12月 月例労働経済報告


 概況

(1) 一般経済の概況
 景気は、緩やかに回復している。

  ・企業収益は改善し、設備投資は増加している。
  ・個人消費は、緩やかに増加している。
  ・雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。
  ・輸出、生産は持ち直している。

 先行きについては、企業部門の好調さが家計部門へ波及しており、国内民間需要に支えられた景気回復が続くと見込まれる。一方、原油価格の動向が内外経済に与える影響等には留意する必要がある。

(2) 労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準ながらも、低下傾向で推移し、賃金も緩やかに増加するなど(第1図)、雇用情勢は、厳しさが残るものの、改善に広がりがみられる。

  ・完全失業率は、10月は前月比0.3%ポイント上昇し4.5%となった。
  ・有効求人倍率は、上昇傾向となっている。
  ・新規求人数は、増加傾向となっている。
  ・就業者数は季節調整値で2ヶ月ぶりに減少した。雇用者数は季節調整値で3ヶ月ぶりに減少した。
  ・製造業の残業時間は、横ばいとなっている。
  ・定期給与は緩やかな増加傾向で推移している。

 一般経済

(1) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、持ち直している。
 10月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、0.6%増と3か月連続で増加した(第2図)。
 業種別にみると、10月は一般機械工業、化学工業、電気機械工業等が上昇し、輸送機械工業、食料品・たばこ工業、その他工業が低下した。出荷は1.9%増と2ヶ月ぶりに増加した。在庫は1.7%減となり、2ヶ月ぶりに減少した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は11月4.6%増の後、12月は0.6%増となっている。

(2) 最終需要の動向をみると、

(1) 個人消費は、緩やかに増加している。
 全世帯の実質消費支出(速報、以下同じ)は9月季節調整済前月比0.4%減の後、10月は同0.1%減となった。勤労者世帯では9月季節調整済前月比0.2%減の後、10月は同1.2%増となった(前年同月比1.3%増)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、10月の財(商品)は実質で前年同月比2.2%増、サービスは同0.3%増となった。勤労者世帯の平均消費性向は9月季節調整値73.6%の後、10月同73.9%となった(第3図)。
 消費者態度指数の推移をみると、2005年7〜9月期は季節調整済前期差0.6ポイント低下し、44.8となった。なお、11月は前月差(原数値)0.3ポイント上昇し、48.2となった。
 10月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比0.3%減、大型小売店販売額は同2.1%減となった。また、乗用車(軽を含む)の新車登録台数は、10月前年同月比1.6%減の後、11月同6.6%減となった。

(2) 設備投資は、増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、2005年4〜6月期季節調整済前期比2.1%増の後、2005年7〜9月期同4.1%増(うち製造業同5.2%増、非製造業同3.6%増)となっており、製造業は5四半期連続で増加、非製造業では3四半期連続で増加している。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模の2005年度の設備投資計画(前年度比)は、全産業で9.1%増、製造業は15.4%増と3年連続の増加となっている。非製造業は6.2%増となっている(第4表)。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で9月は10.0%減の後、10月は4.8%増となっている。国土交通省「建築着工統計」による非居住用建築物(民間)の工事予定額をみると、9月は季節調整済前月比2.9%減の後、10月は同31.8%増となっている。
 先行きについては、企業収益の改善が続いていることから、増加傾向で推移するものと見込まれる。

(3) 住宅建設は、増加している。
 新設住宅着工総戸数をみると、9月季節調整済前月比2.1%減の後、10月は同3.8%増の11.6万戸(年率129.2万戸)と2ヶ月ぶりに増加した。(第5図)。
 新設住宅着工床面積は、10月季節調整済前月比1.2%増となった。
 先行きについては、雇用情勢が改善していることに加え、家計の所得環境などの回復が続いていけば、住宅着工は底堅く推移していくことが期待される。

(4) 公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で、9月2.1%減の後、10月3.8%減となった。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、10月前年同月比1.4%減の後、11月同0.9%減となっている。

(5) 輸出は、持ち直している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で9月0.2%増の後、10月は2.7%増となっており、四半期別では、4〜6月期2.1%増の後、7〜9月期0.6%増となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は全体として持ち直しており、アメリカ向け輸出は横ばい、EU向け輸出は横ばいとなっている。
 輸入は、横ばいとなっている。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で9月0.5%減の後、10月は2.1%減となっており、四半期別では、4〜6月期1.2%増の後、7〜9月期1.4%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は横ばい、アメリカからの輸入は横ばい、EUからの輸入は横ばいとなっている。

(3) 国内企業物価は、素材価格の上昇により上昇している。消費者物価は、横ばいとなっている。
 11月の国内企業物価(速報)は、前月比横ばい(前年同月比1.9%上昇)となり、輸出物価は同1.6%上昇(同6.1%上昇)、輸入物価は同1.7%上昇(同21.9%上昇)となった。
 10月の消費者物価は、総合が前年同月比0.7%下落(前月比0.1%上昇)、生鮮食品を除く総合が同横ばい(同0.1%上昇)となった(第7図)。

(4) 企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかに改善している。倒産件数は、おおむね横ばいとなっている。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、前年同期比は、2005年4〜6月期全産業12.9%増の後、2005年7〜9月期全産業6.6%増(製造業12.6%増、非製造業2.4%増)、季節調整値で2005年4〜6月期前期比5.2%増の後、2005年7〜9月期同3.7%増(製造業8.4%増、非製造業0.6%増)となった。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)によれば、企業の全規模の2005年度の経常利益計画(前年度比)は、2005年度通期では全産業5.4%の増益、製造業7.0%の増益、非製造業4.2%の増益と、製造業、非製造業とも4年連続の増益を見込んでいる。なお、2005年度上期では、全産業7.2%の増益、製造業10.1%の増益、非製造業4.8%の増益の後、下期では全産業3.9%の増益、製造業4.1%の増益、非製造業3.6%の増益が見込まれている(第8表)。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模で全産業5ポイント(3ポイント改善)、製造業12ポイント(4ポイント改善)、非製造業0ポイント(3ポイント改善)となっており、全産業で改善となっている(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、11月1,114件で、前年同月比4.6%増となった。

(5) 2005年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.2%(年率1.0%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.3%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は−0.0%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比−0.2%となった(第10図)。

 雇用・失業
(1)
(1) 10月の就業者数(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月比で減少した。
 就業者数(季節調整値)は、9月に前月差53万人増となった後、10月は前月差23万人減の6383万人(原数値は6409万人、前年同月差57万人増)となった。男女別には、男性が3745万人(前月差10万人減)、女性が2637万人(同14万人減)となった。
 10月の雇用者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに減少した。
 雇用者数(季節調整値)は、9月前月差81万人増の後、10月同2万人減と減少し、5454万人(原数値は5457万人、前年同月差95万人増)となった。男女別には、男性が3205万人(前月差2万人増)、女性が2248万人(前月差5万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)にみると、常雇が4677万人(前年同月差61万人増)、臨時雇が681万人(同53万人増)、日雇が99万人(同19万人減)となった。(第13図
 10月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、前月比0.1%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.1%減、パートタイム労働者は前月比0.7%増となった。

(2) 10月の完全失業率(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月比で上昇した。
 完全失業率(季節調整値)は、9月前月差0.1%ポイント低下の後、10月は同0.3%ポイント上昇し、4.5%(原数値は4.5%、前年同月差0.2%ポイント低下)となった。男女別には、男性が4.5%(前月差0.2%ポイント上昇)、女性が4.5%(前月差0.3ポイント上昇)となった。
 10月の完全失業者数(季節調整値)は、3ヶ月ぶりに前月比で増加した。
 完全失業者数(季節調整値)は、9月前月差5万人減の後、10月同18万人増と増加し、301万人(原数値は304万人、前年同月差7万人減)となった。男女別には、男性が176万人(前月差9万人増)、女性が124万人(前月差9万人増)となった。
 なお、求職理由別(原数値)にみると、10月は非自発的理由による離職失業者は100万人(前年同月差13万人減)、自発的理由による離職失業者は115万人(同4万人増)、学卒未就職者は14万人(同2万人減)、その他の理由による失業者は70万人(同2万人増)となった(第11表)。

(3) 10月の労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月比で減少した。
 労働力人口(季節調整値)は、9月前月差46万人増の後、10月同5万人減と減少に転じ、6684万人(原数値は6713万人、前年同月差50万人増)となった。
 10月の非労働力人口(季節調整値)は、2ヶ月ぶりに前月比で増加した。
 非労働力人口(季節調整値)は、9月前月差44万人減の後、10月同4万人増と増加に転じ、4319万人(原数値は4296万人、前年同月差27万人減)となった。男女別には、男性が1400万人(前月差1万人増)、女性が2919万人(同2万人増)となった。
 労働力人口比率(原数値)は、10月は60.9%(前年同月差0.3ポイント増)となった。男女別には、男性が73.8%(前年同月差0.5ポイント増)、女性が48.9%(前年同月差0.2%増)となった(第11表)。
 就業率(15歳以上人口に占める就業者の割合、原数値)は、10月は58.2%(前年同月差0.4ポイント増)となった。

(2) 有効求人数(季節調整値)は、前月比0.2%増と2か月ぶりに増加した。
 有効求職者数(季節調整値)は同0.7%減と2か月連続で減少した。
 10月の有効求人倍率(季節調整値)は、上昇傾向で推移しており、0.98倍(前月差0.01ポイント増)となった。
 新規求人数(季節調整値)は、前月比2.8%減と2か月連続で減少した。
 新規求職者数(季節調整値)は、前月比3.5%減と2か月連続で減少した。
 10月の新規求人倍率(季節調整値)は、1.46倍と前月より0.01ポイント上昇した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)とパートの別でみると、10月は一般は前月比2.7%減と2か月連続減少し、パートについては前月比2.6%減と2か月連続減少した。新規求職者数(季節調整値)は、一般は前月比4.8%減と2か月連続減少し、パートについては同1.4%減と2か月連続減少した。

(3) 産業別にみると10月の就業者数(原数値)は、サービス業は前年同月差43万人増、医療,福祉は同24万人増、教育,学習支援業は同17万人増、製造業は同10万人増、卸売・小売業は同9万人増、情報通信業は同8万人増と増加したのに対し、建設業は同25万人減、運輸業は同10万人減、飲食店,宿泊業は同5万人減と減少した。
 10月の新規求人(原数値)についてみると、医療,福祉は前年同月比19.1%増、教育,学習支援業は同10.6%増、運輸業は同9.2%増、飲食店,宿泊業は同8.0%増、情報通信業は同6.6%増、卸売・小売業は同6.6%増、建設業は同5.7%増、製造業は同1.7%増と増加したのに対し、サービス業は同0.8%減と減少した。

(4) 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、横ばいで推移している。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では9月は前月比1.7%減の後、10月は同1.3%増、調査産業計では9月は同0.7%減の後、10月は前月と同水準となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では-4%ポイント(9月調査より2%ポイント低下)となり低下傾向である(第14図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、2005年7〜9月期に雇用調整を実施した事業所割合は13%となり2005年4〜6月期と比べ1%ポイント低下した。(第15図)。また、2005年10〜12月期に実施予定の事業所割合は12%、2006年1〜3月期に実施予定の事業所割合は11%と低下が見込まれている。

 賃金・労働時間

(1) 10月の現金給与総額(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は278,211円で、前年同月比0.6%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.6%増、パートタイム労働者は同1.3%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.5%増(一般労働者同0.5%増、パートタイム労働者同1.1%増)となったほか、所定外給与は同2.0%増、特別給与は同4.7%増となり、実質賃金は同1.5%増となった(第16図)。
 また、きまって支給する給与は前年同月比0.6%増(一般労働者同0.5%増、パートタイム労働者同1.3%増)となった。

(2) 10月の総実労働時間(事業所規模5人以上、産業計、確報、以下同じ)は150.4時間で、前年同月比0.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.1%増、パートタイム労働者は同0.4%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は139.9時間で前年同月比横ばい(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同0.2%増)、所定外労働時間は10.5時間で同1.9%増となった。なお、月間出勤日数は19.5日で前年同月差は0.1日減となった。
 10月の製造業の所定外労働時間(確報)は16.3時間で、前年同月比0.6%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比0.5%増、100〜499人規模で同1.7%増、30〜99人規模で同0.6%減、5〜29人規模で1.0%増となった(第17図)。

12月の主要変更点

月例労働経済報告参考表


データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111 内線7732

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