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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語大分県
毎日大変だけど家内のためだから
最近は、月二回の外食が楽しみに
工藤恵美子さんとその家族(大分市在住)    
 「さっきデイサービスから帰って来たところです」と、夫の工藤昭さんが招じ入れてくれた部屋は、きちんと片づいている。
 工藤家は昭さん(70歳)と奥さんの恵美子さん(68歳)の二人暮らし。一人娘の寿美子さんは結婚して、大分市内に住んでいる。

生きているのが不思議なくらい    
 平成8年11月、恵美子さんは心筋梗塞で倒れ入院した。以来平成11年までの間に、3回の心筋梗塞発作と3回の脳梗塞発作、さらにイスから落ちて脊椎圧迫骨折をするなどで5回の入退院を繰り返した。現在、心臓にペースメーカーを入れ、1級障害者手帳を交付されている。
 「生きていられるのが不思議なくらいなんですよ。発作を起こしたのが、たまたま僕が家にいる時ばかりでしたから良かったんですよ。家内は運が良いんです。寿命があるということですね」。昭さんは明るい表情で話す。

工藤恵美子さんとその家族

 恵美子さんは現在、ゆっくりと伝い歩きができ、トイレもお風呂もなんとか独りでできる。
 介護保険制度が施行された当初、要介護3に認定されていたが、今回の更新で要介護2になった。
 「2になった時は、ちょっと心配でしたが、まあ家内はこのランクでしょう」と昭さんは納得している。
 現在、週2日(火・木)市内の介護老人保健施設リバーサイド百々園の通所デイサービスに通い、入浴や機能訓練のサービスを受ける一方、毎日ヘルパーさんの訪問介護を受けている。訪問介護は、月・水・金曜は1時間未満の機能訓練などの身体介護、火・木曜が2時間未満の複合型介護、土曜が2時間未満の家事援助。


今度は私がお返しをする番です    

 毎日の食事の支度は昭さんがする。インスタント食品が嫌いな昭さんの作る料理は、すべて手づくり。
 「主人は料理が上手。私がするよりおいしくて手早い」と、傍らで恵美子さんが言う。
 「ぼくはねえ、味付けには自信があるんですよ。もう慣れたもんです、足掛け5年ですから」。
 昭さんは、1日おきに恵美子さんを病院につれていき、毎日朝9時と夜9時に血圧測定と、10数錠もの薬を飲ませる。薬は間違えないようにきちんと1回分ずつ袋に入れている。
 「あらゆる面で神経を使います。大変ですけど家内のためですから。私は若い頃亭主関白だったけど、家内はよくやってくれました。今度は私がお返しをする番です。相互扶助ですよ」と、昭さんはしみじみ。
 現役時代に照らして「介護は会社経営と同じ。一生懸命やれば、その道に通じるようになります」とも。

介護保険は、本当にありがたい制度  
 毎週土曜日には、娘の寿美子さんが新鮮な刺身を持って顔を見せる。土曜日は刺身の日だ。
 昭さんは最近、2週に1度、恵美子さんの発病以来やめていた卓球を始めた。
 「ようやくゆとりが出来ましてね。月2回の卓球の後は、車で家内と外食を楽しみます」と笑顔。
 夫妻の今の願いは、病状がこれ以上進まないこと。
 「訪問介護やデイケアでのリハビリで、病状が進まないでいると思うんですよ。今のまま維持できたら、なんとか私が面倒をみてやれます」。
 介護サービスを上手に利用しながら、在宅で恵美子さんの介護を続ける昭さんは、「介護保険は、私どもにとって本当にありがたい制度です」ときっぱり。

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