中国帰国者生活実態調査の結果


(調査実施期間 平成15年11月20日〜平成16年3月31日)


平成17年3月

厚生労働省社会・援護局


照会先 社会・援護局援護企画課中国孤児等対策室(内3468)



中国帰国者生活実態調査結果の概要

(調査実施期間 平成15年11月20日〜平成16年3月31日)


 この調査は、昭和47年9月の日中国交正常化以降、平成15年3月31日までに永住帰国した中国帰国者本人のうち、中国帰国者定着促進センターに入所中の者及び永住帰国後に死亡した者等を除いた5,208人を対象に、平成15年4月1日を基準日として実施し、回答のあった4,094人(回収率78.6%)について取りまとめたものである。その結果は別添のとおりであるが、概要は次のとおりである。
 なお、これまでの調査は帰国後10年以内の者や孤児のみなど、対象者を限定して実施していたが、今回は日中国交正常化以降の全ての帰国者を対象として実施した初めての調査である。(したがって、調査結果についてはこれまでのものと単純比較することはできないものである。)


 帰国者の年齢
 帰国者本人の平均年齢は孤児が61.5歳、婦人等は70.0歳、全体では66.2歳となっている。
 年齢別の割合でみると、孤児は60歳代が69.9%と最も多く、次いで50歳代が28.7%となっており、婦人等は60歳代が41.4%と最も多く、次いで70歳代が33.8%、80歳代が15.4%の順となっている。

 都道府県別居住地
 帰国者の都道府県別の居住地は、孤児は東京都が21.0%と最も多く、次いで大阪府が9.6%、神奈川県が7.7%、埼玉県が6.6%、愛知県が5.6%となっている。
 婦人等は、東京都が17.9%と最も多く、次いで大阪府が10.0%、長野県が8.0%、愛知県が4.6%、埼玉県が3.9%となっている。

 日本語の習得状況
 帰国者本人の日本語の理解度は、「日常会話に不便を感じない」が孤児16.2%、婦人等56.9%となっており、「買物、交通機関の利用に不自由しない」を合わせると、孤児51.5%、婦人等77.0%となっている。
 一方、「片言のあいさつ程度」「まったくできない」の合計が、孤児47.1%、婦人等22.1%となっている。
 年齢別にみると、終戦時の年齢が高い者(70歳以上)は理解度が高く、終戦時の年齢が低い者は低くなっている。
 また、配偶者の日本語の理解度をみると、「日常会話に不便を感じない」13.3%、「買い物、交通機関の利用に不自由しない」25.6%で合計38.9%となっており、帰国者本人に比べ低い数字となっている。

 就労状況
 帰国者本人の就労状況をみると、「現在就労している」は13.9%、「以前就労していた」が35.3%で合計49.2%となっているが、「就労したことがない」が44.2%となっている。なお、現在就労している者は60歳代前半までの者がほとんどを占めている。
 就労状況を世帯でみると、帰国者のみ就労している世帯は8.8%,配偶者のみ就労している世帯は6.0%、帰国者及び配偶者が就労している世帯は5.1%で、両方とも就労していない世帯が80.1%となっている。
 また、就労していない理由は、「高齢のため」50.3%、「病気やけがのため」39.1%となっている。
 就労による平均収入(手取り)月額は、帰国者又は配偶者の一方が就労している世帯が13万8千円、帰国者及び配偶者両方が就労している世帯が28万8千円、全体では17万8千円となっている。
(なお、収入額は帰国者本人及び配偶者の収入のみであり、同一世帯の子等の収入は調査していない。)

 年金の状況
 年金の受給状況をみると、孤児は35.8%、婦人等は66.2%、全体で52.4%が現在年金を受給している。また、現在受給及び加入中の年金種別をみると、国民年金が最も多く、孤児が52.7%、婦人等が59.2%となっており、次に厚生年金が孤児36.5%、婦人等24.2%と続いている。
 受給している年金額は、36万円未満(月3万円未満)が51.2%、次いで36〜60万円未満(月5万円未満)が25.1%となっている。

 生活保護の受給状況
 生活保護の受給状況をみると、孤児世帯では61.4%、婦人等世帯では55.2%、全体では58.0%が現在生活保護を受給している。なお、帰国後経過年数別の受給状況をみると、年数を経るにしたがって受給率は減少している。
 また、帰国者本人が就労している世帯は10.9%の受給率となっている。

 帰国後の生活状況
 現在の生活状況では、「苦しい」「やや苦しい」の合計が孤児64.6%、婦人等53.5%、全体で58.6%となっている。ただし、帰国前の生活状況と比べると「楽になった」「やや楽になった」の合計が35.8%と「苦しくなった」「やや苦しくなった」の合計28.0%を上回っている。
 帰国後の感想をみると、「良かった」「まあ良かった」の合計は、孤児53.7%、婦人等73.4%となっており、帰国者の64.5%が満足している。そのうち、良かったと思う理由は、「祖国で生活ができるようになった」が最も多かった。
 また、「後悔している」「やや後悔している」帰国者は、孤児16.1%、婦人等7.7%となっており、そのうち後悔している理由は孤児・婦人等とも「老後の生活が不安」が最も多かった。

 介護保険の状況
 帰国者本人及び配偶者の介護保険制度における認定状況について聞いたところ、認定を受けている世帯は10.9%で、そのうち認定の程度は「要支援」が40.3%と最も多く、次いで「要介護1」が28.1%、「要介護2」が12.2%となっている。

 地域生活の状況
 帰国者本人の近所とのつきあい状況を聞いた(複数回答)ところ、「招待し合うような親しい人がいる」が24.0%、「立ち話をする程度に親しい人がいる」が26.7%となっていたが、「つきあいがない」も18.4%あった。
 また、悩みの相談相手としては家族(子、配偶者)を多くあげている。
 帰国者本人が参加したことがある地域活動(複数回答)では、「町内会・自治会の地域清掃」が75.6%と最も多く、次いで「地域の祭り」が27.8%、「防災訓練」が19.4%の順となっているが、「参加したことがない」も14.5%あった。

10  家族の状況
 帰国者1人当たりの日本在住の家族数は、国費同伴、呼び寄せ家族を含めて孤児が9.4人、婦人等が11.8人となっている。
 また、帰国者1人当たりの中国に残っている家族数は、孤児が0.9人、婦人等が1.3人となっている。

11  国費により同伴帰国した子世帯との状況
 帰国者を扶養するため同伴帰国した成年の子世帯と現在同居しているのは、孤児が28.1%、婦人等が38.4%となっており、別居者の別居までの期間は孤児・婦人等とも約6割が3年未満となっている。

 (参考)
  平成6年度 65歳以上の帰国者本人を扶養するために同伴する成年 の子1世帯を援護対象とした。
  平成7年度 帰国者本人の年齢要件を60歳以上に引き下げた。
  平成9年度 帰国者本人の年齢要件を55歳以上に引き下げた。

12  同伴帰国した子・孫の就学状況
 同伴帰国した子・孫で現在就学中の者が「いる」と答えたのは44.5%で、学校別では子は大学が最も多く、孫は小学校が最も多い。

13  日本在住の子と子の配偶者の状況
 日本在住の子の平均年齢は、孤児の子が34.8歳、婦人等の子が40.9歳となっている。
 年齢別にみると、孤児の子は30歳代が59.2%と最も多く、次いで40歳代が21.0%、20歳代が14.7%の順となっている。婦人等の子は30歳代が34.4%と最も多く、次いで40歳代が33.2%、50歳代が17.2%の順となっている。
 また、子と子の配偶者の就労状況では、子または配偶者のどちらか一方が就労している世帯が38.8%、両方とも就労している世帯が44.8%と、世帯としては83.6%が就労しており、就労していない世帯は6.7%となっている。
 子と子の配偶者の日本語の理解度についてみると、「日常会話に不自由を感じない」が50.8%、「買い物、交通機関の利用に不自由しない」が26.9%となっている。

14  生活支援の状況
 子世帯から何らかの「生活支援がある」と答えた帰国者は60.2%で、そのうち「生活費の援助がある」は17.7%となっている。生活費の援助の程度は、「こづかい程度(1万円以下)」が48.8%と最も多く、次いで「生活費の一部」が27.7%で、「生活費の大部分」は14.2%となっている。


(参考)

 昭和20年8月9日(ソ連参戦)以降の混乱により、中国に残留を余儀なくされた者を総称して「中国残留邦人」と呼んでいる。そのうち、

「中国残留孤児」とは、
当時の年齢が概ね13歳未満で、本人が自己の身元を知らない者をいう。

「中国残留婦人等」とは、
上記以外の者をいう。(主として婦人)

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