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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語山口県
明るさ増した表情、日々に活力
ホームヘルパーや家族の協力効果
大隅厚雄さんとその家族(下関市在住)     
 テレビとにらめっこの生活から会話を楽しむ生活に、そして自分の足で歩けるように努力したい、とホームヘルパーや家族の協力で前向きに語り始めた下関市向山町の大隅厚雄さん(58)。左半身が不自由。自力で歩行できず、車いすに頼る毎日だが、ここ数ヵ月大隅さんから「表情の明るさを感じる」と家族は話し、温かく励ましている。

介護保険の導入で家族の負担は軽減 
 
 大隅さんは9年前、49歳の時、脳出血で倒れた。以来、左半身が不自由に。左手、左足ともほとんど動かず、言葉も少し聞き取りにくい。自力で入浴もできず、要介護度は2。介護が必要なのに、同居者は、北九州市のコンピュータ会社に勤務する長男の研治さん(31)一人。障害者対象の福祉サービスの入浴介護と家事援助を週一回受けざるを得なくなった。夜は研治さんがいるが、心配なのは昼間だ。市内に住む長女の笹尾里栄さん(28)や義兄の中川利秋さん(68)がたびたび訪ね、買い物や通院を介助する。昨年10月に脳こうそくを引き起こし状態はさらに悪化。左半身は完全にマヒし、介護の必要度が増した。

大隅厚雄さんとその家族

 介護保険で、週2回(月、木曜日)複合型の家事援助に重点を置いた入浴と家事援助、週1回(木曜日)の看護婦による血圧など健康チェックを受けている。大隅さんは「入浴が週2回になって身体もかゆくないし、そりゃもう全然違う」と喜び、ヘルパーから「以前よりもはっきり話せるようになった」と言われると、会話もはずむようになりヘルパーも掃除の手を緩めないが、大隅さんの言葉をきちんと受け止めている。中川さんも「車で30分ほど通うのは大変。介護保険になって家族の介護の負担は確かに軽くなった」と評価は高い。

「自分でできることは自分でする」  

 大隅さんは厚生年金と障害者年金合わせて月15万円ほどの収入があるが、家計への負担を少なくするため、要介護2のサービス利用限度額1万9千8百円のうち、3分の1弱の利用にとどめている。「自分でできることは自分で」との考えだ。
 介護保険制度導入で、家事援助などの介護保険のサービスを受け生活はしやすくなったが、「より高齢者が生活しやすい制度に変わっていくでしょうけど、お年寄りに対する『優しい心』を忘れないでほしい」と訴える。

「太陽の下、孫と歩く」夢ふくらむ  
 大隅さんは、今、屋外での歩行のリハビリをしたいと考えている。「孫と一緒に歩きたい」「家族に手をかけたくない」「おいしい空気と明るい太陽の日差しを浴びたい」などが大隅さんを勇気付けさせる理由だ。足首を固定する義足をつけてヘルパーに介助してもらいながらの訓練だ。ヘルパーを派遣している下関社会福祉協議会は「限度額内でリハビリのためのヘルパー派遣は可能」という。少し利用者負担は増えるが、「もう少し暖かくなったら、つえで家から往復200メートルほど歩くリハビリをしたい。車いすではなく自分の足で歩きたい」―大隅さんの夢である。

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