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第8章 雇用の創出と喪失


 我が国の産業構造は、農業等の第1次産業から製造業等の第2次産業へ、そしてサービス業等の第3次産業へと比重を移している。
 このような中、サービス業等では新規開業による雇用創出が廃業による雇用喪失を上回っており、製造業や建設業では廃業による雇用喪失が開業による雇用創出を上回っている。国際的にみると、我が国の開廃業率は低い水準にある。
 開業については、資金調達や人材・ノウハウの不足といった問題が阻害要因になっていると考えられる。最近では、新規開業者の中高年齢化が進展しており、その背景には、中高年を対象とした雇用削減があると考えられる。
 サービス業については、最近では雇用創出率が低下しており、特に個人サービス部門での雇用創出のためには個人消費の増大が必要である。また、現下の厳しい雇用情勢の中、雇用の維持・創出という観点からワークシェアリングへの社会的関心が高まっている。


(長期的な就業構造)

 我が国の就業構造をみると、高度成長期には工業化が進展し製造業従事者が増加したが、1973年の第1次石油ショックを契機として、製造業従事者の増加が鈍化し、第3次産業従事者が増加した。1990年代には、全般的に就業者数が減少する中で、サービス業従事者の伸びが突出して高くなっている(第37表)。また、就業形態にもパート労働者やアルバイト・派遣労働者の増加など多様化がみられる。


(雇用創出・雇用喪失の実態)

 新規開業による雇用創出・廃業による雇用喪失の状況をみると、新規開業による雇用創出は1980年代・90年代を通じて安定的に推移しているのに対し、廃業による雇用喪失は90年代に上昇している。新規開業による雇用創出や廃業による雇用喪失は既存企業の雇用の増減よりかなり大きい。既存企業の雇用の増減については、変動幅がかなり大きい(第38図)。
 また、景気変動と開廃業との関係をみると、経済が成長している場合には需要拡大により開業が増加すると考えられ、開業率と経済成長率には連動性がみられる。これに対し、廃業率と経済成長率との間には単純な関係はみられず、廃業率が長期の経済変動の影響を受けている可能性がある。
 産業別にみると、第3次産業は開業率が廃業率を上回っており、特にサービス業では開業率が廃業率を大幅に上回っている。これに対し、製造業では開業率が廃業率を下回っている。また、我が国の開業率・廃業率はアメリカと比べると低く(第39図)、国際的にみても低いといえる。


(新規開業の阻害要因)

 新規開業には、資金調達、人材やノウハウの不足といった障害が存在している。開業直後の企業に苦労している点をきくと、経費面での問題、需要不足、従業員不足、事業経営に必要なノウハウの不足といった問題点があがっている(第40図)。
 開業時の平均年齢は1991年度の38.9歳から2000年度の41.6歳に上昇しており、開業者の中高年齢化がみられる(第41図)。また、中高年の開業が増加しているが、この要因として、中高年を対象とした雇用削減の増加が考えられる。


(今後、どのような分野で雇用の創出が見込まれるか)

 サービス業は雇用拡大余地の大きい産業として期待されているが、サービス業の雇用創出・雇用喪失の現状をみると、バブル崩壊後、雇用創出率が低下し、雇用喪失率が上昇している。
 また、現下の厳しい雇用情勢の中、雇用の維持・創出という観点からワークシェアリングへの社会的関心が高まっている。



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