全国北海道東北関東北陸東海近畿中国四国九州沖縄
支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語島根県
介護ベッドをかこんで
家族みんなの笑顔が集います。
多久和世治子さんとその家族(安来市在住)   
 義母(はは)、義父(ちち)と続けて、半年の間に両親が倒れてから13年。世治子さん(51)の脳裏に、これまでの在宅介護の日々が浮かび、一筋の涙がほほを伝わりました。
 「最初はまったくの手さぐりで、どうしていいのか途方に暮れました」。どん底の気持ちのときに、本の中で出会った言葉が「はい、にこ」。はいっと元気に返事して、にこっと笑って介護。心が楽になり介護にも慣れていきましたが、こんな世話でいいのだろうかと、いつも不安だったそうです。相談をしたいご主人は、義父と義母が倒れる7年前に亡くなっていました。

相談できる人がいる、その安心感
   
 介護をする人は、よく孤独感におそわれます。世治子さんの不安も、介護保険が導入されるまで消えることはありませんでした。それがいまでは、介護サービス施設や事業所のスタッフに、専門的なことから諸手続きの申請まで、何でも気軽に相談できるので世治子さんも安心です。

多久和世治子さんとその家族

 義父の福さん(76)は要介護5、義母の民子さん(76)は要介護1の認定を受けています。現在は週2回、訪問看護を利用して看護婦さんなどに来てもらい、健康チェックや入浴の世話をしてもらっています。
 「風呂に入れてもらうと、気持ちがよくてなぁ」と、寝たきりの福さん。人とのふれあいが刺激になったのか、家から出たがらなかった民子さんが、近ごろは通所リハビリセンターに行くようにもなりました。 今年に入って、福さんは2泊3日で、施設に宿泊して介護を受けるショートステイを利用しました。「スタッフの人たちみんなが、おじいちゃんに温かい言葉をかけてくれるんですよ」と、世治子さんも安心して、用事を済ますことができました。


介護が教えてくれた感謝の気持ち   

 多久和さん家族は福さん、民子さん、世治子さん、そして世治子さんの息子さん夫妻とそのお子さん3人の大家族。介護は家族の心をひとつに結んでくれました。
 「子どもたちがベットの横から、顔をのぞかせるのが楽しみでね」と、民子さん。
 「子どもたちは、義父と義母の食事の膳を下げてくれるんですよ」。世治子さんの顔もうれしそうです。
  無口な息子さんが「たまには休めよ」と、声をかけてくれることもあります。お嫁さんが排泄の世話を手伝ってくれた夜には、布団の中でありがとうと泣きました。
 「介護は大変です。でも、介護が感謝の気持ちを運んできてくれるんだと思います」

利用することで大切さを実感     
  世治子さんは、介護保険が導入になる前はどれほど役立つのか、疑問だったそうです。「実際に利用してみると、介護される人だけでなく、介護をする人が助けてもらっているんですね」と、施設や事業所の人たちが精神的に支えてくれることを実感しました。
 「よく40歳からの保険料の納付が問題になりますが、年をとったら、そのありがたさが身にしみるんじゃないかな。介護保険はやはり、必要なことだと思います。できたら、もう少しサービスや施設の利用料が安くなるといいですね」
 介護保険制度が始まって一年。実際に制度を利用した人たちの声によって、そのすそ野は広がろうとしています。

全国北海道東北関東北陸東海近畿中国四国九州沖縄