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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語鹿児島県
「自宅でゆっくり介護したい」。
その思いが回復への第一歩でした。
井上勉さんと奥様(鹿屋市在住)        
 鹿屋市にお住まいの井上勉さん(現在65歳)は平成11年8月、仕事先の鹿屋市で脳内出血のため突然倒れました。運ばれた病院では意識がなく、回復はとても望めない状態だったそうです。その後、寝たきりのままの闘病生活が1年以上続きました。
 奥様の美和子さんは、鹿児島市内の病院に入院した勉さんの看護のため、同市内の息子さんの家に身を寄せ、毎日病院に通いました。
 「1年たっても良くなるようでもなく、リハビリも思うようにできなくて」
 自宅で介護したい―。そう考えた美和子さんは、自宅近くの在宅介護支援センターに相談しました。

頼れる相談相手に巡り会えて     
 65歳の誕生日を迎え、介護保険のサービスが受けられるようになった平成12年12月、勉さんは鹿屋市の自宅に帰りました。勉さんの認定度は全面的な介護が必要とされる“要介護5”。「在宅介護支援センターの方の親身なアドバイスにずいぶん助けられました。どんなサービスを受けたらいいのか、費用はどれくらいか。医療や福祉制度でほかに利用できるものはあるのか。自宅でどう介護したらいいのかなど、相談できて心強かったです」。

井上勉さんと奥様

 当初のケアプランは訪問看護・介護でというもの。しばらくすると、徐々に回復の兆しが見え始めました。それまでは口から食事を取れるものの、ほとんど目を閉じたままの勉さんでしたが、時々目を開けることができるようになり、1月から日帰りで施設に通う「通所サービス」を試すまでになったのです。

リハビリの効果を実感する日々    

 現在、勉さんは週3回自宅近くの老人保健施設のデイケアに通っています。午前中は入浴、昼食後はレクリエーションやリハビリをして過ごします。専門のスタッフが、身体機能や言葉などのリハビリをマンツーマンで指導しています。
 「朝9時半にデイケアセンターの車が迎えに来て、午後4時前に送ってきてくれます。その間、私は家事や自分のための時間が取れるんです」
 時間に余裕のできた美和子さんは、週に2日、デイケアのない日に勉さんを自分の車に乗せて病院のリハビリセンターへ。自宅に帰ってわずか3カ月あまりで、勉さんは左手、左足の機能もかなり回復し、ベッドの上で手足を動かしたり、時々簡単な言葉を話せるまでになったのです。

夫婦水入らずの温かな暮らし     
 
明るい日差しが降り注ぐ居間に勉さんのベッドが置いてあります。「もっと早く自宅に連れて帰ってあげればよかったと思うんですよ。ここならいつでも一緒に過ごせるしね」。美和子さんの献身的な介護のかいあって、最近、勉さんが笑顔を見せるようになりました。
 「良くなっていることが分かるから、こちらも張り合いがあります。言葉のリハビリがもう少し進むといいですね。ここまで回復できたのは、主人や私の生活に合わせていろいろなサービスが選べる介護保険制度のおかげです」
 勉さんが美和子さんと以前のように言葉を交わし合う日が、そう遠くはないのかもしれません。

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