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平成24年10月 月例労働経済報告

1 概況

  1. (1) 一般経済の概況
     景気は、引き続き底堅さもみられるが、世界景気の減速等を背景として、このところ弱めの動きとなっている。
    • 生産は、減少している。輸出は、弱含んでいる。
    • 企業収益は、持ち直しているが、頭打ち感がみられる。設備投資は、一部に弱い動きもみられるものの、緩やかに持ち直している。
    • 企業の業況判断は、製造業を中心に慎重さがみられる。
    • 雇用情勢は、依然として厳しさが残るものの、改善の動きがみられる。
    • 個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きがみられる。
    • 物価の動向を総合してみると、下落テンポが緩和しているものの、緩やかなデフレ状況にある。
     先行きについては、当面は弱めの動きが続くと見込まれる。その後は、復興需要が引き続き発現するなかで、海外経済の状況が改善するにつれ、再び景気回復へ向かうことが期待されるが、欧州や中国等、対外経済環境を巡る不確実性は高い。こうしたなかで、世界景気のさらなる下振れや金融資本市場の変動等が、我が国の景気を下押しするリスクとなっている。また、収益や所得の動向、デフレの影響等にも注意が必要である。
  2. (2) 労働経済の概況
     労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しさが残るものの、改善の動きがみられる第1図)。
     完全失業率は、8月は前月比0.1%低下し4.2%となった。また、15〜24歳層の完全失業率は、前月比0.2%ポイント低下し、8.0%となった。労働力人口、就業者数、完全失業者数はいずれも減少した。雇用者数はこのところ横ばい圏内で推移している。
     新規求人数は横ばい圏内となっている。有効求職者数が減少していることなどから、有効求人倍率は上昇傾向となっている。製造業の残業時間は減少している。
     賃金をみると、定期給与は底堅く推移しているものの、現金給与総額は横ばい圏内で推移している。
     企業の雇用人員判断は、9月は全産業では横ばいとなっているものの、製造業では過剰感の高まりがみられる。
     先行きについては、依然として厳しさが残るなかで、底堅く推移することが期待される。ただし、生産減少の影響が製造業の一部にみられること等に留意が必要である。

2 一般経済

  1. (1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、減少している。
     2012年8月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、1.3%低下した(第2図)。
     業種別にみると、電子部品・デバイス工業、情報通信機械工業、化学工業(除.医薬品)等が低下し、窯業・土石製品工業、一般機械工業、パルプ・紙・紙加工品工業等が上昇した。
     出荷は前月比0.4%の上昇、在庫は同1.6%の低下であった。
     生産の先行きについては、輸出の弱さや自動車の生産調整等から、当面、弱い動きが続くものと見込まれる。また、在庫の積み上がりにも留意が必要である。
     なお、製造工業生産予測調査においては、9月は前月比2.9%の低下、10月は同0.0%と横ばいが見込まれている。
  2. (2) 最終需要の動向をみると、
    1. [1]  個人消費は、おおむね横ばいとなっているが、足下で弱い動きがみられる。
       二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、7月1.3%減の後、8月2.2%増となった。うち勤労者世帯では、7月1.8%減から、8月1.7%増となった。勤労者世帯の平均消費性向(季節調整値)は7月75.4%の後、8月73.2%となった(第3図)。
       消費者態度指数(季節調整済前月差)の推移をみると、8月は0.8ポイント上昇し、40.5となった。
       9月の小売業販売額(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、1.5%増、大型小売店販売額は2.4%増となった。また、国内新車(乗用車のみ)登録・届出台数(前年同月比)は、8月15.6%増の後、9月3.7%減となった。
       先行きについては、安定的な雇用・所得環境のなか、横ばい圏内で推移すると期待されるものの、当面、自動車販売の弱い動きにより下押しされることが懸念される。
    2. [2]  設備投資は、一部に弱い動きもみられるものの、緩やかに持ち直している。
       財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2012年1〜3月期に季節調整済前期比2.0%減少し、4〜6月期も同0.5%減少(うち製造業同2.1%増加、非製造業同2.0%減少)となっている。また、資本財出荷指数(除く輸送機械)をみると、2012年8月は季節調整済前月比3.6%低下した。
       今後の動向については、日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)では、2012年度の設備投資計画(前年度比)は、全規模では5.8%の増加、製造業では7.9%の増加、非製造業は4.7%の増加となっている。(第4表) また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、7月は季節調整済前月比4.6%増加し、8月は同3.3%減少した。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、7月は季節調整済前月比5.5%減少し、8月は同13.6%増加した。
       先行きについては、復興需要等を背景として、持ち直し傾向で推移することが期待される。ただし、世界景気の減速や生産の減少等の影響に留意が必要である。
    3. [3]  住宅建設は、このところ横ばいとなっている。
       新設住宅着工戸数をみると、7月は季節調整済前月比4.0%増加、8月は同2.1%増加し、年率88.8万戸となった(第5図)。
       着工床面積は、7月は季節調整済前月比4.8%増加したが、8月は同0.6%減少した。
       先行きについては、雇用・所得環境が安定的に推移するなかで、復興需要もあって、底堅く推移することが期待される。ただし、建設労働者の需給状況に注視が必要である。
    4. [4]  公共投資は、堅調に推移している。
       公共機関からの建設工事受注額は、7月は前年同月比29.2%の増加、8月も同26.5%の増加となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、8月は前年同月比19.2%の増加、9月は同1.9%の減少となった。
       先行きについては、関連予算の執行により、強めの動きとなることが見込まれる。
    5. [5]  輸出は、弱含んでいる。
       通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、7月は4.8%減少したが、8月は2.6%増加した。四半期別では、2012年1〜3月期に前期比0.3%増加、年4〜6月期も2.6%増加した(第6図)。
       地域別にみると、アジア向けの輸出は、緩やかに減少している。アメリカ向けの輸出は、このところ横ばいとなっている。EU向けの輸出は、緩やかに減少している。
       先行きについては、当面、世界景気の減速等の影響が続くことが懸念される。
       輸入は、横ばいとなっている。
       通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、7月は1.7%増加したが、8月は1.7%減少した。四半期別では、2012年1〜3月期は0.2%増加、4〜6月期も1.1%増加した(第6図)。
       地域別にみると、アジアからの輸入は、横ばいとなっている。アメリカからの輸入は、緩やかに増加している。EUからの輸入は、横ばいとなっている。
       先行きについては、当面、横ばい圏内の動きとなることが見込まれる。
  3. (3)  国内企業物価は、このところ下落テンポが鈍化している。消費者物価は、このところわずかながら下落している。
     8月の国内企業物価(確報)は、前月比0.2%上昇(前年同月比1.9%下落)となり、輸出物価(円ベース)は同0.1%下落(同2.5%下落)、輸入物価(同)は同横ばい(同3.8%下落)となった。
     8月の消費者物価は、生鮮食品、石油製品及びその他特殊要因を除く総合(コアコア)では前年同月比(固定基準)0.5%下落(季節調整済前月比(同)0.1%下落)となった。総合が同0.4%下落(同0.2%下落)となり、生鮮食品を除く総合は同0.3%下落(同横ばい)となった(第7図)。
     先行きについては、消費者物価(コアコア)は、当面、わずかながらも下落傾向で推移すると見込まれる。
     なお、消費者物価(コアコア)が前年比で引き続き下落していることなども含め、物価の動向を総合してみると、下落テンポが緩和しているものの、持続的な物価下落という意味において、緩やかなデフレ状況にある。
  4. (4)  企業収益は、持ち直しているが、頭打ち感がみられる。企業の業況判断は、製造業を中心に慎重さがみられる。倒産件数は、このところ緩やかに減少している。
     財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2012年1〜3月期9.3%の増益、4〜6月期11.5%の増益(製造業2.7%増益、非製造業16.0%増益)、季節調整済前期比で2012年1〜3月期9.2%の増益、4〜6月期は2.5%の減益(製造業5.5%減益、非製造業1.1%減益)となった。
     また、日本銀行「全国企業短観経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の全規模の2012年度の経常利益計画(前年度比)は、通期では全規模0.8%の増益、製造業2.6%の増益、非製造業0.3%の減益となっている(第8表)。
     企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、規模計で、全産業▲6ポイント(2ポイント悪化)、製造業▲8ポイント(横ばい)、非製造業▲3ポイント(横ばい)となっている(負の数には▲を付した。)(第9表)。
     倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2012年9月は931件で、前年同月比6.9%の減少となった。
  5. (5)  2012年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.2%増(年率0.7%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%増、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.1%減となった(第10図)。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%減(年率1.0%減)となった。

3 雇用・失業

  1. (1)
    1. [1]  8月の就業者数(季節調整値)は、6,263万人となった。
       就業者数(季節調整値)は、8月は前月差6万人減の6,263万人(原数値は6,281万人、前年同月差2万人減)となった。男女別には、男性が3,608万人(前月差9万人減)、女性が2,656万人(同3万人増)となった(第11表)。
       8月の雇用者数(季節調整値)は、5,513万人となった。
       雇用者数(季節調整値)は、8月は前月差1万人増の5,513万人(原数値は5,511万人、前年同月差45万人増)となった(第12図)。男女別には、男性が3,149万人(前月と同水準)、女性が2,364万人(同2万人増)となった。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,751万人、臨時雇・日雇が760万人となった。
       8月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数、速報)は、前月比0.1%増となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.5%増、パートタイム労働者は前月比0.6%減となった。
    2. [2]  8月の完全失業率(季節調整値)は、4.2%となった。
       完全失業率(季節調整値)は、8月は前月差0.1%ポイント低下の4.2%(原数値は4.2%、前年同月差0.3%ポイント低下)となった。男女別には、男性が4.5%(前月と同水準)、女性が3.7%(同0.4%ポイント低下)となった。
       8月の完全失業者数(季節調整値)は、272万人となった。
       完全失業者数(季節調整値)は、8月は前月差10万人減の272万人(原数値は277万人、前年同月差18万人減)となった。男女別には、男性が168万人(前月差2万人減)、女性が103万人(同9万人減)となった。
       なお、求職理由別(原数値)にみると、8月は非自発的理由による離職失業者は101万人(前年同月差9万人減)、自発的理由による離職失業者は102万人(同2万人増)、学卒未就職者は16万人(同1万人増)、その他の理由による失業者は53万人(同10万人減)となった(第11表)。
    3. [3]  8月の労働力人口(季節調整値)は、6,535万人となった。
       労働力人口(季節調整値)は、8月は前月差15万人減の6,535万人(原数値は6,559万人、前年同月差17万人減)となった。
       8月の非労働力人口(季節調整値)は、4,563万人となった。
       非労働力人口(季節調整値)は、8月は前月差20万人増の4,563万人(原数値は4,534万人、前年同月差22万人増)となった。男女別には、男性が1,579万人(前月差10万人増)、女性が2,985万人(同11万人増)となった。
       労働力人口比率(原数値)は、8月は59.1%(前年同月差0.1%ポイント低下)となった。男女別には、男性が70.7%(前年同月差0.3%ポイント低下)、女性が48.3%(同0.1%ポイント上昇)となった(第11表)。
       就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、8月は56.6%(前年同月と同水準)となった。
  2. (2)  月間有効求人数(季節調整値)は、前月比1.1%減と2か月連続で減少した。
     月間有効求職者数(季節調整値)は、前月比0.9%減と2か月連続で減少した。
     8月の有効求人倍率(季節調整値)は、0.83倍と前月と同水準となった。
     新規求人数(季節調整値)は、前月比0.1%減と3か月連続で減少した。
     新規求職者数(季節調整値)は、前月比1.5%減と2か月ぶりに減少した。
     8月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.33倍と前月より0.02ポイント上昇した第13表)。
     正社員の有効求人倍率は、0.49倍(前年同月差0.10ポイント上昇)となった。
     新規求人数(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、8月は一般は前月比1.9%減と3か月連続で減少し、パートについては同1.0%増と2か月連続で増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比2.2%減と3か月ぶりに減少し、パートについては同1.3%増と5か月ぶりに増加した。
  3. (3)  産業別にみると、8月の就業者数(原数値)は、医療・福祉は前年同月差32万人増、卸売業,小売業は同22万人増、その他サービス業は同18万人増、生活関連サービス業,娯楽業は同7万人増と増加したのに対し、製造業は同29万人減、宿泊業,飲食サービス業は同11万人減、情報通信業は同5万人減、建設業は同4万人減、教育,学習支援業は同4万人減、運輸業,郵便業は同2万人減と減少し、学術研究,専門・技術サービス業は前年同月と同水準であった。
     また、8月の新規求人(新規学卒者を除く、原数値)は、宿泊業,飲食サービス業は前年同月比22.3%増、情報通信業は同19.6%増、生活関連サービス業,娯楽業は同17.2%増、卸売業,小売業は同15.0%増、運輸業,郵便業は同14.6%増、医療,福祉は同13.4%増、建設業は同12.1%増、その他サービス業は同9.9%増、学術研究,専門・サービス業は同3.2%増、教育,学習支援業は同2.3%増と増加したのに対し、製造業は同3.7%減と減少した。
  4. (4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、速報)は、製造業では7月に前月比4.4%減となった後、8月は同4.7%減、調査産業計では7月に前月比2.2%減となった後、8月は同0.8%減となった。
     日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では1%ポイント(6月調査と同水準)となり、16四半期連続で過剰超過となった(第14図)。
     厚生労働省「労働経済動向調査」(8月調査)によると、2012年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は34%となり2012年1〜3月期から1%ポイント上昇した(第15図)。また、7〜9月期に実施予定の事業所割合は33%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は28%となっている。

4 賃金・労働時間

  1. (1)  8月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は274,359円で、前年同月比0.2%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.6%増、パートタイム労働者は同1.1%増となった。
     内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.1%増(一般労働者同0.3%増、パートタイム労働者同0.9%増)となったほか、所定外給与は同2.7%増、特別給与は同1.1 %増となった(第16図)。
     また、きまって支給する給与は前年同月比0.3%増(一般労働者同0.5%増、パートタイム労働者同0.9%増)となった。
  2. (2)  8月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、速報、以下同じ)は144.3時間で、前年同月比0.9%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.6%減、パートタイム労働者は同0.4%減となった。
     内訳をみると、所定内労働時間は134.5時間で前年同月比0.9%減(一般労働者同0.6%減、パートタイム労働者同0.4%減)、所定外労働時間は9.8時間で同0.9%減(一般労働者同0.7%増、パートタイム労働者同3.0%減)となった。なお、月間出勤日数は18.8日で前年同月差は0.1日減となった。
     8月の製造業の所定外労働時間は13.8時間で、前年同月比2.7%減となった。
     規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.4%減、100〜499人規模で同3.4%減、30〜99人規模で同7.7%減、5〜29人規模で同2.7%増となった(第17図)。

10月の主要変更点

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