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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語熊本県
私の尺八に合わせ妻が民謡歌う…。
夢を目指してリハビリの日々続く。
池福幸一さんとその家族(植木町在住)     
 「昔のように、私が尺八を吹いて、家内がそれに合せて民謡を歌って…。そんな生活を夢見て、毎日リハビリをしとります」 鹿本郡植木町に住む池福幸一さん(68)が体の異変に気づいたのは昭和57年ごろ。「車の運転後などに肩が痛うなってですね。健康には自信があったとですが…。診断結果はリウマチでした」。自衛隊勤務で鍛え上げた体が病気になるなど、思ってもみなかったことだ。 「退職したら温泉旅行もしたいし、一緒に歌も歌いたい。いろんな夢がありました」と妻の満子さん(68)。しかし二人を待っていたのは、59年の定年退職後の二人三脚の闘病生活だった。

リウマチ悪化し転倒で寝たきり状態  
 リウマチは筋肉や関節に痛みと炎症を起こし、それが体の各部に移っていく病気だ。平成6年には歩行ができなくなり、左ヒザに人工関節を入れた。11年には自宅で転倒。大たい骨骨折と左ひじにひびが入って70日間の入院生活。満子さんが買い物や通院用として車の免許を取ったのもこのころだ。さらに介護保険スタート直前の昨年3月にはまたも自宅で転倒。幸一さんは寝たきりの状態になった。

池福幸一さんとその家族


気迫のリハビリ、1年で大きく改善  

 介護保険スタート時、幸一さんの要介護度は重度の介護が必要な「4」。半年後の見直しでも要介護度は変わっていないが、ADL(日常生活動作能力)は大きく改善。この1年で、満子さんの手を借り、時間はかかるがイスに座ったり、自分でトイレもいけるようになった。現在は訪問リハビリ(週2回)、訪問入浴(同3回)、デイケア(同1回)を受けている。「ベットに寝たままの主人の顔とこうしてイスにすわっている主人の顔は全然違います」
 リハビリのため各部屋をバリアフリーにし、居間や廊下には手すりを設置。時間をかけ歩行練習する幸一さんの息遣いは苦しそうで荒い。「無口な主人ですが、なんとか自分一人で歩けるようになりたいという気迫はすごいですね」
 満子さんにはわがまま言い放題の幸一さんだが、介護サービスに訪れるヘルパーさんたちの言うことはよく聞く模範生だ。「うちは子どもがいませんのでずっと夫婦二人。介護サービスが始まって、先生や看護婦さんやヘルパーさんが来てくれてにぎやかになり、家の中が明るくなりました」と満子さん。なかでも幸一さんが楽しみにしているのが訪問入浴。「入浴後、ほんとにおいしそうにタバコを吸うんですよ」

親身の介護サービスに夫婦とも感謝  
 20年ほど前、自衛隊で尺八の手ほどきを受けた幸一さん。「楽譜を見ればどんな曲も吹けるし、お弟子さんもおりました。教えるだけでなく、近所の山から竹を切って尺八作りもしよりました」
 「でももう、7、8年吹いとらんです」と話す幸一さん。尺八を吹くのに必要な肺活量と握力がないためだ。何とかまた吹けるようにとリハビリは今日も続く。
 「介護保険が始まり、皆さんにとても親身な介護をしてもらって主人ともども、とても喜んでいます。利用者全員が安心して介護サービスを受けられるようになって欲しいですね」

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