10月 月例労働経済報告

1 概況

(1) 一般経済の概況

景気は、このところ一部に弱さがみられるものの、回復している。

・企業収益は改善している。設備投資は、このところ弱い動きがみられるものの、基調として増加している。

・雇用情勢は、厳しさが残るものの、着実に改善している。

・個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

・輸出は、緩やかに増加している。生産は、持ち直している。

先行きについては、企業部門の好調さが持続し、これが家計部門へ波及し国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。一方、アメリカ経済や原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

(2) 労働経済の概況

労働経済面をみると、完全失業率は低下傾向で推移し、3%台後半となるなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、着実に改善している。

・完全失業率は、8月は前月比0.2%ポイント上昇し、3.8%となった。

・有効求人倍率は、横ばい圏内となっている。

・新規求人数は、やや減少している。

・就業者数は季節調整値で4ヶ月連続で減少した。雇用者数は季節調整値で2ヶ月ぶりに増加した。

・製造業の残業時間は、減少している。

・企業の雇用人員判断は、9月は不足感が高まっている。

・定期給与は横ばい圏内で推移している。現金給与総額は弱含みで推移している。

2 一般経済 

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、持ち直している。

8月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、3.5%増と2ヶ月ぶりに増加した(第2図)。

業種別にみると、8月は輸送機械工業、電子部品・デバイス工業、化学工業等が上昇し、鉄鋼業、繊維工業、窯業・土石製品工業等が低下した。

出荷は4.9%増と上昇した。在庫は0.2%増と上昇した。

今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は9月0.8%減の後、10月4.1%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、

(1)  個人消費は、おおむね横ばいとなっている。

二人以上の世帯の実質消費支出(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、7月1.2%減の後、8月0.4%増となった。うち勤労者世帯では7月0.5%増の後、8月1.5%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は7月(季節調整値)72.4%の後、8月75.1%となった(第3図)。

消費者態度指数の推移をみると、2007年7〜9月期(季節調整済前期差)は0.4ポイント低下し、43.9となった。なお、9月(原数値前年同月差)は2.2ポイント低下し、44.1となった。

8月の小売業販売額(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、3.9%増、大型小売店販売額は4.8%増となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数(原数値前年同月比)は、8月2.1%減の後、9月5.0%減となった。

(2)  設備投資は、このところ弱い動きがみられるものの、基調として増加している。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2007年1〜3月期季節調整済前期比1.6%増の後、2007年4〜6月期同10.2%減(うち製造業同1.1%増、非製造業同16.4%減)となっており、全産業、非製造業で3四半期ぶりに減少している。

今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、全規模の2007年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で4.9%増、製造業は6.8%増、非製造業は3.8%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は17.0%増の後、8月は7.7%減となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、7月は季節調整済前月比40.1%減の後、8月は同26.7%減となっている。

>先行きについては、企業収益の改善が続いていることから、増加傾向で推移するものと見込まれる。

(3)  住宅建設は、このところ減少している。

新設住宅着工総戸数をみると、7月季節調整済前月比30.1%減、8月は同23.0%減の6.1万戸(年率72.9万戸)と2ヶ月連続で減少した(第5図)。

新設住宅着工床面積は、7月季節調整済前月比29.8%減の後、8月は同17.0%減となった。

先行きについては、一時的に改正建築基準法施行の影響が当面続くものの、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などの回復が続いていけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。

公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、7月2.8%減の後、8月は9.1%減となった。また、公共工事請負金額(「公共工事前払金保証統計」)をみると、8月前年同月比5.1%減の後、9月は同12.1%減となっている。

(5)  輸出は、緩やかに増加している。

通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月2.4%減の後、8月は5.6%増となっており、四半期別では、平成19年1〜3月期2.1%増の後、平成19年4〜6月期1.9%増となった(第6図)。

地域別には、アジア向け輸出は全体として増加、アメリカ向け輸出は全体として持ち直しの動きがみられ、EU向け輸出は全体として横ばいとなっている。

輸入は、緩やかに減少している。

通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で7月0.3%減の後、8月は1.5%減となっており、四半期別では、平成19年1〜3月期3.4%減の後、平成19年4〜6月期0.4%減となった(第6図)。

地域別には、アジアからの輸入は緩やかに減少、アメリカからの輸入は全体として緩やかに減少、EUからの輸入は緩やかに増加している。

(3)  国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。

9月の国内企業物価(速報)は、前月比0.1%下落(前年同月比1.7%上昇)となり、輸出物価は同1.0%下落(同0.7%下落)、輸入物価は同1.1%下落(同2.1%上昇)となった。

8月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%下落(前月比0.5%上昇)となり、生鮮食品を除く総合は同0.1%下落(同0.2%上昇)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、大企業製造業では横ばいとなっているものの、全体としては慎重さがみられる。倒産件数は、緩やかな増加傾向にある。

財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、四半期別前年同期比で、2007年1〜3月期7.4%増の後、2007年4〜6月期12.0%増(製造業17.3%増、非製造業8.0%増)、季節調整値で2007年1〜3月期前期比0.2%減の後、2007年4〜6月期同8.5%増(製造業15.0%増、非製造業3.6%増)となった。

また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)によれば、企業の全規模の2007年度の経常利益計画(前年度比)は、2007年度通期では全産業0.5%の増益、製造業1.8%の増益、非製造業0.5%の減益となっている。なお、2007年度上期では、全産業0.9%の減益、製造業1.2%の増益、非製造業2.8%の減益の後、下期では全産業1.9%の増益、製造業2.3%の増益、非製造業1.6%の増益が見込まれている(第8表)。

企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(9月調査)をみると、規模計で、全産業4ポイント(3ポイント悪化)、製造業9ポイント(4ポイント悪化)、非製造業−1ポイント(4ポイント悪化)となっており、全産業、製造業、非製造業で悪化となっている(第9表)。

倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、9月1,047件で、前年同月比1.6%増となった。

(5)  2007年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.3%減(年率1.2%減)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は−0.3%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.0%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.2%減となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)(1) 8月の就業者数(季節調整値)は、4ヶ月連続で前月差で減少した。

就業者数(季節調整値)は、7月に前月差19万人減となった後、8月は同14万人減と減少し、6,395万人(原数値は6,446万人、前年同月差19万人増)となった。男女別には、男性が3,749万人(前月差12万人減)、女性が2,646万人(同2万人減)となった(第11表)。

8月の雇用者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月差で増加した。

雇用者数(季節調整値)は、7月に前月差18万人減となった後、8月は同15万人増と増加し、5,529万人(原数値は5,538万人、前年同月差59万人増)となった(第13図)。男女別には、男性が3,232万人(前月差5万人増)、女性が2,297万人(同10万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4,769万人(前年同月差48万人増)、臨時雇が667万人(同10万人増)、日雇が102万人(同1万人増)となった。

8月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済値、確報)は、前月と同水準となった。また、一般とパートの別にみると、一般労働者は前月比0.2%減、パートタイム労働者は前月比0.7%増となった。

(2)  8月の完全失業率(季節調整値)は、11ヶ月ぶりに前月差で上昇した。

完全失業率(季節調整値)は、7月は前月差0.1%ポイント低下の3.6%となった後、8月は同0.2%ポイント上昇の3.8%(原数値は3.7%、前年同月差0.4%ポイント低下)となった。男女別には、男性が3.8%(前月差0.1%ポイント上昇)、女性が3.7%(同0.4%ポイント上昇)となった。

8月の完全失業者数(季節調整値)は、5ヶ月ぶりに前月差で増加した。

完全失業者数(季節調整値)は、7月に前月差8万人減となった後、8月は同16万人増と増加し、252万人(原数値は249万人、前年同月差23万人減)となった。男女別には、男性が149万人(前月差4万人増)、女性が103万人(同12万人増)となった。

なお、求職理由別(原数値)にみると、8月は非自発的理由による離職失業者は75万人(前年同月差12万人減)、自発的理由による離職失業者は97万人(同9万人減)、学卒未就職者は9万人(同5万人減)、その他の理由による失業者は63万人(同2万人増)となった(第11表)。

(3)  8月の労働力人口(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で増加した。

労働力人口(季節調整値)は、7月に前月差29万人減となった後、8月は同3万人増となり、6,649万人(原数値は6,695万人、前年同月差4万人減)となった。

8月の非労働力人口(季節調整値)は、4ヶ月ぶりに前月差で減少した。

非労働力人口(季節調整値)は、7月に前月差31万人増となった後、8月は同3万人減と減少し、4,394万人(原数値は4,344万人、前年同月差34万人増)となった。男女別には、男性が1,443万人(前月差8万人増)、女性が2,950万人(同12万人減)となった。

労働力人口比率(原数値)は、8月は60.6%(前年同月差0.2%ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.3%(同0.2%ポイント低下)、女性が48.8%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。

就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、8月は58.4%(前年同月差0.1%ポイント上昇)となった。

(2) 有効求人数(季節調整値)は、前月比0.7%減と2ヶ月連続で減少した。

有効求職者数(季節調整値)は、前月比0.3%減と2ヶ月連続で減少した。

8月の有効求人倍率(季節調整値)は、1.06倍と前月より0.01ポイント低下した。

新規求人数(季節調整値)は、前月比0.3%減と3ヶ月連続で減少した。

新規求職者数(季節調整値)は、前月比2.1%減と3ヶ月連続で減少した。

8月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.58倍と前月より0.03ポイント上昇した(第12表)。

正社員の有効求人倍率は、0.61倍(前年同月差0.01ポイント低下)となった。

新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、8月は一般は前月比0.2%減と3ヶ月連続で減少し、パートについては同1.3%増と2ヶ月ぶりに増加した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比2.3%減と3ヶ月連続で減少し、パートについては同2.2%減と3ヶ月連続で減少した。

(3) 産業別にみると、8月の就業者数(原数値)は、卸売・小売業は前年同月差8万人増、情報通信業は同7万人増、飲食店、宿泊業は同7万人増、、教育、学習支援業は同4万人増と増加したのに対し、サービス業は同21万人減、運輸業は同6万人減、医療、福祉は同5万人減、製造業は同2万人減と減少した。なお、建設業は前年同月と同水準であった。

また、8月の新規求人(原数値)は、教育,学習支援業は前年同月比9.2%増、医療,福祉は同7.2%増、飲食店、宿泊業は同1.0%増と増加したのに対し、サービス業は同13.5%減、建設業は同12.1%減、情報通信業は同11.4%減、製造業は同10.9%減、卸売・小売業は同3.7%減、運輸業は同0.4%減と減少した。

(4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数、確報)は、製造業では7月は前月と同水準となった後、8月は同1.0%減、調査産業計では 7月は前月比0.2%減となった後、8月は同0.4%増となった。

日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(9月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-9%ポイント(6月調査より1%ポイント低下)となっている(第14図)。

厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2007年4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は13%となり2007年1〜3月期に比べて1%ポイント上昇した(第15図)。また、2007年7〜9月期に実施予定の事業所割合は12%、2007年10〜12月期に実施予定の事業所割合は10%となっている。

4 賃金・労働時間

(1) 8月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は284,336円で、前年同月比0.6%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.3%増、パートタイム労働者は同0.6%減となった。

内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.2%減(一般労働者同0.4%増、パートタイム労働者同0.4%減)となったほか、所定外給与は同1.2%増、特別給与は同12.8%増となった(第16図)。

また、きまって支給する給与は前年同月と同水準(一般労働者同0.5%増、パートタイム労働者同0.4%減)となった。

(2) 8月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は147.9時間で、前年同月比0.6%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同1.7%減となった。

内訳をみると、所定内労働時間は137.4時間で前年同月比0.6%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同1.7%減)、所定外労働時間は10.5時間で前年同月比0.1%増(一般労働者同1.4%増、パートタイム労働者同0.6%増)となった。なお、月間出勤日数は19.1日で前年同月差0.1日減となった。

8月の製造業の所定外労働時間(確報)は15.8時間で、前年同月比1.8%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.4%減、100〜499人規模で同2.2%増、30〜99人規模で同1.3%減、5〜29人規模で同11.3%減となった(第17図)。

10月の主要変更点

月例労働経済報告のポイント(PDF:388KB)

月例労働経済報告(PDF:4,453KB)

月例労働経済報告参考表

データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表 (Excel:170KB))

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表 (Excel:3.247KB))

問合わせ先

政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係

電話 03(5253)1111 内線7732

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