〈概要〉
I 働く女性の状況
1 労働力人口、就業者、雇用者の状況
(1) 労働力人口
平成13年の女性の労働力人口(就業者+完全失業者)は2,760万人で、前年に比べ7万人、0.3%の増(12年2万人減、0.1%減)となり、平成11年から減少していた労働力人口は増加に転じ、平成9年の水準と同じとなった。
また、労働力率(15歳以上人口に占める労働力人口の割合)は、前年より0.1%ポイント低下して49.2%となり、前年に引き続き低下している(第1−1表)。
なお、15歳〜59歳層の労働力率は62.2%と、前年(61.6%)に比べ0.6%ポイント上昇した。
年齢階級別に女性の労働力率をみると、M字型カーブの底である30〜34歳層で58.8%となり、10年前(平成3年)と比較すると5.9%ポイント上昇し、M字型の底がさらに浅くなっているのが特徴的である(第1−1図)。(第1−2図)
平成13年の女性の非労働力人口は2,848万人となり、前年と比べ24万人増加(前年比0.8%増)した。
(2) 就業者
平成13年の女性の就業者数は2,629万人で前年と同数であった。女性の就業者を従業上の地位別にみると、雇用者は、平成12年に続き2年連続で増加し、自営業主、家族従業者は減少した。就業者に占める雇用者数の割合は82.5%で引き続き上昇している(第1−2表)。
(3) 雇用者
平成13年の女性雇用者数は2,168万人で、前年より28万人増加(前年比1.3%増)し、2年連続の増加となった。一方、男性雇用者は3,201万人で、前年より15万人減少(前年比0.5%減)となった。雇用者総数に占める女性の割合は初めて4割となった前年からさらに0.4%ポイント上昇し、40.4%になった(第1−3図)。
産業別にみると、サービス業が818万人と最も多く、次いで卸売・小売業,飲食店が618万人、製造業が392万人となっており、これら3業種で女性雇用者の84.3%を占めている。サービス業、卸売・小売業,飲食店では前年より増加しているが、製造業では減少傾向が続いている。
職業別にみると、事務従事者が716万人と最も多く、次いで、専門的・技術的職業従事者が355万人、製造・製作・機械運転及び建設作業者が317万人、保安・サービス職業従事者が307万人、販売従事者が283万人となっている。前年に比べ、販売従事者が大幅に増加(27万人増、前年比10.5%増)した。
雇用形態別にみると、常雇(常用雇用)が16万人増加、臨時雇が10万人増加した。
非農林業女性雇用者数を配偶関係別にみると、有配偶者は1,220万人(非農林業女性雇用者総数に占める割合56.7%)、未婚者は714万人(同33.2%)、死別・離別者は214万人(同9.9%)であった。有配偶者の割合は、昭和60年(59.2%)以降低下傾向がみられ、平成10年より横ばいとなっていたが、再度低下に転じた。
平成12年の女性労働者の平均勤続年数は8.8年(男性13.3年)で、前年に比べ0.3年(男性0.1年)長くなり、伸長傾向にある。
(4) 完全失業者と女性の失業をめぐる状況
平成13年の女性失業者数は131万人、完全失業率は、4.7%(男性5.2%)となり、男女とも過去最高となった(第1−4図)。
女性の完全失業者を求職理由別にみると、「自発的な離職による者」(自分又は家族の都合)が55万人(42.0%)、「非自発的な離職による者」(人員整理・事業所不振・定年等)が31万人(28.7%)、「学卒未就職者」が6万人(4.6%)、「その他の者」(収入を得たい、時間に余裕ができた等の理由で新たに仕事を探し始めた者)が33万人(25.2%)となっている。
さらに、離職失業者(求職理由が離職である失業者)の離職理由を見ると、平成12年から13年にかけて「非自発的な離職」のうち男女ともに「人員整理・会社倒産」を理由とする者の割合が大きくなっている(第1−5図)。
また、年齢階級別にみると、年齢が高くなるほど非自発的な離職による失業者の割合が増加しているが、若年層では自発的な離職によるものや学卒未就職による割合が大きくなっている(第1−6図)。
女性の完全失業者が仕事につけない理由をみると、若年層では「希望する種類・内容の仕事がない」が4割近くを占めているが、家庭責任のある人の多い25〜44歳層では、「勤務時間・休日などが希望と合わない」など労働時間に関する理由が大きくなり、45歳以上では年齢制限による理由が大きくなっている(第1−7図)。
さらに、女性の失業者の失業期間も長期化しており、中高年層では失業期間1年以上の割合が大きくなっている(第1−8図)。
3 労働市場の状況
平成12年の女性の入職者数(一般及びパートタイム労働者計)は304万900人(前年差17万1,000人増)、離職者数は328万7,500人(同19万6,600人増)であった。
これを就業形態別にみると、一般労働者は、入職者数156万9,100人(前年比10.7%増)、離職者数183万4,800人(同5.4%増)と、前年に比べ入職者数、離職者数とも増加した。他方、パートタイム労働者でも入職者数147万1,800人(前年比1.3%増)、離職者数145万2,600人(同7.5%増)と、前年に比べ入職者数、離職者数とも増加した。前年においては、パートタイム労働者への入職者数が初めて一般労働者への入職者数を上回ったが、再び一般労働者への入職者数がパートタイム労働者への入職者数を上回る結果となった。
4 学卒労働市場の状況
今春の高校及び大学卒業予定者の就職内定状況をみると、高校新卒者では、13年11月末現在、前年同期比で5.5%ポイント減の63.4%(男性:6.1%ポイント減の68.4%、女性:4.8%ポイント減の58.1%)となっており、過去最低であった一昨年を大幅に下回る厳しい状況となっている。
文部科学省「学校基本調査」により、高校卒業後の進路別割合をみると、「進学や正規に就職をしていない、いわゆる無業者1」が増加しつつあり、女性では高校卒業者の1割以上を占めるようになってきている(第1−9図)。
大卒者においても卒業後の進路は、無業者2 の割合が、近年増加しており、平成13年には若干低下したものの、卒業者全体の2割強を占めている。さらに、一時的な仕事に就いた者を含めると女性では3割近くになり、男性では2.5割を超えるなど、大卒者においても求人倍率が下がる中、こうした安定した職に就けなかった者の割合が増加している(第1−10図)。
学校卒業後の就業形態をみると、高卒者に該当する19歳以下の入職者(学卒未就業者)の就業形態は、一般労働者とパートタイム労働者の構成比からみると、特に女性でパートタイム労働者の割合が大きく増加しており、平成12年には43.8%にまでなっている(第1−11図)。
学校卒業後の就職状況が厳しい中、学校卒業後、就職せずに求職活動を行っている者(学卒未就職による失業者)の数は増加している。さらに、15〜24歳の失業者に占める学卒失業者の割合も2割強と高まっており、若年層の失業の大きな要因となっている(第1−12図)。
1 | 一時的な仕事に就いた者を含む。 |
2 | 一時的な仕事に就いた者は含まれない。家事手伝い、研究生として学校に残っている者、専門学校等へ入学した者を含む。 |
5 労働条件等の状況
平成12年6月のパートタイム労働者を除く女性一般労働者のきまって支給する現金給与額は、23万5,100円(前年比1.9%増)、うち所定内給与額は22万600円(同1.4%増)であり、ともに前年より増加した。
男性一般労働者のきまって支給する現金給与額は、37万300円(前年比0.8増)、うち所定内給与額は33万6,800円(同1.4%増)であり、ともに前年より増加した(第1−3表)。
男女間の賃金格差(男性=100.0として算出)は、きまって支給する現金給与額でも所定内給与額でも引き続き緩やかな改善傾向が続いており、平成12年には、所定内給与額で65.5となっている(第1−13図)。
第1−3表 一般労働者の賃金実態 |
||||||||||||||||||||||||
|
||||||||||||||||||||||||
資料出所:厚生労働省「賃金構造基本統計調査」(平成12年) |
平成12年の常用労働者(事業所規模5人以上)の1人平均月間総実労働時間及び所定内、所定外労働時間についてみると、女性の常用労働者1人平均月間総実労働時間は136.4時間(前年差0.5時間増)、うち所定内労働時間は131.5時間(同0.3時間増)、所定外労働時間は4.9時間(同0.2時間増)となった。
6 パートタイム労働者の状況
平成13年における女性の短時間雇用者(非農林業で週間就業時間が35時間未満の雇用者)は829万人、前年比75万人増となった。女性の非農林業雇用者2,112万人(休業者を除く)に占める短時間雇用者の割合は39.3%(前年比3.2%ポイント上昇)となった(第1−14図)。
女性パートタイム労働者の賃金をみると、1時間当たりの所定内給与額は889円で、前年に比べ2円とわずかな増加(対前年比0.1%増)にとどまった。
なお、女性パートタイム労働者と女性一般労働者との賃金格差についてみると、平成12年は、一般労働者の所定内給与額を時給換算したものを100.0とした場合、パートタイム労働者は66.9となった(第1−15図)。
厚生労働省「パートタイム労働研究会中間とりまとめ」では、格差拡大の一因として、「職種構成の変化」をあげている。職種別にみると、パートタイム労働者は賃金水準の低い職種でそのウェイトを増しており、これが全体の賃金格差拡大に影響していると考えられる。そこで、パートタイム労働者の職種構成を正社員にそろえ、同じ職種における女性パートタイム労働者と正社員との賃金格差を推計すると、格差は正社員の約8割の水準となり、職種構成の違いを加味しない場合に比べて10%以上縮小する(第1−16図)。
II 仕事と子育ての両立
男女労働者が職業生活と家庭生活を両立できるための環境をつくることは、労働者が持っている能力を十分発揮し、生涯を通じて充実した生活を送るために社会で取り組むべき大きな課題である。しかしながら、女性の年齢階級別労働力率をみると、結婚、出産・子育て期に労働力が低下するいわゆるM字型カーブは依然として残っている。
少子・高齢化が進行する中で、仕事と子育ての両立の負担感を軽減し女性の就業意欲を十分生かすことは、経済社会の活力を維持する上でも重要である。
こうした問題意識のもと、第一に女性の結婚、出産、就業状況を把握し、第二に仕事と子育ての両立や子育てに対しどのような負担感があるのか、子育てのパートナーである男性の就業時間や子育ての分担の状況について、子育ての最も重要な時期である30歳代に焦点をあてながら把握した。第三に職場や地域における両立支援の状況を把握し、最後に、男女労働者がともに職業生活と子育て等の家庭生活をバランスよく両立することができるよう、また、働く意欲を持った女性がその能力を十分に発揮できるよう、取り組むべき課題について検討した。
1 結婚・出産と関わりの深い年齢層の変化
昭和50年から現在にかけて、M字型カーブを特徴づける25〜39歳層の女性の結婚、出産、就業の変化をみると、まず、25〜29歳層では、未婚化が進んだことや子どものいない既婚者世帯が増えたことから労働力率は大きく上昇した。30〜34歳層では、労働力率は、近年、特に上昇してきているものの、昭和50年から現在までM字型カーブのボトムとなっている。非労働力となっている者で就業を希望している者の割合は最も大きい。35〜39歳層では、既婚層が再び労働市場に参入し始めているものの、就業を希望している者の割合も大きい。また、子育てとの両立が容易になるよう短時間就業者となる場合が多い(第2−1、2図)。
また、非労働力人口のうち就業を希望するものを労働力人口に加えて、潜在的な労働力率として年齢階級別にみると、M字型カーブはほとんどなくなり先進諸国と同じような台形型に近づく。特徴的なM字型カーブを形成する25〜39歳の女性においても働きたいと希望している者は多い(第2−3図)。
2 女性の就業パターンと小さい子どもを持つ女性の就業状況
(1) 出産による就業の継続状況
出産による就業への影響をみると、既婚女性で第1子出産前に仕事に就いていた者は56.1%となっており、そのうち出産で仕事をやめた者は72.8%となっている。第1子出産前に仕事に就いていた者の勤め先別に出産後の継続就業率をみると、官公庁では高いが従業員規模が大きくなるほど低くなっている。また、自営・家族従業者が高いのに比べ雇用者では低く、なかでも事務職は最も低い。さらに、親との同居は継続就業率を高めている(第2−4図)。
(2) 再就職の現状
女性の働き方として理想・現実ともに多い再就職の状況を把握した。労働力率のM字型カーブのボトムから、再び上昇し始める35〜44歳を再就職層とみなして、過去1年間働いていなかった者が、入職時にどういう就業形態で就職したのか、正社員とパートタイム労働者の入職割合をみると、平成12年ではパートタイム労働者が7割以上になっている。また、再就職女性を正社員として採用する企業はまだ少ない(第2−5図)。
(3) 小さい子どもを持つ女性の就業状況
末子が、0〜3歳の子どもをもつ妻の労働力率は低いが、非労働力人口のうち就業を希望する者を加えた潜在的な労働力率は大きく、小さい子どもを持つ女性が働きたいと希望しているのに働いていない状況が把握された(第2−6図)。
3 仕事と子育ての両立や子育ての負担感
(1) 子どもが小さいときの母親の就業
子どもが小さいときの子育てについて、「子どもが3歳までは主に母親が携わるのがよい」という意識は、50歳代以上の中高齢層で多い。20〜30歳代では「父母が協力して携わるのがよい」が最も多くなっており、この問題に関する意識は世代によって大きく変わってきている。
母親の就業と子どもの発達についての欧米の研究では、母親の就労は否定的な影響はないが、親による保育でない場合には、質の高い安定的な保育が与えられているかどうかが影響を与えるものであると指摘している。小さい子どもを持つ女性が安心して働くためにも保育についての高い質の確保が求められている(第2−7図)。
(2) 男性の子育て意識の高まり
「仕事と子育てに関する夫や妻の生き方について、子育てと仕事のどちらを優先すべきか」をきいたところ、男女の各年齢層ともに、妻に対しては「子育てを優先」という考えが多い。一方、夫に対しては「子育てよりも仕事を優先」とする考えが多数を占めているものの、若い世代や子育て年齢層では高齢層と比較すると男女ともに、「仕事と子育てとの両立を図るよう努めるべきだ」とする者の割合が大きい(第2−8図)。
(3) 子育て期の夫と妻の生活時間、子育て・家事の分担
夫と日常的に子育てや家事といった家庭責任を分担し合うことは、妻の負担感を時間的にも精神的にも解消することになるが、こうした分担の実態を就業時間や家事時間で把握した。
1週間の就業時間を年齢階級別にみると、男性の20歳後半から40歳代では長時間就業者が多く、なかでも子育て期の30歳代の就業時間は最も長く、60時間以上の長時間就業をしているのは2割以上となっている。パートナーであろう30歳代の女性は、逆に短時間就業となっており、子育て期の家庭責任は女性が果たしているという状況が伺える(第2−10図)。
(4) 子育てのコスト
妻の理想の子ども数と現実はギャップがあり、理想の子ども数を持とうとしない理由は、経済的な要因が大きい。子どもを育てるためにかかる費用について「子育てコスト」として推計した結果、子どもが大学に進学する時期に家計の負担が最も大きくなる。また、夫の28歳から56歳までの可処分所得に占める子育てコストの総額は32%を占める。このような子育ての経済的負担への対応のあり方も今後の課題である(第2−14図)。
(5) 子どもに対する思い、両立のストレス、子育て負担感
子どもを持つことは負担ばかりが増えるわけではなく、男女ともに、子どもを持ったことに対して肯定的に感じている者は多い。しかし、働く既婚女性で「両立」の悩み・ストレスがあると感じる者は多い。一方、子育て中の女性のうち、子育て負担感が大きいと回答しているのは、専業主婦よりも共働き女性の方が少ない(第2−15図・16図・17図)。
4 職場や地域における両立支援の状況
仕事と子育てを両立させるためには職場における両立支援や地域における保育サービスは不可欠である。職場や地域における両立支援についてその実施状況やニーズを把握する。
(1) 職場における仕事と子育てのための両立支援の状況
出産した女性の56.4%が育児休業を取得している。一方、男性の方も、配偶者が出産した者に占める育児休業取得者割合は平成11年で0.42%(平成8年0.12%)、また、育児休業取得者に占める男性の割合は2.4%(平成8年0.6%)と、ともに水準は低いもののわずかながら増加している。
また、30歳代の子育て層では男女ともに「男性でも育児休業をとるべき」という意識は高いが、男性本人もしくは夫が育児休業を取るつもりかどうかについては、性別や子どもの有無にかかわらず「取得する希望はあるが、現実的には難しい」とする意見や「取得するつもりはない・取得できない」とする意見が多い。育児休業を取得しない理由は、経済的理由、仕事や職場の問題が大きい(第2−18図・19図・20図)。
子育ての喜びや苦労を男女で分かちあうことは、男性にとっても家庭や地域における生活者としての役割を果たすことができ、さらに、女性が仕事の面で能力を発揮するためにも重要である。特に、男性の育児休業の取得を阻害するような要因について把握し、これらの要因を解消するよう取り組むことが今後の大きな課題である。
さらに、風邪や急な発熱等突発的に訪れる子供の病気や怪我の際の支援に対するニーズは高く、自ら子どもの看病を行うことを願う親に対しては子どもの看護のために休暇をとれるような制度が必要である。育児・介護休業法の改正により、平成14年4月1日から事業主に対し看護休暇制度の導入に勤めるよう義務づけることとしたところである(第2−21図)。
また、厚生労働省では、仕事と育児・介護とが両立できる様々な制度を持ち、多様で、かつ、柔軟な働き方を労働者が選択できるような取組を行う企業を「ファミリー・フレンドリー」企業として普及啓発及び取組への支援を行っている。こうした取組は、企業でも重視されてきており、重視する理由は、企業の社会的責任だけでなく従業員のモラール向上や優秀な人材確保のためという理由が多い(第2−22図)。
(3) 地域における保育サービスの状況
近年の認可保育所の利用状況をみると、女性の職場進出、核家族化の進行を背景に保育ニーズは急速に高まってきており、3〜5歳児では全児童数の3割以上が保育所を利用している状況となっている(第2−23図)。保育所利用児童数の急速な増加により、都市部では待機児童も生じている。
また、サービス経済化の進展等により、労働者の就業時間が多様化していることなどを背景に、延長保育に対するニーズが高まっている。さらに、3歳未満の子どもを持つ母親の労働力率は小さいが、就業を希望している者は多く、核家族化が進む中で親族の間で子どもを預けることが困難な家庭も増加しており、低年齢児などの保育へのニーズが高まっている。
小学校低学年児の場合、放課後や夏休み中の居場所を確保する必要があるが、小学1年生の学校帰宅後の過ごし方を聞いたところ、16.7%が放課後一人で過ごす日がある。子どもが保育所を卒業してからも、地域における子どもの健全な育成のための事業の充実が望まれており、放課後児童クラブを計画的に増やしているところである(第2−24図)。
5 男女が仕事と子育てを両立するために
以上みてきたように、近年の女性の結婚、出産と就業をみると、25歳から39歳といった結婚、出産、子育てに大きく関わる年齢層でこの四半世紀に大きな変化がみられた。
女性の年齢階級別労働力率に就業希望率を加えたものをみると、先進諸国の労働力率である台形型カーブに近づく。現状でも結婚・出産を機に多くの女性が離職をしていることや小さい子どもをもつ妻で就業を希望する者の多いことが確認され、30歳代女性の多くが就業を希望しつつも、それを断念している状況が伺える。
少子化が一層進行している中で、将来の労働力人口の減少に対応するためには、女性の就業意欲を生かし、能力を発揮することができる環境を整備していくことが必要である。また、女性の生涯賃金の推計においても、継続就業している場合と再就職した場合の所得差が大きいことなどから、女性が結婚、出産等に関わらずに就業を継続することが、今後多くなってくると考えられる。
一方、パートナーである30歳代男性は子育て意識は高いものの、長時間就業である者や帰宅時間の遅い者が多く、時間的にも育児を分担できない状況であることが明らかになった。さらに子育てをしながら働くための職場における両立支援や地域における保育サービスに対するニーズも強いことも明らかになった。
そこで、男女が仕事と子育てをバランスよく両立しながら、安心して子どもを産み育て生涯を通じて就業することが可能となるよう、今後の課題をまとめた。
(1) 男女が子育て期に仕事と家庭のバランスをとることへの取組
子育て期にあたる30歳代男性の就業時間が最も長い反面、女性は働きたくても働いていない者、短時間就業で子育てとの両立を図っている者が多い。また、I部でも把握したように、学卒後就職できない者や非正社員として就職する若年者の割合が多くなってきていること、高齢層では失業率が高く失業期間も長期化していることなど、世代間でのアンバランスが大きくなっている。
30歳代の男性も、仕事よりも家族団らんに充実感を感じている者は多く、特に子育て期の男性の長時間就業に対して就業時間の偏りを見直し、仕事と子育ての両立が可能となる柔軟で多様な働き方ができるよう就業環境を整備することが必要である。これは、女性だけでなく若年層や高齢層へ雇用機会を与えることになり、男女間、世代間でのワークシェアリングにつながることになる。また、子育ての最も大変な時期に夫が育児を分担できることは、専業主婦層の子育て負担感や不安の解消にも役立つことになる。
(2) 職場や地域における両立支援の充実
既婚の女性労働者の仕事と子育てとの両立のストレスは大きく、さらに、働いていない場合でも子育ての負担感は大きい。こうした負担感を解消するためには、職場、地域における両立支援の充実が必要である。
職場における両立支援対策については、平成13年の育児・介護休業法の改正により、育児休業から復帰した後に子育てをしながら働き続ける労働者の負担を軽減して子育ての時間をいかに確保するかという観点から、勤務時間の短縮等の措置義務の対象となる子どもの年齢が1歳未満から3歳未満に引き上げられた。また、子どもの看護のための休暇を導入することが努力義務とされたことや、小学校就学前の子どもの養育を行う男女労働者に対して、請求があった場合に、1か月24時間、1年150時間を超える時間外労働が免除される規定を新たに設けたところであり、改正育児・介護休業法の定着を図る必要がある。
特に、子育て期の労働者を対象とする短時間勤務制度を導入する企業が増加し、短時間勤務の正社員の働き方が普及することは、子育て以外の理由も含めて「短時間で働くこと」の有効性を高める契機になると期待できる。
さらに、職場における両立支援制度を利用しやすいようファミリー・フレンドリー企業を目指す取組を促すための広報啓発や、地域においても、多様な保育ニーズを充足するなど、新エンゼルプラン等に沿った取組を実施することが望まれている。
(3) 子育て期の男性の育児の分担
男性の子育て意識は高まっているが、子育て期である30歳代の男性は最も長い就業時間となっており、家庭責任は女性がより重く負っている。
家事、子育てをどう分担するのかは夫婦の価値観の問題であるが、特に子育て期の女性に偏る家庭責任の分担、仕事の面における女性の能力発揮、さらに子どもの健全な発達のためには、父親である男性もパートナーとしての時間を重視し、家庭生活に責任を果たすことが求められている。長時間就業の実態を踏まえ、年間総実労働時間1800時間の早期達成、所定外労働時間の削減はもとより、子育て中の男女労働者に対しては家庭の状況を配慮した就業時間の管理を行うことが求められる。さらに、男性の育児休業取得の阻害要因を把握し、取得促進に向けた意識啓発などを積極的に行うことが必要である。
(4) 再就職への支援
子育てのために就業を中断している者で、再び労働市場に参入することを目指している者に対する再就職支援も求められている。再就職者の中には意欲や能力の高い者も多く、能力を発揮できる良好な就業機会を確保できるようにするため、再就職を希望する者に対し、必要な情報提供や仕事に有用な能力を身につけることができるよう支援体制を整備することが求められる。
また、企業に対しても、再就職女性を雇用する場合の留意点や活用の好事例などノウハウを提供することや、再就職が難しい年齢層に対し、求人の年齢制限を緩和し年齢にかかわりなく均等な機会を与えるよう求めていく必要がある。
(5) ライフプランやキャリアプランへの支援
働く女性にとって、結婚、出産・子育てといった各ライフステージにおいて、どのような働き方をするつもりなのかというキャリアプランを持つことが必要である。
こうしたライフプランやキャリアプランの策定に役立つよう、行政は、両立に関する労働関係の法令や支援制度、女性が働きやすい制度をもつ企業や業界に関する情報、また地域において提供される保育サービスの情報、さらには妊娠・出産等に関する健康情報等を幅広く提供していくことが必要である。
さらに、自分のライフプランやキャリアプランに合わせて幅広い職業選択ができるよう、職業教育との連携により、女子学生、女性生徒に対して啓発を行っていくことが重要である。
(6) 男女が仕事と子育てにともに参加できるよう固定的な性別役割分担の解消
子育ての最も大変な時期である30歳代においては男性で長い就業時間、女性で長い家事時間といった男女間での役割分担がみられた。このような役割分担は、働く女性にとって「女性は仕事も家事も」と大きな負担がかかり、男性にとっても「男性は仕事」という役割分担を前提とした雇用管理が根強いことから家庭責任を果たすことが難しい環境となっている。こうした固定的な役割分担の解消に取り組むことや、家庭や職場においても男女がともに仕事と子育ての両立が可能となるような風土をつくっていくことが必要である。
また、次世代を担う子ども達に対しても、十分な理解と判断力を身につけることができるよう、最も身近な家庭や学校における経験や教育を通して、男女がともに職業生活と家庭生活の責任を分担することや、働くことの意義、子どもを育てることの意義を正しく理解させることが重要である。