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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語沖縄県
介護保険で順調に進むリハビリ。
「多くの友人ができました」
城間キクエさんとその家族(那覇市在住)    
 脳梗塞で突然、城間キクエさん(63)が倒れたのは4年前のことです。それまで城間さんは4人家族の中で、専業主婦として、平凡ながらも幸せな毎日を送っていました。救急車で運ばれ、病院のベッドで意識不明の状態が続きました。家族は、医師から「あきらめるように」とそれとなく伝えられたといいます。2週間後、奇跡的に、城間さんは意識を取り戻します。しかしその日から、厳しい闘病生活が始まりました。左半身がマヒし、ベッドに横たわるだけの状態が続きました。家族の献身的な看病が城間さんを支え続けました。
 2年後、杖をついて歩けるまでになり、退院。家族は仕事で昼間はいない。リハビリをしようと、近所のデイケアに通おうとしましたが、年齢が規定に満たず断られてしまいました。当時の老人医療制度は原則として、70歳以上でなくては保険の適用ができなかったからです。


城間キクエさんとその家族

介護保険が転機に          
 転機となったのは、昨年4月の介護保険制度の誕生でした。この保険制度で、老化が原因とされる病気「特定疾病」に認定されると、65歳以下でも保険の適用を受けられます。城間さんは那覇市に申請し、要介護1の認定を受けました。月額16万5千8百円までの介護サービスが受けられます。ケアマネジャー(介護支援専門員)に、介護サービス計画づくりを依頼。週3回の通所リハビリ、1回2時間のホームヘルプサービスを週2回、利用することに決めました。
 
それから、城間さんの生活は変わりました。リハビリで不自由な体はどんどん回復に向っています。感覚の無かった左半身に体温が戻り、少しずつ動かせるようになりました。「入院していた頃の厳しいリハビリと違って、通所リハビリではゲームをしたり、歌ったり、踊ったり楽しくリハビリができる。友人もたくさんできた」と自然に笑顔があふれます。元気を取り戻した母親に、家族も一安心。夫の隆さん(65)も「もっと、頑張って」と励ましてくれます。

城間さんの夢            

 城間さんの介護をするホームヘルパーの津波古和枝さん(37)は、介護保険の導入がきっかけでヘルパーになりました。城間さんを「おかあさん」と呼んでいます。外から見ると、本物の親子のようです。津波古さんが身の回りの世話をしている間も、話しが弾みます。
 「介護保険がなかったら、私はどうなっていたか。おかげで、リハビリに通うことができ、娘のようなヘルパーも来てくれました。まるで、家族が増えたようです。私にとっては『介護保険さまさま』です」と城間さん。
 城間さんには今、夢があります。もとの体力を取り戻し、身の回りのこと全てを一人でできるようになることです。長い闘病生活から、久しぶりの手料理まであと少し。食事を囲み、改めて家族の絆を確かめ合う日も遠くありません。通所施設の職員、友人、ホームヘルパーに支えられ、その夢の実現が一歩一歩近づいています。「介護保険制度は社会全体で、介護の必要なお年寄りを守る制度。この制度が変わらずに続いて、私のように元気になっていくお年寄りが増えていくといいですね」。介護保険から1年。幸せの輪が広がっています。

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お年寄りの介護が日常生活の中で
当たり前にならないといけない。
山城カメさんとその家族(糸満市在住)     
 「自分一人家にいると寂しいよね。(デイサービスで)みんなで集まって話しするのが楽しい。二カ所行っているけど、みんな友達だよ」
 日当たりの良い床の間のベッドに腰掛け、笑顔で語る山城カメさん(97)。息子の直治さん(57)=地方公務員=、嫁和枝さん(52)、孫二人に囲まれ、生まれ育った糸満市大里で暮らしている。
 十二年前、思わしくなかった両膝が悪化し歩行困難に。以来、自宅で家族の介護を受けながらの生活が続く。一昨年の要介護認定で「要介護3」と認定された。

リハビリで上腕を鍛え、排泄が自立  
 六十代後半まで畑仕事をしたというだけあって、体付きはとても九十七歳とは思えないほどだ。
 寝たきりに近い状態となったカメさん。直治さんや和枝さんの介助で、ポータブルトイレでの排泄を試みたが、ポータブルは安定していないことや介護者への負担が大きいことから、おむつ生活に。

山城カメさんとその家族

 二年ほど経ったころ、老人福祉施設で勤務していた知念政敏さん(42)=現在は特別養護老人ホームいとまん福祉支援課長=の訪問を受けた。
 知念さんは、カメさんの残された身体機能を発揮させようと、ベッド縁に腰掛けさせ両手で上体を持ち上げる訓練を実施。
 これが見事に効奏し、ベッドと同じ高さにした知念さん手製のトイレに自力で移動できるようになり、排泄が自立した。

あちこち行けるので心持ちがいいね  
 昨年四月から、これまで週一回のデイサービスを二回に、訪問看護も週二回受けて入浴させてもらう。それに加え、集落単位で行われる市のミニデイサービスにも参加。これらが、集落の行事や年に一度の家族一泊旅行への活力源になっている。
 「昔に比べ、ごちそうがあって健康さね。あちこち行けるので心持ちがいいよ」 知念さんのアイデアで玄関に引き出し式のスロープ、風呂場にもスロープを設置。車いすでの外出やシャワーチェアでの入浴を楽しんでいる。
 カメさんは非常に器用だ。五十センチほどのプラスチック棒の手前の握りをぐっと握り締めると、棒の先の半円形の二本の爪が開閉する器具を使い、テーブルを引き寄せたり、窓やカーテンの開け閉め、電灯のスイッチを入れたりなど舌を巻くほどスムーズだ。「便利だよね」と笑った。

制度スタートで相談しやすくなった  

 「気負いすぎると駄目になるので、なるようになる―との気持ちでやっています」と、和枝さんは在宅介護の心構えを語る。
 介護保険で出費は増えた。が、「それまでは役所にヘルパー派遣で相談に行っても時間がかかった。ヘルパーはじめサービス利用など、相談しやすくなったのが一番のメリットではないですか」と話す。
 現行はケアマネジャーが作ったケアプランに沿った介護だが、(急用の時など)緊急な時にいつ何時でもヘルパーが利用できるようにしてほしいという。
 「お金があれば、サービスを何でも利用できる現状はいただけない。そういう意味で在宅介護に何が必要か、家族がゆとりを持って介護できる環境づくりを国や市町村は考えてほしい」と要望した。

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