〈概観〉
一般経済の概況
景気は、依然厳しい状況にあるが、底入れしている。
先行きについては、輸出の増加や在庫調整が概ね終了していることの影響が、今後経済全体に波及していくなかで、景気は持ち直しに向かうことが期待される一方、依然厳しい雇用・所得環境などが、今後の最終需要を下押しする懸念がある。
労働経済の概況
労働経済面をみると、雇用情勢は、依然として厳しい。残業時間が増加しているものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。
(1) 平成14年1〜3月期の実質国内総生産(GDP)成長率は、季調済前期比1.4%増(年率5.7%増)となった。内外需別にみると、国内需要の寄与度は0.7%、財貨・サービスの純輸出の寄与度は0.7%となった。なお、平成13年度の実質GDP成長率は、1.3%減となった。
(2) 鉱工業生産・出荷・在庫の動きをみると、生産は、下げ止まっており、一部に持ち直しの動きもみられる。生産は、季調済前月比で3月0.8%増の後、4月(速報)は同0.2%増(前年同月比6.1%減)となった。業種別にみると、電気機械、化学(除医薬品)、窯業・土石製品等が上昇したが、一般機械、輸送機械、非鉄金属等が低下した。出荷は、季調済前月比0.8%増(前年同月比3.8%減)となった。在庫は、季調済前月比1.6%減(前年同月比10.6%減)となった。在庫率は、季調済前月比6.9%減(前年同月比7.1%減)となった。製造工業の生産予測指数は、5月季調済前月比5.1%増の後、6月は同0.4%減を予測している。
企業収益は、下げ止まりの兆しがみられる。また、企業の業況判断は、厳しい状態が続いているが、大企業においては下げ止まりつつある。財務省「法人企業統計季報」によると、全産業の売上高は平成13年10〜12月期前年同期比3.8%減の後、平成14年1〜3月期同7.4%減(うち製造業同9.6%減、非製造業同6.4%減)となり、経常利益は平成13年10〜12月前年同期比31.4%減の後、平成14年1〜3月期同14.6%減(うち製造業42.2%減、非製造業6.9%増)となっている。
(3) 設備投資は、減少している。前出の「法人企業統計季報」によると、全産業の設備投資は、季節調整値で平成13年10〜12月期前期比6.3%減の後、平成14年1〜3月期同5.2%減(うち製造業同9.3%減、非製造業同3.1%減)となっている。先行指標である機械受注(船舶・電力を除く民需)の動きをみると、季調済前月比で3月6.2%減の後、4月は同8.4%増(前年同月比17.9%減)となっている。建設工事受注額(主要建設会社50社民間発注分、非住宅)は、4月は前年同月比で13.7%減となった。
住宅建設は、弱含みとなっている。新設住宅着工戸数は、季調済前月比で、3月6.1%減(前年同月比6.2%減)の後、4月は同2.5%増(同0.6%減)の9万5千戸(年率114万戸)となった。
公共投資は、総じて低調に推移している。公共機関からの建設工事受注額は、前年同月比で3月は7.3%減の後、4月は同6.7%減となった。また、大手50社の受注額は、前年同月比で3月10.7%減の後、4月は同18.7%減となった。
(4) 個人消費は、横ばいで推移するなかで、一部に底固さもみられる。4月の全世帯の消費支出(速報)は前年同月比で名目で0.6%増、実質で1.9%増となり、平均消費性向(勤労者世帯、季調値)は、73.6%となった。4月の小売業販売額(速報)は前年同月比4.1%減、大型小売店販売額(速報、既存店)は同2.0%減となった。5月の乗用車(軽を含む)の新車登録台数(速報)は、前年同月比8.8%増となった。
(5) 輸出は、アジア向けを中心に増加している。通関輸出(数量ベース、季調値)は、前月比で3月4.1%増の後、4月は同1.6%増(前年同月比5.4%増)となった。また、前期比で10−12月期0.5%減の後、1−3月期6.4%増(前年同期比3.0%減)となった。
輸入は、横ばいとなっている。通関輸入(数量ベース、季調値)は、前月比で3月8.3%減、4月は同8.8%増(前年同月比2.2%増)となった。また、前期比で10−12月期1.4%増の後、1−3月期1.1%減(前年同期比5.6%減)となった。
(6) 雇用情勢は、依然として厳しい。残業時間が増加しているものの、完全失業率が高水準で推移し、賃金も弱い動きが続いている。4月の有効求人倍率(季調値)は、有効求人が季調済前月比4.5%増(前月同0.4%減)と11ヶ月ぶりに増加し、有効求職者が同1.8%増(前月同1.3%減)となり、0.52倍と前月より0.01ポイント上昇した。4月の雇用者数は前年同月比0.8%減(前年同月差41万人減)となった。4月の完全失業率(季調値)は、5.2%と前月と同水準となった。完全失業者数(原数値)は375万人で前年同月差27万人増となった。
(7) 賃金、労働時間の動向をみると、4月の現金給与総額(産業計、規模5人以上、速報、以下同じ)は前年同月比1.6%減となり、実質賃金は同0.2%減となった。また、定期給与は前年同月比1.3%減となった。特別給与は前年同月比10.1%減となった。
4月の総実労働時間(産業計、規模5人以上、速報)は、前年同月比0.8%減となり、そのうち所定内労働時間は同0.6%減となった。また、製造業の所定外労働時間(規模5人以上、速報)は、前年同月比2.7%減となった。
(8) 国内卸売物価は、横ばいとなっている。5月の総合卸売物価は前月比0.5%下落(前年同月比0.9%下落)となった。そのうち国内卸売物価は前月比横ばい、輸出物価は同2.5%下落、輸入物価は同1.9%下落となった。
消費者物価は、弱含んでいる。4月の消費者物価は、前年同月比1.1%下落(生鮮食品を除く総合同0.9%下落)、5月について東京都区部速報値でみると、前年同月比1.2%下落(生鮮食品を除く総合同1.1%下落)となった。
1 雇用、労働市場の動向
《1》 4月の労働市場をみると、有効求人が季調済前月比で4.5%増、有効求職者が同1.8%増となり、有効求人倍率(季調値)は0.52倍と前月より0.01ポイント上昇した。内訳をみると、パートの有効求人倍率は1.31倍、パートを除く有効求人倍率は0.40倍(うち常用0.38倍)となった。
4月の新規求人は季調済前月比で6.8%増、前年同月比で1.7%減となり、うち、パートの新規求人は前年同月比4.3%増、パートを除く新規求人は同4.5%減となった。新規求人を産業別にみると、卸売・小売業、飲食店(前年同月比3.5%増)、サービス業(同3.2%増)、製造業(同10.8%減)、運輸・通信業(同12.5%減)、建設業(同12.5%減)となっている。一方、4月の新規求職者は季調済前月比で12.1%増、前年同月比16.8%増となり、うち、パートの新規求職者は前年同月比20.0%増、パートを除く新規求職者は同16.2%増となった。また、常用新規求職者は前年同月比17.9%増となり、うち、離職求職者(雇用保険受給資格決定件数)は同10.4%増、離職者以外の常用新規求職者(雇用保険受給資格決定以外の常用新規求職者)は同26.4%増となった。以上の結果、4月の新規求人倍率(季調値)は0.90倍(前月0.94倍)となった。
《2》 雇用者の動きを「労働力調査」でみると、4月は前年同月比0.8%減(前年同月差41万人減、うち常雇61万人減)と8ヶ月連続で減少した。男女別には、男性は前年同月差37万人減、女性は3万人減となった。産業別にみるとサービス業で前年同月差46万人増、卸売・小売業、飲食店で同2万人増、運輸・通信業で同8万人減、建設業で同26万人減、製造業で同50万人減となった。また、「毎月勤労統計調査」で常用雇用(規模5人以上、速報)の動きをみると、4月は産業計で前年同月比0.5%減、製造業で同4.5%減となった。就業形態別にみると、一般労働者は前年同月比1.5%減、パートタイム労働者は同3.8%増となった。
4月の完全失業率(季調値)は5.2%となり、高水準で推移した。男女別にみると、男性は5.4%(前月差0.1ポイント上昇)、女性は4.9%(前月差0.2ポイント低下)となった。
完全失業者数(原数値)は375万人で、前年同月差27万人増となった。離職理由別には、非自発的理由による離職者は161万人(前年同月差50万人増)、自発的理由による離職者は104万人(同18万人減)、他方、その他の理由による失業者は79万人(同1万人減)となった。また、世帯主の失業者は108万人(同12万人増)となった。
4月の男性の労働力率は75.0%(前年同月差1.1%ポイント低下)、女性の労働力率は48.7%(同0.7%ポイント低下)となった。
《3》 厚生労働省「労働経済動向調査」(5月調査)により、1〜3月期の雇用調整実施事業所割合を見ると、調査産業計では31%(前期差2%ポイント上昇)、金融・保険業及び不動産業を除く5産業計では32%(前期差2%ポイント上昇)となった。産業別には、製造業、運輸・通信業、不動産業で前期差低下、建設業、卸売・小売業,飲食店、金融・保険業、サービス業では同上昇となった。なお、4〜6月期の雇用調整実施予定事業所割合は、産業計で29%、5産業計で30%と見込まれている。5月現在の常用労働者過不足判断D.I.(「不足」−「過剰」)をみると、調査産業計でマイナス13ポイント(前期差2ポイント上昇で6期ぶりの上昇)となった。また、産業別に常用労働者過不足判断D.I.をみると、建設業、不動産業、サービス業で低下、金融・保険業で横ばい、製造業、卸売・小売業,飲食店、運輸・通信業で上昇した。
2 賃金・労働時間・労働災害の動向
《1》 4月の現金給与総額(産業計、規模5人以上、速報、以下同じ)は287,762円で、前年同月1.6%減となった。内訳をみると、所定内給与が前年同月比1.2%減となったほか、所定外給与は同3.2%減、特別給与は同10.1%減となり、実質賃金は同0.2%減となった。
《2》 4月の総実労働時間(産業計、規模5人以上、速報)は157.2時間で、前年同月比0.8%減となった。内訳をみると、所定内労働時間は147.4時間で前年同月比0.6%減、所定外労働時間は9.8時間で同2.5%減となった。なお、月間出勤日数は20.4日と前年同月差保合いとなった。
4月の製造業の所定外労働時間(規模5人以上、速報)は13.5時間で、前年同月比2.7%減となった。規模別にみると、500人以上規模で前年同月比4.1%増、100〜499人規模で1.9%減、30〜99人規模で同3.8%減、5〜29人規模で同8.3%減となった。
《3》 平成14年4月の労働災害による全産業の死亡者数は76人(速報)で、前年同月比17.4%減となっている。
3 勤労者家計・物価の動向
《1》 4月の勤労者世帯の実収入(速報)は、名目で前年同月比2.6%減、実質で同1.3%減となった。内訳をみると世帯主の定期収入が名目で前年同月比0.5%減、臨時収入・賞与が同23.2%減、世帯主の配偶者の収入(うち女)が同5.9%増となった。可処分所得は名目で前年同月比4.4%減、実質で3.1%減となった。
4月の勤労者世帯の消費支出(速報)は、名目で前年同月比0.4%減、実質で同0.9%増となった。消費支出を財(商品)・サ−ビス別にみると、財(商品)は実質で前年同月比1.3%減、サ−ビスは同3.6%増となった。
4月の平均消費性向は87.9%と、前年同月差3.5%ポイントの上昇となった。
《2》 5月の総合卸売物価は、前月比0.5%下落(前年同月比0.9%下落)となった。うち国内卸売物価は、電気機器、非鉄金属等が下落したが、石油・石炭製品、食料用農畜水産物等が上昇したため、前月比横ばい(前年同月比1.2%下落)となった。
一方、輸出物価、輸入物価は、それぞれ前月比2.5%下落(前年同月比0.6%上昇)、同1.9%下落(同0.6%下落)となった。
4月の全国消費者物価は、前年同月比1.1%下落(前月比0.3%上昇)となった。生鮮食品を除く総合は前年同月比0.9%下落(前月比0.1%上昇)となった。5月の消費者物価を東京都区部速報値でみると、前年同月比1.2%下落 (前月比0.2%上昇) となった。
月例労働経済報告参考表
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