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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語宮崎県
介護保険のサービスで毎日が充実
主人も私も心が明るくなりました
井上忠さんとその家族(宮崎市在住)      
 社会全体で介護を支えるシステム「介護保険」がスタートしてまもなく1年。県介護・国民健康保険課調べによると、県内で要介護認定を受けた高齢者は昨年12月末現在、3万979人にのぼる。
 宮崎市の井上忠さん(79)もその一人だ。妻の千恵子さん(73)と二人暮らし。介護保険の要介護度は最も重い「5」と認定された。1999(平成11)年5月、自宅で転倒し頸椎(けいつい)を損傷。後縦じん帯硬化症を引き起こし、四肢にまひが残った。

一人で行う介護は毎日が苦労の連続  
 半年後、病院からは「在宅介護は難しい。もうしばらく入院を」と勧められたが、二人は自宅に帰ると決めた。「そんなに大変とは考えていなかったんです」と千恵子さんは笑う。しかし実際介護してみると、井上さんは寝たきりで寝返りも食事も排せつもできない。千恵子さんが一人で体位変換するだけでも予想以上の苦労だった。

井上忠さんとその家族

 泣きながら介護を続ける日々。遠く離れて暮らす息子は心配の余り、宮崎市に相談。ケアマネジャーを紹介された。千恵子さんはケアマネジャーと話し合ってヘルパーに来てもらうことにした。「この時期はこれからどうなるのか不安で、本当に精神的に参っていた」と当時を振り返る。
 介護保険がスタートしたのはそんな時だった。要介護認定を受けてサービスメニューはぐんと増えた。現在、訪問看護を週3回、訪問リハビリを週3回、巡回入浴を週2回、栄養指導を月に1回受けている。そのほか、ヘルパーが毎日朝と夕方、着替えや洗面、歯みがき、移乗介助のほか家事援助までしてくれる。

井上さんに戻った以前のような笑顔  

 井上さんはリハビリを重ねることで、少しずつ体が動くようになった。体力もつき、今では3―4時間も車いすに座って新聞を読んだり、テレビを見たり、千恵子さんやへルパーらと会話を楽しむまでになった。日々改善を実感する喜び。井上さんの顔に以前のような笑顔が戻った。
 カラフルなイラスト入りで壁に張ってあるのは、1カ月分のケアプラン。ほとんど毎日、朝から晩までさまざまなサービスが組み込まれている。初めは二人の生活に他人がひっきりなしに入ってくることに不安もあった。しかし、今では千恵子さんが介護に息詰まったときに看護婦やヘルパーらと話をしたり、アドバイスを受けたりすることで心の負担も軽くなったという。
 「範囲内なら、サービスの時間や日程の要望に柔軟に対応してくれるのもメリット」と千恵子さんは顔をほころばせる。井上さんを一人残して外出はできないが、ヘルパーが見ていてくれれば安心して用事を済ますことができる。月に1回訪れる栄養士も細かい気配りをしてくれる。井上さんの体力や体調に合わせて料理を作ったり、栄養分を調整したゼリーや牛乳などの補助食品を紹介してくれるのだ。
 「充実したサービスが受けられるようになって、主人も私も心が明るくなり、毎日が楽しいと感じられるようになりました」と介護保険に感謝する千恵子さん。その隣で井上さんは「これから制度が浸透し、改良されていって介護環境はどんどんよくなっていくでしょう。長生きしたい」と希望を語った。
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