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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語栃木県
入浴介護サービスのご気分は?
晴れやかな笑顔で「満点だね」
戸崎駒吉さんとその家族(宇都宮市在住)    
 毎月第2、第4火曜日、二人のホームヘルパー(訪問介護員)がやってくる。戸崎駒吉さん(82)が楽しみにしている入浴介護の日だ。ヘルパーの福田芳美さんと佐藤明美さんに支えられてベットから起き上がり、車いすに乗る。廊下を隔てた浴室に移動し、ゆったり20分間シャワー浴する。
  「暖まりましたか」。福田さんの問い掛けに「うん」。湯上がりにベットの脇でジュースを飲んでひと休みする。駒吉さんが一番リラックスする時間だ。

住み慣れた自宅での介護望む      
 
駒吉さんは平成4年に脳梗塞を起こし、下半身と右手が不自由になった。言葉も思うように出ない。同11年の9月から宇都宮市のホームヘルパー派遣事業で、ヘルパーが訪問してくれるようになった。


戸崎駒吉さんとその家族

 昨年4月の介護保険スタートに当たり宇都宮市に申請し、要介護4と認定された。ケアプランを作成する時、家族は駒吉さんの意向を尊重することにした。施設を利用するデイサービスも選べるが、住み慣れた自宅での介護が駒吉さんの希望だった。体格がよく入浴介護はヘルパー一人では無理なため、福田さんと佐藤さん二人で身体を移動してシャワー浴することにした。
 
戸崎さん一家は六人家族。娘夫婦が仕事に出掛ける昼間は、妻のリキさん(77)が介護する。「一切不平を言わない人なんです」。介護に当たる自分への配慮を感じるリキさんは、駒吉さんが快適に過ごせるように努めている。

わが家になくてはならない人     

 
駒吉さんのベッドは居間の隣の和室にあり、家族といつも顔を合わせている。「父はわが家になくてはならない人ですから」と娘の慶子さん。二人の孫も「行ってきます」「ただいま」と声を掛ける。
  入浴を済ませてくつろぐ駒吉さんに福田さんが「ご気分はいかがですか」と尋ねた。「うん、満点だね」。輝く笑顔で答えてくれた。「娘のようだ」という福田さんと、心が通い合っている。ベッドに入る前に、つめを切り、ひげをそってもらう。ヘルパー二人はシーツの交換なども手早く行う。
  駒吉さんが今の身体機能を維持できるように福田さんは心掛けている。工夫の1つが歌による発声練習だ。訪問の際、歌詞を書いた紙を持参して、次回までに練習しておくように宿題を出す。


家庭の中に介護の和をつくる     
 駒吉さんがヘルパー二人と、「お座敷小唄」の替え歌の「ボケない小唄」を歌い始めた。歌い終わると、リキさんと慶子さんから拍手がわく。「私一人では入浴はとても無理。本当に助かります」とリキさん。今度は駒吉さんとリキさんで歌を披露してくれた。
  ヘルパーの帰りがけ、いつも駒吉さんは「今度はいつ来るんだい」と尋ねる。「ヘルパー冥利に尽きますね」と福田さん。
  「家庭の中で介護の和をつくることを、まず心掛けました。その上で介護保険をどう利用するか考えたんです」。慶子さんはこの1年を振り返る。「他人であるホームヘルパーが親身に介護して、私たち一家を支えてくれるのはありがたいです」。
  寒さが和らぎ風邪の心配がなくなったら、入浴介護を毎月2回から毎週に増やしたいと、戸崎さん一家は考えている。

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