2004〜2005年の海外情勢主要国の社会保障施策の動向

I  アメリカ

 社会保障年金改革
 2005年2月2日、ブッシュ大統領は、一般教書演説(State of the Union Address)において、個人勘定の創設などの、公的年金制度改革の実施について提案した。
 大統領は、現行の公的年金制度は放置すれば崩壊することを訴え、高齢者の年金をまかなう現役世代の社会保障税の一部を、新たに設ける個人勘定に移すことを提案した。
 この制度改革は、現役世代が退職者の年金を負担する現行の年金形態を、自己責任型に変換していこうとするものであると考えられている。

 メディケア改革
 2003年12月8日にメディケア制度改革法(Medicare Prescription Drug Improvement and Modernization Act of 2003)が成立した。
 同法は、メディケア・処方せん薬プラン(Medicare Prescription Drug Plans)を新設して、これまで保険の適用外だった外来患者に係る処方せん薬代を適用対象に加えることを主内容とするもので、この改正は1965年のメディケア制度発足以来初めての大きな改正となった。


II  イギリス

 ブレア政権が内政の最重要課題として掲げてきたNHS改革の目標については、看護士の増員等すでに達成された目標も多く、病院での待機期間の削減等についても2004年の中間目標がほぼ達成されるなど全体的に大きな改善傾向を示している。
 また、2010年までに貧困児童を半減するという政府目標達成のため、新生児一人一人に優遇利率を付した個人口座を設け、政府が頭金250ポンドを預託する等を内容とする「子供信託基金」が2004年に創設されたほか、今後5年間で児童センターを1,000か所設置する等の措置が発表されている。


III  ドイツ

 医療保険の保険財政悪化の対策として、2004年1月から自己負担として四半期に1回10ユーロの外来診察料の負担や、原則1割の薬剤負担が導入されている。
 また、年金財政の逼迫を背景に、2003年12月、(1)2004年7月の年金スライドを凍結する、(2)年金受給者の介護保険料を全額本人負担とする等を内容とする社会保障法典第VI編(公的年金保険法)の改正が成立した。さらに、2004年3月、年金財政の中長期安定化を目指す「公的年金保険持続法」が成立した。


IV  フランス

 2003年7月、(1)公務員の満額年金受給資格取得のための保険料拠出期間を現在の37.5年から2008年までに民間と同じ40年に延長する、(2)14〜16歳から就労を開始した者は、満期加入であれば、60歳前の早期退職を認める等を内容とする年金改革法案が成立した。
 また、政府は医療保険金庫の運営改善や公私の医療保険の役割分担の見直し等を含む疾病保険の抜本的改革を行うため、2004年7月に疾病保険改革法を成立させた。同法によって、(1)医療の個人ファイル化の徹底、(2)主治医指定制度の導入と主治医以外の診察を直接受けた場合の自己負担額の引上げ、(3)職域別医療保険を統括する全国医療保険連合の創設及び医療の質を向上させるための独立機関である保健高等委員会の創設、(4)退職者等に対する一般社会拠出金(CSG)の引上げ、(4)診察ごとの1ユーロの自己負担の導入などが行われている。


V  韓国

 2001年に女性施策を担当する中央省庁として設立された女性部が、2005年6月から「女性家族部」として改編され、これまで政府各部署に散在していた家族政策も合わせて女性家族部において所管されることとなった。
 また、2004年の韓国の合計特殊出生率が1.16人を記録、過去最低だった2002年の1.19人を下回っており、保健福祉部長官は包括的な対策を実施する予定であることを明らかにした。

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