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支えて 支えられて 介護保険は1周年
介護保険物語茨城県
母が快適に暮らせるようにしたい
だから、家族でみています。
小林千代さんとその家族(水戸市在住)     
 「お母さん、おはよう。お昼だから、起き上がって椅子に腰掛けてみようか」。娘たちが千代さんに声をかける。顔をタオルで拭ってもらって、すっきりした表情になった千代さん。家族とヘルパーに抱き抱えられて装いを着替え、トイレ、そしてリビングルームへ。ほとんど歩ける状態ではないが、前と後ろから体を支えてもらいながら、おぼつかなくなった足を進める。 リビングルームで落ち着くと、「眼鏡をかけてみようか」「鏡で顔を見てごらん」などと誘われ、ちょっとした手遊びで、からだと心をほぐす。

娘さんやワンくん、猫に囲まれて    
 
小林千代さんは92歳。水戸市の中心市街地のマンションに、四女の津多枝さんと二人で暮らしている。わが家には柴犬の「ふゆこちゃん」と、「ノンノン」「まみ」などと名付けた猫八匹も同居。ローテーションを組んで介護に携わる津多枝さんの姉妹も加わり、話し声や笑い声、動物たちの鳴き声でにぎやかだ。


小林千代さんとその家族

 千代さんには約4年前から痴呆症状が現れた。自分の意志をはっきりと示すことができず、身体的にも全面的な介助が必要なことから、重度の「要介護5」の認定を受けているものの、世話をしてくれた人には「ありがとう」「すみません」と感謝の気持ちを示すかわいいおばあちゃんだ。

寝たきりにならないよう心がけ    

 
「寝たきりになってもおかしくない症状だけれども、長生きしてもらいたい。昼間は起きて過ごすようにして、室内を移動する時も、できるだけ歩いてもらうように心がけているんです」と津多枝さんは言う。
  介護保険が始まって、毎日、ベッドから寝起きする昼と夜の2回、ホームヘルパーの手を借りる。週2回、入浴補助と健康状態をみてもらうために看護婦さんに来てもらう訪問看護を受けている。また、ケアマネジャーのアドバイスを受けて介護用ベッドとエアマットも借りている。
  「ヘルパーさんらに来てもらい、補佐役として助かっています。近所に住む姉に手伝ってもらおうと思っても、家事の時間と重なって難しい時間帯もあったから」と津多枝さん。保険の適用で本人負担が1割あっても、介護の幅が広がったことは大きなメリットのようだ。


介護サービス、家族的になって    
 介護の中心は家族の支え合いだ。近所に住む三女の千香枝さんら兄弟姉妹、孫までがかかわり、取材の際には、東京在住の次女、寿美枝さんも実家に数日間滞在していた。「母がどうしたら快適か、みんなでアイデアを出し合っている。母に合った介護をするには、家族みんなが一体とならなければできないと思うんです」と姉妹は口をそろえる。
 これからの時代を考えると、家族の在り方がどう変わるか分からない。だからこそ、姉妹は「介護のサービスができるかぎり家族的なサービスに近づいてほしい」と思っている。
 「温かくなったら、お母さんを連れて、デパートでお茶をしたり、水戸芸術館の芝生で日光浴も楽しませたい」。うららかな日差しの春がくるのが楽しみだ。

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