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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語鳥取県
入院させると妻が一人ぼっちに
それが嫌で介護を始めました
福永ツネ代さんとその家族(智頭町在住)    
 高齢化率の高い智頭町の山あいに、大正生まれの夫と妻。1947年に結婚して今年で55年、会話はなくてもお互いがわかり合える。福永ツネ代さん(77)は、夫の潔さん(76)に、そして地域に支えられて生きている。 潔さんは20歳代からツネ代さんとともに水田や畑の農作業、山の木を売るなど農林業で生計を立ててきた。やがて2男2女を授かり、後に結婚した長男夫婦とともに平和に暮らしていた。

一転、夫婦のきずなで介護を決断
   
 しかし、突然の不幸が一家に襲いかかった。
 90年、車で事故に遭いツネ代さんが足を骨折した。さらにこの年の7月、まきを燃やしていた炎が長男を襲った。大やけどを負い、闘病の末、家族の思いが届くことなく他界。7年後には、世話をしてくれていた長男の妻が、夫の7回忌を理由に家を離れた。
 潔さんは「仲が悪くなったということではなく、ただ、夫との死別に区切りをつけたかったのでしょう」と振り返る。 家には2人。潔さんの介護が始まった。

福永ツネ代さんとその家族

 このころのツネ代さんは、自力での歩行が困難で、ホームヘルパーも来るようになり、毎日1回の歩行訓練をしていた。だが、改善がみられず、「悪くなっているようにも思えた」(潔さん)。
 99年7月、突然ツネ代さんがなだれ込むように倒れた。脳梗塞(のうこうそく)の再発。2カ月ほどの入院が続いたが、自宅に帰れるほどに回復し、長女が家に帰っていたこともあって退院した。このとき潔さんは「一人では面倒見切れないと思い、長女が帰ったらまた入院させてもらおうと思っていた」という。
 しかし、施設の見学なども影響して潔さんの考えが一転する。「入院させるとツネ代を一人ぼっちにさせてしまうということに気付き、それはかわいそうだと思った。夫婦のきずなというやつですかね」と照れ笑う。ツネ代さんから笑顔が出るようになった。


デイに通うのが一番の楽しみ     

 現在、ヘルパーは1日4回、デイサービスは月、木曜日の週2回のサービスを受ける。ツネ代さんは「デイに通うのが一番の楽しみ。特にみんなと一緒に童謡や民謡などを歌うのが好き」とほおを緩ませる。家での食事はあまり口にしないが、デイでの昼食は自らの手できれいに食べるという。
 ケアマネジャーを担当する智頭町在宅介護支援センターの主任保健婦、小谷いず美さんは「デイに通うようになってから生き生きとしており、入院当時と比べると見違えるほどになった。環境の変化がもたらす効果は意外と大きい」と目を細める。
 制度について潔さんは「とても助かっており、感謝している。金銭面に不安がないというわけではないが、この料金でこれだけのサービスを受けられるのであれば満足。今は限度額を超えており、一割負担に加えて超えている部分の実費を払っているが、妻が喜んでいる以上、サービスは減らせない。そのあたりはケアマネジャーと相談しながら進めていきます」と話す。
 現在は、3人の子供もそれぞれが所帯を持ち、それぞれの生活をしている。「子供に頼るわけにはいかない。いけるところまで、自分ががんばっていきたい」(潔さん)。

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