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おわりに

 我が国は、現在、人口構造が大きく変化するとともに、経済・産業構造の転換も進展している。こうした構造変化は、主たる働き手である現役世代をとりまく環境に大きな影響を与えると考えられることから、今回の白書では、現役世代に焦点を当て、経済的側面を中心として、働き方や所得水準について分析を行うとともに、今後の方向性について考察した。

 現役世代の働き方については、労働者の年齢構成の高齢化や経済環境の変化の中で年齢、勤続に伴う賃金の上昇率は低くなるとともに、平均勤続年数も20歳代、30歳代においては短期化している。労働者の意識をみると、若年層ほど日本型雇用慣行に対し否定的な者の割合が高くなり、同じ会社に継続勤務することにこだわらず、やりたい仕事を重視するという傾向がみられ、また、仕事だけでなく家事や育児、地域活動等にも積極的にかかわろうとする者も多くなっている。

 女性については、パートタイム労働者等で働く者が増加するとともに、基幹的、専門的な労働力として継続就業する者も増加し、就業理由や就労パターンも多様化している。また、夫婦の働き方をみても、かつては会社人間の夫と専業主婦の妻というのが典型的であったが、その後就労パターンはさまざまとなっており、働き方の志向もライフサイクルや就業ニーズに応じた多様なものとなっている。

 今後、少子高齢化が進展する中で、経済活力を維持していくためにも、幅広い労働者が主体的に自らの働き方を考え、その有する能力を十分発揮できるようにすることが必要である。このため、個々の労働者が主体的に働き方を選択できるような環境整備を社会全体として進めていくことが必要であり、多様な働き方の選択肢を整備するとともに、働きに応じた公正な処遇を確立することが重要である。

 既婚者について年齢ごとの経済状況をみると、40歳前後までは生活水準の向上が緩やかであり、40歳代後半から50歳代になって生活水準の向上が大きくなる傾向がみられる。また、20年前と比較すると、年齢間の生活水準の格差は拡大しており、家計資産も年齢とともに大きくなる傾向にある。

 現役世代の経済状況については、高齢化の進展等によって税や社会保険料といった負担の水準も高まってきたが、これを上回る収入の伸びがあったことから、可処分所得も実質的に増加してきている。少子高齢化が進展していく中で、負担が高まることは避けられないが、これまでと同じように、一定の経済成長によって収入を伸ばしていくことができれば、生活水準を向上させていくことができる。


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