1 概況
(1) | 一般経済の概況 景気は、持ち直している。
先行きについては、アメリカ経済等が回復する中で、景気の上向きの動きが続くものと見込まれる。一方、今後の株価・為替レートなどの動向には留意する必要がある。 | |||||||||||||||
(2) | 労働経済の概況 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移し(第1図)、雇用者数がこのところ弱含むなど、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
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2 一般経済
(1) | 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、持ち直している。 10月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、1.0%増と2か月連続で増加となった(第2図)。情報化関連生産財や資本財の増加等から持ち直している。業種別にみると、輸送機械工業、電気機械工業、金属製品工業等が増加した。出荷は1.8%増と3か月連続で増加し、在庫は0.3%減と2か月ぶりに減少した。 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は11月3.1%増の後、12月は0.9%減となっている。 |
(2) | 最終需要の動向をみると、
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(3) | 国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。 11月の国内企業物価は、前月比0.1%上昇(前年同月比0.5%下落)となり、輸出物価は同0.1%下落(同5.9%下落)、輸入物価は同0.7%上昇(同4.7%下落)となった。 10月の消費者物価は、総合が前年同月比横ばい(前月比横ばい)、生鮮食品を除く総合が同0.1%上昇(同0.1%上昇)となった(第7図)。 |
(4) | 企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、改善がみられる。倒産件数は、減少している。 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で4〜6月5.0%増の後、7〜9月2.6%増(製造業1.9%増、非製造業3.1%増)となった。 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)によれば、企業の15年度の経常利益計画(前年同期比)は、15年度通期では全規模10.0%の増益、製造業16.9%の増益、非製造業5.8%の増益、上期では全規模13.5%の増益、製造業29.6%の増益、非製造業4.6%の増益の後、下期では全規模7.4%の増益、製造業8.3%の増益、非製造業6.8%の増益が見込まれている(第8表)。 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)をみると、全規模で-15ポイント(6ポイント改善)、製造業-5ポイント(10ポイント改善)、非製造業-23ポイント(4ポイント改善)となっており、製造業・非製造業ともに改善がみられる(第9表)。 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、11月1,114件(前年同月比22.3%減)となっている。セーフティーネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、減少している。 |
(5) | 平成15年7〜9月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.3%増(年率1.4%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.1%増となった(第10図)。 |
3 雇用・失業
(1) | (1) | 就業者数は、10月は2か月ぶりに前月比で減少した。就業者数(季節調整値)は、9月前月差1万人増の後、10月は同22万人減と減少し、6300万人(原数値は6337万人、前年同月差18万人減)となった。男女別には、10月は、男性が3703万人(前月差8万人減)、女性が2599万人(同10万人減)となった。 雇用者数は、10月は3か月連続で前月比で減少した。雇用者(季節調整値)は、9月前月差20万人減の後、10月は同11万人減と減少し、5307万人(原数値は5332万人、前年同月差4万人減)となった。男女別には、10月は、男性が3136万人(前月差5万人減)、女性が2171万人(同5万人減)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、10月は、常雇が4584万人(前年同月差3万人減)、臨時雇が621万人(同5万人減)、日雇が128万人(同5万人増)となっている。 「毎月勤労統計調査」(確報)により、10月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.1%増となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.2%減、パートタイム労働者は同1.4%増となった。 |
(2) | 10月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.1%ポイント上昇し5.2%となった。男女別には、男性が5.4%(前月より0.1%ポイントの低下)、女性が4.9%(前月より0.2%ポイントの上昇)となった。 10月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差2万人増の345万人(原数値は343万人、前年同月差19万人減)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が212万人(前月差4万人減)、女性が134万人(同6万人増)となった。 求職理由別(原数値)にみると、10月は、非自発的理由による離職者は141万人(前年同月差12万人減)、自発的理由による離職者は118万人(同5万人減)、その他の理由による失業者は67万人(同2万人減)となった(第11表)。 また、失業期間1年以上の完全失業者は、7〜9期は116万人(前年同期差11万人増)となった。 | |
(3) | 10月の労働力人口(季節調整値)は、前月差19万人減の6645万人(原数値は6680万人、前年同月差37万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差17万人増の4320万人(原数値は4289万人、前年同月差65万人増)となった。男女別には、男性が1397万人(前月差14万人増)、女性が2924万人(同4万人増)となった。 労働力率(原数値)は、10月は、60.8%(前年同月より0.5%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.0%(同0.8%ポイント低下)、女性が48.5%(同0.2%ポイント低下)となった(第11表)。 |
(2) | 有効求人(季節調整値)は、10月は前月比2.9%増と2か月連続して増加し、有効求職者数(季節調整値)は同2.7%減と4か月連続の減少となった。有効求人倍率(季節調整値)は、緩やかに上昇しており、10月は0.70倍(前月差0.04ポイントの上昇)となった。 新規求人(季節調整値)は、増加傾向となっている。新規求人(季節調整値)は10月は前月比0.4%減と2か月ぶりに減少した。新規求職者数(季節調整値)は前月比10.0%減と2か月ぶりに減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、10月は1.21倍と前月より0.12ポイント上昇した(第12表)。 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると10月は、一般は前月同水準となり、パートは前月比1.1%減と減少した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比10.1%減と2か月ぶりで減少し、パートは同9.7%減と2か月ぶりで減少した。 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、10月は前年同月比15.7%減と13か月連続で減少した。 |
(3) | 産業別にみると、10月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差26万人減、製造業は同6万人減、飲食店,宿泊業は同9万人減、卸売・小売業は同22万人減と減少したのに対して、運輸業は同13万人増、医療,福祉は同33万人増、サービス業は同5万人増と増加している。 10月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比6.5%増、製造業は同18.7%増、運輸・通信業は同15.2%増、卸売・小売業,飲食店は同7.7%増、サービス業は同23.0%増と増加している。 |
(4) | 雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、増加傾向となっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、9月(確報値)前月比1.4%減の後、10月(確報値)前月比2.3%増となり、調査産業計では、9月前月比0.2%増の後、10月は同1.8%増となった。 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断D.I.(「過剰」-「不足」)は、全産業では9%ポイント(9月調査から3%ポイント低下)となり、低下傾向にある(第13図)。 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、7〜9月期に雇用調整を実施した事業所割合は19%となり4〜6月期より3%ポイント低下した(第14図)。また、10〜12月期に実施予定の事業所割合は18%、平成16年1〜3月期に実施予定の事業所割合は17%と低下が見込まれている。 内閣府「景気ウォッチャー調査」による11月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は56.2で前月を0.8ポイント下回り、8か月ぶりに低下した。 |
4 賃金・労働時間
(1) | 10月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は284,128円で、前年同月比0.2%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.5%増、パートタイム労働者は1.7%増となった。 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.6%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同1.6%増)となったほか、所定外給与は同3.3%増、特別給与は同14.4%増となり、実質賃金は同0.1%減となった(第15図)。 |
(2) | 10月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は156.4時間で、前年同月比1.1%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.6%増、パートタイム労働者は1.5%増となった。 内訳をみると、所定内労働時間は146.1時間で前年同月比0.9%増(一般労働者同1.3%増、パートタイム労働者同1.2%増)、所定外労働時間は10.3時間で同5.1%増となった。なお、月間出勤日数は20.2日で前年同月差は0.1日増となった。 10月の製造業の所定外労働時間(確報)は15.7時間で、前年同月比8.9%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比9.7%増、100〜499人規模で10.2%増、30〜99人規模で同10.7%増、5〜29人規模で同8.5%増となった(第16図)。 |
(注) | 日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。 なお、12月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。 |