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第1章 最近の労働経済の概況

第1節 雇用・失業情勢


 我が国経済は、2000年10月以降、後退に転じ、生産は1987-88年の水準にまで落ち込んだ。こうした中、労働市場の状況も厳しさを増した。

(1) 雇用者数は8月以降急速に減少した。就業者数も年を通じて減少傾向で推移した。

(2) 完全失業率は高水準で推移し、12月には5.5%となった。

(3) 新規求人は、年を通じて減少傾向で推移し、新規求人倍率は低下、有効求人倍率は横ばいとなった。

 2002年に入り、生産は下げ止まり、所定外労働時間も増加に転じたが、雇用情勢は引き続き厳しい状況が続いている。



(就業者数・雇用者数は減少)

 2001年の就業者数は、6,412万人、前年差34万人減と4年連続で減少した。月別にみると、2月以降減少傾向となっている(第1図(3))。男女別でみると、男性が3,783万人(前年差34万人減)、女性が2,629万人(前年同水準)となった。15〜64歳の就業率(就業者/人口)は、68.8%で前年を0.1ポイント下回った。
 雇用者数は、年平均では5,369万人、前年差13万人増と2年連続の増加となったが、景気後退を反映して、年後半は大幅な減少となった(第1図(3))。その動向をまとめると、

(1) 男性が前年差15万人の減少に対し、女性は28万人の増加となった。

(2) パートやアルバイトなど臨時雇が増加し、常雇は減少した。

(3) サービス業が引き続き好調な動きを見せた。

(4) 500人以上の大企業での減少が大きかった。

 自営業主、家族従業者は、前年差53万人減と大幅に減少した。


(労働力人口は3年連続で減少)

 労働力人口は、年平均で6,752万人、前年差14万人減と3年連続で減少した。
 労働力人口の低下は、主として労働力率の低下によるものであった。男女とも若年層及び高齢層の低下幅が大きく、これは雇用環境悪化のため、仕事を探すのをあきらめ非労働力化した者が多かったことが影響していると考えられる。


(完全失業率は引き続き上昇)

 完全失業率は、高水準で推移し、5.0%となった(第1図(4))。これは、過去最高となった前年より0.3ポイント高い。失業者数も340万人(前年差20万人増)、調査開始以来の高水準となった。
 自発的離職失業者が、118万人、前年差9万人増と大きく増加した。非自発的離職失業者は、106万人、前年差4万人増となった。特に、年後半には、雇用削減や倒産などの影響により大幅な増加がみられた。


(雇用過剰感は悪化、雇用調整実施事業所割合は増加)

 雇用過剰感は増しており、特に大企業の過剰感は高い水準にある。雇用調整実施事業所割合は、2000年10〜12月期以降増加基調で推移した。


(求人・求職の状況)

 2001年の新規求人倍率は、1.01倍と前年比0.04ポイント低下し、有効求人倍率は0.59倍と前年と同水準となったが、月別にみると、年を通じて減少傾向で推移した(第1図(5))。
 新規求人は、前年比1.5%増となったが、月々の推移(季節調整値)をみると、年を通じて減少傾向であった。
 新規求職は、年を通じて増加傾向で推移し、前年比5.0%増となった。年後半には新規求職のうち離職求職者が急速に増加した。離職者以外の求職者も大幅に増加した。


(産業別の動向)

 製造業の雇用失業情勢は厳しく、就業者数、新規求人とも大きく減少した。建設業も就業者数が大幅に減少し、新規求人も減少した。
 サービス業は景気後退の中でも堅調で、就業者数は前年と比べ50万人増加した。新規求人も年平均では増加したが、月々の動きをみると増加幅が縮小しており、予断を許さない状況にある。


(地域別の状況)

 地域別の失業、求人の状況をみると、有効求人倍率が良好な地域は、完全失業率も低水準で、反対に、有効求人倍率が低い地域は、完全失業率も高水準となっている(第2表)。
 新たに公表された労働力調査の都道府県別完全失業率(試算値)をみると、年平均で最も失業率が高かったのは沖縄県の8.4%で、次いで大阪府の7.2%となっている。


(新規学卒者の就職状況)

 新規学卒者の求人求職は、厳しい状況が続いているが、2001年3月卒業者の就職率は、若干の改善がみられた。しかしながら、高卒については特に厳しい状況が続いている(第3表)。


第2節 賃金、労働時間の動向


 景気の悪化を受けて、賃金は減少に転じた。残業時間が減少したため、所定外給与は減少し、賞与等の特別給与も引き続き減少した。また、所定内給与の減少にはパートタイム労働者の影響が考えられる。
 労働時間は所定内労働時間、所定外労働時間とも減少したため、減少に転じた。


(賃金の動向)

 2000年末からの景気の減速・悪化を反映し、2001年の現金給与総額は前年比1.1%減と減少に転じた。内訳をみると、所定内給与が前年比0.4%減、所定外給与が4.1%減、特別給与が2.9%減となった。実質賃金は、物価下落により前年比0.4%減にとどまった(第4表)。
 2001年の春季賃上げ率は2.01%で、4年連続で前年を下回り、過去最低の数字となった。
 所定内給与の減少には、パートタイム労働者の影響が考えられる。パートタイム労働者の増加が、全体平均としての労働時間の減少と時間あたり賃金の減少の双方に寄与しており、さらに最近では景気の動向に敏感なパートタイム労働者の賃金が減少する傾向にある。


(労働時間の動向)

 2001年の総実労働時間は前年比0.8%減と減少に転じた。内訳をみると、所定内労働時間が前年比0.6%減、所定外労働時間が景気の悪化に伴い3.6%減といずれも減少に転じた。
 所定外労働時間は、製造業、建設業で大きく減少し、サービス業でも減少に転じた。特に、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、生産の動向を明確に反映して、2000年10〜12月期をピークに2001年は急激な減少となった。ただし、2002年1〜3月期には、生産の下げ止まりを反映して増加に転じている(第5図)。
 所定内労働時間は、1年を通して減少傾向で推移した。これは、前年が閏年であったことと、パートタイム労働者の所定内労働時間が減少したこと、パートタイム労働者が増加したことによるものである。


第3節 物価、勤労者家計の動向


 コスト低下や消費の低迷から消費者物価は3年連続で下落し、原油市況の落ち着きから卸売物価も下落に転じ、デフレーション傾向が鮮明になった。
 家計消費は、収入の伸び悩みや消費者マインドの悪化から4年連続の減少となった。


(物価の動向)

 2001年の物価は、消費者物価が3年連続で下落するなど、デフレーションの傾向が鮮明になった(第6図)。国内卸売物価は、2000年は原油市況の高騰の影響から横ばいとなったが、2001年に入って原油価格が落ち着きを見せたことから、下落に転じた。
 物価がデフレ傾向となったのは、技術革新や安い輸入品との競争等によりコストが低下したこと、消費が引き続き低迷したこと等によるものと考えられる。


(勤労者家計の動向)

 2001年の勤労者世帯の消費支出は、実収入の伸び悩みなどから前年比名目1.7%減少、実質0.8%減少と、ともに1998年以降4年連続の減少となった(第7表)。
 2001年の平均消費性向は、72.1%と前年と同水準であり、低水準のまま足踏み状態となった。
 1世帯あたりの平均貯蓄保有額は2年ぶりに減少した。家計は金利の低下や先行き不安からより流動性の高い預貯金を増やしている。
 小売業は、特定家庭用機器再商品化法施行前の駆け込み需要といった特殊要因もあり、2001年初には持ち直しの動きが見られたが、2001年平均では前年比2.2%減と5年連続で減少した。



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