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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語三重県
へルパーさんに誘われて
大好きなハーモニカ吹けるんです。
蔵原康守さんとタミさん(名張市在住)     
 3月末で康守さんは77歳になる。タミさんは5つ上。寝たきりになって、もう8年になる。 介護認定審査会で判定されたタミさんの要介護度は「5」。軽度の要支援からある制度のなかでは、最も重いランクだ。 日常生活では全面介助が必要で、ケアプランでは朝、昼、夕方と1日に3回のおむつ交換のほか週2回のデイサービス、隔週で2回の家事援助(調理)、体が固くなるのを防ぐため訪問看護でのリハビリといったサービスを受けている。 在宅で介助する康守さん自身も座骨神経痛を病み、ペースメーカーの世話にもなっている。

安心。自分の時間が出来ました 
   
 以前からヘルパーさんの手助けを受けてきた。介護保険制度が出来てからはケアプランに基づいて介護サービスを利用。週1回だったデイサービスを2回に増やした。
 「ほんとうにようしてもらっています。ありがたいことです。不安になったこともないです。安心です。かえって、自分の時間ができました」。

蔵原康守さんとタミさん

 タミさんが動けなくなったころ、福祉のことを全く知らず、2年ほど独りで面倒みてきた。独りで支えていくことの大変さを実感した。自分も体が弱ってきているだけに支え合いの制度に感謝する。「おかげで前より足が曲げられるようになった」。
 職員ヘルパーだけでなく登録ヘルパーにも来ていただき、新しい制度になってから多くの新しいヘルパーさんの訪問を受ける。
「みんな優しい人ばかり。来た人、来た人、大事にしてくれる。タミも“もう帰るの?泊まっていって”という時もある」という。


世間広がり子どもからチョコ     

 康守さんはハーモニカ演奏が趣味。付き合いが広がったヘルパーさんに誘われて、地域の様々な集いに出掛けることも多くなった。これまでに公民館や学校、老人ホームなどで演奏した。
 2月に公民館で子どもを前にハーモニカで「赤トンボ」や「もみじ」など40曲を披露した。そのお返しにバレンタインの日に子どもからチョコをプレゼントされた。「蔵原先生どうしてる?」と子どもたちが言っていたことをヘルパーから聞かされ、「うれしいもんです」。
 お年寄りの昼食会などあちこちから出演の声がかかる。「予約も入っているんですよ」。いい笑顔で話す。
 老いた二人の暮らし。ともすれば沈みがちに、ともすれば後ろ向きになると見られそうだが、康守さんは「家のなかでくすぶって、ジッとしてたらボケてしまう」と笑いとばす。
 在宅介護を支える専門職員を信頼し、相談にも親身になってのってくれていることが前向きにさせる。 それでも、一人娘が心配し、1日も欠かさず、電話してくるという。

安心はお金で代えられない      
 タミさんの場合、介護保険の利用者負担額は月額2万数千円という。「安心はお金では代えられません。これ以上望みません。ずっと続いてほしいだけです」。
 ハーモニカ演奏の録音テープを聞かせ、ベッドで微笑むタミさんに笑顔を返した。

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