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3月月例労働経済報告


1 概況

(1)  一般経済の概況
 景気は、おおむね横ばいとなっているが、イラク情勢等から不透明感が増している。
  ・ 企業収益は改善しており、設備投資は持ち直している。
  ・ 雇用情勢は、求人が増加傾向にあるものの、失業率が高水準で推移するなど、依然として厳しい。
  ・ 個人消費は、おおむね横ばいで推移するなかで、足元弱い動きがみられる。
  ・ 輸出は横ばいとなっている一方、生産は弱含んでいる。

 先行きについては、アメリカ経済等の回復が持続すれば、景気は持ち直しに向かうことが期待される。一方、イラク情勢等からくる不確実性の高まりや世界的な株価の低迷の中で、我が国の最終需要が下押しされる懸念が強まっている。

(2)  労働経済の概況
 労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しい。求人が増加傾向にあるものの、完全失業率が高水準で推移し(第1図)、賃金も弱い動きが続いている。
  ・ 就業者数及び雇用者数は、弱含んでいる。
  ・ 完全失業率は5.5%と、これまでの最高水準となった。
  ・ 有効求人倍率は、引き続き緩やかに上昇している。
  ・ 新規求人数は、引き続き増加傾向にある。
  ・ 所定外労働時間は、緩やかな増加傾向が続いているが、1月は大きく増 加した。

2 一般経済

(1)  鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、弱含んでいる。
 1月の鉱工業生産(季節調整済前月比、確報、以下同じ)は、2.0%増と5か月ぶりの増加となった。しかしながら、輸出が横ばいであることや、国内最終需要が弱く、企業が在庫積み増しに慎重であることなどから、基調としては弱含んでいる(第2図)。
 業種別にみると電気機械、一般機械、窯業・土石製品等が上昇した。出荷は3.4%増と3か月ぶりに増加し、在庫は0.8%増と2か月連続で増加した。
 今後の動向については、製造工業生産予測調査によると、製造工業生産は2月 0.4%減の後、3月は同0.6%増となっている。

(2)  最終需要の動向をみると、
(1)  個人消費は、おおむね横ばいで推移するなかで、足元弱い動きがみられる。
 全世帯の実質消費支出(速報)は12月季節調整済前月比2.3%減の後、1月は同2.8%増となり、勤労者世帯では12月同4.0%減の後、1月は同3.6%増となった(前年同月比2.0%減)。勤労者世帯の消費支出を財(商品)・サービス別にみると、1月の財(商品)は実質で前年同月比1.3%減、サービスは同0.1%減となった。勤労者世帯の平均消費性向は12月季節調整値74.5%の後、1月同72.3%となった(第3図)。
 1月の小売業販売額(速報)は季節調整済前月比3.2%増、大型小売店販売額(速報)は同8.3%増となった。
 乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、1月前年同月比4.6%増の後、2月同5.1%増となった。
(2)  設備投資は、持ち直している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成14年7〜9月期前期比1.0%減の後、10〜12月期同3.9%(うち製造業同2.9%増、非製造業同4.4%増)と増加に転じるなど、設備投資は持ち直している(第4表)。
 今後の動向について、先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)を季節調整済前月比でみると、12月5.2%増、1月7.0%増と2か月連続で増加しているものの、1〜3月期の見通しは慎重な見込みとなっており、その回復力は弱いものと見込まれる。また、日本銀行「企業短期経済観測調査」(12月調査)において、全規模の14年度の設備投資計画(前年比)は、製造業で10.4%減、非製造業3.2%減、全産業で5.1%減と減少が見込まれていることなども考えると、設備投資の持ち直しの動きは当面緩慢なものにとどまると見込まれる。
 建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、1月は季節調整済前月比で2.3%増と2か月連続で増加している。
(3)  住宅建設は、緩やかに減少している。
 新設住宅着工戸数をみると、12月0.5%増の後、1月は6.8%増の10万戸(年率120万戸)と増加した(第5図)。
 先行きについては、雇用・所得環境が厳しいことなどから、消費者の住宅取得マインドが低下しており、引き続き減少が続くものと考えられる。
(4)  公共投資は、総じて低調に推移している。
 公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で12月7.2%増加した後、1月は同17.5%減少している。また、公共工事請負金額(保証事業会社協会「公共工事前払金保証統計」)をみると、1月前年同月比5.5%減、2月同12.1%減と前年を下回っており、国・地方の予算状況を踏まえると、今後も低調に推移するものと考えられる。
(5)  輸出は、横ばいとなっている。
 通関輸出(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月2.0%減の後、1月は0.5%減となっており、四半期別では、7−9月期0.4%増の後、10−12月期2.1%増となった。
 輸出は、昨年初来の在庫積み増しの動きに一服したことから昨年半ばまでの増勢に失われているものの、このところ輸送機械をはじめとする機械機器が比較的堅調に推移していることから、全体として横ばいとなっている。
 輸入は、緩やかに増加している。
 通関輸入(数量ベース、季節調整済前期比)は、月別で12月0.0%減の後、1月1.5%増となっており、四半期別では7−9月期3.4%増の後、10−12月期0.6%増となった。
 輸入は、生産が弱含んでいるものの、鉱物性燃料が引き続き増加していること等から、緩やかに増加している(第6図)。

(3)  国内企業物価は、横ばいとなっている。消費者物価は、弱含んでいる。
 2月の国内企業物価は、前月比0.2%上昇(前年同月比0.9%下落)となり、輸出物価は同1.1%上昇(同6.2%下落)、輸入物価は同2.3%上昇(同0.4%上昇)となった。
 1月の消費者物価は、総合が前年同月比0.4%下落(前月比0.3%下落)、生鮮食品を除く総合が同0.8%下落(同0.6%下落)となった(第7図)。

(4)  企業収益は、改善している。また、企業の業況判断は、緩やかながら、引き続き改善がみられる。倒産件数は、減少している。
 財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の経常利益は、季節調整値で7〜9月5.6%増の後、10〜12月4.7%増(製造業17.2%増、非製造業3.1%減)と増加が続くなど、企業収益は改善している(第8表)。
 なお、前出の「企業短期経済観測調査」によれば、企業の14年度下期の経常利益計画(前年同期比)は、製造業42.9%の増益、非製造業3.9%の増益と大幅な増益が見込まれている。
 企業の業況判断D.I.(「良い」−「悪い」)をみると、製造業は全ての規模で「悪い」超幅は縮小した。一方、非製造業は規模別にみると、大企業で「悪い」超幅が拡大している。また、内閣府「法人企業動向調査」によると、企業の業界景気の判断(前期比「上昇」−「下降」)をみると、全産業で10〜12月期−23%ポイントとなった(第9表)。倒産件数(東京商工リサーチ調べ)は、2月1,454件(前年同期比13.1%減)となるなど減少している。

(5)  平成14年10〜12月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季節調整済前期比0.5%増(年率2.2%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.2%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.3%となった。また、名目GDPの成長率は季節調整済前期比0.1%減となった。なお、平成14年の実質GDP成長率は、0.3%増となった(第10図)。

3 雇用・失業

(1)(1)  就業者数は、1月は2か月ぶりに前月比で減少し、弱含んでいる。就業者数(季節調整値)は、12月前月同水準の後、1月は前月差9万人減と減少し、6296万人(原数値は6203万人、前年同月差64万人減)となった。男女別には、1月は、男性が3716万人(前月差5万人増)、女性が2581万人(同13万人減)となった。
 雇用者数は、1月は3か月ぶりに前月比で減少し、弱含んでいる。雇用者(季節調整値)は、12月前月差9万人増の後、1月は前月差8万人減と減少し、5316万人(原数値は5289万人、前年同月差14万人減)となった。男女別には、男性が3159万人(前月差1万人増)、女性が2157万人(同9万人減)となった。雇用形態別(原数値)には、1月は、常雇が4555万人(前年同月差48万人減)、臨時雇が617万人(同27万人増)、日雇が118万人(同9万人増)となっている(第11表)。
 「毎月勤労統計調査」(確報)により、1月の常用雇用指数(事業所規模5人以上、季節調整済指数)をみると、前月比0.6%減となった。また、一般、パート別にみると、一般労働者は前月比1.5%減、パートタイム労働者は同2.4%増となった。
(2)  1月の完全失業率(季節調整値)は前月より0.2%ポイント上昇し5.5%と過去最高に並んだ。男女別には、男性が5.6%(前月差0.1%ポイント上昇)、女性が5.5%(同0.3%ポイント上昇)となった。
 1月の完全失業者数(季節調整値)は、前月差12万人増の368万人(原数値は357万人、前年同月差13万人増)となり、引き続き高水準で推移している。男女別には、1月は、男性が219万人(前月差4万人増)、女性が150万人(同8万人増)となった。
 求職理由別(原数値)にみると、1月は、非自発的理由による離職者は160万人(前年同月差13万人増)、自発的理由による離職者は110万人(同3万人増)、その他の理由による失業者は69万人(同1万人減)となった(第11表)。
(3)  1月の労働力人口(季節調整値)は、前月差5万人増の6664万人(原数値は6560万人、前年同月差51万人減)となった。非労働力人口(季節調整値)は、前月差1万人増の4259万人(原数値は4370万人、前年同月差71万人増)となった。男女別には、男性が1352万人(前月差11万人減)、女性が2908万人(同11万人増)となった。
 労働力率は、1月は、60.0%(前年同月差0.6%ポイント低下)となった。男女別には、男性が73.5%(同0.8%ポイント低下)、女性が47.2%(同0.4%ポイント低下)となった(第11表)。

(2)  有効求人(季節調整値)は、1月は前月比0.9%増と5か月連続で増加し、有効求職者数(季節調整値)は同1.9%減と6か月連続で減少した。有効求人倍率(季節調整値)は、引き続き緩やかに上昇しており、1月は0.60倍と前月を0.01ポイント上回った。
 新規求人(季節調整値)は、引き続き増加傾向にある。新規求人(季節調整値)は12月前月比2.7%増の後、1月は同1.2%増と2か月連続で増加した。新規求職者数(季節調整値)は12月前月比0.3%減の後、1月は0.5%増と4か月ぶりに増加した。新規求人倍率(季節調整値)は、1月は1.02倍と前月と同水準になった第12表)。
 新規求人(季節調整値)を一般(除パート)、パートの別でみると、1月は、一般は前月比2.2%増と2か月連続で増加し、パートは同1.2%減と7か月ぶりに減少した。新規求職(季節調整値)は、1月は一般は前月比1.3%増と4か月連ぶりに増加し、パートは同5.1%減と2か月ぶりに減少している。
 常用新規求職者数(除パート、原数値)のうち事業主都合離職者は、1月は前年同月比16.0%減と4か月連続で減少した。

(3)  産業別にみると、1月の就業者数(原数値)は、製造業は前年同月差25万人減、卸売・小売業は同64万人減、飲食店,宿泊業は20万人減と減少したのに対し、建設業は同27万人増、運輸業は同7万人増、医療,福祉は同6万人増、サービス業は同2万人増となっている。
 1月の新規求人(原数値)は、建設業は前年同月比0.6%減と減少したのに対し、製造業が同27.2%増、運輸・通信業は同12.5%増、卸売・小売業,飲食店は同5.0%増、サービス業は同17.1%増となっている。

(4)  雇用の先行指標と考えられる製造業の所定外労働時間(季節調整値)は、緩やかな増加傾向が続いているが、1月は大きく増加した。所定外労働時間(事業所規模5人以上、季節調整済指数)は、製造業では、12月(確報値)前月比0.8%増の後、1月(確報値)同1.9%増となり、調査産業計では、12月前月比0.1%減の後、1月同2.4%増となった。
 日本銀行「全国企業短期経済観測調査」(12月調査)によると、雇用人員判断DI (「過剰」-「不足」)は前期より若干低下したものの、依然として高い水準にある第13図)。
 厚生労働省「労働経済動向調査」によると、7〜9月期に雇用調整を実施した事業所割合は25%、10〜12月期に実施予定の事業所割合は24%、2003年1〜3月期に実施予定の事業所割合は22%と引き続き低下が見込まれている(第14図)。
 内閣府「景気ウォッチャー調査」による2月の2〜3か月先の景気の先行き判断DI・雇用関連は43.0で前月を2.2ポイント上回り、2か月連続の上昇となった。

4 賃金・労働時間

(1)  1月の現金給与総額(産業計、確報、以下同じ)は294,098円で、前年同月比1.0%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比0.5%減、パートタイム労働者は同0.5%増となった。
 内訳をみると、所定内給与は前年同月比0.5%減(一般労働者同横ばい、パートタイム労働者同0.5%増)となったほか、所定外給与は同5.1%増、特別給与は同11.1%減となり、実質賃金は同0.5%減となった(第15図)。

(2)  1月の総実労働時間(産業計、確報、以下同じ)は140.0時間で、前年同月比1.2%増となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.6%増、パートタイム労働者は同1.3%増となった。
 内訳をみると、所定内労働時間は130.5時間で前年同月比0.8%増(一般労働者同1.0%増、パートタイム労働者同1.0%増)、所定外労働時間は9.5時間で同6.8%増となった。なお、月間出勤日数は18.2日と前年同月差0.2日増となった。
 1月の製造業の所定外労働時間(確報)は13.2時間で、前年同月比18.9%増となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比19.9%増、100〜499人規模で21.0%増、30〜99人規模で同19.3%増、5〜29人規模で同18.1%増となった (第16図)。


(注)  日本標準産業分類の改訂に伴い、総務省統計局「労働力調査」に係る表記は、平成15年1月結果の公表以降、新産業分類で表記し、平成14年以前の対前年同月増減については、改訂による影響のない又は小さい産業について表章している。
 なお、3月月例労働経済報告に掲載されている資料出所において「労働力調査」以外の資料出所においては、旧産業分類に基づいて表記されている。


3月の主要変更点

月例労働経済報告参考表
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