ポジティブ・アクション取組事例1 総合化学 |
「EO推進室の設置による、女性社員の積極的活用と育成」 従業員数 12,345人(うち女性 1,298人) |
取組背景
1)性別に関わらず優秀者は登用し活用したい、2)後発事業分野においては、男女の区別をつけていては優秀者確保がおぼつかない、3)消費者に近い事業分野においては、生活感覚の強い女性の登用が必須という状況認識をふまえ、女性活用の推進を図ることとなった。
取組体制
1986年からコース転換制度を設け、1991年から女性総合職採用を開始するなどの人事諸施策を展開してきたが、1993年に人事部内にEO(イコール・オポチュニティー)推進室を設置し、女性活用の推進に組織的に取り組むこととした。
取組目標
(1) 事業が10以上の分野に多角化していることをふまえ、2010年をめどにそれぞれの事業分野で女性管理職(課長職以上)登用を目標に、以下の活動方針を設定した。
(2)管理職任用までには、学部卒新卒で最短で15年を要するが、女性が家庭生活と仕事を両立しながら、仕事に対するモチベーションをその間維持し、仕事の上で結果を出していけるように、育成やインフラ整備の施策検討を行う。
(2) 具体的な数値目標
(2)2010年の女性管理職登用の中間目標として、係長職(管理職候補)の人数および配置職種・領域を拡大する。
取組内容
上記取組目標達成のために、EO推進室として、(1)女性配置職種、事業領域拡大(2)女性個人の育成・能力向上支援(計画的ローテーション・教育)(3)就業環境の整備(上司、職場の意識改革、セクシュアルハラスメント等就業環境悪化要因の排除、母性保護施策・育児施策拡大と多様化)に取り組んでいる。
素材営業、研究開発職に加え、これまで女性を登用していなかった医薬MR職、半導体設計開発職等専門性の高い職種へ配置先を拡大した。
(2)育成・個人の能力開発支援
配置転換による計画的育成に加え、EO推進室の指名による社外研修へ女性を派遣した。
(3)就業環境整備
セクシュアルハラスメント防止対策の実施と併行してジェンダーハラスメント払拭のために各種研修・説明会を実施し、男女双方特に管理職クラスの意識改革に力を注いだ。また、仕事と家庭生活の両立支援施策の拡大により、従業員の選択の幅が拡大した。(2000年4月から育児休職・育児短時間取得の幅を子供の3才到達後3月末までに拡大。ベビーシッター補助の独自施策実施。)
取組の結果
2001年4月入社総合職の女性比率は16%であり、現在の従業員女性比率を上回った。
係長職は、EO推進室発足当初の1993年5人から、2000年6月時点で62人まで増加した。人数は予定数を上回ったが、職種・事業領域については若干の偏りが見られる。2010年の目標も人数的にはほぼ達成の目処がついた。
今後の課題
女性採用比率の大幅アップを現在検討中で、そのためには、さらなる配置職種・事業領域の拡大が課題となっている。
2001年度は住宅営業への女性配属並びに3交代勤務を伴う製造現場への配属を予定している。
育成並びに仕事へのモチベーション維持のための取組は強化が必要であり、メンター(※)の導入も検討するなど、個々人が能力を伸ばしつつ勤続を伸ばしていくしくみをうまく機能させることが課題である。
就業環境整備については、風土改革に加え、福利厚生等の運用側面についても見直しを実施している。
以上の施策を通じて、仕事、個人、職場の三位一体でポジティブ・アクションを推進していくこととしている。
※直属の上司に限らず、経験を積んだ先輩社員が後輩に対して、良き相談相手として指導や支援を行うこと。
ポジティブ・アクション取組事例2 電気機械器具製造業 |
「イコールパートナーシップ・アクションプログラムによる女性幹部の計画的育成」 従業員数 80,797人(うち女性 12,362人) |
取組背景
1986年の均等法制定以降、男女の均等推進に努めた結果、役付者の女性比率に成果は見られたものの、部への登用までには至っていない状態であったため1999年の均等法改正を機に、男女が対等な立場で能を発揮していく「イコールパートナーシップ」の実を目指して、女性社員の積極的な活用に向けた取組行うことになった。
取組体制
本社人事部門、各本部・分社、事業場の人事が一体となって推進している。
取組目標
1999年に「女性登用推進3カ年計画」を策定し、以下のような目標を立てた。
(2)1200人の役付者のうち200人以上を課長職として登用・配置する
取組内容
1999年から推進している取組は、「風土改革」と「均等推進」「両立支援」を切り口としており、女性の積極的な登用については、「イコールパートナーシップ・アクションプログラム」として「意欲ある女社員の積極的な登用」「女性幹部社員の計画的な育成」「事業や経営に対する視野・識見を拡大する取組」「女性社員が能力を発揮しやすい環境整備」などの施策を行っている。
(1) イコールパートナーシップ・アクションプログム
意欲ある女性を積極的に登用するために具体的な目標値を設定し、登用に向けた計画的育成を推進してる。本社がガイドラインを示し、各本部・分社、事部が独自に策定した。
(2)女性幹部開発システム推進計画
3年以内に部課長職への登用を検討している者の育成・配置等について、個別計画を作成し、それをもとに推進していく。女性幹部社員の計画的な育成をねらいとして各本部・分社、事業部が策定した。
(3)イコールパートナーシップ・コミッティー
女性社員の事業や経営に対する視野の拡大をねらいとして、分社ごとに設置したコミッティーであり、分社長に対して経営提言やイコールパートナーシップの実現に向けた提言等を行う。参加メンバーは主に主事・主任(管理職前の資格)の女性が中心となっている。
(4)ワーク&ライフサポートプログラム
女性が能力を発揮しやすい環境整備をねらいとして「ホームページによる情報提供」「ベビーシッター会社との法人契約」「ワーク&ライフサポート勤務」等の取組を実施した。「ワーク&ライフサポート勤務」は、業務の専門性・裁量性等を勘案して会社が認めた社員については、育児・介護の負担が大きい一定期間、在宅勤務や隔日勤務などフレキシブルな勤務ができる制度である。
(2) イコールパートナーシップ研修
意識・風土改革をねらいとして、1999年度に幹部社員を対象に研修を実施した。今後は、新任の幹部社員を対象に実施していく。
(3) イコールパートナーシップ重点推進月間
6月を「イコールパートナーシップ重点推進月間」と定め、各種啓発活動を全社あげて重点的に実施した。具体的には、全社フォーラムの開催、ホームページの開設、啓発ポスターの掲示等を行った。各事業場でも懇親会やフォーラムを開催した。
取組の結果
女性の勤続年数は、1986年当時6.3年だったものが、2000年には15.8年になった。また、役付の女性も37人から753人へと増加した。
今後の課題
女性の挑戦意欲・専門能力を最大限活かすため、「責任ある」基幹ポストへの任命、上位職への登用を加速する。また、それらの女性を「ロールモデル」として機能させ、全体の意識・風土改革に結びつけていく。
ポジティブ・アクション取組事例3 一般貨物自動車運送事業 |
「管理職登用に向けた、女性ドライバーへの積極的支援」 従業員数 199人(うち女性 54人) |
取組背景
昭和62年、海外視察先で電車やバスの運転手として働く現地女性の姿に刺激を受けた社長が自社での女ドライバーの採用を決意し、昭和63年より採用を始た。その後、コンテナ輸送用大型トレーラーにも女のドライバーが誕生し、全ドライバーの約19%を女が占めるようになった。
しかし、平成10年に再度現状分析を行った結果、「女性管理職が少ない」という問題点が挙げられため、その原因となっている状況について改善するこになった。
取組体制
女性にも働きやすい環境を整備し、積極的に女性を活用しようという方針を掲げ、トップダウン方式で内への浸透を図った。平成10年に総務部長として初て部長職に女性が登用され、同部長を中心に方針策定、実施に取り組んだ。
取組目標
女性管理職および主任級を5年間で現在の2倍にする。そのための具体策として、(1)女性の勤続年数伸長(2)女性の能力の質的向上を図る。
取組内容
(1) 女性の勤続年数の伸長
女性ドライバーが妊娠すると、振動などの問題により大型トレーラー等の運転が困難になるため、妊娠の女性ドライバーが就業を継続できるよう、倉庫管への一時的異動等の受け皿職場を用意した。
また、妊娠退職者の再雇用制度や、配車時間の変更、運行区間の変更による育児期間中の勤務時間短制度を取り入れ、出産後の継続就業を促した。
(2) 女性の能力の質的向上
迅速かつ確実に荷物を運ぶだけでなく、セールスドライバーとして営業面での活躍ができるように、資の向上に重点を置き、年2回のアンケート調査や個別面談の実施、スキルアップのための相談制度を整えている。
女性ドライバーには大型・特殊車の免許取得のために積極的に自動車学校へ通うことを勧奨しており、外部の講座・セミナーへの参加も奨励している。
自社独自の安全衛生小集団活動(品質管理手法、問題解決手法を用いてテーマに取り組む活動)を通して、女性リーダーの育成を図っている。平成11年には職制変更を行い、主任前の役職としてチームリーダー職を新設した。これは、主任昇格前の予備軍に早期から管理能力やリーダー意識を持たせることが狙いであり、将来的に管理監督者として働く者の養成を目指している。
取組の結果
女性管理職の数は平成10年の2人から変化していないが、チームリーダー職を新設したことで、役付の女性は6人となった。
(1) 女性の勤続年数の伸長
妊娠中の女性を就業が可能な部署へ配置転換し、出産後ドライバーとして復帰している者が1人いる。また、出産退職後に再雇用されたドライバーは現在2人で、退職時と同じ条件で勤務している。
(2) 女性の能力の質的向上
大型・特殊車の免許取得のために積極的に自動車学校へ通うようになった。また、チームリーダーは、8人中4人が女性である。
今後の課題
女性役職者の登用については、さらなるステップアップを目指し、女性のチームリーダーを主任級まで引き上げて行くための教育の充実を図る。また、ドライバーの意識改革を継続して行い、“仕事の取れる”セールスドライバーとして、営業面での活躍ができるように育成していく必要がある。
ポジティブ・アクション取組事例4 書籍販売業 |
「女性の昇格意欲を高めた長期プロジェクト」 従業員数 591人(うち女性 205人) |
取組背景
女性社員の平均勤続年数は長かったが、女性の能力が十分に生かされておらず、女性の管理・監督職への登用も不十分であり、女性側の昇格意欲も希薄であったため、女性社員の意識改革を行い、昇格スピードを上げることが必要とされた。
取組体制
1981年に、トップダウンで女性の能力開発を目的とするプロジェクト「エイブルレディース」を発足させた。1991年までの10年間、女性の能力開発のための取組を実施した。1992年からは、子育てをしている女性を対象とした両立支援プロジェクト「C&C(キャリアウイメン&チャイルドケア)ネットワーク委員会」を発足させた。
取組内容
(1) 「エイブルレディース」
(2)発足4年目からは、管理・監督職、一般職からの選抜者を参加させ、参加メンバーの自発的な運営に委ね、グループワーク、セルフワークにより業務改善に取り組んだ。(1984年〜1988年)
(3)最後の3年間は、管理・監督職に登用されている女性社員全員が参加し、女性という枠を越えて、“人財”として能力を発揮していくにはどのような職場が必要で、どのような能力開発項目が明示されるべきかということを自主的に提言した。
(2) C&Cネットワーク委員会
出産・育児を経験しながら仕事をしている者同士のネットワークを築き、仕事上での工夫や生活・育児上での工夫などの情報を共有化しながら、共にキャリアアップを目指していくことを目的として、1992年に発足した。正社員だけでなく、一部パートタイマーも含めて、高校生までの子供がいる対象者が参加している。
年に二回、育児休業中と短縮勤務中の委員会メンバーを集めて、合宿を開き、お互いに情報交換を行い、育児中の者同士の絆を強め、職場復帰しやすい環境を整えている。
1999年の9月より、それまで人事部が行っていた事務局をC&Cのメンバーの自主的運営に委ねた。C&Cでは広報誌を発行しており、メンバーとその上司に配布している。アンケート調査の結果報告、昇格者のコメント、育児休業をして復職した者のコメントなどを掲載している。
取組の成果
これらの取組を通して、女性の昇格意識も高まり、昇格試験を受験する者の割合は着実に高まっている。「エイブルレディース」実施中の10年間で管理・監督職への合格者は23人から73人へと3倍に増えた。C&Cにおいては、幅広い交流が行われる中で、身近な役職者に刺激を受けて、自発的に昇格・昇進にチャレンジする雰囲気が作り上げられた。
今後の課題
今後は上級管理職にも女性が多く登用されていくよう、会社としての育成支援体制の強化に取り組んでいく。
ポジティブ・アクション取組事例5 総合小売業 |
「職域拡大、管理職への登用を中心とした女性育成策」 従業員数 2496人(うち女性 1173人) |
取組背景
総合小売業であることから、顧客の大半が女性であり、事業運営上女性社員の活躍がますます求められるようになってきた。また、これまで男性向きとされていた仕事に女性を参加させることで、より活力のある組織ができると考えるようになった。
取組体制
平成9年に、人事部及び営業部の部長、人事や教育の担当課長、女性管理職、女性スタッフからなる「ポジティブ・アクション・プロジェクト」を発足させ、月1回のミーティングを通して職場の課題抽出や意見交換、女性活用に関する啓発活動、活用事例のフォローと改善等を行った。平成11年4月以降は、新人事制度の導入に伴い、その機能は人事部へ移行した。
取組目標
平成7年度に「女性の積極的活用」を企業理念に掲げ、「中期プラン」を策定して目標値を設定するとともに、毎年年度計画を作成している。
(1) 職域の拡大
(平成15年までに食品部門の女性比率を30%へ)
(2)取引先との折衝など、十分なキャリアが必要とされるバイヤー部門への女性の配置
(平成15年までに女性比率を20%へ)
(2) 役職・管理職への女性の登用
(平成15年までに主任の女性比率を50%へ、管理職の女性比率を10%へ、女性店長を3人登用)
取組内容
(1) 職域の拡大
平成7年に食料品売場を中心に業務の見直しを行い、この結果を踏まえて、重さに対しては小型の台車の導入や商品の小口化で対応し、寒暖の差については制服の素材や形態で対応するなど、女性でも作業がしやすい作業環境へ改善を図った。
(2)バイヤー部門への女性配置
バイヤーへの登用を拡大するため、全社員を対象としたバイヤー公募制や、必要な知識を身につければライセンスと手当を与える「バイヤー候補ライセンス」制度を導入した。
(2) 役職・管理職への女性の登用
大卒女性を積極的に採用し、内定者をアメリカでのセミナーに参加させて最先端の流通革新を見聞させたり、入社後1年半経った時点で主任候補研修を行うなど、若手大卒女性の育成に力を入れている。さらに、店次長以上(管理職)の登用については、約6カ月の店次長候補研修を行い、修了者にライセンスと手当を付与している。
(3) その他の主な取組
女性の能力を社内に認識させるため、優秀社員の表彰や技能コンテスト等を実施している。
(2)社内プロジェクトへの女性の参加
採用チーム、商品開発チーム、CS活動、社内報編集等の社内プロジェクトには、必ず女性を参加させている。
取組の成果
新卒女性の食料品部門への配置は、平成10年に12人、平成11年に22人、平成12年に15人で、概ね順調に育っている。
バイヤーに関しては、平成11年度の公募では応募者34人中、女性は3人であった。ポストが限られているため、目標達成まで至っていないが、現在全バイヤーの13%を女性が占めており、女性バイヤーの中にはヒット商品開発等の好業績を残している者も多い。
平成12年度には、主任の女性比率は30%まで上がった。また、9人の女性店次長、1人の店長、1人の部長が誕生し、女性を管理職に登用したことにより業績が顕著にアップした部門もある。
今後の課題
高卒者の勤続年数が短いことが影響して、女性全体としての勤続年数が伸びていない。今後はポジティブ・アクションを推進していく上でも、勤続年数を伸ばしていく必要がある。
ポジティブ・アクション取組事例6 金融・保険業 |
「多様な制度の活用による女性行員の育成」 従業員数 2,096人(うち女性 805人) |
取組背景
業務のOA化、集中化が進み、定型的、補助的、標準的な事務処理が大幅に簡素化されるようになっため、これまで主にこれらの業務を行っていた女性行を、より高度な業務分野で活かすために、女性の職能力や意識を向上させる必要があった。
取組体制
社長自らがイニシアチブを取り、女性活用のための取組を積極的に推進している。1987年からコース別事制度を導入し、男女ともに入社後にコースを選択きる「コース転換制度」を設けた。2000年4月には新人事制度が導入され、勤務地限定コースの選択者も役職者登用の機会が設けられた。
取組目標
特に数値目標は設定していないが、(1)女性の業務拡大(2)女性の育成を目指して取組を進めている。
取組内容
(1) 女性の業務拡大
これまで女性の配属がなかった渉外の仕事は銀行員のキャリアとして大変重要なものであるため、まず個人客を中心とした渉外の仕事に女性を配置した。
(2)専門職制度
金融業界の競争の激化に対応し、サービスの質を高めていくために、年金プランナー(年金推進担当者やセールススタッフ(渉外活動を行う各支店所属の業担当者)といった専門職を設け、女性行員が専門を発揮できるようにした。
(2) 女性の育成
大卒以上の行員の場合、入行時にチャレンジ職コース(支店長、部長等幹部社員までの登用がある)かーソナル職コース(勤務地限定、チーフマネージャまでの登用がある)のいずれかのコースを選択するとになっている。コースは、在職中一回に限り転換申請ができ、毎年一回申請を受付けている。ただしチーフマネージャー登用時には、幹部を目指すか否の選択ができるようになっている。コース転換制度より、女性行員がキャリアプランに合わせてコースを選択することができ、継続して就業しやすい環境となった。
(2)能力開発のための取組
現場行員から商品アイデアを募集するもので、これまでに女性から「ATMくじ付き定期」といったアイデアが出され、実施に移されている。
●業務リーダー制
営業店では、認定試験に合格した行員に、「業務リーダー」として内勤役職者の仕事の一部を任せており、現在131人の女性行員が従事している。新人事制度により、全社員に役職への登用チャンスが生まれたことから、業務リーダーを役職者候補として位置づけ、女性行員に早期から責任ある仕事を与え、役職を目指していくよう促している。
●「コンシェルジュ・アカデミー」
研修1998年から、若手行員を中心に「コンシェルジュ・アカデミー」研修を実施しており、これまでの受講者のうち、約半数を女性行員が占めている。このセミナー参加者は、お客さまサービススペシャリストとしての社内認定資格「マネー・マスター」(現在73人、うち女性8人)を目指して自己研鑽しており、今後女性比率を向上させていくために、女性行員の積極的な研修参加を呼びかけている。
取組の成果
女性が継続就業しやすい環境が整い、勤続年数が20年未満の行員については、勤続年数別人数の男女比がほぼ同程度となり、女性の勤続年数が伸びている。
職域拡大の結果、現在渉外に配属されている女性行員は188人で、全体の32%まで伸びてきている。現在、チャレンジ職の女性は91人で、女性行員全体の11.3%を占めている。
また、平成13年2月現在女性の役職者は、支店長等幹部社員276人中女性が8人、その他役職者450人中32人となっている。
今後の課題
新人事制度の導入により、今後多くの女性行員が役職者登用のチャンスに挑戦していくよう促していく。
ポジティブ・アクション取組事例7 ホテル業 |
「透明な人事考課と積極的な能力開発による 女性社員の意欲喚起」 従業員数 302人(うち女性 94人) |
取組背景
女性管理職がおらず、女性の活躍の場が限られていたため、女性の戦力アップのために、女性管理職の登用と職域の拡大が課題であった。平成10年に現状分析を行ったところ、配置転換や昇進昇格等の人事規定が不明確であることが分かった。そこで、公平で透明な人事考課に改め、能力が公正に評価される仕組みを整えることになった。
取組体制
平成10年4月に「人事考課検討委員会」を発足させ、会社側より経営者・担当部長、労働組合側より執行委員三役が参加して新しい人事考課規程を作成した。また、平成12年4月から、女性社員も参加して「新賃金検討委員会」を開き、賃金体系と職能資格制度について検討した。
取組目標
(1) 女性の職域拡大
外回りの営業職へ女性を配置する。
(2) 女性管理職育成のための能力開発
女性の教育訓練を充実させることにより、各人の職場能力を上げ、責任ある仕事につける。
取組内容
「人事考課検討委員会」において、公平で透明な人事考課規程を作成し、平成10年10月より実施した。また、平成12年に新しい賃金体系と職能資格要件を作成した。
新しい人事考課規程により、社員に毎年1回「目標設定カード」を提出させ、考課者(所属長)はこれをもとに年3回の面接を行っている。考課は職務基準と職能要件に照らして行うが、考課者に対しては、「考課者の心構え」としての厳守事項を提示し、男女の区別なく公平に考課するように徹底している。さらに、年2回外部の講師を招いて、考課者訓練を実施している。考課結果については本人から照会があった場合には、口頭で説明しており、社員が自分の能力を客観的に把握できるようになっている。
自己申告や「目標設定カード」を取り入れた人事考課を行うことにより、女性社員の目的意識を向上させ、職域拡大や能力開発を通して、女性社員の育成を図っている。
(1) 女性の職域拡大
平成10年4月に、自己申告で異動を希望した女性2人を、飲料販売、宴会、宿泊販売等の外回りの営業職に配置した。ホテル業界での女性の外回り営業は珍しいが、配置された女性は男性と同等に活躍している。平成13年2月にはさらに1人増えて、現在3人が従事している。
(2) 女性社員の育成
女性社員の育成を目的とした研修を行っており、自分の仕事の役割や社内における位置づけ、全体の業務との関係等を再確認させ、今後実行可能な新しい仕事は何かを検討させている。また、自己啓発を目的とした通信教育や海外ホテルでのトレーニング等の社外研修へ女性社員を積極的に参加させるようにした。
社内外の研修やセミナーの参加者募集はメールや回覧等で行っており、女性社員が自ら意欲的に希望し、参加している。通信教育や技能資格試験に関しては、受講終了証を交付された者および資格を取得した者に対して受講料の全額または半額を会社が補助している。
取組の成果
公平で透明な人事考課規程を作成したことにより、社員全体の人事考課に対する納得性や理解が高まり、職務に対する姿勢に変化が出た。また、女性社員の能力・適性・業務成績を職能要件にあてはめて正確に把握し、個々の能力を開発するとともに、昇進昇格、配置異動、昇給、賞与などにも反映させて、女性のモラールの高揚と職域の拡大につなげることができた。女性の主任(管理職前の職階)は、平成9年に3人であったのが、平成13年2月現在7人に増加した。
「目標設定カード」の導入により、社員に目標設定と自己評価を行わせ、面接とフィードバックを行うことで、適材適所の人事配置をスムーズに行うことができるようになった。
今後の課題
女性社員の平均年齢が低く、職務経験が浅いために管理職登用に至っていない。今後は段階的に育成していくために、女性の能力開発に継続して取り組む必要がある。
ポジティブ・アクション取組事例8 ガス事業 |
「女性社員業務拡大委員会による女性社員の職域拡大の取組」 従業員数 732人(うち女性 70人) |
取組背景
平成8年以降に次のような必要が生じ、女性社員の業務拡大に取り組むことになった。
(2)平成8年に、全社員一律の能力主義・業績主義を徹底した処遇制度改正を行ったため、女性にも男性と対等に仕事をしてもらうことが期待された。
(3)社員の意識改革をも含め、社会的責務として女性を積極的に活用する必要があった。
取組体制
平成7年4月に、人事部主導による「女性社員業務拡大委員会」を発足させ、計画書の作成・取りまとめなどを行った。管理職を含む男女20人の委員は、各部署から横断的に登用した。
取組目標
平成7年より、会社の経営方針として以下のような目標を打ち出した。
(1) 業務拡大
同じ業務でも、補助的な業務から企画や折衝にまでレベルアップする
(2)職域の拡大
従来男性だけが担っていた職種を女性にも拡大させる
(2) 環境整備
業務拡大をバックアップするものとして「環境整備」に取り組む
取組内容
(1) 業務内容の把握
「女性社員業務拡大委員会」は、平成7年8月までに全職場のヒアリングと全社員を対象としたアンケート調査を実施した。ヒアリングやアンケート調査によって、従来男性の仕事と思われていた業務の多くが、器材の改良などで女性でも担当できる仕事だということが明らかになったため、「こういう仕事を女性に」という業務分野別の業務拡大例を提示した。
(2) 個人・部署毎の業務拡大計画書の策定
各部署の管理職に、(1)「業務分担表」と(2)「女性社員業務拡大への長期的取組計画」および(3)「女性社員業務拡大実行計画書」を作成・提出させた。(1)「業務分担表」には、現行の業務の中で、新たに女性に担当させるために必要と思われる条件・措置について記入し、(2)「女性社員業務拡大への長期的取組計画」には、女性社員の業務拡大に関する今後5年間の目標や部門独自の取り組み、人事担当者への要望等を書かせた。(3)「女性社員業務拡大実行計画書」には、女性社員一人ひとりについて、今後どのように業務を担当させ、育成するのかを記入させた。
(3) 業務拡大
ヒアリング・アンケート調査結果と「取組計画」に基づき、各部署において業務拡大を行った。
資材購買時の価格交渉、業務高度化推進プロジェクト検討メンバーへの参加等
(2)職域の拡大
ガス・エネルギーシステムの提案営業、広報におけるマスコミ対応、生産部工場でのオペレーション・品質管理、装置工事設計検収、ガス設備設計指示・指導等
(4) 環境整備
女性の活躍を制度的側面や職場のルール(慣習)面から支援するため、オートマチック車の導入、制服の自由化、お茶入れ廃止などの環境整備に取り組んだ。
取組の結果
「男性の後任には男性で」という人事異動が行なわれていたが、「能力があれば女性・男性を問わない」と考えられるようになり、男女が対等な戦力であることを公に確認できた。
今後の課題
これまでのような人事部主導の取組だけではなく、各部署での自発的な取組が期待される。また、業務拡大の取組を行っても、複数の職場を経験する前に退職してしまう女性も多いので、今後はキャリアアップにつながる取組を検討していく。