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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語佐賀県
畑の大根取り、マサさんが手料理
「お袋の味」大根煮付けで弾む会話
家永マサさんとその家族(鹿島市在住)     
 マサさんは現在89歳。デイサービスを受ける朝は仏壇に手を合わせ、施設のバスが迎えにくる玄関へと急ぎます。息子俊雄さん(64)の妻千代子さん(59)は元気に出て行く母の後姿にほほえみかけます。
 マサさんは7年ほど前から高血圧症による脳梗塞で、ボケが始まっていました。玄関で転んで足にひどい怪我をして、入院。以来、体の動きも悪くなり、家でぼーっと過ごす時間が多くなっていました。

折り紙や絵に熱中し表情も明るく   
 俊雄さんと千代子さん、孫の直俊さん(28)は仕事のため、日中、家にはマサさん一人。倒れてはいないか、困ったことになっていないか、家族は仕事をしていてもマサさんのことが気がかりでした。家にいるときでもカタッという小さな音に何かあったのではと緊張し、心が安らぐときがなかったといいます。「家族のことはできる限り家族で看たい」と考えていた千代子さんでしたがだんだん、誰かに手助けして欲しいと思うようになりました。そんなとき、介護保険制度が導入されたのです。

家永マサさんとその家族

 早速、申請し要介護2の認定を受け、千代子さんはケアマネジャーと相談し、人と話をすることを中心に、足を強くするためにリハビリも入れたプランを立ててもらいました。サービスが始まると、もともとお話好きのマサさんはそこに集まる仲間と体操したり、折り紙を折ったり、絵を描いたりしてすぐに仲良くなりました。次第に表情が明るくなり、受け答えもしっかりしてきたといいます。習った折り紙や絵に家でも熱中し、部屋はマサさんの作品でいっぱいです。「楽しくて、しょうがなかとですよ。自分でもしっかりしてきたことがわかっとです。本当、ありがたかことです」と笑顔で語るマサさんの表情は、1年前の様子がうそのようです。

デイサービスで家族の心の負担軽く  

 千代子さんは「とにかく表情がいきいきしてきました。乳母車を押し、家の周りを歩くなど意欲も出てきたようです。週3回のデイサービスで私たち家族の心の負担も軽くなり、安心していられます。家の中が明るくなりましたね」。心から喜びをかみしめます。介護保険制度が家永さん一家を支える、もう1つの家族のような存在となっています。半年後、2回目の認定で要介護2から1に変わることができました。
 先日、マサさんが畑で取った大根とシイタケの煮付けを作ってくれたそうです。ずっと料理をしなかったマサさんの思いがけない手料理に家族は驚き、特に俊雄さんは、久しぶりに味わうお袋の味にとても感動し、元気になったことを喜んだそうです。「シイタケは半分に切った方が、もっとおいしいかもね」と大根煮付けを囲んで、家族の会話が弾んだといいます。

制度知らない人にもっとPRを    
 「私たちはこの1年、介護保険制度に支えられました。でも、私の周りで家族だけで介護を抱え込み、疲れ果てて限界がきているのに、いまだにこの制度を知らずにいる人たちがいます。もっとPRして家族や当事者の負担を軽くしてあげてほしい。そして判断が難しい痴呆に対する認定も充実させてほしいと思います」という千代子さん。マサさんのために辞める覚悟をした仕事も定年まで続けられそうと嬉しそうです。

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