めて見直していく必要がある。ほかにも、近年多発している医療事故を背景とした医療の安全の確保や、がん、糖尿病などの「生活習慣病」について、費用対効果の観点からも、未然防止のための予防活動を行うことが重要となっている。
 医療の規制改革の目的は、患者本位の医療サービスを実現することである。そのためには、これらの状況にかんがみ、患者のプライバシーの保護や医師と患者の信頼関係が重要である、情報の非対称性が強いなどの医療の持つ特性を踏まえた上で、医療の質の向上、安全の確保を図りつつ、国民皆保険体制と医療機関のフリーアクセスの下、医療サービス提供上の無駄を徹底的に排除し、効率的な医療サービスを実現することが必要である。また、患者にとっては、医療の透明性が確保され自らの選択が尊重されるようになることが必要である。このような基本的考え方に基づいて、医療に関する徹底的な情報開示・公開の促進、医療分野のIT 化の推進、保険者の本来機能の発揮、診療報酬体系の見直し、医療機関相互の競争の促進、医療事故防止システムの確立等を積極的に実施する。

    (2) 医療分野の重点事項
(2) IT化の推進による医療事務の効率化と医療の標準化・質の向上
  医療のIT化に関する戦略的グランドデザインの策定、レセプトのオンライン請求を中心とする電子的請求の原則化、電子レセプトの規格の充実・強化及び使用の普及促進、EBMの推進等のIT化の推進により医療事務の効率化と医療の標 準化・質の向上を推進する。


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