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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語奈良県
成長期の介護の手伝いが、
四人の孫の心を育てた
林静枝さんとその家族(天理市在住)      
 63歳の時に脳出血で倒れてから、22年間ベッドの上で暮らしている林静枝さん(85)は、テレビが大好き。娯楽番組だけでなく、「若い時に勉強できへんかったから、勉強したいんや」と、教育番組を見ていて、家族をびっくりさせることもよくあります。また、ビデオも好きで、息子の庄三さん(59)が買ってくれた新喜劇のビデオがお気に入り。「ハハハハ」と笑う静枝さんの元気な笑い声が、いつも部屋から聞こえています。 もともと朗らかな性格の静枝さん。おもしろいことを言って、家族を笑わせることはしょっちゅう。食べ物の好き嫌いがなく、「ありがとう」といつも言ってる静枝さんは、「寝たきり老人の優等生」だと庄三さんの妻のゆかりさん(59)は話します。

孫の心を育てた介護
         
 脳出血の後遺症がひどくて庄三さん一家が同居した時、庄三さんの4人の子どもは上が小学3年生で一番下が3歳。働き盛りの庄三さんにかわって静枝さんの介護を引き受けたゆかりさんの肩には、介護と育児の負担が一気にのしかかりました。終わりのない介護のしんどさを乗り越えてこられたのは、「子育ての楽しさもあったから」とゆかりさん。「介護に追われて、子どもたちには十分なことができなかったけど、おばあちゃんの世話をすることで、子どもたちはみんな、思いやりのある子に育った」と言います。

林静枝さんとその家族

 今は4人とも社会人となり、それぞれの人生を歩き始めましたが、一緒に暮らす歓太郎さん(25)は、休日には必ず「おばあちゃん元気?」と、静枝さんの部屋をのぞきます。静枝さんにとっても、孫との会話が一番の楽しみのようです。

できることは自分たちでするのが基本 

 痴ほうがあって、左手も不自由で歩くことができない静枝さんの認定は、当初は要介護4でしたが、半年後の見直しで要介護5に変更。今は、週に1回の入浴サービスを兼ねたデイ・ケアと、理学療法士が訪ねてくれる訪問リハビリ、月に1度の居宅療養管理指導を組み合わせて、必要な時にはショートステイも利用しています。
 「できることは自分たちでして、できないことを助けてもらうのが介護保険の基本」と話すゆかりさんは、個人負担を伴わないケアプランの作成にも、経費がかかることを知って自分で作ることを決意。
 ただ、毎月、市に提出する書類の多さには閉口。「変更があったときだけ提出するようにしたらいい」と考えています。利用者や家族が自己負担してゆくのは当然のことだから、ゆかりさんは「簡略化できるところは簡略にして、介護保険の勉強を若いうちから始める人を増やすことが大切。ケアプランを自分で作る人が増えれば、それだけ保険のしくみがよく分かります。早くから自分の老いの準備を始める人も増えるのでは」と提案します。

専門家の指導を受けられることが安心に
 介護保険のメリットは、これまで分かりにくかったサービスの内容が明確になったこと。「家族も保険料を支払っているから、サービスを受けることに対する気が楽になった」とゆかりさん。「専門家の指導をちゃんと受けているという安心感が、介護者の精神的な負担を軽減する」と話します。長期介護には、家族の思いやりと専門家のアドバイスが欠かせないのかもしれません。

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