(1) | 母の就業状況の変化パターンにおける分類
人口動態職業・産業別統計と21世紀出生児縦断調査をリンケージすることにより、出生1年前、出生時、出生半年後、1年半後の4時点での就業状況に加え、出生時の職業をみることができる。 母の就業の有無について、全体としての動きをみると、出生1年前には有職である母が54.4%と半数以上を占めていたが、出生時には無職が77.0%と逆転し、出生1年半後では68.1%と7割近くの母が無職となっている。 この動きは、各個人の就業状況が変化した積み重ねとして現れたものであるが、各々はどう変化しているのか、リンケージデータを用いて個人ベースの就業状況を追跡し、就業状況の変化パターンを定量的に分析することとする。 母の就業状況の変化を詳細にみると、4時点での有職(◆)・無職(◇)の組合せにより、表2-2の左側に示すような多くのパターンがみられる。 |
このままでは煩雑で動きが捉えにくいため、これらのパターンについて、母が出生1年前に有職か無職かを基本としつつ、定性的な観点から分類し、次の6つの就業変化パターンを主な分類として、分析を行うこととした。 |
《母の就業変化パターンの分類》
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上記の分類において、出生1年前、1年半後の両時点で有職である者(実質的には出生前後とも就業)は、主として「I就業継続型」、「II一時離職型」の2つに分類される。職産の出生時のデータを用いることで、出生児縦断だけでは就業が継続しているとみなされていたが実は「一時離職型」であるパターン(◆◇◆◆)が正確に切り分けられる。 また、出生を機に離職した者は、「III出産前離職型」、「IV出産後離職型」の2つに分類され、両者を比較することで、離職するタイミングが出産前か後かという観点から分析できる。この両者の分類も職産で出生時の職業の有無がわかってはじめて可能である。 このように、両調査を組み合わせることにより、はじめて正確なパターン分けが可能となっている。 |
(2) | 母の就業変化パターンの分析 母の就業変化パターンについて、その構成割合をみる。 出生1年前に有職である母の割合は、総数では約半数であるが、第1子では7割、第2子以上では4割弱と出生順位による違いがみられる。 第1子について母の就業変化パターンの割合をみると、出産前に育児などに専念するため離職したと考えられる「III出産前離職型」が38.5%と多く、ついで「V無職継続型」が22.2%、「I就業継続型」が16.9%となっている。 第2子以上についてみると、出生前から継続して無職の「V無職継続型」が52.5%と半数を占めており、ついで「I就業継続型」が15.6%となっている。「III出産前離職型」は第1子に比べ著しく少ない。 |
1)出生1年前に有職の母 出生1年前に有職であった母についてみると、第1子では、「III出産前離職型」が52.5%と半数を占め、ついで「I就業継続型」が23.0%と約4人に1人が就業を続けている。一方、「II一時離職型」、「IV出産後離職型」はそれぞれ1割前後となっている。 第1子の出生を機に離職したのは、「III出産前離職型」、「IV出産後離職型」のあわせて6割であるが、そのうち前者が86.0%を占め、9割弱が出産前のタイミングで離職している。また、1年半後も有職の母のうち4割弱が「II一時離職型」であり、就業を継続する環境が整わなかった出産などの一時期を離職している。 第2子以上では、「III出産前離職型」が大きく減り、反対に「I就業継続型」が43.7%と多くなっている。第1子に比べ就業形態が確立されているか、家族の協力体制などができあがり、就業を継続できる環境にある者が多いと思われる。「II一時離職型」も25.5%となっており、出生1年半後に仕事を持つ母の割合が第1子に比べ増えている。 |
2)出生1年前に無職の母 出生1年前に無職であった母については、「V無職継続型」が8割以上と大多数を占め、「VI就業開始型」は1割程度と出生順位による大きな違いはみられない。しかし、第2子以上は「VI就業開始型」が若干増えており、第1子の段階より出生後に就業を始めようとする兆しがみられる。 |
(3) | 母の就業形態からみた就業状況の変化 出生1年前に有職であった母の就業変化パターン別に就業形態をみると、全体では、常勤が58.1%、パート・アルバイトが31.2%となり、常勤者の割合が多い。なかでも「I就業継続型」、「IV出産後離職型」は常勤がそれぞれ80.4%、74.1%と圧倒的に多く、パート・アルバイトが少ない。「II一時離職型」、「III出産前離職型」はパート・アルバイトが4割程度であるが、常勤は「III出産前離職型」の方が多く、就業形態による影響が考えられる。 |
母の就業形態別に就業変化パターンをみると、常勤は「I就業継続型」が4割を占め、「III出産前離職型」より若干多くなっている。パート・アルバイトは「III出産前離職型」が6割、「I就業継続型」が1割弱となり、「III出産前離職型」が圧倒的である。なお、「II一時離職型」は常勤よりパート・アルバイトの方が多くなっている。 |
次に、出生1年前と出生1年半後の就業形態の変化を、出生1年半後の就業形態に主点をおいてみた。 出生1年前に有職の母は、1年半後には常勤が54.0%、パート・アルバイトが27.5%と、常勤者がパート・アルバイトより多くなっている。母の就業変化パターン別にみると、「I就業継続型」では常勤者が4分の3を占めており、そのほとんどが出生1年前と1年半後で同じ就業形態となっている。ただし、パート・アルバイトであった母の15.5%は常勤に変わっており、若干の変化がみられる。 一方、「II一時離職型」は1年半後にはパート・アルバイトが56.1%と半数以上を占めるが、常勤であった母の6割弱がパート・アルバイトに変わっており、「I就業継続型」とは異なった特徴を示している。パート・アルバイトは「I就業継続型」と同様の傾向である。 出生1年前に無職の「VI就業開始型」についてみると、パート・アルバイトが6割と多く、常勤が1割程度である。 |
出生1年半後の就業形態別に就業変化パターンをみると、常勤では8割以上が「I就業継続型」であるのに対し、パート・アルバイトでは「II一時離職型」が5割、「VI就業開始型」が3割となっており、その傾向は大きく異なっている。 |