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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語山梨県
言葉が不自由だったおじいちゃんが
武田節を歌ったんです
町田忠雄さんとその家族(塩山市在住)     
 「介護保険のおかげで家族の精神的、肉体的、そして経済的負担が大きく減りました。デイサービスへ出掛けることによって、おじいちゃんの寝たきりも防げます」と塩山市在住の町田忠雄さん(81)の長男英治さん(50)は話す。
 家業の農業に忙しく精を出していた忠雄さんが平成8年、脳梗塞(こうそく)で突然倒れた。この時は症状も軽かったが、翌平成9年に再び倒れてから入退院を繰り返し、現在はパーキンソン病も患っている。


寝たきりの入院生活で機能低下   
 
 忠雄さんが入院すると、町田さん一家は忠雄さんの妻である綾子さん(80)を中心に看病に当たった。そのかいあって、徐々に回復していったが、体のあらゆる機能が低下してしまった。「このまま入院生活を続けると、寝たきりになってしまう」。そう痛感した町田さん一家は、病院での介護をあきらめて在宅介護に切り替えた。

町田忠雄さんとその家族

 おじいちゃんと一緒に生活しよう―。町田さんの家では、英治さんの妻あき美さん(45)と3人の孫たちが、忠雄さんの様子が分かるようにと、ベッドを居間に据え付けた。英治さんは毎日忠雄さんを抱えて入浴させ、食事は、綾子さんが1回に3、4時間かけて食べさせた。大切なおじいちゃんの介護を家族のだれもが負担だとは思わなかった。しかし、疲労が容赦なく襲い、「このまま家で介護を続けられるだろうか」と英治さんは不安に思った。そんな時、介護保険がスタートした。

病気の家族を預けることへの不安   

 忠雄さんの要介護度は5。現在、週3回のデイサービスと、同じく週3回の訪問看護を受けている。あき美さんは「病気の家族を他人に預けるのはとても心配でした。でも、実際にデイサービスセンターに足を運んでみると、すぐに不安はなくなりました。看護婦さんがおじいちゃんに家族のように接してくれるんです」。
 塩山市では「在宅介護連絡ノート」を配布し、介護サービス利用者の当日の体温や血圧、センターでどう過ごしたかなどを記入してもらっている。家族とセンターとが密接に連絡を取り合っていることも、利用者の不安解消に役立っている。

体はもちろん、精神的な負担も軽減  
 英治さんは「介護サービスを利用することによって、家族の負担は本当に軽くなりました。特におばあちゃんの精神的な負担が減ったと実感しています」。
 家族が仕事や学校に出掛けると、綾子さんが一人で介護することになる。「だれか一緒にいてほしくなる時があります。そんな時、訪問看護は心強い味方です。最初は他人が家に来ることに少し抵抗もありましたが、それもすぐに安心に変わりました」
 在宅介護に切り替えてから、忠雄さんの身体機能低下は徐々に改善した。「ある日、おじいちゃんが家で武田節を歌ったんです。センターの機能回復訓練のおかげで、不自由だった言葉が回復しました」とあき美さん。
 「介護保険を利用してみると、本当にいい。身近な制度なんだと実感しました。これからは、みんなが支え合って介護する時代なんですね」
 家族の笑顔が忠雄さんを包んでいた。

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