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9月 月例労働経済報告

1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、持ち直しに向けた動きがみられる。
  ・ 設備投資は増加している。企業収益は改善が続いている。
  ・ 輸出は持ち直しており、生産は横ばいとなっている。
  ・ 個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
  ・ 雇用情勢は、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。

 先行きについては、企業部門が持ち直している中で、アメリカ経済等の回復に伴って、景気は持ち直すことが見込まれる。一方、今後の株価・長期金利や海外経済などの動向には留意する必要がある。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、完全失業率が高水準で推移するなど(第1図)、依然として厳しいものの、持ち直しの動きがみられる。
  ・ 就業者数は持ち直している。雇用者数は増加傾向となっている。
  ・ 完全失業率は5.3%と高水準で推移している。
  ・ 有効求人倍率は、緩やかに上昇している。
  ・ 新規求人数は、増加傾向となっている。
  ・ 所定外労働時間は、再び増加傾向となっている。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、横ばいとなっている。
 7月の鉱工業生産(季節調整済前月比、速報、以下同じ)は、0.5%増と2か月ぶりに増加となった(第2図)。年初より弱含んでいたが、情報化関連生産財が堅調に推移していること等により、横ばいとなっている。業種別にみると、電子部品・デバイス工業、非鉄金属工業、鉄鋼業等が増加した。出荷は1.1%減と2か月連続で減少し、在庫は1.4%増と2か月ぶりに増加した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は8月 2.0%増の後、9月は1.5%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移している。
 全世帯の実質消費支出(速報)は6月季節調整済前月比5.0%増の後、7月は同5.7%減となり、勤労者世帯では6月同4.8%増の後、7月は同6.9%減となった(前年同月比6.0%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、7月の財(商品)は実質で前年同月比3.5%減、サービスは同9.8%減となった。勤労者世帯の平均消費性向は6月季節調整値77.4%の後、7月同73.4%となった(第3図)。
 7月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比2.5%減、大型小売店販売額(速報)は同5.1%減となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、7月前年同月比0.7%減の後、8月同5.8%減となった。
(2)  設備投資は、増加している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、1〜3月期季節調整済前期比1.8%減の後、4〜6月期同5.3%増(うち製造業同4.5%増、非製造業同5.6%増)となり、増加基調にある(第4表)。
 今後の動向については、日本銀行「企業短期経済観測調査」(6月調査)をみると、全規模の15年度の設備投資計画(前年度比)は全産業で0.1%減と減少が見込まれているものの製造業は5.2%増と3年ぶりに前年度比増加に転じる計画となっている。また、機械受注(船舶・電力を除く民需)は、季節調整済前月比で7月は3.1%減と3か月ぶりに減少した。建築着工床面積をみると、おおむね横ばいとなっている(6月季節調整済前月比4.7%増、7月同5.2%減)。
 先行きについては、企業収益の改善が続くものと見込まれること等から、当面増加傾向で推移するものと見込まれる。
(3)  住宅建設は、このところ増加している。
 新設住宅着工戸数をみると、6月季節調整済前月比8.7%増の後、7月は同8.6%減の9.7万戸(年率116万戸)と4か月ぶりに減少となった(第5図)。新設住宅着工床面積も、おおむね総戸数と同様の動き(7月同10.1%減)をしている。
 先行きについては、雇用・所得環境が持ち直すなど、消費者の住宅取得マインドが改善に向かえば、住宅着工は底堅さを増していくことも期待される。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で6月2.8%減、7月20.4%減と7か月連続で減少が続いている。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、6月前年同月比10.2%減、7月同5.1%減と前年を下回っている。
 先行きについては、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと見込まれる。
(5)  輸出は、持ち直している。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で6月3.8%減の後、7月は4.4%増となっており、四半期別では、1−3月期0.1%増の後、4−6月期0.9%増となった(第6図)。
 地域別には、アジア向け輸出は横ばいとなっており、アメリカ向け輸出は横ばいとなっており、EU向け輸出は減少している。
 輸入は、増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で6月1.3%増の後、7月は5.2%増となっており、四半期別では、1−3月期0.2%減の後、4−6月期4.5%増となった(第6図)。
 地域別には、アジアからの輸入は増加しており、アメリカからの輸入は横ばいとなっており、EUからの輸入はおおむね横ばいとなっている。

(3)  国内企業物価、消費者物価は、ともに横ばいとなっている。
 8月の国内企業物価は、前月比横ばい(前年同月比0.6%下落)となり、輸出物価は同0.2%下落(同0.6%上昇)、輸入物価は同0.6%上昇(同3.4%上昇)となった。
 7月の消費者物価は、総合が前年同月比0.2%下落(前月比0.2%下落)、生鮮食品を除く総合が同0.2%下落(同横ばい)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善が続いている。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、緩やかに減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で1〜3月1.8%減の後、4〜6月5.0%増(製造業10.7%増、非製造業1.2%増)となった(第8表)。
 また、日本銀行「企業短期経済観測調査」によれば、企業の15年度の経常利益計画(前年同期比)は、上期製造業16.7%の増益、非製造業2.0%の減益の後、下期製造業13.5%の増益、非製造業13.0%の増益が見込まれている。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)について日本銀行「企業短期経済観測調査」をみると、非製造業では改善に足踏みがみられるものの、製造業を中心に緩やかながら引き続き改善がみられる(第9表)。
 倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、7月1,377件(前年同月比19.8%減)となっている。セーフティネット保証の適用件数が増えていること等を背景に、緩やかに減少している。

(5)  平成15年4〜6月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比1.0%(年率3.9%)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.2%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)
(1)  就業者数は、7月は3ヶ月ぶりに前月比で減少した。就業者数(季節調整値)は、6月前月差47万人増の後、7月は同22万人減と減少し、6339万人(原数値は6381万人、前年同月差7万人増)となった。男女別には、7月は、男性が3726万人(前月差12万人減)、女性が2612万人(同10万人減)となった。
 雇用者数は、7月は2ヶ月連続で前月比で増加した。雇用者(季節調整値)は、6月前月差17万人増の後、7月は同13万人増と増加し、5368万人(原数値は5382万人、前年同月差3万人増)となった。男女別には、7月は、男性が3170万人(前月差10万人増)、女性が2198万人(同4万人増)となった(第11表)。雇用形態別(原数値)には、7月は、常雇が4632万人(前年同月差9万人減)、臨時雇が626万人(同8万人増)、日雇が124万人(同4万人増)となっている。
 「毎月勤労統計調査」(速報)により、7月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.1%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比0.3%減、パートタイム労働者は同0.5%増となった。
(2)  7月の完全失業率(季節調整値)は前月と同水準の5.3%となった。男女別には、男性が5.5%(前月より0.2%ポイントの低下)、女性が4.9%(前月より0.1%ポイントの上昇)となった。
 7月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差4万人減の352万人(原数値は342万人、前年同月差10万人減)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、男性が216万人(前月差9万人減)、女性が136万人(同5万人増)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、7月は、非自発的理由による離職者は151万人(前年同月差9万人増)、自発的理由による離職者は103万人(同16万人減)、その他の理由による失業者は64万人(同5万人減)となった(第11表)。
 また、失業期間1年以上の完全失業者は、4〜6月は127万人(前年同期差19万人増)となった。
(3)  7月の労働力人口(季節調整値)は、前月差28万人減の6689万人(原数値は6722万人、前年同月差3万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差27万人増の4276万人(原数値は4233万人、前年同月差41万人増)となった。男女別には、男性が1368万人(前月差21万人増)、女性が2909万人(同8万人増)となった。
 労働力率(原数値)は、7月は、61.3%(前年同月差0.3%ポイント低下)となった。男女別には、男性が74.3%(同0.7%ポイント低下)、女性が49.0%(同0.1%ポイント上昇)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、7月は前月比1.7%増と4か月連続で増加し、有効求職者数(季節調整値)は同1.0%減となった。有効求人倍率(季節調整値)は、緩やかに上昇しており、7月は0.62倍(前月差0.01ポイントの上昇)となった。
 新規求人(季節調整値)は、増加傾向となっている。新規求人(季節調整値)は7月は4ヶ月ぶりに前月比0.3%減と減少した。新規求職者数(季節調整値)は4ヶ月ぶりに前月比8.6%減少した。新規求人倍率(季節調整値)は、7月は1.04倍と前月より0.08ポイント上昇した第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると7月は、一般は前月比0.1%減と4か月ぶりに減少し、パートは同0.9%減と減少した。新規求職(季節調整値)は、一般は前月比9.0%減と4か月ぶりに減少し、パートは同6.3%減と3ヶ月ぶりに減少した
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、7月は前年同月比14.4%減と10か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、7月の就業者数(原数値)は、建設業は前年同月差29万人減、製造業は同7万人減、飲食店,宿泊業は22万人減と減少したのに対し、運輸業は同4万人増、医療,福祉は同16万人増、サービス業は同25万人増と増加している。なお、卸売・小売業は前年同月と同数となっている。
 7月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比0.1%増、製造業は同5.0%増、運輸・通信業は同9.5%増、卸売・小売業,飲食店は同4.7%増、サービス業は同19.0%増と増加している。

(4)  雇用に先行して動くと考えられる指標についてみると、製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、再び増加傾向となっている。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、6月(確報値)前月比1.1%減の後、7月(速報値)前月比1.8%増となり、調査産業計では、6月前月比0.5%減の後、7月は同0.7%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(6月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は、やや高まった第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、4〜6月期に雇用調整を実施した事業所割合は22%と1〜3月期と同水準となった(第14図)。また、7〜9月期に実施予定の事業所割合は20%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は18%と低下が見込まれている。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による8月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は53.5で前月を0.3ポイント上回り、5か月連続で上昇した。

4 賃金・労働時間

(1)  7月の現金給与総額(産業計、速報、以下同じ)は401,904円で、前年同月比 1.9%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.5%減、パートタイム労働者は1.2%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.1%減(一般労働者同0.2%増、パートタイム労働者同1.7%増)となったほか、所定外給与は同4.6%増、特別給与は同6.2%減となり、実質賃金は同1.6%減となった(第15図)。

(2)  7月の総実労働時間(産業計、速報、以下同じ)は157.6時間で、前年同月比 0.4%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.4%減、パートタイム労働者は1.4%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は147.8時間で前年同月比0.7%減(一般労働者同0.8%減、パートタイム労働者同1.3%増)、所定外労働時間は9.8時間で同4.3%増となった。なお、月間出勤日数は20.5日で前年同月差は0.1日減となった。
 7月の製造業の所定外労働時間(速報)は14.8時間で、前年同月比7.2%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比10.3%増、100〜499人規模で8.7%増、30〜99人規模で同12.1%増、5〜29人規模で同横ばいとなった(第16図)。

(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、9月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


9月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
データ取得エクセルでダウンロードできます。(参考表)

データ取得エクセルでダウンロードできます。(図表)


問合わせ先
政策統括官付 労働政策担当参事官室 分析第二係
電話 03(5253)1111  内線7732

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