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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語東京都
好きな時に通所介護を利用でき
父も人と接する機会が増えました
松本慶一さんとその家族(文京区在住)     
 文京区は、六義園・小石川後楽園に代表される風情と、東京ドーム・後楽園遊園地のような娯楽がうまく共存した町だ。77歳の松本慶一さんは、この文京区に幼少の頃から暮らしており、現在は、奥さんと娘さん家族の2世帯で住んでいる。

介護保険で利用回数が自由選択に  
 
 松本さんは自立して歩行はできるものの、軽い痴呆があることから、お風呂に入ったりトイレで用を足す時には介助が必須となる。そのため、必要な介護の度合いを決定する要介護認定では、中度に相当する要介護3と判定された。
 介護保険の施行後は主に、日中にデイサービスセンターへ出かけて介護を受ける通所介護と、施設に短期間泊まって介護を受ける短期入所生活介護のサービスを利用している。利用割合は、通所介護が週3〜4回、短期入所が1カ月に1回程度(1週間前後の滞在)で、制度施行前よりもサービスの種類・量ともに多く受けられるようになったという。

松本慶一さんとその家族

 介護保険前には、区が提供していた通所介護サービスを週に2回だけ利用していた。制度の導入により、その回数を週3〜4回に増やした理由を娘の浩江さんは、「外出することで、父が人と接する機会を多く作りたかった。本人も楽しみが増え、良い刺激となっているようです」と語る。
 この利用回数を増やせたことには、介護保険制度で決定されている支給限度基準額内であれば、保険適用で自由にサービスを組み合わせられるようになったことが大きく寄与している。以前はサービスを受けられる回数を、基本的に区が決定しており、松本さんの場合は週2回となっていた。それが今では週3〜4回、通所介護サービスを利用できるようになっている。


サービスの利用で笑顔が増えた       

 
介護保険制度では回数だけでなく、サービス提供者や1回の所要時間も利用者が決められるようになった。
 松本さんは以前には、送迎車で20分ほどかかるデイサービスセンターに赴き、1回実質4時間しかサービスを利用できなかった。それが今では、家族の希望で自宅近くのデイサービスセンターを1回6〜8時間にわたって利用できるようになっている。
 「健康な時は無口だった父が、サービスを受けて自宅に戻ってくると、色々なことを話すようになりました。顔もニコニコしています」と、娘の浩江さんは語る。通所介護でカラオケをしたこと、介護職員と様々な話をしたことなど、話が弾むことがよくあるそうだ。自然と家族での会話が増え、なごやかな時間が生まれる。
 松本さんが通所介護や短期入所サービスを多く利用できるようになったことで、同居する家族にもゆとりができたという。
 浩江さん夫婦は共働きのため、自宅で松本さんの介助をするのは、主に奥さんだ。しかし、1年を通してほぼ1人で毎日世話をするのは、精神的にも肉体的にも難しい。その点、松本さんが通所介護などで自宅を留守にしているわずかな時間でも、奥さんの介助負担が軽減されている。
 最近1年間でのこれら様々な経験を通して浩江さんは、「介護される側、介護する側の両方にとって、もっとゆとりや楽しみが増える制度になってほしい」と、介護保険の将来に大きな期待を寄せている。

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